なかいの話。

北陸新幹線開業のおかげもあって、宿の予約がなかなか大変だったようだ。

やっととれたのは、街の中心から少し離れた、山あいの温泉地の小さな旅館。

夕刻に到着すると、年を経た仲居のオババが私たちを出迎えた。

いらっしゃいませ~ お荷物お持ちします~

そう言って持った荷物は、姪っ子のかわいいバッグ一つだけ。

着替えでパンパンのおばーちゃんのボストンバッグや、どうしても荷物を減らせないイモートの、ずっしり重いキャスターバッグは、ロビーに置きっぱである。

こちらのお部屋です~

かわいいピンクのバッグを持って、オババはずろずろと歩き出す。

イモートのダンナがトイレに行ったままだが、迷子になることもなかろうと、めいめいの荷物は自分で持って、オババを追尾した。

こちらウナギの間、こちらナマズの間です~ お3人ずつお入りください~

イモートが慌てて

あの、3人と4人、7人で予約してるんですけど~

と言うと、オババは急に活気づいて、

アラ大変!フロントに聞いてきます

姪っ子のバッグをポイと置くと、別人のような素早さで雲を霞と居なくなってしまった。

その場に置き去りにされた私たちは、開いていたウナギの間に入ることにした。

やがてイモートのダンナも自力でたどりついたが、オババが戻る気配はない。

お茶セット

備付のお茶セットでお茶を淹れ、テレビを点けてくつろいでいると、すっかり忘れた頃に、ヨロヨロと再びオババが現れた。

すみませんでした~ ナマズの間のほうに~ お布団4つ敷きますので~ 

言いながらオババは卓上に目をやり

アラ~ お茶も淹れていただいて~ すみませんでした~

一応反省してみせたが、もう飲んじゃったよーだ。

お夕飯は7時にロビーにお越しください~ ご案内しますので~

どのお部屋かを聞いたが、

私がご案内しますので~

の一点張りで、なぜか頑として教えない。仕方なく7時にロビーに行くと、オババがいて、

こちらです~

案内したのは、5段の階段を上がった奥の食堂だった。移動距離は、約7メートル

到着以降のオババの仕事といえば、小っちゃいカバンを持ったこと、部屋とフロントをカラ手で往復したこと、7メートルのご案内だけである。

ババアになったらここで働こうかしらと思った。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2015/04/08 08:04
コメント
No title
おはようございます。
あらら、着いた早々、面白いですね。
のんびりすた感じが伝わります。
しかしこれから、姪っ子さんが計画した通り、
行動するんですね。
どうなるか楽しみです。
No title
こんばんは~

面白くて、面白くて…続きが楽しみです。
私も、その仲居さんのオババの様な歳なんだろうか???
何となく、歳を取るとそうなりそうで、私もそうしそう…(笑)
Re: No title
Carlos様

なんだかのんびりしていてやる気のない宿で、おもしろかったです。

旅館の名誉のため申し添えますが、お風呂や食事はとってもよかったんですよ。

姪っ子の立てた予定…さあ、どうなりますか?
Re: No title
ヒノリッチ様

いやー、ヒノリッチ様などお若いお若い。あのオババは「後期高齢者をいつ通り越したか、思い出せません」という感じでしたよ。

あの年齢で働こうというその意気やよし、じゃございませんか。
No title
ひなびた温泉宿の仲居さんてチョット憧れでした。
もし、うらぶれて訳ありになり行く所がなくなったら
温泉宿の住み込みの仲居さんになるのもいいな〜
と妄想していました。
でも、それもきっと40代前半くらいまでしか採用されないだろうな〜
と考えていたのですが、ババアになっても雇ってもらえるでしょうか?

なんか、初コメなのに人生相談のようになってしまいました。
求人情報ならびに採用の詳細をゲットされましたら
私にも教えてください★
中居さんの
パフォーマンスの悪さはいずれ、旅館内部の改善会議の議題にあがることでしょう。
そして当該タイプの仲居さんは排除されます。

よってババアになってからの再就職は残念ながら無理です。
潔く諦めて下さい。
Re: No title
さとちん様

人生この年から「訳あり」になるのは、普通に暮らすより難しそうですね。

男で身を誤る…とか、もうありえないし。

でも、さとちん様となら、楽しく働けそうです。一緒にお布団を敷きましょう。
Re: 中居さんの
rockin'様

さすが、会議のプロ、rockin'様!

しかし、あの旅館、そもそも会議なんかやってないと思います。

オババ以外のツッコミどころもいっぱいの、愛すべき宿でした。

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