うはうは話。

お友だちの発表会を見に、お城のある古い町に出かけた。

地方の箱モノでありがちなことだが、そのホールは、町はずれの田畑の中に、忽然と建っていた。

周囲に建物らしい建物が無いので、アレがソレだとすぐわかるが、見つけてからが長い。

あぜ道に毛が生えた程度の、かろうじて舗装された道路を、とぼとぼ歩く。

道の両側は刈り入れの終わった田んぼばかりの、単調な景色。

田んぼと同じ四角い区画に水を溜めた、ため池にさしかかったので、なんとなく覗き込むと、小さいモノが私の影に驚いて、ぴちぴちと跳ねた。

金魚。

そう、ここは金魚の町なのだ。

よく見れば、ため池の周囲にはノラネコ対策の針金も張られている。

和金というのだろうか、ただ赤くて、誰もが考えるサカナの形をしたやつが、うじゃうじゃいる。

こんな野天で飼われていることからも、単価の安い、おそらくは金魚すくい用の金魚だろう。

安物でも、泳ぐ魚を見るのは楽しいものだ。開始まではまだ間があるし、通る人もない。路傍にしゃがみ込んで、じっと水面を眺めた。

どれくらいそうしていたのか、ふと気配を感じて目を上げると、そこに白いヤツがいた。

シラサギである。

長い脚を水につけてゆるゆる歩く姿は優雅そのものだが、ヤツの目的は優雅とは程遠かった。

目にもとまらぬ速さで菜箸のようなクチバシを繰り出し、何かをつまみだす。

コイツ、金魚を!

その速度たるや金魚すくいの比ではない。金魚どもはなすすべもなく、次から次へと食われていく。

我に返ってガバと立ち上がると、ヤツはこっちをチラリと見てから、おもむろにわっさわっさ羽ばたき、悠々と飛んで行った。

それまで私は、鳥類というものは、比較的表情乏しいものであると思っていたが、あの時のシラサギの

ワハハハ… 大漁だぜえ!

というウハウハ顔で、まったく認識を改めた。

それにしても、金魚なんてマズいだろうと思うが、鳥の味覚はわからない。

しらさぎ
(こうして見ると目がコワいね)




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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/01/20 10:30
コメント
見つけてからが長い
近くて遠きは田舎の道。

鳥類の表情。
考えてこともなかったなぁ。
表情を作り出すには表情筋が必要ですが、多分鳥類には殆どないのでしょうね。

だから鳥に表情がないのかというとそうとも言い切れないようです。
生き物の根源的な欲求であり食欲が満たされたときは絶対に何かの変化が起るはずです。

そしてその変化は絶対に表面に出てきます。
その瞬間をぢょん でんばあ様は見たわけだ。

「うはうは顔したっていいじゃないか
とりだっていきものだもの」

ドヤっ!
No title
今日もきんぎょですね。
毎日シラサギに食べられているんでしょうね、
餌場にしているのかも。
それでも全部は食べきれないのでしょうね。
No title
こんにちは。
息子が小学生の時、友達が観察池の金魚を釣って、
カッターで3枚に開いてお刺身で食べたことがあるようです。
味の感想は聞いていませんが、あれっきり 食べて無いようなので、
少なくとも生食には向かないのかな(笑)
ちなみに彼は 食中毒に陥ることもなく 元気で大きくなりました。
面白いお話に感謝
>金魚の町

もしかして大和郡山ですか?
…俺は行ったことないけど。
Re: 見つけてからが長い
rockin'様

>「うはうは顔したっていいじゃないか
>とりだっていきものだもの」

スバラシイ!ぜひ、色紙に、カレンダーにしてください。

ご不浄に貼りたいと思います。
Re: No title
Carlos様

昨日金魚の話を描いたので思い出しました。

だいたい一つ書いてるときに次を思いつくのです。

だいぶん前の話ですので、もうあの池もないかも知れません。
Re: No title
メカ沢様

スゴイ!さすがメカ沢さんのご子息、野性的ですね。

うちの娘は一時木に実が生っていると片っ端から口に入れる癖がありました。

まずい思いもしたようですが、お腹の強い子でよかったです。
Re: 面白いお話に感謝
オレガノフ44号様

そうです。大和郡山。

一応県民なんで…。

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