アゲタイ本。

イモート一家が実家に帰省しているので、会いに行く。

小学生のメイちゃんには、このところ、会うたびに本をあげるのが習慣になっている。

本屋で買ってあげるのではない。うちの本棚にある、私の読んだ本をあげるのである。

面白がってすごく喜んでくれることもあり、それほどでもないこともある。

メイちゃんが、選んだ本にどんな反応をしてくれるか、毎回楽しみなのだ。

さて今回はどれにするかな、と本棚を眺めていて、この本が目についた。

りんごばたけのまーてぃんぴぴん

「リンゴ畑のマーティン・ピピン」 岩波書店

エリナー ファージョンのこの作品集を、私が初めて手にしたのは40年も昔、田舎の図書館の児童書コーナー。

くまのプーさんやドリトル先生に混じって、童話の顔をした本の中には、甘く、苦く、思いもかけず濃厚な、恋愛が詰まっていた。

リンゴ園の番をする娘たちのもとに、ふらりと訪れた謎の男マーティンは、楽器を鳴らし、歌を歌い、物語を聞かせる。

6つの愛の物語は、それぞれに娘たちの心をほどき、気持ちを動かしていく。

それはまるで、幼い赤いリンゴのつぼみが、一夜にして白く華やかに開くような、ドキドキする変化。

何度も借り出して、夢中になって読んで、しまいに自分の本棚に欲しくなった一冊なのだ。

しばらく手にとって、迷った。

お正月に会った時の、メイちゃんの無邪気な表情を思い出すと、まだ早いかな、と思う。書架に戻し、ほかの面白い言葉遊びの本を選んで、バッグに入れた。

こんにちは~

ガラガラと引き戸を開けると、イモートとメイちゃんが玄関で迎えてくれた。

いつもと変わらない、よく似た二人の笑顔。

しかし、前とは少し違うメイちゃんがそこにいる。

ずっと長くして、イモートが結っていた髪は、今は肩のあたりでキッパリと切られていた。

小柄なりにすんなりした足が、カットオフのジーンズから小鹿のように伸びて、衿ぐりの大きなT シャツは、黒地に銀色のロゴが光っている。

春に会った時は確か、イモート好みの、フリフリしたワンピースなど着ていたのに。

なんか雰囲気変わったね!

思わずそう言うと、イモートは眉を寄せて

そうなのよ~ もう、あれイヤとかこれ着ないとか、うるさくって~!

言われても口答えもせず、フフフ…なんて笑っている。子供から、少女になったメイちゃんがそこにいた。

靴を脱いで玄関を上がりながら、持ってきた本は渡さずに帰ろう、と思った。

そして、ファージョンの本を持ってこよう。

メイちゃんは、きっと気に入ってくれるに違いない。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2016/08/23 10:58
コメント
私の
姪っ子には彼女が選んだ本、大概漫画をプレゼントしてました。
甥っ子の本は私が選択。
自らは絶対に読まないであろうってヤツをチョイスしてました。

濃厚な恋愛小説。
いいですね。
恋愛小説は絶対に読まなければなりません。
そして切なくならなくてはいけないんです。
「虚数の情緒 - 中学生からの全方位独学法」も読むべきですが。
No title
おはようございます

自分の子供は毎日見ているからわかりませんが、他人の子はちょっと見ないうちに、変わっているもんですね。

いつまでも、親のペットじゃなくなっているんですね。
自我がつよくなって・・・

孫たち(双子)ですが、やはりそんな時期もありました。
いつも同じものを着せたりしておりましたが、そのうち
着る物も、自意識が強くなってきました。

その孫たちも来春大学を卒業します。
Re: 私の
rockin'様

人に本をあげるのって、自分の子供が小学生の時以来(中学以降は勝手に選んだので)なので、なんか楽しいです。

私は小心者なので、読んでない本は自信持ってあげられません。

Re: No title
Carlos様

年に2度くらい会うと、成長度合いがよくわかりますね。

妹のほうはうちの娘や息子を見て、きれいになった、背が伸びた、と喜んでくれます。

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