まつりの話。

トーフを出して冷蔵庫の扉を閉め、振り返ったところでドン!と重い音がした。

整理の悪い冷蔵庫の中でナダレが起こったか、と、開けて確かめてみたが、別状ない。

おかしいな、とまた閉めたら、続けてドン!ドン!と音が続いた。

リビングでひっくり返っていたムスメとムスコも、異常を感じて腰を浮かしている。

なにあの音?事故

念のためガスを止め、窓を開けてビックリたまげた。

はなびたいかい

満天の花火だ。

なんで?何の花火?

念のためカレンダーを確認したが、今日は祝日でもなんでもない、ただの連休の中日である。

ムスメがスマホで検索しても、特に大きなイベントがあるとも出ない。

他の部屋からも、わらわら住人が出てきて、ベランダから外を見て驚いている様子である。

ずいぶん時間も長く、盛大で豪華。大玉の凝った花火が次々と上がる。

こんなヘンな時期に、こんな盛大な花火大会が、前触れもなく行われるとは。

倉庫の火事じゃないの… 花火屋の…

アッチはたしか 河川敷と田んぼだよ そんなのあったかなあ?  

期末の予算消化じゃない?

3月末という時期ではあるが、儲けすぎて花火を上げるなんて聞いたことがない。

いったい何なのか、理由が分からないと不安になり、一向に楽しめない。

何なんだろう、何なんだろうね、と言いあううち、たっぷり10分続いた花火は終わった。

ベランダに出ていた人たちも、三々五々部屋に戻る。

どうしても気になってパソコンを立ち上げ、検索キーワードをあれこれ工夫して、ようやく隣県で市制10周年記念のイベントをやっていたことを知った。

それにしても見つけにくいサイトだ。やってることを知られたくなかったとしか思えない。

あれほど豪華な花火を打ち上げる予算があるなら、ちょっと宣伝すれば、人も集まっただろうに。

いろいろ反省材料のありそうなお祭りだが、済んでしまった今となってはどうしようもない。

これこそ後の祭りというやつである。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/03/20 11:00

ささえる話。

えーー、じゃあ 4月から1人暮らしなんだ 寂しくない?

うーん そだね やってみないと何とも…

飲み会の席、ムスコの部屋探しの話から、私の話になる。

私自身、18で家を出てから、そのまま就職、家庭を作り、実家には戻らなかったから、ムスメやムスコも当然そうするものだ、と何となく思っていた。

しかし、見まわすと、ずっと一緒の親子も、けっこう多いようだ。

特にこのあたりは実家志向が強く、住宅事情に余裕のあることもあって、実家から通うこと前提で進路を決めたりするらしい。

ムスコ君、独立心があって偉いじゃない ウチのなんてもう30なのに いつまでも家にいて 当たり前みたいに洗濯させて、私の作ったご飯食べて…

ご主人がいればいいんですよ うちは私ひとりでしょ?うっかり家に置くと 先々マズいと思うんですよねえ…

それは常々思っていたことでもあった。

子供が何歳になろうとも、夫婦と子供の関係が成り立っているうちはいい。子供がどこかへ去って行くことになっても、夫婦という家族の最小単位が残る。

しかし、ひとり親と支え合って漢字の「人」のような構造を作ってしまうと、親に重心をのせられた子供は、生涯そこから抜けられない。

ひとり親こそ、自分の足でしっかり立てる間に、子供を外に出さなきゃいけないのである。

そんなことを力説しつつ、手で山型を作り、「人」のかたちを説明していたら、今まであっちを向いていたタニタ君が話に入ってきた。

いやーヤバい ウチそれですよ オレとオフクロ2人…

アラフォーで独身のタニタ君が、お母様と2人とは知らなかった。気の毒したかなと思っていると

お母様も大変ねえ…

タニタ君、ちゃんと貯金してる?

ボーッと飲み食いしてないで、お使いくらい行ってあげなさいよ

オバサン連中はお母様のほうに同情的である。

アレ?そっちスか?優しいお嫁さん見つけなさいとか、そういう話は?

それは無理!

タニタ君をよく知るオバサンたちの判断は厳しい。

そして、声には出さねど、そりゃ無理だろう、と私も思った。

きんぱちせんせい
(ホントは「人」の字は、一人で立っている人の形らしい)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/03/16 11:05

ぷりんの話。

いつもの職場の昼休み。

そーいえばさー 焼きプリンってあるじゃない?コンビニの

んー あるある けっこう美味しいよね

最近はコンビニのお菓子もバカになんないからね

あの『焼き』のとこって どーなってんのかね

えー?『焼き』?

やきぷりん
(あー分かりますよこのてっぺんのとこね)

焼きプリンってんだから焼いてんでしょ?

でもさ、あのプリンの容器って、やーらかいビニールじゃない?

…そういやそうね

焼くと溶けると思うんだよねえ…

あ、じゃさ、なんかバーナーみたいのが出てさ、表面だけ、一瞬ジュッて…

ええ~っ?一個一個ぉ~?

ほら、ああいうのはキカイだからさ ホントにすごい一瞬、スゴイ高温でジュッて…

あー コンベアみたいのに乗って流れてくわけね

技術の進歩ね~

オバサンたちがそんな話をしていると、それまで黙ってスマホを触っていたミヨシさんが、

なんか 温度みたいですよ プリンは焦げるけど…

話を聞きながら検索していたのか、スマホの画面を示して見せようとする。ところが

あーダメダメ!言わないで!

そうよ!せっかくみんなで考えてたのにぃ!

まったく今の子はすぐ、そうやって検索する!

いい?私たち 別に正解が知りたいんじゃないのよ

そうそう! あーだこーだ言うのが楽しいのよ

ワカッてないわねマッタク…

ミヨシさんは親切で調べてくれたのに、えらい言われようだ。

しかし、オバサンたちの言い分もよくわかる。当て推量ほど面白いことはないからだ。

さいわい、みんなが遮ったおかげで、謎は中途で解けないまま残った。私もいつか、どこかで

焼きプリンの『焼き』のとこって どーなってんのかねェ

と、言ってみよう。



        旅行中のため、コメント欄を閉じています。
        しばしご訪問もできませんが、何卒ご容赦ください。
        日々更新いたしますので、留守中もぜひお越しください。
        FC2ブログの皆様には、帰宅後必ずお邪魔いたします。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



ごきんじょ | トラックバック(0) | 2017/03/13 11:30

いいわけ話。

クドクド言い訳をするのがキライだ。

エラそうに言えることではないが、人いちばい、過ちの多い人生だった。しかし、事に際して、誰に対しても、言い訳だけはしなかった、と胸を張って言える。

それが、数少ない私の誇りである。

今朝は月1回の資源ごみ回収。

びんかん

袋にいっぱいのビンやカンを提げて回収場所に行くと、自治会の役員さんが立っていた。

地区の回収に先回りしてアルミ缶だけ持ち去ったり、キチンと分別しないゴミを置いていく不埒者がいるので、番をするのだ。今日のお当番は70代くらいの、厳しい表情のオジサン。

なるべく愛想よく、オハヨウゴザイマスと挨拶をしてから、ペットボトル、カン、透明のビン、茶色のビン…と、決められたコンテナに、ゴミを入れていく。

カラン、カラン、カランと、ビールのカンが軽く鳴る。

ごとん、ごとん、ごとんと、ワインのビンは重たい音。

われながら、1人でよくこれだけ飲んだものだと思いつつ仕分けしていると、ふと背後に気配を感じた。オジサンの視線である。

酒ビンばっかり えらい量だな… このオバサン、たしか独り身なのに…

と、思われているに違いない。瞬間、思わず

いやー、旅行や何や… なかなか出せなくて 年末から溜まっちゃって…

そう口走っていた。

厳しい顔のオジサンは、意外に優しい甲高い声で

そうですよね 溜まりますよね

と言ってくれたが、つまらぬ言い訳をしてしまった私は今、激しい自己嫌悪に襲われている。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



ごきんじょ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2017/03/10 11:32

ひそひそ話。


今日はムスコの高校の卒業式

過去のムスメやムスコの卒業式では、いろいろと気が散ることが多く、感動の涙を流したことのない私である。( → 「きがちる話。」

あと何度もない機会だから、今回はなんとか人並みに感動したいものだ。

定刻に会場に入り、指定の場所に着席。無用の軋轢を避けるため、なるべく上品そうなお母さんの隣を選ぶ。

やがて吹奏楽部の演奏がはじまり、開式が告げられた。

校歌斉唱に続いて、卒業証書授与。

クラス担任に1人1人名前を呼ばれ、卒業生が順に起立する中

……よね… 上のお兄ちゃんの時は…

後ろの席から話し声がした。

…部活の先生も… …進路の… 

…ウチの真ん中が… …全国大会で…

私の後ろの2人のお母さんは仲良しさんらしい。

一応ヒソヒソと、場をはばかった風ではあるが、今話さなくてもいいような、どーでもいい話が、延々と続く。

名前の読み上げが続くうち、静かになったのでホッとしたら、私の両肩越しにいきなり黒い筒がにゅっと差し出された。

バズーカ砲?とギョッとして振り向くと、さっきまで熱心に頭を寄せて話し合っていた2人が、揃いも揃ってでっかいカメラを構えている。

ご自分たちのお子様を心ゆくまで激写した後は、がさがさと音を立ててバズーカをカメラバッグにしまい、またヒソヒソがはじまった。

…ウチの犬も11歳で… …おトイレが…

…アイフォンがバリバリに割れてて… …フフフ…

さっきまでは一応、子供の学校関係の話題だったのが、もはや何の関係もない話になっている。

来賓祝辞、送辞、答辞。ヒソヒソ、ヒソヒソ、おしゃべりは続く。

まったく興味のない話なのに、気になりだすとどうしても耳に入って、2軒のお宅の家族構成から住まいの場所、飼い犬の年まで知ったところで、ぴたりとヒソヒソがとだえた。

ずるるる……

驚いて振り向くと、2人のお母さんは目を真っ赤にして、もう泣いているではないか。

なんたるハヤワザ

こっちはすっかりヒソヒソに気を取られているのに、当のご本人たちはいったいいつの間に感動したのだろう。

呆然とするうちに式はめでたく終了し、私はまたしても、泣く機会を逸したのであった。

そつぎょう
(♪ああ卒業式で泣かないと 冷たい人といわれそう♬)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談 ブログランキングへ



ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/03/02 11:22
« Prev | HOME | Next »