かなしい話。

毎年この時期がめぐってくるたび、思い出すことがある。

私はバブル期のイケイケOL(死語)であった。給料はよかったが、使うほうも派手で、しかも仕事は死ぬほど忙しい。

年末の今頃は残業に次ぐ残業。

そして残業と並ぶ年末の名物は「ノルマ協力」である。

取引先の営業さんの年末の販売ノルマを購入して助けてあげる。お歳暮、年賀はがき、おせち料理、どさくさに紛れて指輪や着物まで売りに来る。

カタログが回ってきて名前を書き、注文するのだが、リアルに目が回るほど忙しくて、頼まれるままに何を注文したかも忘れていたある年。

残業でくたくたに疲れて更衣室に行くと、私のロッカーの前にクリスマスケーキが3箱。ご丁寧に全部違うお店の、ホールのクリスマスケーキ。

瞬間、泣くかと思った。だって独身寮に住んでたんだよ!

フラフラになりながら3つのケーキボックスを女子寮に持ち帰り、隣室のドアをたたいた。

ねえ、ケーキ食べてくれない?

バカだね、あたしらだってノルマ協力あるんだよ!

その部屋には4人が集まっていて、すでにホールのケーキが6個あった。

2個持って帰った子は他にもいたが、3個も買ったバカは私だけ。

見てたって無くならないや、せっかくだからクリスマスっぽくしようと、部屋の電気を消し、ついていたロウソクに火を点けると、ミッションスクール出身の子が賛美歌を歌いだした。

並んだ9個のケーキはやっぱり壮観で豪華。えらいものでバブルOLたちのイケイケの血が騒ぎだし、楽しいような気がしてきた。

ロウソクの火は揺らめき、ミッション女は賛美歌を歌い続ける。

ねえ、お誕生日みたいにロウソクを吹き消さない?

いいねー!じゃあ行くよ!メリークリスマス

当たり前のことだが、部屋は真っ暗になった

イヴの真夜中、真っ暗の部屋、5人のOL、9個のケーキ。

誰が立って電気を点けに行ったのか、ケーキはどうなったのか、もう思い出せない。

後にも先にもあの年だけの、おもろ悲しいクリスマスであった。

クリスマスなので、に統一してみました
スポンサーサイト
むかしむかし | コメント(0) | トラックバック(0) | 2013/12/22 20:23
コメント

管理者のみに表示