はっぴの話。

幼稚園児のムスコを、虫歯にしてしまった。

小さい子を診てくれる歯科は少ない。バスに乗って少し離れた歯科医院に通うことになった。

ある日の通院がえり。

バス停まで歩いていたら、角刈り半白の頭に粋な法被を着たオジサンが前を歩いていた。

背中に書かれた勘亭流は、このあたりの地名のようである。

あのふくはなんのふく?

さあ お祭りの法被だと思うけど 今日はお祭りじゃないしね… なんだろね

今も昔も、関西人の私は、こういう江戸っ子ぽい人がちょっと怖い。ムスコの子供っぽい高い声が響いて、オジサンに聞こえやしないかと気になった。

ちょっときいてくる

止める間もなくムスコは駆けていき、けっこうなコワモテのオジサンに、いきなり話しかけた。

オジサンは案外気さくに、法被の背中や襟の文字を見せながら、あれこれ説明してくれている。

しばらくして駆け戻ったムスコは

きょうはおまつりじゃないけど もうすぐだから おまつりのふくでれんしゅうするんだって おみこししたり うたもうたうんだって

分からないことが分かったムスコは、満足げであった。

不活発で協調性が無く、インドア派で読書が好きなわりに勉強ギライなうえ、友達は少ない、まあ今日までいろいろと問題の多かったムスコ。

それなのにどこかでこの子は大丈夫と思えて、それはなぜだろうと考えると、あの時、1人駆けて行った後姿を思い出せるからかもしれない。

この子はきっとどこでも行ける。何でもできる。

あれから10年以上が経つ。オジサンは今もお元気で、お祭りに出ているだろうか。

ふかがわはちまんまつり
(2017年は3年に一度の本祭り→ 富岡八幡宮HP



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/08/13 11:30

ぽけもん話。

雨の翌朝。涼しくて、久しぶりにテレビをつけてみたら

夏は ポケモン!

聞きおぼえのある声優の声が飛び出した。

ぽけっともんすたー
「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」

そうか、今でも夏はポケモンなのか。ちょっとシミジミする。

ポケットモンスターが流行り出したのは、もう20年くらい前だろう。

ちょうどその頃、在外勤務に帯同していたため、ムスメはポケモンを知らずに過ごしていた。

帰国して、近所の幼稚園に入ったら、周りはポケモンだらけ。

お友だちは手提げもハンカチもポケモンがくっついたキャラクター物を使っている。

まだゲームをさせていないお宅はけっこうあったが、アニメのほうはほとんどの子供が見ていたのではないか。

年少さくら組でポケモンデビューを果たしていないのはムスメだけだった。

そんなに流行っているポケモンってどういうものなのか、試しに見てみた。

野球帽をかぶった主人公の少年が球みたいなものを投げると、中からポケモンという生物が飛び出して、他の人が持っているポケモンと戦う。

主人公は最初に球を投げたあと、ポケモンが痛い目や苦しい目に遭っている間、安全な場所で見てるだけのくせに、勝つと自分の手柄みたいな顔をしている。

どうも好きになれない、イヤな話だと思った。

いくら流行ったからといって、こんなものをわざわざ見せることはない。ムスメも特にポケモンが見たいとも、グッズが欲しいとも言わなかった。

参観日のこと。

遊びの様子を自由に見て良いとのことだったので、ムスメを探したら、仲良しのモモカちゃんとサユちゃんと一緒に、園庭の一角で何かチマチマやっている。近寄ると、3人とも作り声をして

ピカピカ ピッカー!

などと言いあっているので、何しているの、と聞いたら

ぽけもんごっこだよ!あたし ぴかちゅう!

ニッコニッコしている。

うちに帰ってから、ポケモンなんて見たことないのに、どうしたの、と尋ねると

ようちえんにずかんがあるんだよ ぽけもんずかん… それでおぼえたの

丸い目で見上げる小さいムスメは、ピカチュウに似て、なんだかいじらしかった。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/08/10 11:32

たいふう話。

たいふう

どうやら台風が来るらしい、月曜日の朝。

怪しい雲行きだな~

ムスメは低い雲が垂れこめる空を見ながら、なぜか嬉しそうだ。

警報出たって 会社は休みにならないよ!

そう声をかけると

こんな不穏な雰囲気の日は家にいて ずっと外を見ていたいよね

風流なんだか無粋なんだか。

そんでざーざー降って来たら 外に躍り出るんでしょ

フフフ…

ムスメは小さい頃から、悪天候が大好き。大雨が降ると、喜んで外に出たがった。

カサもささずに飛び出していって、ずぶ濡れになってはしゃいでいる。

高校生になってもそれは変わらなくて、雪が降ると、夜中なのに寒い外に出て、ユキダルマを作ったりしていた。

小さい頃は、そういうことはするもんじゃありません、とお母さんらしく制止したものだが、だんだん、これはムスメなりの衝動の発露なんだ、と思えて、勝手にやらせることにした。

わりにスンナリ理解できたところをみると、私の中にもムスメに共通する、ナニカがあるのかもしれない。

風雨が木々を押しひしぎ、雲が奇妙な形に流れて、見慣れた風景を変えていく様は、おそろしくもあるが、それ故に魅きつけられる。

1度くらい、カサを持たずに、台風の中に出てみようかな。

窓にもたれてそんなことを考えていたら、すっかり会社員の姿になったムスメが

イッテキマース

と、すまして出勤して行った。



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/08/07 11:30

ふせいだ話。

展覧会に行きましょ 切符をもらったから

おばーちゃんにそう誘われ、ギクリとする。

会場はデパートの最上階。そして、デパートというのは、お買い物をするところである。

最上階までエレベーターで上がり、そのナントカ展を鑑賞したあと、エスカレーターで1階ずつ下りながら、ウインドウショッピングしようというのが、おばーちゃんのプランだろう。

この人と50年以上親子でいて、いまだに理解できないのが、楽しみとして買い物をする、という趣味である。

買い物ギライの私にとって、用もないのにデパートをぶらつくのは苦痛でしかない。断れば、フットワークの軽い彼女は、アラそう、と1人で出かけるだろうとは思う。

しかし、実家の魔窟状態を思い浮かべると、これ以上不要不急の買い物をさせてはならない。

今日は私は、身を挺しておばーちゃんの買い物を防ぐ所存である。

ナントカ展の会場では、さっそく分厚い図録を買おうとするので、重いでしょうと押しとどめ、気に入った作品のハガキを買って済ませた。

1階下りて、家庭用品売場。

ドイツ製の高級タオルをうっとり眺めたと思ったら、イタリア製の食器の前で店員と話している。こんな高級品を売りつけられたらエライことだ。背後霊のように控えて、目を光らせた。

つぎに寝具売場で言いだしたことには

ほら、こないだ首を寝違えたって言ってたじゃない?マクラが合ってないんじゃないの

彼女の恐ろしいところは、自分だけでなく、人が買うのも楽しみだという点である。

いやいや、安い頭に、こんな高いマクラは要りませんと固辞すると、不満そうな顔である。

マズい!ここらで何か買ってガス抜きしないと、買い物欲が爆発する!

あ!水着!おかーさん、水着を買い替えたいから、付き合って!

今のがビロビロになってきたので、水着は買おうと思っていたのだ。スポーツ店のバーゲンで買うつもりだったので、デパートではお高くなるが、この際やむを得ない。

何かを買いたい、と言うほど、母を喜ばせることはない。おばーちゃんは嬉々として下りエスカレーターに乗り、ついてきた。

スポーツ用品売場のいい点は、おばーちゃんの買うものが無いところだ。安心して試着室に入る。

3着をかわるがわる試着して1つ選び、試着室の扉を開けると、なんたることか、おばーちゃんが店員と、話し込んでいるではないか。

ねえ見て見て!姿勢がよくなる椅子だって!腰痛にもいいんだって!

すっかりその気だが、見るからにジャマそうな形状のシロモノである。

すぐにもお買上げの勢いなので、

置けるかな?はみ出すと困るから 寸法測ってまた来ようね!

なんとかパンフレットだけを受け取って、レジで水着の支払いを済ませる。

ご予算よりだいぶ高くついてタメイキが出るが、おばーちゃんの買い物はなんとか防いだ。これもまた、家族の必要経費である。

すたいるあすりーと
(母が買いかけた健康座椅子 14,900円 赤いのが気に入ったらしい)



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/07/22 11:31

もろっこ話。

タスケテ~

と、おばーちゃんからまたSOS。例によって野菜のおすそ分けだ。(→ さらだの話。

駅前でずっしり重い袋を受け取り、ついでに冷たいものでも、ということになった。

冷房の効いた店、グラスを前にホッと一息。袋を覗くと、見慣れないものが入っている。

これ何?どーやって食べるの?

知らなーい 

えー、もらった時に聞いときなよ!おかーさんも困るでしょう

困らないよ 全部アンタにあげるから…

ナニソレ!

アタシ、サヤ豆ってキライなのよね

好きで食べる野菜は半分とるが、キライなのは全部私によこしているらしい。

こういう人なのであった。

ナゾの野菜の正体は、家に帰って調べたらすぐにわかった。

もろっこいんげん

分かった!モロッコインゲンです

LINEで報告すると、しばらくして返信。

へー、そう どんな味かな サヤインゲンみたいにギシギシして青臭いのかな

どうやらおばーちゃんは、サヤインゲンもキライらしい。

サヤインゲンのように美味しいらしいです

えー、おいしい?青臭くてギシギシしてるのに?

しつこい!アタシは好きなんだよ!とつぶやきつつ

おかーさんに食べろとは言わないので安心してください

なんとか冷静に返信すると

おいしくないけど栄養はあるのかな

ついにムキーッ!と頭に来た。

あります! 私が栄養を一人占めにしますので あしからず

と返事したら、さすがに雰囲気の悪さに気付いたらしい。

もらってくれてありがとう

殊勝な言葉に気をとりなおしかけたら、間髪入れず

ぺこり

スタンプが来たので、また軽くムカッとした。



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/07/16 11:54
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