やさんの話。

待ち合わせの場所に、少し遅れてやってきたキシイさんは、少し上気した顔で言った。

ごめんなさい!出がけにバタバタして、カバン屋さんみたいな…

カバン屋さん?何が?

何を言ってるのかわからなくて、聞き返す。

アラ?言わない?いっぱいカバンを持ってると、「カバン屋さん」って…

見ると確かに、小ぶりのショルダーバッグに、大きめの合皮のバッグ、さらに布のエコバッグを持って、カバンの花盛りな、今日のキシイさんである。

キシイさんの家では、そういう状態を「カバン屋さん」というのだそうだ。

面白いね!じゃあさ、玄関に、しまわない靴がいっぱい出てたら…

そう!クツ屋さん

くつとかばんや

ちょっとユーモラスで、優しいキシイさんらしい、かわいい言い回しだ。

子供が小さい時に知っていたら、ガミガミ叱ることなく、靴をしまうように言えたのにな、と思った。

亡くなった私の祖母は、冗談がキライな人で、いつもまじめくさった表情をしていたが、

お砂糖屋さんの角を走ったような…

という言い回しを、たまーにすることがあった。

お料理の甘みが足りないことを言う。

甘さが全然足りなくて、お砂糖を売るお店の前を、走り過ぎたほどのかすかな気配しかない、という意味なのだ。

子供の頃、祖母がそう言うのを聞いて、珍しく冗談言ってるな、と思ったのを覚えている。

しかし、祖母と並んで台所に立つ、長男の嫁であるところの伯母にとってみれば、冗談どころではない。とんでもないイヤミに聞こえただろう。

この年になると、そんなことも想像する。

高い天井に、すすけて黒い梁が光る田舎の台所は、土間で、広くて、寒かった。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2015/12/12 10:07
コメント
No title
こんにちわ
かばん屋さんやら、靴屋さんおもしろいいいですね。

お砂糖屋さんの角・・・・嫌味だったんでしょうか。
こんにちは
 私の実家 熊本では 甘くない時は 
 砂糖やが 遠い!と言います、 
 まだ 誰さんの家の辺りかな? なんてね、

 いつもありがとうございます、たか
こんばんは
こちらでは
砂糖が遠い って言います
母が言ってたのを
思い出しました
懐かしい!!
そう言えば
ナニナニ屋みたいだって言いますね。
ウン、言う。

お砂糖屋さんの角を走ったような…
これ、いいですね。
いいなこれ。
好きです。
カッコイイぞこれって。

他の方のコメで
砂糖やが遠い
とありますが、これもいい!
好きです。

英語でこんな表現がありますね。
Christmas is just around the corner.
是も好き!

Re: No title
Carlos様

たくさんあることをお店屋さんに例えるのって、なんだかかわいらしいなと思いました。

うちは今いただいた柿がたくさんあって、果物屋さんみたいですよ。
Re: こんにちは
たかちゃん様

砂糖屋さんが遠い、っていうのもいいですね~。

電話したら、出前に来てくれるのかな~?
Re: こんばんは
ヒロちゃん7様

お砂糖が遠い、お塩が遠い、お出汁が遠い、なんて言ってもよさそうですね。

ただ味が薄いっていうより、ずっと優しい気がします。
Re: そう言えば
rockin'様

私はストレートで単純な表現を好むものですが、それでもたまにこういう言い回しを知ると、いいなあ、使いたいなあと思います。

「レトリック」はあまりいいイメージを持たれませんが、本来は言語の豊かさの表れですよね。

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