せんせい話。

珍しく、講義みたいなことをする機会があった。

一般向けのちょっとした講座だが、レジメなど配布し、講師の肩書で聴衆の前に立つ。

本当はもっと詳しい人がいっぱいいるのだが、皆控えめで恥ずかしがり屋さんなので、声も身体もデカくて、比較的ずーずーしいタイプの私に白羽の矢が立ったのだ。

私はあまりアガらないたちなので、こういうのはわりに平気である。

たいして知りもしないことでも、ハッタリをきかせ、恥ずかしげもなく、もっともらしい顔でしゃべれる、というのは、おそらく戦後の混乱期に舌先三寸で商売をしていた、母方のじいさんの遺伝だと思う。

先祖に恵まれた数少ないありがたい才能である。

司会の人に先生と紹介され、面映ゆい思いをした後、講義が始まった。

話はレジメに従って調子よく進み、インチキ先生の話でも、聴衆は皆それなりに感心した顔をしている。

前半が終わり、休憩に入った時、ひとりの中年女性が席を立ち、スルスルと寄ってきた。

何かご質問ですか?

完全に講師モードで、愛想よく声をかけた。

いえ、あの、私… ご記憶ありませんか?

はて、どこかで知り合いだったかしら、とマジマジと彼女の顔を見たが、覚えがない。

5年前、お嬢さんの高校で、学年主任をしておりましたマツモトと申します…

ヒエー、ホンモノの先生

ホンモノの前で先生ヅラしていたのかと思うと、一気に顔が赤くなった。

マツモト先生はムスメの消息を聞かれ、講義の内容を褒めてくださったが、ちっとも耳に入ってこない。

やがて休憩が終わり、動揺のおさまらぬまま後半が始まった。

先生の視線を感じると、さっきまでどんな顔でしゃべっていたのかもわからない。

動揺が動揺を呼ぶ。

レジメの字を読み違え、まるまる3行すっ飛ばし、しどろもどろのしっちゃかめっちゃかで、講義は終わった。

先生!正体を明かすなら、せめて終了後にしてください!

それはせんせい
(♬ ~ それはせん~せい~ ~ ♪)



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2016/09/10 10:51
コメント
こんばんは。
ぢょん でんばあさんでも(?)動揺することがあるだなんて、ちょっと嬉しくなりましたー(笑)!!

私も最近は人前で話すこともだいぶ慣れてきましたが、できれば避けて通りたい道なので、ぢょん でんばあさんが羨ましいです。

No title
こんばんは
講演されたんですか~大したものですね。
人前で、講義することなんか数えるほどしかありません。
いや~大したものです。
本物の先生の前ではさぞかしやりにくかったことでしょうね。

すごい!
さすがぢょん でんばあ様。
講師だなんてすごい!
すご過ぎます。

ずーずーしさも
ハッタリも
舌先三寸も
すべてスキルなんです。
知識と経験と観察力と判断力に裏打ちされたスキルです。

もちろんスカートだったんでしょうね。
あ、金魚のようなドレスだったのかな?

講義、聞きたかった。
で、私、質問するんです。
絶対に。
Re: こんばんは。
みのじ様

何をおっしゃる!みのじ様は正真正銘、先生じゃないですか!

私なんかインチキ講師ですよ。

だからすぐ化けの皮が剥げるの(悲)。
Re: No title
Carlos様

講演というほどのことではなく、日ごろ仕事でやっていることを、一般の方向けにちょっとお教えする、というようなものでした。

でも、本物の先生って、何年も前の生徒を覚えていらして、やっぱりすごいと思いました。
Re: すごい!
rockin'様

うわーハズカシイ。

会議でたくさんの部下に持論を披瀝されているビジネスマンのrockin'様に見られたら、きっとつっこみどころ満載のお話でしたよ。

人知れず終わってよかったあ!

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