はりがみ話。

乗りたい電車に遅れそうで、駅前の団地を突っ切って近道。

居住者以外の通行を禁じます

という看板の赤い色が、力なく色褪せている。

これ見て引き返す人っているのかしら、と思っていると、裏にハリガミがしてあった。

シロウトがカラープリンタで印刷したらしい、A4のハリガミだ。

ビニール袋に入れてあるのは、雨に濡れない用心らしいが、その甲斐もなく文字も絵も、ドロドロに流れている。

言わせてもらえばこれはビニール袋の使い方が悪いのだ。

ハリガミを袋に入れてから張る場合、このように上から入れてはいけない。

ぽすたー2

かなり注意して封をしても雨水が入りやすいし、少しでも入り込むと下に溜まった水を紙が吸い込んでしまう。

ぽすたー1

このように下から入れるのが正しい。

万が一雨が入っても下から流れ出るから、にじむのは雨が伝った箇所だけで済むからだ。

同じ労力とビニール袋を使っても、これだけのことで結果がぜんぜん違うのになー、と歯がゆく思いながら歩いていると、団地の中に同じポスターが何枚も何枚も貼ってある。

何枚あっても全部ドロドロなので、だんだん気の毒になってきた。

これだけハリガミをするということは、よほど事態は切迫しているのだろう。

家族でかわいがっていたペットが逃げたのかな、などと想像する。

協力してあげたいのはやまやまだけれども、とにかくどれもこれもドロドロで、いなくなったのが犬なのか猫なのか、はたまた鳥なのか、わからない。

せめて次にハリガミする時はこうしたほうがいいですよ、と教えてあげたいが、連絡先の電話番号もまた、ドロドロで読めないのであった。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/05/17 11:30

にひきの話。

午後の空いたバス。

私の前には、小さい女の子を連れた若いお母さん。

もうひとつ前の一人掛けの席に、お兄ちゃんらしい3歳くらいの男の子がいる。

今どき珍しく、サッパリ坊主のマルコメくんだ。

まるこめくん

交差点の信号待ちで、窓の外を眺めていたと思うと、イキナリ振り向き

見て!ママ!しろばいが2ひき

何か珍しい動物?と、つられて窓の外を見たら、路傍に警察の白バイが2台停まっている。

この子にとって白バイは、大型バイクにまたがった警察官などではなく、白くて速く走る生き物、なのかもしれない。

動物図鑑に「ぞう」や「きりん」と並んで「しろばい」が描かれているところを想像し、おかしくてたまらなかった。

おとなしそうなお母さんは周りを気にして声を低め

違うでしょ 2台でしょ…

と、正そうとする。

訂正なんかしなくていいよ、お母さん。子供はどうせそのうち、自分で気づいて、そんなかわいい間違いは、聞きたくてもしなくなる。

どんどん成長して、親より賢くなって、「しろばい2ひき」の時代には戻れない。

2匹と数えられたとも知らず、取り締まりに当たる白バイを残し、バスがまた発車する。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/05/16 11:27

とりかご話。

カナイさんから久しぶりに電話がかかってきた。

ねえねえ、今欲しいものってある?

なに?くれるの?

ちがうのよ~ 母の日よ、ハハノヒ!

カナイさんにはお嬢さんが2人いて、毎年母の日にはプレゼントをくれる。

去年は日傘でしょ おととしはウォーキングのクツ…

ちゃんと希望を聞いて、ほしいものを買ってくれるのは嬉しいのだが、

そう毎年、うまいこと欲しいものって ないのよねえ…

あまり高価なものは言えない、かといって安いものでもプレゼントした感じがしない。

死蔵するのは申し訳ないから、喜んで使っているところは見て欲しいけど、あまり実用的なものでは味気ない。

せっかくなら娘たちにも、華やかな売り場で、ウキウキと買い物の楽しみを味わってほしい、と、カナイさんは言うのである。

前にムスメにビールとカラアゲもらって嬉しかったけど… (→ 「ははのひ話。」

ええ~っ!飲めば終わりじゃない!

めんどくさいなあ。

何かステキで、欲しいものかあ。

あ、トリカゴが欲しい!

へ?

昔のマンガでさ、お嬢様の部屋にある、白いトリカゴ!姫川亜弓の部屋にもあったじゃない!

しろいとりかご

あーあー、あったあった! 窓辺に吊るしてあるのよね!

姫川亜弓、舞台で忙しいのに鳥のフンの掃除とか いつやってんだろうと思ってたよ

ハハハ… ばあやがやってんじゃないの? 

しばらく「ガラスの仮面」あるあるで盛り上がったあと、カナイさんはふと我に返り

あー、おかしかった… でも相談する人を間違ったみたい…

そう言って電話を切った。

ひめかわあゆみ
(「なんですって…!」)


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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/05/14 11:45

きっぷの話。

その奥様とは、仕事を通じて知り合った。

良家のお嬢様が良家に嫁いで、そのまま奥様になるとこうなるんだろうなあ、という、上品でかわいらしい人だ。

お友だちと呼ぶとずうずうしいが、ご自分とは全く逆のタイプの、私の言動を面白がってくださって、時々お会いする。

先日も豪邸にうかがってお話する機会があった。

素敵なお部屋で、美味しいお茶と珍しいお菓子。ずっといたいところだが、そうもいかない。ほどよきところで辞去を告げると

あ、そうそう、忘れるとこだった… ぢょん子さんにこれ…

用意してあったらしいパンフレットと、数枚のチケットを手渡された。

記念展があるのよ お友だちと ぜひいらしてね

奥様は先年物故した日本画の大家にゆかりのあるお家柄なのである。さすが、上流は違う。

ありがとうございます!ぜひ拝見します!

パンフレットを見ると、没後何年かを記念した、かなり大規模な回顧展のようだ。

美術館の建物がステキなのよ 海が見えてね…

場所を確かめようとパンフを表に返して、ギョッとする。

会場の美術館は大阪でも、京都でもなく、ましてや奈良ではなかった。

なんと四国である。

奈良から日帰りは無理だし、交通費だけで1万円以上かかるであろう。

瞬時にそう計算して内心動揺する私をよそに、奥様はニッコニコして

ご覧になって感想を聞かせてちょうだいね あなたの感想は面白いから…

とおっしゃった。

この雰囲気で、ビンボーなので行けません、とは言いだせない。決死の覚悟で笑顔を作り

ハイ、もちろん…

とお約束してしまった。

700円の切符もらって、宿泊費込みで2万円以上使うことになりそうだが、そんな風に比べてしまう自分が情けなくて、そっちのほうがショックである。

せとおおはし
(ぢょん でんばあ 初の四国上陸なるか? → のーべる話。



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ごきんじょ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2017/05/11 11:45

ちゅんちゅん話。

ちかごろ、朝が騒がしい

窓の外で、ホームドラマの朝のような、鳥の声がする。

今までも聞こえてはいたが、最近やけにその声が近いのだ。

こう書くと文句タラタラのようだが、ちゅんちゅんで目が覚めるのは悪くない。カーテンを引くとパラパラ…と小さな影が飛び去るのが目の端に見えて、それもまた楽しい。

今朝はいきなりカーテンを開けずに、隙間から様子をうかがってみた。

すると、ベランダでほったらかしのスイレンの鉢のふちに、スズメが2羽並んでいる。どうやら、鉢の水を飲んでいるらしい。

それを見て、ははーんと合点がいった。

うちの団地の中庭にはちょっとした噴水があった。

夏には子供が足をつけたり、お祭りの翌日には誰が放ったか、金魚すくいの金魚が泳いでいたり、たいしてステキでもないが、住民に親しまれる、小さな人工の池だ。

築年数の重なるうち、この池がどこからか少しずつ、水洩りするようになった。

配管が難しいことになっているとかで、どこから洩るんだか、調べても分からない。水を足さないと噴水が維持できないが、この水道代がまたバカにならない。

理事会が問題にし、総会で決が採られて、池は埋められ、花壇になった。

ところが、池は野鳥の水飲み場でもあったのである。

住民の総意は諮られたが、鳥は意見を聞いてもらえなかった。

鳥にしてみれば、これは死活問題である。

そこで周辺を探してみたところ、うちの狭いベランダに、ショボいスイレン鉢が見つかったというわけなのだ。

住民のひとりとして責任を感じ、明日に備えて、せめてきれいな水を継ぎ足してみた。

とりのみずのみば
(こういうやつを買ったほうがいいのか考え中)



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ごきんじょ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2017/05/08 11:30
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