ふぇすとの話。

公園を歩いていたら、なんだか騒がしい。

観光客とシカで、いつも騒がしい場所ではあるが、いつもとは違う騒がしさである。

同行のイシザキさんと道を逸れ、様子を見に行ってみた。

テントが張り回された中に、テーブルとイスがたくさん。舞台でアコーディオンやバイオリンがブンカブンカと鳴っている。

ドイツ語の看板と、ソーセージらしい燻製のニオイ。ビールを飲ませるイベントのようだ。

イイね、ビール!

イシザキさんもイケるクチである。用件が済んだら帰りに寄ってみよう、と意見が一致した。

常に無く迅速に用件が済み、会場に足を踏み入れると、両手にビールグラスと山盛りのポテトフライを持ったオジサンとすれ違い、楽しい気分が盛り上がる。

見慣れないドイツ語の看板を出したブースの一つに近寄ってみたが、何かおかしい。

値段のケタが違う

すべてのメニューにゼロが3つついているのである。

ここでの相場はビール300mlが1000円、500mlだと1500円らしい。

小皿の食べ物も軒並み1000円以上である。

1人なら問答無用で踵を返すが、今日は連れがいる。イシザキさんの表情をうかがった。

うーむ… コレは…

どうする? せっかくだし、1杯くらい飲んでく?

1杯だけ、ね…

ビミョーな腹の探り合いをしつつ会場を経めぐるうち、パラパラと雨が落ちてきた。

あ、こりゃダメだ…

屋根のあるとこに行きましょう!

10分後、私たちはおなじみの店のおなじみのカウンターに座っていた。

ちょい飲みセット(中ジョッキと2品で600円)を前に、イシザキさんが切り出した。

高かったわネ~!1杯1000円だって!

いくら本場のビールだってねえ!ちょっとつまんだら3000円じゃない?

しかも野天で、シカにたかられながら!

参加しないイベントの悪口を言いつつ美味しくビールを飲んで、ふたりで2000円しない。

お勘定を済ませてから、

こんなに安くて、大丈夫かしらあの店…

次来たら無くなってたりして…

口々に言いあう。

高くても安くても、どっちにしろ何か言わずにはいられないオバサンたちであった。

おくとーばーふぇすと
(入場は無料だがビールは1000円)



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ごきんじょ | コメント(16) | トラックバック(0) | 2016/06/20 10:17

ちちのひ話。

世の娘や息子が父の日にかける予算は、母の日より平均して数百円低いそうである。

さらに、父の日にいくら使いますか?という質問に対する回答の第1位が

0円~何もしない

だという、悲しい結果。

かくいう私自身、生前、父の日に何かしたことはないので、偉そうには言えない。

これには理由があって、父が記念日の祝い事やプレゼント一切を

ワザとらしい

と言って、嫌がったからである。

私やイモートの誕生日祝いなどは、積極的ではないにしろ参加したが、自分に関しては

オレは要らん

の一点張りであった。

少女の頃は、よそのお父さんが、「お父さんありがとう」などといわれて目じりを下げているのを見ると、ちょっとうらやましかったりしたものだが、父の気持ちもわからんではない。

記念日のセレモニーなんて、わざとらしいものなのだ。

そんな具合で本人が拒むものだから、母の日は祝っても、父の日は忘れて過ごしてきた。

しかし不思議なもので、父が亡くなってから妙に父の日が気になる。

なんとなく、本当になんとなく、

お父さんありがとう

と箱に書かれたお菓子を買って、実家の仏壇に供えてみた。

おとーさん怒ってるかな こんなの供えられて…

母にそう言うと

フフフ…先に死ぬからよ 私も誕生日に ケーキ供えてやったわ

ハハハ…それは怒ってるだろうね!

祝ったことがないから忘れていたが、そういえば、父の誕生日も今ごろだった。

いいのよ、死人に口なし

おかーさん、それちょっと違う…。

ちちのひけーき



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2016/06/19 11:00

ぼたんの話。

駅前に用があって、ムスコと同じバスで出た。

高校生とベタベタ話すこともないので、車内では離れて座り、他人のような顔をしている。

うちからの路線は終点が私鉄の駅前バスターミナル。間もなく終点、という時

♪ぺんぽーん♪ つぎ とまります

間抜けなチャイムと録音アナウンスが響いた。

終点だというのに降車ボタンを押したやつがいる。

こうしゃぼたん

車内に、ビミョーな戸惑いの空気が広がる。

どこであれ降りる意思表示をして悪くはないのかもしれないが、停車の希望を伝える、という意味において、停まるに決まっている終点でボタンを押すのは余計である。

他の乗客は、子供だと思っているかもしれない。子供はとかくあのボタンを押したがるからだ。

しかし私には分かる。

あれはうちのムスコ(18歳)の仕業なのだ。

ムスコは乗り物マニアでもないのに、バスの降車ボタンを押すことにだけ非常に執着した。

降りるバス停が近づくと、誰かに先に押されないよう、人差し指を構えて待機している。

小さい頃から、終点では押す必要はない、と何度も諭したが、ムスコの熱意には勝てなかった。

やがてバスはターミナルに入って停車した。

先に降りたムスコが、ズボンのポケットに手を入れてボーッと待っている。近づきながら

アンタ、まだアレやってんの…

そう言うと、ムスコはフフフと笑った。



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2016/06/18 12:28

つまずく話。

どうも最近、つまずくことが多い。

おっとっと~と体勢を立て直し、転んだりはしないのだが、これは老化ではないか。

気をつけて足を上げるようにしないと、そう思ったそばから、和室の敷居でつまずいた。

うー…またつまずいちゃった~

ひとりごとのつもりだったが、隣の部屋でテレビを見ていたムスコが聞いていたらしい。

…ずきさとし…

え?何?

つまずきさとし…

ツマブキサトシ、のダジャレである。

不意を突かれたせいか、ビックリするほどおかしくて、不覚にも爆笑してしまった。

以来、テレビにツマブキ君が出るたびに

つまずきさとし… プププ…

と喜んでしまう。

ツマブキ君という人が、いかにもつまずきそう (あくまで私見です) なのがいい。

今日もCMに出ているツマブキ君を見て

つまずきさとし… プププ…

とニヤニヤしていたら、ムスコが不機嫌になった。

つまらん… 0点

何だよ0点って!だいたい、最初に言いだしたのはおめーだろう!

つまずきさとし
(「清須会議」はことのほかバカっぽくてヨカッタ)



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2016/06/17 10:25

にどづけ話。

グルメ番組の特集は、大阪の串カツ

にどづけおことわり

タレントがお決まりのように大層らしく

ソースの二度づけお断り

のハリガミを読み上げる。

既に有名すぎる注意書きだが、個人的にはこの表記には問題が残ると思っている。

揚げたてアツアツを、ソコツ者が何もつけずに一口かじり、

あっ!ソースつけるの忘れた!

と、かじり跡もナマナマしい串カツを突っ込む、そんな行為を

ソースの二度づけお断り

では防止できないではないか。

逆に、一度めのつけ具合が不足である場合、かじる前につけ足すという無害な行為が

ソースの二度づけお断り

の一言で禁じられているのも、いかがなものかと思う。

そういえば、子供がアカンボだったころ。

今頃のように暑くなりだすと、アカンボにはおむつかぶれというものが発生する。

治療のため、おむつ替えのたびに小児科でもらった軟膏をつけるのだが、場所が場所だけに不衛生になるのが心配だ。

軟膏が少なくて塗り足りない時、一度おしりに触った指をうっかり突っ込まないよう

二度づけ禁止

と、自戒を込めた注意を、軟膏の容器にマジックで書いた。

最近はめっきり油ものに弱くなったので、串カツを食べることはほとんどないが

ソースの二度づけお断り

のハリガミを目にするたびに、ついなんとなく笑ってしまう私である。



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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/06/16 10:22

きょんきょん話。

キョンキョンと知り合ったのは、5年ほど前。

ボランティアの参加者名簿に彼女の名を見つけた時は、スタッフの間で

まさかキョンキョンが…

と、驚きが広がった。

仕事もひと段落、一人暮らしで時間の余裕があるので、新しいことをやってみたいという。

彼女のような人は、団体としても初めてだったが、その意欲を買って受け入れることにした。

一緒に働いてみると、呑み込みが早くて、やる気があり、いつも前向き。

他のメンバーにも何ら遜色ない。

面と向かってはコイズミさん、と呼ぶのだが、スタッフの間では

キョンキョン、来週来れるって?

キョンキョンのシフト表どこ?


などと、愛称で呼んでいる。そのため先日、つい、面と向かって、

えっとここは…キョンキョン

と呼んでしまった。ご本人は苦笑いしながら

はーい…

とお返事してくださった。慌ててスイマセン、とお詫びすると

いいんですよ 慣れてますから… あれだけ有名になっちゃうとね…

と優しい。

こんなおばあさんで、向こうにも申し訳ないわねえ…

と、ニコニコしているキョンキョンことコイズミキョウコさんは70代

娘や孫ほどの年齢の人に混じって、テキパキ仕事をこなす、元キャリアウーマンである。

私も老後は、キョンキョンを見習って暮らしたいものだ、と常々思っている。

こいずみきょうこ50さい
(このキョンキョンではない)



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/06/15 11:11

きげんの話。

ムスメは下宿していて、うちにはあんまり寄りつかない。

就職活動も始まって、なお忙しいらしく、うんともすんとも言ってこない。

海外旅行に行ってもロクに連絡しないムスメ(→ いたりあ話。)なので、今に始まったことではないが、メールしてもなかなか返信は来ないし、電話もルスデン。

たいした用事があるわけじゃないが、ちょっとムッとしたりする。

そんなムスメだが、ごくたまーに自分から電話をかけてくる。

そろそろ寝ようかという時刻。電話のベルにびくっとして、慌てて取るとムスメの声。

あ、どーも…

なによ、こんな夜中に!

ゴメン、あのさ、ちょっと聞きたいことが…

歯切れ悪くモゴモゴしている。

昨日さ、麻婆豆腐作って… 今日も食べたけど まだ残ってて…

そりゃまた、えらく沢山作ったね

これって、明日もイケると思う?

またか!

実はムスメからかかってくる電話のほとんどが賞味期限の相談なのだ。

おとといのひき肉、まだ食べられると思う?

作り過ぎたオカラって冷凍できる?

肉を解凍したらまた残ったけど、もう一回冷凍していい?


こんなんばっかり。

それ以外の問題は、自己解決するか、頼れる友人知己に相談しているのであろう。

ただ食品の日持ちに関してだけは、私をしのぐ知識経験がある人が、ムスメの周りにはいない、ということだ。

これは親として喜ぶべきこと、なのだろうか。
しょうみきげん
(「best before」は賞味期限、 消費期限は「used by」)



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/06/14 10:13

うれしい話。

見たかった展覧会が、まもなく会期終了だと気づいて、慌てて出かけた。

電車を乗り継いで2時間ほどの大きな駅。

美術館まではバスもあるが、初めての街を歩いてみることにした。

雨模様だけれど、地方都市らしい立派な大通りの、ゆったりした歩道は気分がいい。

カサをさし、信号待ちで立っていたら、なにやらワーワーいう声が聞こえてきた。

目の前の車道のワゴン車、その後部座席の窓が開いて、かわいいボーズ頭がふたつ。

小学生くらいの兄弟が、とても嬉しそうに手を振っている。

とっさに周囲を見回したが、彼らの視線の先には私1人だけ。

ここは初めての街で、知り合いもない。

それに、知人にも親戚にも、あの年齢の男の子供はいないはずだ。

ボーズたち、どうやら人違いをしているな、とピンと来た。

友達のお母さんか、学校の先生か、それともおばあちゃんか。私に似たオバサンを、見つけた!と思ったのだろう。

知らん顔しようかな、とも思ったが、ボーズたちがあまりにも嬉しそうなので、ついつられて、顔の横でヒラヒラと手を振ってしまった。

信号が変わって、ワゴン車は発進し、私もカサを持ち直して横断歩道を渡る。

人違いだけど、私に似た誰かが、あのボーズたちにとって、会って嬉しい人なんだな、と思うと、私もうれしかった。

お城が大きく見え始めて、美術館はすぐそこだ。

わかやまけんりつきんだいびじゅつかん



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/06/13 10:27

せっとく話。

明日は燃えるゴミ

今回は、めずらしくムスコが部屋の整理をしたので、正体不明のゴミがいっぱいある。

私はマジメで気が小さいので、分別基準を無視するような行動は、どうしてもできない。

どのゴミで出すか調べるため、市から配られたゴミ事典なる冊子をひっぱりだした。

家庭から出る可能性のある、あらゆるゴミの分類が掲載されている。

たとえばカツラは燃えるゴミ。

シップも燃えるゴミだけど、裏からはがしたフィルムはプラスチックごみ。

仏壇は収集不可。

ボウリングのボールは粗大ゴミ。

やすりは燃えないゴミ。

これだけ網羅されているというのに、ムスコのゴミは、どれもこれも載っていない。

そもそも名前も分からないものを事典で調べるって無理なのだ。

なんだかわからないが金属っぽくて重いので燃えないゴミ。

なんだかわからないが透明で軽いのでプラスチックゴミ。

その程度の根拠で分けていくしかない。

中でも困るのは複合タイプのゴミである。

ベニヤ板にガムテープでネジだのキャップだの貼りつけた物体や、ペットボトルに丸めた紙やアルミホイルをギッチリ詰め込んだ物体は、いったい何に分別するべきなのか。

迷い過ぎて頭がクラクラしてきたが、なんとかしなければ我が家はゴミ屋敷に一直線である。

思い余って、燃えるであろう、と思われる物品に説得を試みた。

アンタは燃えにくいかもしれないけど、焼却炉に行ったらガンバッて燃えなさい ワカッタね!

そう言い聞かせ、ゴミ袋に入れる。

はたしてゴミに説得が効くものか、まったく自信はないが、万やむを得ない。

ビクビクしながら明日の回収日を待つ私である。

ごみあぷり
(最近はゴミ分別のアプリがあるらしい)



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/06/12 12:04

まほうの話。

あ、日傘忘れた!

職場から派遣されたセミナーの帰り、駅の改札を出て気がついた。

アラ大変、スグ電話したほうがいいわよ!

あー、でも、あそこは主催者と施設管理が別だから、忘れ物すると出てこないのよね~

同行者は口々に慰めてくれるが、私には見つかる自信があった。

なにしろあれは、魔法の日傘

どんな状況で、どこに忘れてきても、必ず帰ってくる、魔法の日傘なのだ。

通勤ラッシュの地下鉄の網棚でも。

子供連れで大混雑の休日のフードコートでも。

忘れたのに気づかず数日経って、座席番号も分からなくなった映画館でも。

日傘は必ず見つかった。

特に珍しい品物ではない。そもそもは、おばーちゃんが使っていたが

私はもっといいの買ったから

という理由でお下げ渡しになったシロモノ。実用一点張で、キライではないが、好きでもない。

本当はもっとステキなのを自分で選んで買いたい、と何年も前から思っているのである。

何度もなくしては出てくるを繰り返し、さすがにくたびれてきたので、そろそろ新調したいが、なにしろなくならないし、壊れないので、どうしようもない。

もう電話もせず、放置してやろうか、などと悪い考えが頭に浮かぶ。

あれが戻ってこなければ、新しい日傘が買えるじゃないか。そうだ、そうしよう。

数日たったある日、イナガキさんが、汗をふきふき事務所に入ってきた。

あー、暑い… 今日あの会館に行ったらさ、どなたか忘れ物ですよって… これ誰の?

その手には、見よ、例の日傘。

やはり魔法は魔法なのであった。

ひがさをさす
Claude Monet (1840-1926)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/06/11 10:50
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