たけのこ話。

おばーちゃんとケンカして、ただいま冷戦中。

ここのところ電話もかけず、実家にも行かないでいる。

母親だから付き合ってるけど、だいたいこの人とは性格が合わないのだ。

赤の他人として出会っていたら、絶対友達になれないと思う。

おばーちゃんはひどく女性的で、万事察してほしい、めんどくさいタイプ。

私はどっちでもいいわよ… 

などと言いながら、内心思うようにならないと不満を溜めていき、ドンドン機嫌が悪くなる。

気に入らないならちゃんと言え、言えないなら後で不足を言うな、という私と、合うわけがないのである。

遠くに住んで、盆と正月だけ帰省してた時も、後半は必ず大ゲンカになって

二度と来るもんか!こんなうち!

と、捨てゼリフをして帰るようなことが、よくあった。

私も齢50を越して、若い頃よりは穏やかになったものの、性格は変えられない。

とはいえ、独居の後期高齢者である母のこと、気がかりでないわけはない。フトンの中でふと、おかーさんどうしてっかな、と思ったりする。

没交渉のまま数日が過ぎた朝。

♪ぴんぽーん♪

宅配便だ。

お兄さんの抱えた段ボールの、ガムテープでぐるぐる巻きにした、ヘタクソな荷造りを見て、すぐ誰からかわかった。

考えなくても押せる電話番号をぴぽぱぽと押し、

…モシモシ おかーさん? タケノコ来たよ… ウン… ウン… アリガトウ…

こうして、めんどくさい人との、めんどくさい付き合いが、また始まる。

たけのこ



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ごかぞく | コメント(22) | トラックバック(0) | 2017/04/23 11:42

みそしる話。

ムスコが一人暮らしのアパートに移って、1週間。

入学関係の諸手続きも落ち着いたころだろうと電話を入れてみた。

どうしてる?どんな具合?

…んー まあまあ… 意外に大丈夫…

ゴハンなんかどうしてるの?

…ネットで見て… 昨日味噌汁作った…

みそしる

そーなんだ ダシとかとって?

…ウン…

なんとなく歯切れの悪い口調なので、電話口で思わずニヤッとする。

うちより美味しかっただろ

そう言ってやると、ムスコはホッとしたように

…ウン… 実はそう…

そりゃそうだ。

家で使ってる味噌はいちばん安いやつ。だし昆布もイリコも特売だ。

ちゃんと作り方を見て、きちんとダシを取って、マジメに作ったら、料理がキライな私がテキトーに作るより、おいしいに決まっている。

…コーヒーとかもさ… そんなに高くなくて ずっと美味いのあるよ… 知ってる?

知ってるよ うちで飲んでるのは たぶん一番マズいやつ!

…え… そーなんだ…

ムスコは、軽くショックを受けている。

良かったなムスコ、これからどこに行っても、何を食べても、うちより美味しいぞ。

オフクロの味なんか、忘れて暮らせ。

そして心のおもむくまま、遠くに行け

こうして、ムスコの新生活がはじまる。



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/04/09 12:28

かついだ話。

食品庫を開けたら、地ビールのビンを見つけた。

ムスコの大学がある街の名前がついている。

ようやっと志望校が決まったころ、デパ地下で見つけて買ったものだ。

私は元来縁起を担ぐほうではない。ジンクスなども、なるったけ作らないようにしている。

しかし、ムスコの受験に際しては、ご縁ということを強く考えた。

中学生の時、涙目になって

塾に行くくらいなら死ぬ

と言ったムスコが、はたして大学にもぐり込めるのか、不安だったのだ。

たまたまめくった雑誌にその街の記事があれば、

きっとご縁があるんだワ

と思い、デパートの物産展でその街のお菓子を見つければ

やっぱりご縁があるんだワ

と思い、点けたテレビがその街の特集番組なら

どうもこれはご縁があるようだワ

と思う。そんなことが、ひそかな心の支えだった。

もちろんそんなコッ恥ずかしいこと、誰にも口に出して言ったことはない。

その街の物産や名物を見ると、つい買ってしまう、そんな1年を過ごして、ご縁がある妄想は、運よく現実となった。

これからはまた、違う気持ちで、この街の名を見るだろう。

天気予報でも、地震速報でも、いちばんに見るにちがいない。

明日は入学式。ムスコの街のビールを抜いて、1人乾杯しよう。

じびーる



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/04/06 11:30

たつとり話。

バタバタとあわただしく、ムスコが引っ越していった。

遠くの街の大学に行くためである。

荷造りも諸手続も、案の定ギリギリになって、忙しい数日が夢のように過ぎ、立つ鳥が跡を濁して行った家の中で、いま私はボーッとしている。

子供が家を出るというと、寂しいでしょ…寂しくないの…寂しくなるわよ…そんなことばかり言われる。

寂しいのかな、と考えてみるが、あまりピンと来ない。

いつまでも子供と同じ家に住んでいれば、寂しくないのだろうか。

もし幼稚園の頃に引き離されたら、それは寂しいだろう。幼い子供は母親にとって自分の一部だからだ。

しかし高校生になったムスコは、私とはぜんぜん違う人間で、食べ物の好みも音楽の趣味も、どこをとっても別っこなのだから、別々に住んで当然、という気がする。

今日まで何度も衝突し、時にはお互いがお互いに失望して、認めざるを得なくなったのは、自分は子供と違うということ。

巣の中に暖めているのが、自分とは感じ方も考え方も違う、他の人だということを、少しずつ諦めて受け入れるのが、子供を育てる、ということなんじゃないだろうか。

だとすると、寂しさは子供が出て行く、その一時のことではなく、子供が育つ過程に、ずっと付きまとってきたものかもしれない。

朝食の後片付けをしようとキッチンに立つと、こんなものが目に入った。

へた3

レギュラーコーヒーの袋の、封を切った切り口のヘタである。

ムスコはこの手のヘタを捨てずにそこいらに置いておく癖があり、何度注意しても治らなかった。(→ 「すてない話。」

最後の朝にも、やはりムスコはムスコらしくふるまったわけである。

なんだかおかしくて、1人プッと笑ってから、つまんだヘタをゴミ箱に捨てかけてふと思い直し、シンクの脇の引き出しにしまった。


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ごかぞく | コメント(14) | トラックバック(0) | 2017/04/05 10:56

かーどの話。

いよいよムスコの引っ越しが近づいてきた。

毎度ギリギリまで腰があがらない彼の、あいかわらず居心地よくぶっくら返った部屋を、見るに見かねて一喝。

いーかげん片付けないと なんもかんも全部捨てるよ!

強硬姿勢を感じたか、ツレと約束が、とかなんとかブツブツ言いながらも、シブシブやりだした。

ずっと片付けらしい片付けをしていない部屋である。キノコが生えていてもおかしくない。

45リットルのゴミ袋を10枚ばかり投げ込んで、私はしばらく近寄らないようにした。

途中、ドスンと重い音がしたので廊下を見たら、ぎっしり詰まった袋が既に3つ。

おそるおそる近寄ると、半透明の袋からいろんなものが透けて見える。

ハッキリわかるのはリコーダーと習字の筆くらいで、あとは何かの部品ばかり。ブキミな不定形の塊は、よく見れば固まった粘土だった。

いきなりドアが開き、驚いて飛び上がった私に、ムスコはもう1つ

…こっち 燃えるゴミ…

と手渡す。紙くずやお菓子の袋に混じって、ちょっと懐かしい渦巻き模様が見えた。

ゆうぎおう

小学生の頃、夢中で集めたカードゲームのカードである。

引っ越してきたムスコの、友達作りのきっかけになったのが、このカードゲームだ。

初めて家に連れてきた友達とも、部屋で車座になって、ワイワイとカードを囲んでいた。小学生で卒業してしまう子も多いと聞いたが、ムスコは中学になってもちょくちょくカードを並べていた。

いいの?コレ捨てて…

…いいよ… 使わねえのに持ってるほうがよくないだろ…

案外サバサバした表情。

こっそり1枚抜いてとっておこうかな。

一瞬そう思ったけれども思いとどまり、受け取った袋をそのまま、ゴミバケツに入れた。

ムスコの長い少年期が、今日終わった。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/03/30 11:37
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