にもつの話。

ランドセルの小学生が、絵の具のケースらしいものと、上履き袋を提げている。

ああ、終業式だ。夏休みだ。今日で学校が終わりなんだ。

長い休みの前はいろいろ持ち帰らなければいけないから、どうしても荷物が多くなる。

この子の荷物は少なめだから、きっと体操着なんかは昨日、予め持ち帰ったのだろう。クレバーなタイプである。

ここで、引きずるほどの大荷物を提げて、泣き泣き帰った思い出があればいいのだが、残念ながら私はそういう子供ではなかった。

まず1週間前には、机の中の不要なものは捨て、使わないものはランドセルに入れて持ち帰る。

習字道具や絵の具や色鉛筆は、休み前、最後の図工や書道の授業が済んだら、終業式を待つことなく、すかさず持って帰るのだ。

終業式の日には、ガラガラのランドセルに、通信簿と夏休みの友だけを入れて帰った。

多すぎてにっちもさっちもいかない子の荷物を、恩着せがましく持ってあげたりもする。

われながら子供らしさのない、にくたらしいガキである。大荷物でヨタヨタ帰る友だちを見ては、

バッカじゃないの?

と思っていた。

ところが、そんな私が育てたムスメとムスコは、そろってクレバーの反対であった。

終業式ともなれば、肩にかけられるものは全部かけ、持てないものはランドセルにしばりつけ、植木鉢を抱えて、ヨタヨタ帰ってくる。

持ちきれずに引きずるものだから、いつも手提げの底にはが開いていた。

タダイマー!

暑さに顔を真っ赤にして、ようよう家に着いた子供が、玄関に荷物を投げ出す。

そんな風に始まった夏休みも、今は遠いことになった。

なつやすみのとも



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/07/21 11:30

うみのひ話。

今日は海の日

あおいうみ

今じゃ玄関を出るのも億劫な私であるが、若い時には人並みに浜辺の熱い砂を踏み、夏の日差しを浴びて、海水に身体をひたしたものだ。

それは大学に入った年の夏のこと。グループで海に行く計画が持ち上がった。

クラスの男女比は5対1。女の子が少なかったため、サエない私にもお声がかかったのである。

約束の集合場所に行くと、10人ほどの男子に混じって、女の子は3人。

私の他には、女子校出身のユカちゃんと、小柄でおとなしいミホコさんがいた。

あれ?ノンちゃんは?

テニスサークル所属のクラスのマドンナ、ノンちゃんがいない。

なんか、おうちのほうの用事だって…

マドンナの不在は、そこはかとない落胆で男子たちを包み、地味な女子たちを落ち着かなくした。

ともあれ参加者全員が集まり、特急電車で海のある街へ。

海の家に荷物をおろして、さっそく着替えだ。

ユカちゃんがバッグから取り出した水着に、私は度肝を抜かれた。

雑誌でしか見たことのない大胆なビキニである。

むむむ…やりおったな!

フレアスカートに白いブラウス、日傘をさした清楚なユカちゃんがこんな水着とは、まったく予想外である。

内心うろたえつつミホコさんを見ると、スクール水着と大差ない紺の水着を手にしているので、ひとまずホッとした。

更衣室のドアをあけて、さっきまで洋服を着て(当たり前だ)顔を合わしていた同士が、水着で合流する一瞬の気まずさ。

無言でどよめく男子たちの注目は、もちろんユカちゃんのビキニだ。

ところが次第に、その視線が、ミホコさんに移っていく。

小柄で無口なミホコさん、その見事なプロポーションといったら。

むむむ…やりおったな!

シンプルな紺の水着に包まれて、きゅっとくびれたウエストと、豊かなバストがまぶしい。

実は水泳選手だったミホコさんは、海に入るや、スルスルスルと沖に出て、目を凝らさなければ見えないになってしまった。

浅瀬のぬるい水をぼちゃぼちゃしながら、ぼんやりと、オンナはコワい、と思った。



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むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/07/17 11:30

なっとう話。

7月10日は納豆の日

なっとう

うちは両親とも根っから関西人の家系であるが、なぜか納豆を食べていた。

私が子供のころはまだ、食べられない人が多い中、一家で口の周りをネバネバにしているわが家は、異色だったと思う。

私自身は食べて当たり前と思って育ったため、周囲の関西人が納豆を食べないことを知ったのは、かなり大きくなってからである。

そう知った日はビックリして、家に帰って母に報告したのを覚えている。

おかーさんおかーさん!よそんちは納豆食べないんだって!

母は平然と

そーよ アタシだって おとーさんと結婚するまで食べたことなかったもん

えーっ!

今だって別に好きじゃないし 食べるけど

そうなの?

わが家の食卓に納豆をのせたのは、東京の大学に通った父らしい。

コンビニもファストフードもない昔、実家から出た学生が、たちまち困るのは三度の食事だった。

そこで必須なのがまかない付きの下宿である。

朝晩食事を準備してくれる代わり、選択の余地はない。出されたものを食べるのみである。

そこで納豆を繰り返し出されて、食べ慣れたのだろう。

生粋の大阪男であるうえ、芋はイヤだカボチャは食わないと、けっこうワガママだった父。

食べつけない納豆を、食べ慣れるほど食べたということは、つまりそれしか食べるものが無かったのだと思うと、若き日の父が、ちょっとかわいそうになる。

今のようにテレビで食いしん坊バンザイだのケンミンショーだのが見られる時代ではない。

味噌も醤油も、関西とは違ったろう。はじめて関東の食生活に触れたカルチャーショックは、想像に余りある。

これ何?!こんなの食べられるの?と驚いたり、こわごわ口にしたら案外おいしかったり、そんな経験は人生を豊かにする。

情報あふれる現在、見たことも聞いたこともない食品なんて、もはや無いかもしれないと思うと、ちょっぴり父がうらやましい気もする。

はじめて食べた時、納豆にどんな感想を持ったか、聞いてみたいけれど、父はもういない。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/07/10 11:30

たかやす話。

大相撲名古屋場所が初日を迎えた。

今場所注目の力士といえば、断然新大関・高安である。

他のスポーツ同様、お相撲にも疎い私であるが、なぜか高安関には好感を持っている。

この親近感はいったいどこから来るのか、考えてみた。

高校の同級生で、背が高くてスポーツ万能で、小麦色の肌が魅力的な、素敵な女の子がいた。名前はケイコちゃん。

風を切ってグランドを駆け抜ける、カモシカのような姿に、おもわず見とれたものだ。

そんなケイコちゃんには、が1つあった。

日陰のモヤシみたいな虚弱体質の私より、お休みが多いのである。

いちおう病欠だが、休み明け出てきた顔は、病み上がりに見えない、むしろ生き生きして、クラスの誰よりも元気なのである。

不思議に思って尋ねても、いたずらっぽく目を輝かせ、ウフフ♥と笑って答えない。

ずいぶん経って親しくなってから、彼女が野球選手の追っかけをしていることを知った。

キャンプや地方遠征を追って、かなり遠出もしていたようだが、学校への届け出や、交通費なんかはどうしていたのか、今思い出しても謎は深まる一方だ。

そのケイコちゃんが住んでいたのが、高安という町だった。

たかやす

いくら考えても、私と高安関の関係は、それ以外他に見当たらない。

ともあれ、ガンバレ高安!


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むかしむかし | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/07/09 11:30

ぷーるの話。

ぷーるびらき

住宅街に、歓声と水の音が響く。近くの小学校のプールの時間らしい。キャーキャー甲高い声は、低学年だろうか。

昔むかしの大昔、私の通った小学校には、プールがなかった。

水泳の授業の時は、よそに借りに行く

学校の教室で水着に着替え、バスタオルを肩にかけると、商店街を抜け、住宅地を越えて、プールのある隣の小学校まで、歩いて行くのである。

1クラス45人の時代である。ビーチサンダルでペタペタ歩く水着の行列は、さぞかし壮観であったろう。

今ならうるさいお母さんがたが

水着で外を歩かせるなんて!

などと黙っていないだろうが、昔の親や子は、無いものは借りに行かなきゃしかたがないと、ごく単純に考えていた気がする。

高学年になっても、とくに恥ずかしいとかみっともないとか思った記憶はない。

ぞろぞろ先生に引率されていると、校門の外の道も学校の続きみたいに思えたし、プールに入るのは、やっぱり楽しかった。

今住んでいる海なし県では、水泳の授業にいたって不熱心だ。

雨が降っちゃー中止、水温が低いっちゃー中止。4年生の時ムスコは2回しか泳げなかった。

夏休みのプール開放も無いから、学校の授業だけでは泳げるようにならない。みんなお月謝を払って、バスでスイミングスクールに通うのである。

1学期にたっぷり水を張った立派なプールも、ヤゴを育てるだけのトンボ養殖池である。

あのプールが、あの時、私の小学校にあったら。

不平も言わず、炎天下をペタペタ歩いていた子供の自分を思うと、ちょっと泣きたくなる。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/07/01 11:46
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