カイキャク本。

私は身体がかたい

子供の頃からずっとだから、昨日今日の話ではない。

トシもトシだから、健康番組を熱心に見ているが、体操やストレッチの話題は多い。肩甲骨を広げろだの、筋膜をはがせだの、なんだか物騒だが、要は身体を柔らかくせよということだ。

とにかく身体がかたいのは悪、かたい身体は万病のもと、であるようだ。

テレビで見たあとしばらくは、あっちを曲げたりこっちを伸ばしたり、紹介されたとおりにやってみるが、なぜか定着しない。

自慢じゃないが私はマジメで、水泳にしろ、ラジオ講座にしろ、やったほうがいいことはちゃんとやる人間である。

それなのにストレッチだけが続かないのはどういうわけか。

いろいろと考えてみたが、けっきょく理由は一つ。

イヤだから。

水がキライだから泳げないのと同じように。

ピーマンがキライだから食べられないのと同じように。

私は曲げたり伸ばしたりするのがキライなのだ。

ふだん腕を曲げたりヒザを伸ばしたりするのは、もちろんイヤではない(当たり前だ)。

不自然な方向に伸ばしたり、生活に不必要な角度まで曲げたりするのが、イヤなのである。

新たな弱点が1つ見つかったわけだが、克服すべき弱点があるのは、いくつになってもいいものだ。

もしこの先、自分がダメなやつに思えた時は、ストレッチをやればいい。

ずっとかたかった身体が柔らかくなったら、失った自尊心を、きっと取り戻せる気がする。

いつか必要になる日まで、かたい身体は取っておこうと思う。

かいきゃくぼん
(「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」長っげえな!)



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ブックガイド | コメント(11) | トラックバック(0) | 2017/09/08 11:30

ブッダノ本。

実家でお世話になっているお坊様は、若くて元気。

活気があるのはいいのだが、勢い余って予定の時刻より早めに来てしまわれる傾向にある。

今年も12時の予定なので、用心して11時前には着くように、ムスコともども家を出た。

実家まではバスで10分。

乗車賃を出そうとサイフを探っていた時、ケイタイが2度ばかり、ブルンと鳴った気がした。

角を曲がって実家の門が見えてきたと思ったら、おばーちゃんが顔を出している。

わざわざのお出迎えは珍しい。

ゴメンねー、わざわざ来てもらって…

いやいや、毎年のことだから

違うのよ~ もう帰っちゃって!

はあ?!

12時過ぎに、と約束したお坊様は10時半に現れ、大変な勢いでお経を唱えると、10時40分にはゾウリを履いて、帰ってしまわれたのだという。

LINEを確かめると

おばーちゃん どうしよう お寺さん来た 10:28

おばーちゃん 帰りました 10:38


焦った感じのメッセージが残っている。

おばーちゃんは必死で

マゴが!遠くからわざわざこのために、マゴが来るんです!

と、引き留めようとしたが、お坊様は黒いカバンから

ではこれを

1冊の本を取り出しておばーちゃんに授けると、スイスイと出て行かれたのだという。

その本がコレ

ぶっだがせんせい
(「ブッダがせんせい」 宮下 真 著 永岡書店)

あのー、うちのムスコ、今年19歳なんですけど…。



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ブックガイド | トラックバック(0) | 2017/08/15 11:30

ポアロノ本。

身だしなみのいい大柄なバーバラは、アガサ クリスティーによく似た顔に、およそ信じられない、という表情を浮かべた。

まあ、じゃあ、日本にはブルーアイはいないの?

ええ 外国から来た人以外は…

ブロンドも?

はい みんな私みたいに 黒い頭と…

黒い目なのね?

そうです

そうなの… 思いもよらないことだわ…

そんな彼女はもちろん、見事なブロンドとブルーアイであった。

年配の人には、こういう無邪気な偏見の持ち主がたまにいる。

決して無教育な人ではない。

立派な職業につき、郊外に素晴らしい庭園のある家を持つ、中流家庭のイギリス人女性。

彼らにとって人間の標準はブロンドのブルーアイであって、緑の目や赤毛はかろうじてバリエーションに含めても、私たち東洋人の黄色い顔や黒髪はそもそも想定の域外なのである。

もちろん知識としては、地球上に様々な肌の色の人々がいることを知っているし、外国人を不当に扱ってはならない、ということも分かっている。

バーバラにもいつも親切にしてもらったし、不愉快な思いをさせられたことはない。

そのことと、彼女がブロンドとブルーアイ中心の意識でいることとは、別問題なのだ。

クリスティーが生み出した最も有名な探偵、エルキュール ポアロ

玉子型の頭に黒髪を撫でつけた、個性的なこの外国人に、作家自身は晩年ウンザリしていた、ともいわれる。

クリスティーの目の色は知らないが、彼女もまた、ブロンドとブルーアイの人ではなかったか。

希代の名探偵の死が新聞紙面で報じられたのが、1975年の今日であった。

ぽわろしす



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/08/06 11:27

ヒメギミ本。

暑さのせいか珍しく寝つけなくて、書架から福永武彦訳の「今昔物語」を手にした。

千話をこえる原典の本朝の部より、作家が撰んだ百話あまりの現代語訳である。

適当に開いたところから読み始めて、ふと、あの話が載ってないな、と思う。

六の宮の姫君。

そういえば、五位の入道、あの話も無いな、と思った。

2つはいずれも芥川龍之介によって翻案されている。福永はそれを意識して省いたのかと思ったが、これらよりよほど有名な「鼻」「芋粥」の2つは、ちゃんと撰ばれているから、たんに好みではなかったということだろう。

六の宮と五位を同時に思い起こしたのには理由がある。

ろくのみやのひめぎみ
(「六の宮の姫君」北村薫 創元推理文庫)

この本のせいだ。

日常の謎を解き明かす、女子大生の「私」と落語家「円紫師匠」の人気シリーズの中の1冊。

彼らがここで解く謎は、芥川の「六の宮の姫君」はいかに書かれたか、そのことである。初めて読んだ時、こんなこともミステリ(それも、面白いミステリ)になるのか、と驚いた。

無粋な種明かしは避けるが、一読退屈しそうな文学史の問題を楽しく読ませるのは、登場人物の魅力的な造形だ。

中でもヒロインがいい。

知的でありながら、他者への優しさと共感に富み、落語のユーモアや随筆のウイットを愛し、少年のようにきゃしゃで清楚で、恋には奥手な女子大生。

首都圏の私立大学の文学部(おそらく早稲田の一文)所属という設定だが、こんな女子大生、およそ実在すると思えない。

「六の宮の姫君」は今昔物語のエピソードであり、また芥川の小説であり、同時にこの作品でもあるわけだが、読者はそのイメージをヒロイン「私」に重ねずにいられないだろう。

なよなよとたよりない中世の姫君と、自立を目指す現代の女子大生は、もちろん異なる。

しかし言葉のイメージというものは面白いもので、主人公のイラストレーションに題字が添えてあると、まるでこの女の子こそが姫君であるかのようなのだ。

それは決してミスリードではなく、ヒロインはこの作者にとって、いつまでも御簾のかなたにいてほしい姫君なのだ、と思う。

今日7月24日は、河童忌である。

あくたがわりゅうのすけ
(あくたがわ りゅうのすけ 1892.3.1 - 1927.7.24)



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ブックガイド | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/07/24 11:30

クマノコ本。

30年ばかり前、はじめてロンドンに旅行した時、行ってみたい場所があった。

パディントン駅である。

くまのぱでぃんとん
「くまのパディントン」 ボンド作 フォートナム画 福音館書店

その仔グマは、ペルーのリマの「老グマホーム」に入居することになったおばさんと別れ、イギリス行きの船に忍び込んで、ロンドンのパディントン駅にたどり着いた。

ブラウン夫妻は遺失物取扱所の郵便袋の陰で、スーツケースに座っているクマに気づく。

帽子をかぶり、首には

どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします。

と書いた札を下げたこのクマを、夫妻は出会った場所にちなんで、パディントンと名づけた。

プーさんと並んで、イギリスで一番有名なクマ、パディントンの誕生である。

小さい頃から親しんできたこのクマの、名の由来となる場所をちょっと見てみたい。ひょっとして、記念碑とか、ちょっとしたお土産屋さんなんかが、あるかもしれない。

パディントンの駅は、国鉄と地下鉄の両方が乗り入れる巨大なターミナル駅で、ホームの数も10を超える。高い天井のエントランスを入ってすぐ、私は途方に暮れた。

およそ取り付く島もないほど、忙しそうに行き来する乗客たち。ようやっと捕まえた駅員に

パディントンベアのメモリアルはないか?

たどたどしく尋ねても、要領を得ない。

諦めず何人かに聞き続けたところ、ようやく中の1人がああ!と何かを思いついて、こっちへ来い、と手招いてくれた。

駅舎の長い廊下を歩き、ドアを入ると、そこは窓口のある長いカウンターを備えた事務室。

壁際の小さなガラスケースの中に、ぼさぼさしたクマのぬいぐるみが飾られている。

これだけ?あの有名なクマの、記念がたったこれだけ?

拍子抜けしつつも、案内してくれた係員のニコニコ顔に励まされ、パチパチと写真を撮る。

日本なら、きっと駅のそこらじゅう、ポスターに、看板に、クマだらけにするだろう。

パディントンチョコレートにパディントンクッキー、パディントン饅頭がキオスクに並ぶだろう。

ここはオトナの国なんだな、と何となく思った。

ありがとう、と部屋を出て振り返ると、扉の上に、さきほどは気付かなかった表示が読めた。

遺失物取扱所

なんだか嬉しくて、黒ずんだ金属のプレートをしげしげと眺めていると、失くし物をした人が、おかしな東洋人がいるよ、という顔をして、中に入っていった。

プレートの写真は、撮っていない。

paddington-statue.jpg
(私みたいなやつがよほど多かったのか、今は銅像があるらしい)



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ブックガイド | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/06/25 11:56
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