ままとも話。

ママ友、というのは不思議な関係である。

友とは言うけど、友だちじゃない。

毎日会って、家にも行って、親しいようだけど、お互いのことには立ち入らない。

子供を育てる期間だけ、子供に関わることだけ付き合う、言わば、育児の同僚だ。

スギモトさんはムスコの幼稚園の時のママ友。

ムスコは機嫌よく幼稚園に行っていたが、ちょうどその頃、夫婦の関係が悪くなりだした。

もう離婚かもしれないと絶望していても、子供は毎日お腹を減らすし、服や靴下を汚してくる。

お母さんの仕事は休めない。

真っ黒なカタマリを胸に抱いて、お弁当を作り、掃除機をかけ、幼稚園の送り迎えをする。

そんなある日のスーパーの帰り、後から声をかけられた。

どっか具合悪いの?ナナメになってるけど…

振り向くと、スギモトさんの柔らかい笑顔があった。

少し休めばという彼女の勧めに従い、一緒に手近のベーカリーの喫茶コーナーに入った。

二人だけで向かい合うのは初めてなのに、なぜだろう、その時は何でも言える気がして、夫との不和について、堰を切ったように話してしまった。

スギモトさんは、ただウン、ウンと、まとまらない話を聞いてくれた。

自覚はなかったが、危なかったんだろう。助かった、救われたという思いが残っている。

そんなことがあったら、親友になったりしそうなものだが、不思議にそうはならなかった。

あんまり何もかも話してしまったためか、かえって近づきにくい気分が働いたし、彼女は彼女で、重いものにつぶされかけている私に対する遠慮があったのだろう。

私たちはママ友のままで卒園を迎え、子供は別々の小学校に上がって、会うこともなくなった。

夫婦関係はその後悪化の一途をたどり、結局離婚。私と子供は引っ越して、その土地を離れた。

新しい環境にも慣れた頃、スギモトさんの訃報を聞いた。

自死らしいということ以外、何もわからない。

ムスコと同い年、まだ小学生の息子さんを残して、なぜそんなことになったのか。よほどのことだろうが、ショックだった。

ナナメになっていた、あの時の私に声をかけてくれたスギモトさんのような存在が、彼女自身のその時には居なかったのかもしれない。

私の、ママ友。彼女が亡くなって、もう5年になる。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



スポンサーサイト
ごきんじょ | コメント(28) | トラックバック(0) | 2015/09/03 10:30
コメント
No title
なんとコメントしていいかわからないのにコメント欄をクリックしてしまいました。
ただ、一言、「ちょっと」どころかとても「深いお話」でした。しんみりしました。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
こんにちは。
重い話なのに、読後感のしっとりとした味わい。

文章というのは、こうあるべきだと感じ入りました。

ほんと、お上手!

男も本当の友と信じているのは、
もしかしたら幻影ではないかと思っています。

ただ、信ずるものに幸あれ・・・
かも知れませんね^^

No title
こんにちは(*´▽`*)
コメント失礼致しますm(__)m

隣の庭は良く見える…なんてよく申しますが、心の奥に抱えてる事ほどなかなか皆さん口に出せないのが本音のように思います。
NANTE様のように気にかけてくれている方がいて、もしくはたまたまおかしい雰囲気を感じ取ってくれてお声をかけて下さる状況の方が少ないのでしょうね…

私も二児の母ですし、ママ友作りに失敗…というか、あまり好きではないので育児の相談に乗ってくれるような友人はいません(^^;

ですが、世の中で自分が一番不幸!とか、何もかも無理!なんて事は逆にないはずだと信じて毎日やってます。
たまにものすごーく私も病的に凹んでる時もありますが( ;∀;)

何年経っても忘れない人、感謝したい人いますよね(^-^)
そういう人の優しさに触れた感覚は忘れずに生きていきたいですね♪
小さいことにも幸せを感じたいと、私も日々精進しております(^-^)
NANTE様もお体お大事にお過ごし下さいね♪(*´▽`*)

あ、いつも足跡だけペタペタと失礼しましたm(__)m
またお邪魔させて下さい(*^.^*)
No title
こんにちは
そんなことがあったんですか~
すぎもとさんになにがあったかは判りませんが、ぢょん・でんばあさんが、近くにいたら、相談があったかもしれませんね。



No title
泣いてしまいました。

スギモトさんは、きっと優しくて繊細で、それゆえに周りの人の痛みにも敏感な方だったのではないでしょうか。

「私の、ママ友」という言葉から、でんばあさんの思いが伝わってくる気がします。
No title
(ナナメ)になっているでんばあさんが、目に浮かびました。
そして、そばに耳を傾けているスギモトさんも。。

転びそうな友達に、さっと手を差し伸べることが出来る人になりたい・・・心からそう思いました。

66歳にもなって、、、私は未だ、未熟者です。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
もしかすると
スギモト様はナナメになっているぢょん・でんばあ様を見て自分自身が抱えている同種の何かを感じ取ったのかもしれません。

合掌。
No title
ナナメになっちゃったぢょん・でんばあさん、ほんとにお辛かったでしょう。
お子さんを残していくしかなかったスギモトさんも辛かったでしょうね。

自分の母の姿に重なって、泣いてしまいました。母は長年不仲で苦しみ離婚後気持ちは楽になったけど、女手一つで子育てをして大変なのをずっと見てきたので。
苦しい思いをした分皆さんには幸せになってほしいです~。


No title
おはようございます。


なんかわかんないけど
涙出た~~~~~!!!(TT)

No title
 ブログ訪問者のほうから毎回楽しみに読ませていただいています。今回は考えさせられ、感じ入りました。月並みな表現ですが。
 初めタイトルを見たとき、私は自分の経験から、友達と思っていたらそうでなかったときにがっかりした話かと、想像していました。私の心の中ではそういう葛藤が結構渦巻いています。
 そうした想像を超える話でよかったと思います。
Re: No title
nobotanさん様

読んだ方も困られるかな…と思いながら、つい書いてしまいました。

一言をありがとうございます。嬉しいです。
Re: ソウルメイト
鍵コメo様

励ましのコメントをありがとうございます。

o様のコメントにも、いつもトントンと肩を叩かれるような気持ちでいます。

これからもよろしくお願いします。
Re: No title
鍵コメOk様(先のo様との区別がつきにくく失礼します)

つらい時ほど人は頑張ってしまいますので、笑顔の後ろにあるものに気付くことは本当に難しい。

ナナメになった私も、顔を見れば笑っていたはずです。

いつ何に救われるか、それは運かもしれません。

彼女のことを忘れずに生きていきたいと思います。
Re: こんにちは。
NANTEI様

お褒めに預かりありがとうございます。

私にとって、彼女はやっぱり「友達」ではなかったと思うんですよ。だけど、助けてくれた。

友達しか助けがないわけじゃない。行きずりの見ず知らずの人が、たった一人、助けの手を差し伸べてくれることもある。

そう思います。
Re: No title
あゆ姉さま

コメントありがとうございます。こちらこそいつもコメントなしですみません。ツーリングのご様子楽しみに拝見してます。

顔からは分からないこと、背中の表情で見えることもあるのかな。

そんなとき「どうしたの?」と虚心に聞けるスタンスでいたいなと思ったりします。
Re: No title
Carlos様

どうでしょうね。

自分から相談、って、私はできなかったです。

どうしたの?という問いかけがあれば、ようやく話せるけれど。

近くにいて何もできないのもつらいでしょうね。特にご家族のお気持ちを思うとやりきれないです。
Re: No title
(お名前なし)様

コメントありがとうございます。朝から悲しい気持ちにさせてごめんなさい。

彼女と私は、けっきょく友達にはなれなかったけれど、一生忘れられない人になりました。

Re: No title
アイハートブレイン様

いえいえ、きっと今まで、何の気なしになさったことで、助かった人がたくさんいるはず…。

たとえば庭にお花を咲かせているというだけでも、誰かの心を救っていると思います。
Re: No title
鍵コメi様

コメントありがとうございます。

この季節になると思いだしますね。

9月1日、お子さんの学校の防災訓練には、元気にいらしていたのだそうです。

今住んでいる地域では防災の日といって特に催しはないのですが、全国ニュースで見ると思いだします。

元気を出して今日も頑張ろうと思います。
Re: もしかすると
rockin'様

どうでしょうね。

私の経験では、確かに自分の経験したのと同じ種類の不幸には敏感になると思います。

彼女にもう一度会いたかったです。
Re: No title
ちょしっち様

悲しい思いをさせてしまって、ごめんなさい。

でも、お母様も、ちょしっち様のようなお嬢様を育て上げられて、きっとご満足でしょう。

ちょしっち様のこれからの幸せが、お母様の幸せでもあると思います。
Re: No title
おおもり様

朝から湿っぽくてごめんなさい。

今日はのんきな記事を書きました。また笑ってください。
Re: No title
所長様

はじめまして。コメントありがとうございます。

ママ友はやっぱり友達とは違うと思います。彼女のことは、お子さんの情報以外、本当にびっくりするほど知りませんでした。

そんな間柄でも、助けたり助けられたりすることってあるのだなあと思うと、不思議ですね。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: タイトルなし
鍵コメt様

黒いかたまり、なかなか消えませんね。今はケロッとして見えますが、私にも全然残ってないかといえばウソになります。

水の底で硬い結晶が少しずつ溶けていくように、時間が解決してくれるのかな。

どんなにつらくても、子供のために働けるなら、そうして動いているうちに、いつか溶けてなくなって行くでしょう。

管理者のみに表示