かいだん話。

団地の敷地から道路に出るまでのところに、数段の階段がある。

裏手なので利用する人が少ないことに加え、敷地内なのか公道なのか、イマイチ線引きがはっきりせず、掃除もおざなりで荒れた感じの場所である。

アスファルト舗装ではなく、割石を敷き詰めてあるのだが、整備が悪いためにところどころ外れ、凸凹に足をとられるので危ない。

団地の理事会でも問題になるが、何か面倒な理由で、勝手に補修もできないらしい。

つまずかないよう気をつけて下りたところで、以前自治会の役員を一緒にやった、シライシさんの奥さんに会った。

こんにちは~と会釈ですれ違いかけて、声をかけられた。

あ、そうそう… ヨシミさんが亡くなったらしいの、ご存知?

ヨシミさんというのも、同じ時に役員をやった人だ。

小柄で元気で、新舞踊とかいう踊りを習っていて、ことあるごとに披露したがるのが玉に瑕だが、一緒に働いて楽しい人だった。

あんなにお元気な方が?ついこの前、お見かけした気がしますけど…

ご病気じゃないみたいなのよね… つけつけお尋ねするのもナンだし…

そこで急に声をひそめ、

聞くところでは どうも転んだらしいの… ここで…

たった今下りた階段を指さすではないか。

えーっ!と大きな声を出しかけた口もとに、シライシさんはシッと人差し指を当てた。

ここだけの話よ… ウワサだし…

打ち所が悪かったのか、本当だとしたらお気の毒で、怖い話だ。

しかし本当に怖いのはその話を聞いたあとのこと。

ずっと放置されていた危ない階段が、いきなり修理されたのである。

誰に聞いても、誰が、いつ工事をしたのか、わからない。気づけば敷石の凸凹は、しらじらしくも新品同様に直されていた。

その素早さ、手際の良さが、ぼんやりした疑念に形を与えたようで、ゾッとした。

いしのかいだん



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



スポンサーサイト
ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/08/12 11:30
コメント
No title
やっぱり危なかったんですね。
早く修理しておけばヨシミさんも亡くならずに済んだでしょうに・・
何かないと誰も何もやらないんですね。
何かあってからじゃ遅いんですけどね~
こんにちは!
その新しくなった階段で
丑三つ時になると、

新舞踏を踊る白い影が、
現れないことを、、、
これはまさに
コンプライアンス経営の骨格を
なすリスクマネジメントの問題
です。

転倒のリスクに対する適切な処置
が取れなかった例。

リスク感知能力はとても大切です。
No title
後手に回るといいますかやりきれんですね
やる気出せばさっさと修理出来たのに
階段から怪談
お盆だから「怪談」かと思ったら「階段」の話。
でも最後はしっかり「怪談」で怖い!
(亡くなった方は本当にお気の毒でした)

よくできた短編小説のような切れ味の良さ、私の中ではハロウィンの「またテメエか!」に並びました!

(勝手に、切れ味部門、新しい視点部門、母の愛部門などなどに分類して味わっております)
Re: No title
Carlos様

あくまで噂なんですけれども、どうも本当のような気もして。

お葬式もなさらなかったものですから、分からないままです。
Re: こんにちは!
ダリルジョン様

階段の怪談を作らないでくださいよう!

夜歩けなくなります。
Re: これはまさに
rockin'様

ちょっと横文字が難しくてわかりませんでした。

ごめんなさい。
Re: No title
みけねころんそう様

本当ですね。

でも、行政ってえてしてそんなものですよね。誰かひどい目に遭わないと、腰を上げない。
Re: 階段から怪談
きょうこ様

素晴らしい読み手を得ると駄文も輝く。ありがとうございます。

面映ゆい気持ちですが、今後もがんばります。

管理者のみに表示