りゃくごの話。

イモートから姪っ子の卒業式の写真が送られてきたので、お返しにムスメの卒業旅行の面白い写真を転送した。

すぐ折り返し電話がかかってきて、30年前の自分たちの卒業旅行のことなど、少し話す。

今日はメイちゃんは?遊びに行ったの?

今日はね 同級生とソツジズ

は?

いや、 ショツディズ… うーん、 ソチュジジュ

電話口のイモートは、かなり苦しんだが、謎が深まる一方なので、ひとまず落ち着かせる。

つまり何なの、メイちゃんはそのよくわかんないところに、同級生と出かけたのね?

よくわかんないとこじゃないよー ディズニーランド

イモートは首都近郊に住んでいるため、例の巨大テーマパークが身近である。

そして、メイちゃんはお友達数人とグループで、卒業の記念にそこへ遊びに行ったというわけだ。

そんで、さっきのジュルジュルは何よ?

卒業記念にディズニーランドに行くのを「卒ディズ」って言うんだって

イモートの発音はまだショツジジュに近かったが、いかにニブい私でも、さすがに今度は分かる。

卒業記念ディズニーランド、略して卒ディズ。

略語というものは、発言の短縮のために用いられるはずだが、イモートにとってこの略語は、事態を複雑化しているとしか思えない。

わざわざ略すのやめなよ 卒業記念にディズニーランドに行った、って言えばイッパツなのに

だってメイは言えるのよ!スラスラ「卒ディズ超楽しみ~!」とか! 

イモートは相変わらずソチュデジュと発音しているが、もう指摘しない。

へえ~ えらいもんだネ 若いからかね

言えないなんて 親として悔しいじゃん!

イモートは昔から負けず嫌いだったが、それは今も変わらないようだ。

そつでぃず
(「ショチュディジュ」を楽しむ学生の皆さん)



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/03/24 11:50

しゅくだい話。

しばらく外食してないので、おばーちゃんを誘ってランチでも、と思いたった。

お出かけ好きのおばーちゃんに断られることはまず無いが、一応確認の電話をかける。

…モシモシ おかーさん? 今日駅前でゴハンでもどう?

うーん… どうしようかな…

アラ?珍しく気の進まない様子。

どうしたの 調子でもワルイの?

いや… そうじゃなくて… 宿題があるから…

宿題といっても、もちろん漢字ドリルや百ます計算などではない。

うちでは生協の注文書のことを宿題と呼んでいる。(→ 「しなもの話。」

週に1度、注文した品物とともにドサッと届く大量のカタログを吟味し、買うべきものを見極めるのはけっこうな仕事であり、宿題と称するのは決して大げさではない。

しかし、それが理由でランチに出られないとは、ただ事ではない。

カタログショッピングが大好きなおばーちゃんだが、トシには勝てないということか。

憂鬱でねえ…神経すり減らしてんのよ…

小さくて弱々しい声。ますます心配になって問い詰めると

キャベツが3個あって… もうどうしたらいいか…

はァ?

聞けば先週キャベツが来て、それを忘れてスーパーでもう1個買ったところに、今週の配達でまた1個、キャベツが届いたのだという。

思いつきでちょちょいとマークするような買い方をしているのでそうなる。

やっぱり、前の週の注文をちゃんと見ないとダメね…

とりあえずランチは中止、キャベツは2個、うちで引き取ることになった。

きゃべつ
(いやキャベツは好きですよ 好きですけれども)



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/03/21 11:09

でびゅー話。

私と違って、私の母、おばーちゃんは早くからケータイユーザーである。

通話だけではなく、メールも絵文字入りだし、写真を撮ったり、ちゃんと使いこなしている。

ガラケーに十分満足していたおばーちゃんだが、何を思ったかいきなりスマホに乗り換えるという。

機種が減って選べなくなったのも理由の一つだが、先に乗り換えたお友達に

80になってから 新しいことを始めようたって無理! 今がラストチャンスよ!

と言われたことが決め手となったらしい。

そんなわけで、キラキラシールを貼って愛用してきたガラケーを手放したおばーちゃんのところに、真っ赤なスマホがやってきた。

真っ赤な、とわざわざ言うのは

どんなのにしたの?

と聞いたら

なんか赤いやつ…

としか言わないので、私の知る特徴が色だけだからである。

新しい赤いやつが来て数日、試しに電話してみたが、ケータイの番号になぜか応答がない。

固定電話にかけると、なんだかムクレているので、どうしたの、と聞いたら

ちっともラクラクじゃない

目に入ると腹が立つので、見えないところにしまってある、ということである。

おばーちゃんがスマホになじむには、まだしばらくかかりそうだが、新しい赤いやつが、どうやららくらくホンらしい、ということは分かった。

でびゅーふじん
(デビュー夫人じゃなくって大竹しのぶのほう)



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ごかぞく | コメント(13) | トラックバック(0) | 2017/03/18 11:41

あのひの話。

いつも通りのイモート一家の1日がはじまった。

イモートの作ったお弁当を提げて、ダンナのコージさんは会社へ、メイちゃんは幼稚園へ。

ひとしきり家事をした後、お弁当の残りでお昼ごはんを済ませて、幼稚園の卒園謝恩会の打ち合わせに、着替えて出かけようとしたその時。

大きな大きな何かが、イモートの住むアパートを、気味わるく揺らした。

ドスンと重いものが落ち、ガチャンと食器が割れ、続いてビシビシとひび割れる音。永遠と思える恐ろしい時間が過ぎて、やがて静かになった。

思わずしゃがみ込んで頭を抱えていたイモートが顔をあげると、年末に買って組み立てたばかりのTVボードが壊れて、液晶テレビが床に落ちている。

放心状態で床に足を投げ出し、しばらくそうしていたが、メールの着信で我に帰った。

幼稚園からの連絡だ。

鍵もかけずに飛び出し、いっさんに駆けて園庭に飛び込むと、園児たちは小さくしゃがんで丸く輪になり、先生に囲まれていた。

上履きのままのメイちゃんの手を引いて家に帰り、いつもの習慣で手を洗わせようとしたら、小さい握りこぶしの中に、赤いクレヨンが1本、かたくかたく握り込まれていた。

日中どうしても連絡がつかなかったコージさんは、夜半を過ぎてから、クツも背広もビックリするほどドロドロになって戻った。都心の会社から郊外の家まで、徒歩で帰って来たのである。

いわゆる帰宅難民ってやつよ~

ここまで電話で話してきた、イモートが言う。

あとで考えればさ~ あんなに必死こいて帰んなくてもいいわけよ~ 余震もあるんだし 会社に泊まればさ~

まーそうよね でも帰りたかったんでしょ アンタとメイちゃんのとこに…

そうかな~

そうだよォ オトコは家が好きだからネ だよ愛… 

へへへ… そっかな~

電話口で、イモートは照れている。

ノンキにこんな話ができるのも、たまたまのこと、ただの僥倖にすぎないのだ。

イモートが、コージさんが、そしてメイちゃんが、あの日命を奪われずに済んだのは、得難いめぐり合せなのだと、6年の月日が過ぎて思う。

あの日お友だちと肩を寄せ、しゃがんで震えていたメイちゃんが、この春、中学生になる。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/03/11 11:13

はっぴょう話。

ムスコの受けた大学の合格発表日。

発表は午後なのに、落ち着かないで普段より早く起きてしまった。

グーグー寝ている当のご本人を叩き起こしたいが、昨日の晩

…どうせソワソワするから昼まで寝る… 起こすなよ…

と、釘を刺されている。

徒然なるままにパソコン立ち上げ、大学のHPを見ても、当然ながら何にも発表されていない。

しかし合格発表も様変わりした。

昔はわざわざ大学まで、自分の受験番号が張り出されているかどうか、確かめに行ったものだ。

バスに乗って電車に乗って乗り換えてまたバスに乗って、私が大学に着いたときには、定刻を少し過ぎていた。

正門を入ってそれらしき方角に向かうと、すでに人だかりが少し崩れ始めている。

応援団に胴上げされる男子学生がいる。友だちと頭を寄せ、シクシク泣いてる女子学生がいる。

毎年この時期、ニュースで見るのと同じ景色がそこにあった。

ドキドキしながら数字と名前の並んだ掲示板に近寄ると、横からポンと肩を叩かれた。

同じ大学の、別の学部を受験した同級生だ。どうだった、と聞くと

オレ受かってた… オマエも早く見てこいよ…

と、ニヤニヤしている。

あ、こいつ、とピンと来た。

案の定、私の名前は合格者の中にあった。しかし嬉しいより前に、感動を奪われた感がぬぐえない。

人の発表、先に見んなよ!おまけにわざわざ声かけんなって!

同級生氏に悪気はなかったと思うが、30年以上たった今も、執念深い私は根に持っている。

そんな過去のあれこれを思い出していたら、ようやっと昼になった。

モソモソ起きてきたムスコは、立ち上げておいたパソコンの更新ボタンを押して

あ… 受かってる…

ムスコの合格発表の思い出はこれきりである。

ラクなような、頼りないような、ヘンな時代になった。

ごうかくはっぴょう
(今は掲示も名前は無しで番号だけらしい)



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ごかぞく | コメント(44) | トラックバック(0) | 2017/03/09 11:21
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