てんしょく話。

掃除はキライだが片付けは好きである。

二つを混同している人がたまにいるが、掃除とはゴミやホコリを取り除くこと、片付けは使ったものをもとに戻すことであり、両者は全然違う行為である。

私はホコリはさほど気にならないのだが、モノがちゃんと並んでないとキモチが悪いのだ。

アルバム整理が苦にならない(→ あるばむ話。)のも、そのせいだと思う。

昔、塾の講師のバイトをしていた時のこと。

そこは、もともと大学生が集まって立ち上げた私塾で、講師も学生気分が抜けず、サークルのような雰囲気が漂っていた。

みんな塾を部室か何かと勘違いしていて、私物は持ち込む、郵便物は開封しない、生徒の成績簿は山積みで、要するに無秩序に散らかっている。

こんな環境で、真に知的な人材が育つワケがないと思った私は、生徒のデータを一覧性のあるファイルに入れるなど、整理整頓に励んだ。

おかげで事務所は片付いたが、生徒の指導をそっちのけにしたものだから、バイトはクビである。

経済的には困ったことになったが、やりたいことがやれて私は満足だった。

こういうことだけの仕事はないものかと考えて、思い当たったのがミスレモンである。

アガサ クリスティーの創作した名探偵、エルキュール ポアロの秘書である彼女は、「完璧な機械」と呼ばれ、信頼を得ている。

彼女の有能さは、ミスのないタイピング、顧客に関する詳細な記憶力などさまざまだが、特筆すべきはシステマティックなファイリングの能力である。

ミスレモンは、私立探偵として多数の顧客を抱えるポアロの、事件に関するデータを、完璧にファイリングしているらしい。

大量の資料を思う存分ファイリングし、その結果を高く評価されるなんて、なんてスバラシイ仕事だろう。

きっと私の天職だと思う。

残念ながら名探偵にお知り合いのない私は、生まれ変わったらミスレモンになりたい、と願うしかないのであった。

みすれもん

(ミスレモンの活躍するお話→「名探偵ポワロ完全版 ヒッコリー・ロードの殺人」



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もろもろ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2016/08/21 11:09

あるばむ話。

ママ友のカガさんは、大変な美人だが片付けが苦手で、いわゆる汚部屋の住人であった(→ おへやの話。)が、それを苦にせず、気楽にお招きくださるので、よく遊びに行った。

積み重なったモノの合間でお茶を飲んでいると、ふとカガさんが言った。

写真が出てこなくってさ~

聞けば、3人のお子さんが生まれてから今日まで、撮った写真をぜんぶ、段ボールに放り込んでいるのだという。

え?アルバムには入れてるんでしょ?

写真屋のミニアルバムに入ってるの、ある…

「も」ということは…

フィルムのカメラで撮った写真は、DPEに出すと、ネガフィルムと一緒に紙の封筒に入れて戻ってきた。カガさんちの写真は、大半がその袋のままだというのである。

一番上のお兄ちゃんがもう中学生だから、12年分の家族写真が、未整理で箱に入っているわけだ。

私は思わず知らず、ブルブルと震えた。

あのさ、それ、アルバムに入れない?アタシ、やってあげる

は?

カガさんは驚いている。

そりゃそうだろう。人んちのアルバムを貼るなんて、どうかしている。

しかし、未整理の写真がそんなにあると聞くと、どうしても我慢できなかった。

あれよあれよと話がまとまり、写真が詰まった段ボール3箱と、新しく買ったポケットアルバム2ダースが、うちにやってきた。

箱を開けてみると、園や学校で購入した、集合写真や行事の写真も、封筒に入ったままである。

基本的に、古いものから新しいものの順に重なっているようだが、時々取り出して眺めたりもしていたのか、地層の変動が起きて順序が狂っている。

予想以上の混沌状態を前に、腕を組んでしばらく考えた私は、やおら白い紙に罫線を引いた。

カガさん一家の年表を作るのである。

3人の子供の年齢、学年、入園入学、卒業など、めぼしい行事を書き込む。わからないことがあると、電話で問い合わせた。

奥多摩にキャンプに行ったのはいつ?

マリちゃんが発表会で黄色いドレスを着たのは何年生?

お兄ちゃんのオタフクカゼは何歳のとき?


年表は書き込みで次第に黒くなっていく。アルバムは、2ダースでは足りず買い足した。

順序正しく写真を差し込んだアルバムの背には、一つ一つ日付を入れ、段ボールに戻す。

キチンと並んだアルバムの上に、書き込んだ年表をのせて、フタをしたときの爽快な気分は忘れられない。

あんな仕事ならいくらでもやりたいが、残念ながらデジタルデータの時代となってしまった今、私の出番はもはや無いのであった。

むかしのあるばむ
(昔のアルバムはもっと大変)



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ごきんじょ | コメント(18) | トラックバック(0) | 2016/08/20 11:34

せんたく話。

洗濯物の量が増える季節。

今の時期は湿度も高いので、洗濯機のカビ取りを頻繁にせねばならない。

専用のカビ取り剤を入れて1サイクル運転する。

いわば洗濯機の洗濯である。

考えてみればなんだか妙なものだ。

洗濯機という、洗濯を業務とする機械でありながら、自分自身をキレイにすることはない。

あ、洗濯機洗ってやらなきゃ

と、誰かが思いつかない限り、洗濯機はどんどん汚れていき、自分はバッチいまま、他のものをキレイにしようとする。

例えば、全身ドロドロに汚れた人が、他の人に向かって

もしもし、お背中流しましょう

とニコニコ呼びかけていたら、

まずテメエがなんとかしろ!

と言いたくなるだろう、そんな感じ。

洗濯機には、まず自分をキレイにする機能がついてないとダメなんじゃないだろうか。

同じことが掃除機にも言える。

掃除機の掃除は、あれを外しこれを取り換え、実にめんどくさくてキタナい作業だ。

技術の進歩は甚だしいのに、掃除機に自浄機能が無いのは解せない。

最近はお掃除機能のあるエアコンなどというものが出ているようだが、私に言わせりゃ余計なことである。

エアコンはそもそも空調する機械なのだから、お掃除にまで手を出さなくてもよろしい。

それよりお掃除する機械である掃除機に、お掃除機能がついてないのはどういうことなのか。

本末転倒も甚だしい。

家電業界にモノ申したいことをあれこれ考えていたら、洗濯機の洗濯が終わった。

身体を投げ入れるようにして、洗濯槽の中をゾーキンで拭く。

そういえば、いつぞや中国で洗濯機にはさまる事故があったな(→ はさまる話。)などと思い出し、フフンと笑ったら、反響した笑い声が耳に帰ってきた。

かびおちーる
(「おちーる」って何だ「おちーる」って)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/08/19 10:34

あとりえ話。

引っ越してきたとき、今度はぜったい自分の部屋が欲しいと思っていた。

世の家庭には、子供の部屋はあっても、母親の部屋はないことが多い。

テーブルで何かしていても、子供が帰ればオヤツだ、ご飯だ、と中途で片付けねばならない。

読みかけの本や、裁断途中の布、難しいところにさしかかった編み物を、広げたままにしておけたら、どんなにいいだろう。

この家では私が家長なんだから、思い通りにしていいんだと思うと、本当に嬉しかった。

窓が大きく収納がたっぷりある、家で一番いい部屋をアトリエと呼んで、最初に確保した。

自分の本だけが並ぶ本棚と、大きな作業台。クローゼットには整理された材料や道具。

新生活への希望とともに、が広がる。

壁際に本棚を入れ、趣味のものをざっとしまったまでは良かった。

しかし実際生活が始まってみると、仕事や家事に追われ、なかなか趣味には没頭できない。

あるとき来客があり、リビングルームを片付けて、どかしたものをアトリエに置いた。

年末には、お取り寄せの発泡スチロールの空箱を、ちょっとアトリエに置いた。

ふだん見えないところに、仮置き場所があるのはとても便利で、慣れるとやめられない。

先日は、箱でまとめ買いした飲み物が、玄関に届いたので、ムスコを呼んだ。

これ、アトリエに運んでくれる?

と頼んだら、ムスコは面食らった様子で

アトリエ?…

としばらく考えたあと、

ああ、納戸のことか!

と言いやがった。

カール・ラーション 「アトリエの中」
(私の理想 画家カール ラーションのアトリエ)



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もろもろ | コメント(11) | トラックバック(0) | 2016/08/18 10:33

げせない話。

その日、スーパーの売り場で、私は悩んでいた。

アイスコーヒー無糖 118円

アイスコーヒー微糖  98円


同じメーカー、同じ容量のアイスコーヒーに、なぜか20円もの価格差がある。

さらに解せないのは、砂糖が入っているほうが安いことである。

おさじ一杯の砂糖だってタダではない。

それが入っているほうが安くて、無いほうが高いってどういうことなのだ。

仕入れがこうだとか需要がああだとか、流通の諸事情はこの際どうでもいい

私は感覚の問題を言っているのである。

そもそも、無糖と微糖と加糖が全部同じ値段なのだって、本当は気持ちが悪いのだ。

たとえ一円ずつの差でもいいから、無糖<微糖<加糖となっていたら、どんなにか気分がいいだろう。

しかし売り場でそんなことを言ったところで、詮ないことである。

タメイキを一つついて、安いほうの微糖をカゴに入れる。でも、本当は無糖が欲しかったのだ。

貧乏とは悲しいものである。

悲しみを抱えてビール売り場に回るが、ここでも平穏は訪れない。

なぜ、カロリーオフのビールが、カロリーのあるビールより高いのか。

さらになぜ、ノンアルコールビールが、飲めば酔っぱらうビールより高いのか。

売り場に立ち尽くす私の、千々に乱れる心に、気づく者はないのであった。

かとうびとうむとう
(ムトウビトウカトウ、と打つと、武藤尾藤加藤、となるのはちょっと面白い)




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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2016/08/17 10:45

ぱりーの話。

お盆なので、故人の話を。

私の手元に、灰皿がひとつある。

母方の祖父が手元に置いて、クリップだの輪ゴムだの入れて使っていたものを、田舎の家が取り壊される前に取ってきた。

白い磁器の皿の底には、線画のパリの街並みと、Hotel George Ⅴ の文字。

そう、パリのホテルの灰皿なのだ。

身内の恥を申し上げるが、その昔、わが祖父がドロボーして持ち帰ったものなのである。

日本人の海外旅行が盛んになったころ、ジャパン、ノーキョー、ジャルパックなどと揶揄されつつ、世界を席巻した観光団の中に、わが祖父母もいた。

新し物好きの祖父がアチコチ行きたがり、祖母はシブシブ世話係として随行したらしい。明治男の祖父は、箸をとってご飯を食べるにも、パンツを穿き替えるにも、祖母の手を借りねばならない人だった。

ワイキキビーチに行ってもロマンチック街道に行っても、祖母は祖父の面倒を見るのに忙殺され、観光気分は皆無だったようだ。

それが証拠に、孫の私たちにお土産を配ったり、写真を自慢げに見せるのはいつも祖父で、祖母はその横で、苦虫を噛み潰したような顔。

盗ってきた灰皿についても

あんなもん、タダのつもりで、どうせホテルの勘定につけられてるねん…

と、吐き捨てるように言っていた。

祖父が買いまくったお土産も、盗った灰皿も、割れぬよう荷造りするのは祖母の役目。

荷物も外貨も制限のある中、自分のものはほとんど買えなかったと思う。

ある日、祖母と母と都心のデパートに行った時、祖母が、柔らかそうないい靴を履いていた。

なんともいえない複雑な栗色の革靴で、つま先の丸みがとてもかわいらしい。

子供の目にもとてもいいものだということが分かった。

おばあちゃんのクツ、かわいいね!

そう褒めると、いつも難しい顔の祖母の表情がゆるみ

そうやろ パリーで買うたやつやさかいな

見る間にめためたと笑顔になった。

なんでも日本から履いていった靴が合わず、シャンゼリゼ通りの店で求めたものだという。

ブツブツ言いながら祖父の後をついてまわっただけの旅でも、花の都パリの印象は祖母の心に深く沈み、いつしか美しい思い出になっていたのだろう。

祖母が亡くなって、もう10年になる。

ぱりじょるじゅさんく
(50年前のパリ・ジョルジュサンク)


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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/08/16 11:03

ネコマル本。

アンタまた大きくなったんじゃないの?

ひょろ長い体を曲げて顔を洗っていたムスコが、身体を起こしたのを見て、ギョッとした。

うーん、そうかもしれん…

迷惑顔をするのを押しとどめ、背中側から近づくと、こないだまでムスコの肩についていた私の鼻の頭が、肩甲骨辺りまでしかない。

50代の私が急激に縮むはずもないから、これはムスコの背が伸びたと考えるべきであろう。

奥手で小柄だったムスコの背がヒョロヒョロと伸び始めたのは高校に入ってからである。

あっという間に母を越し姉を越し

オレ教室で立つとビックリされるんだよね…

と言ったのは高2の時だったか。

丸顔で小柄な印象なのに、立ち上がると意外に背が高いので、先生がたに驚かれるというのだ。

傍で見ていると、幼稚園の時のままの童顔がそのままに、位置だけがだんだんせり上がっていくので、非常に不思議である。

高3でまだ伸びるとは、どこまで行くのかねえ…

もう伸びなくてもいいのになあ… キャラに合わねえし…

インドア派で、読書が好きで、友達が少ないムスコのキャラクターは、確かに細身で小柄なほうが似合うかもしれない。

イメージとしては猫丸先輩である。

ねこまるせんぱい

「猫丸先輩の空論」 講談社文庫

このカヴァーのイラストはムスコに非常によく似ている。

高慢とコンプレックスと怠惰とヘリクツを一つにまとめたような人柄もそっくりだ。

ただ、この顔が180センチの身体にくっついているところが猫丸先輩と違う点である。

先日の法事で実家に行った時は、仏間の鴨居に頭をぶつけていた。

あらあら… おじーちゃんより大きくなっちゃったのねえ…

おばーちゃんがちょっと寂しそうなのは、自分の知ってるかわいいボクが、もういなくなったと実感したからだろう。

言われたムスコは、痛いおでこを撫でながら

なんかゴメン…

と、なぜか謝っていた。



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ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/08/15 10:15

もうける話。

お盆なので、お寺様に来ていただく。

お忙しい時だからか、午前中には…というフンワリしたお約束なので、家族で集まって待つ。

集まるといっても、母が一人暮らしする実家に、私とムスメとムスコ、3人が合流するだけの、こじんまりした法事だ。

9時に私とムスコが到着、10時にはムスメも下宿からやってきた。

身内のこととはいえ法事だから、ネマキでひっくり返って待つわけにもいかず、なんとなく居心地の悪い時間。

まだかなあ…

そろそろかなあ…

などと言いあううち、3回忌の話になる。( → ぼうずの話。

あん時はドキドキしたよォ~

そこにお坊さんがいるのに、おばーちゃんが「ボーズ憎けりゃ…」って言いかけた時ね!

言いませんよ!いくらなんでも…

いや、アレは危なかった!

などと言いあっていると、仏間に人の気配がした。

ハッとして立って行ってみると、お仏壇の前にすでにお坊様が座っておられる。

すみません!気がつきませんで!

慌てておばーちゃんはお布施とお茶、お菓子をのせたお盆を取りに引っ込む。

確か前にもこういうことがあったが、お坊様はインターフォンを鳴らさず、直に門を開け、玄関を入ってこられる。

お寺との付き合いが浅いのでわからないのだが、こういうものなのだろうか。

限られた時期にたくさんの檀家を回るのに、いちいち応対を待っていられない、ということかと思うが、入ってこられる方は相当ギョッとする。

しかも今回はボーズ憎けりゃケサまで憎いなどと連呼していた最中である。

年忌よりもだいぶんと略式のお経を早口で読み上げた後、お茶には口をつけただけ、お菓子は懐にして、お坊様は席を立たれた。所要時間、3分弱

お布施がセカンドバッグ(地味だけどブランド物)にしまい込まれる様子を、おばーちゃんが、ミョーにしげしげと見ている。

マズい!今度はアレを言うんじゃないか?

心なしか、ムスメもムスコもモゾモゾしている。

お坊様がゾウリを履いて玄関を出、高級車に乗り込まれるのを見送ってから、

いやー、今度はアレ言うかと思ってドキドキしたわァ!

あ、やっぱり?アタシも~

オレも、ちょっと思った…

3人で言い合っていると、おばーちゃんが不興気に

アレって何よ?

と聞く。

ボーズ丸もうけ!

珍しく、ムスメとムスコと、3人で声を合わせてしまった。

なすのうしときゅうりのうま
(こういうの楽しそうだけどやったことがない)



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/08/14 10:39

めだるの話。

おばーちゃんが電話で、網戸が開けにくいというので、実家に様子を見に行った。

キチンとレールにはまっていなかったので、いったん外す。ついでに他の窓のも外して、庭のホースで水をかけた。

洗った網戸をもう一度はめて、開け閉めしてみるとカラカラと軽く動く。よしよし。

汗を拭きながら茶の間に入ったら、テレビを見ていたおばーちゃんが、つと立って冷えた麦茶をコップについでくれた。

動くようになったよ ついでに洗っといた

ありがと ご苦労さま 助かったわ

あれ、珍しい オリンピックなんか見てる

金メダルだからさ…

りおごりんきんめだる

テレビの画面は、選手のお母さんの、感激の表情のクローズアップに変わる。

嬉しいだろうね わが子が世界一になって…

そういうおばーちゃんの顔が、なんだかとてもうらやましそうで、つい言った。

アタシは金メダルとれなくて、ゴメンね

むろん冗談だ。

今も昔も、運動音痴のわが一族に、メダルやトロフィーは無縁である。

運動会にしろ学芸会にしろ、おかーさんには晴れがましい思い、させたことないね

ハハハ… いいよう、そんなの!だいたいアンタ、おじーちゃんと私の子だよ、無理無理!

笑い飛ばして、おばーちゃんは麦茶を一口飲み

だいいち、そんな偉い娘だったら、網戸外れたからって電話できないよ…

ハハハ… そりゃそうだ…

露のついたコップの中で、氷がカラン、と音を立てた。



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/08/13 10:31

かみきる話。

ムスコがパソコンの画面を見ながら前髪をいじっている。

ほら、また!早くサンパツに行け!

うーん… でもなあ…

渋っている場合ではない。既にヤツのアタマはむさくるしいを通り越しているのである。

この風体で日暮れ時にウロウロしたら、不審者通報されかねない。

小さい頃、ムスコは近所の理髪店に行っていた。

お任せで座れば、オジサンがサッパリと坊ちゃん刈りにしてくれる。

それがいつの頃からかオジサンの店に行きたがらなくなったので理由を聞いたら

刈り上げがイヤだ…

確かに、昔気質のオジサンにお任せすると、後頭部は遠浅の海岸のごとき見事な刈り上げになる。

それから駅前の千円カットに行くようになった。

安くて早くて家計は助かるのだが、最近になってまたそこにも不満が生じ始めたらしい。

いわゆる洒落っ気が出るというやつである。

本人は死んでも認めないだろうが、かっこよくなりたいのだ。

オッサンとコドモに交じって、千円カットで切っていては、なりたい自分になれない。

ここはどうしても美容院とかそういうところに行って、希望の髪型を伝えねばならない。

しかしそれは、洋服屋で着たい服を指すのも苦手なムスコにとって、ものすごくハズカシイことなのだ。

アタシの行ってるとこに「ムスコをよろしく!」って電話してやろうか? 

やめてくれ

じゃあさ、ほら、ああいうのは?ナントカビューティーってネット予約…

あー無理!ナントカビューティーの名簿にオレの名前が載るかと思うと…

さすが私のムスコだけあって、いろいろとメンドクサイ男である。

こうしているうちに、無情にもムスコの髪はまた伸びていく。

心はかっこよさを求めつつ、現実はどんどんむさくるしくなるこの矛盾、青春のジレンマと呼ばずしてなんとしよう。

ほっとぺっぱーびゅーてぃー
(そのポチッができれば苦労しないのよ)



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/08/12 10:18
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