たりらり話。

その頃、私には怖い場所があった。

軒下にプランター代わりのスチロールの魚箱が並ぶ、ありふれた下町の通り。

他の季節には通り過ぎてしまう道が、春先の今ごろだけ恐怖の巷と化す原因は、だった。

ヒガンバナから儚さを引いて、バタ臭さを足したような花が、その通りに並ぶのだ。

太い茎に突き出した真っ赤な花は、険しい顔で首を伸ばし、こちらを見ている気がした。

おまけに通りの住人は、みんな園芸好きで仲良しらしく、花は株分けされて、年々増えていく。

軒先を伝って花がジワジワ広がっていくのは、宇宙人の侵略みたいだった。

その花が咲きだすと、なるたけそこを避け、どうしても通らねばならぬ時は、全力で走り抜ける。

心楽しい新学期に、このことだけが憂鬱だった。

学校でリコーダーを習い始めたのはその頃だったと思う。

♪ ソ ラ ソ ド ソ ラ ソ~ ラ ラ ソ ラ ソファ ミレ ミ~ド~ ♪

思った通りの音が出ると、優しいメロディーがたのしい。

教科書の楽譜には、歌詞もついている。

♪ ら り ら り ら り ら~ し ら べ は アマリリス~ ♪

アマリリスって、かわいい名前だけど、何だろう?図書室で図鑑を調べると

あまりりす

それはあの、怖い花だった。

私ももう大人だから、花を見て怖気づいたりはしない。

でも、この迫力十分の赤い花には、アマリリスなんてかわいい名前も、らりらりら~と優しい歌も、全然似つかわしくないと、今でもそう思っている。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



スポンサーサイト
むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/04/08 11:40
コメント
No title
アマリリス…。小5のリコーダーのテスト、アマリリスだった。なんと!ミス無しで吹けた!先生にも褒められた!数少ない褒められ話、失礼しました。愛らしい曲とはアンバランスな花ですねぇ。南国的、威圧感半端ない。
No title
こんにちは
ぢょん・でんばあさんにも怖いものがあったんですか~
アマリリスって今頃の花でしたっけ?
No title
こんにちは
懐かしい曲です。
実は私の家にもアマリリスあります。
ダイナミックな大きい花が咲きます。
そう怖いぐらい大きいお花が。
いつもこの曲を歌っています(#^.^#)
この花が群生していると不気味かもしれませんね。
Re: No title
アネモネ様

アネモネの花は優しく繊細ですね。

アネモネ様のイメージと重ねています。
Re: No title
Carlos様

どうなんでしょうね。春先のイメージなんですが、園芸には詳しくないので、違うかも…。
Re: No title
いとこいさん様

ドンと迫力のある花ですよね。

今なら魅力も分かる気がしますが、子供の頃はただ怖かったです
アマリリスと
彼岸花はちょっと違うみたいですね。
お仲間はお仲間だけど。

私も嫁さんも彼岸花は怖い存在です。
なぜだろう?
Re: アマリリスと
rockin'様

ヒガンバナも怖いですよね。

和風の怖さというか、幽霊の怖さです。

管理者のみに表示