びーたー話。

朝のワイドショーの、クイズコーナーで、アナウンサーが大仰に持ち出したのはコレ。

ばったーびーたー

さて、この家庭用品の正式名称は 何でしょう?

主婦タレントが本気かワザとか、わからないと騒ぐのを横目に、ヘンと鼻で笑う私。

あれはバタービーターというのだ。

私とイモートは30年以上前から知っている。

イモートと私は同じ高校の出身で、共通の先生も何人もいたが、中でも家庭科は、われわれ姉妹の鬼門であった。

ミエコ先生は細身で上品な上流婦人風だが、中身はひねくれてイヤミな中年女性。

彼女が私とイモートが姉妹と知ると、楽しかるべき調理実習が最悪の時間になった。

あら~ 危なっかしい手つき お姉さんにソックリ!

お母さんお教えにならないのかしら?妹さんも心配ね…


あくまで笑顔で上品な口調で、ねちねちアラ探しが続く。

またミエコにやられちゃったよ~

アタシは来週だよ~ ヤダなあ…

ふだんケンカばかりしているイモートと私が、ことミエコ先生に関しては戦友であった。

その日はイモートのクラスの調理実習。メニューは出し巻き

じゃんけんでイモートが焼き係となり、コンロの前に陣取った。

流し込んだ玉子を、まさにひっくり返そうとしているところに、嬉々としてミエコがやってきて、皆に聞かせるよう、おおげさに叫んだ。

ダーメよ~! バッタービーターを使いなさい って、言ったでしょ~?

失敗を待ち構えるミエコを前に、イモートは菜箸2本でひょいっと玉子を返して見せた。

ニヤニヤしていた先生の顔が、凍り付く。

玉子焼きは数少ないイモートの得意料理で、家でもふだんからやっていたのだ。

もう胸がスッとしたわ!

やったねェ、エライ!

ばった~び~た~をつかいナサイって いったデショ~?…だってさ!

イモートの口真似は本当にソックリで、私も聞くだけで胸がスッとした。

以来30有余年、わが家では、台所でちょっとした失敗をするたび

ばった~び~た~をつかいナサイって いったデショ~?

と言っては、大笑いしてきた。

イヤミで大ッキライだったミエコ先生も、今となってはなんだか親しい人に思える。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/05/10 11:30

おどりこ話。

その朝、私は最高に憂鬱だった。

連休明けの登校。おまけに今日は大キライな物理と体育がある。

熱でも出ればいいのに、健康そのもののわが身が恨めしい。

いつものように電車に乗って、いつもの道を歩いたら、いつものように学校についてしまった。

視線を感じて、つま先を見ていた目を上げたら、ミドリちゃんが灰色の校門にもたれていた。

ねえ、タカラヅカ見に行かない?

はあ?

すっとんきょうな申し出に、状況が飲み込めないでいると、ミドリちゃんは

今日これからタカラヅカ見に行こうよ アサミレイだよ

と、かさねて言った。

彼女がヅカファンなのは以前から知っていたが、誘われたのは初めてだ。

正直、タカラヅカに興味はなかった。その頃はタカラヅカの舞台中継がテレビでも見られたが、チャンネルを合わせたこともない。

でも、学校をサボってどこかよそへ行く、と思ったとき、なぜだか急にコレだ!という気がして、ついていくことにした。

登校する学生の流れを遡って歩く。同級生が私たちを認めて、アレ?と、物問いたげな表情で見たが、誰にもとがめられず駅に着いた。

ふだん乗らない路線の電車を乗り継いで、宝塚へ。

タカラヅカの駅は、降りた時からキラキラヒラヒラとして、レビューの雰囲気満点である。

キップとかはどうしたのだろう?ミドリちゃんが持っていたのか、それとも30年以上前のこと、当日券があったのだろうか。覚えていない。

ミラーボールが回り、オーケストラは鳴り続ける。ライトの中、羽とフリルに包まれたスターが、現れては消える。

大学受験とか、選択科目とか、傾斜配点とか、そんなものから一番遠い、美しい人たち。

朝の憂鬱な気分は、いつの間にかすっかり消えていた。

その後私がヅカファンになったか、というと、そんなことは無い。あの日の演目も、覚えていない。濃厚なラブシーンの記憶があるから、「ジャワの踊り子」だろうか?

1日で治ってしまった、私の5月病の思い出である。

じゃわのおどりこ
(雪組公演 宝塚大劇場 麻美れい 遥くらら)



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/05/09 11:30

りかちゃん話。

その頃女の子は、当たり前のようにリカちゃんを持っていた。

集まって遊ぶときには、めいめい自分のリカちゃんを持ち寄る。

まみちゃんのリカちゃん、ゆきこちゃんのリカちゃん、かずえちゃんのリカちゃんが一堂に会しても、特に混乱をきたした記憶はない。不思議にオリジナルの名前をつけることもなかった。

何人いてもリカちゃんはリカちゃんなのだ。

私ももちろん、リカちゃんを持っていた。

しかし、声色を使って人形を動かしたり、衣装を着せ替えるのはそんなに好きではない。

ただ、付属する小物が好きなのである。なかでも一番好きなのはクツ

りかちゃんのくつ

私のリカちゃんは真っ赤なハイヒールを履いていた。

つやつやしたビニールのクツをリカちゃんの足から外し、3センチもないそれを手のひらにのせて、じーっと眺めたものだ。

もっといろんなクツが欲しかったが、洋服は作ってくれる母も、クツを買い足すのは渋った。

コチャコチャ小さいものが増えると失くすから、というのである。

その、コチャコチャ小さいのがいいのだが、子供なのでうまく説明できない。

クツが欲しい、ダメ、と押し問答するうちに、私も高学年になる。

大人になってオモチャやゲームを買っても恥ずかしくない今と違って、昔は年相応ということにうるさかった。

もう大きいんだから、と言われ、いつしか私もリカちゃんを忘れた。

今年はリカちゃん発売50周年。時々、あの赤いクツを、思い出す。

(→ Licca Kayama 50th Anniversary official site)

りかちゃんきゃっする
(「5月3日はリカの誕生日!リニューアルしたリカちゃんキャッスルに行ったよ!」)



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むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/05/04 11:44

じてんしゃ話。

はじめての赤い自転車は、長く乗れるように、という昔の親の発想で、大人向けの、輪っかの大きいものだった。

サドルは下げたが、漕ぎ出しが難しい。怖がりで反復練習が苦手な私は早々にケツを割り、新しい自転車は物置でホコリをかぶることになった。

その後ご近所さんから、子供向けの小さい自転車を、お下がりでいただいた。

おねーちゃんのはあるから、という理由で、ピンクの自転車は自動的にイモートに。

輪の小さな子供向け自転車は乗りやすく、イモートはあっという間に乗れるようになった。

年下に先を越され、ヘソを曲げた私は、イモートにからかわれ、母にはイヤミを言われても、ガンとして練習を拒否、ますます自転車から遠ざかった。

そんな私に危機が訪れたのは中1の時である。

新任の元気な男の先生が、

連休に、クラスで親睦サイクリングに行こう!

と提案。内心ギョッとする私をよそに、あれよあれよと、サイクリングの日程が決定した。

乗れて当然みたいな顔をしている皆に、じつは乗れなくて…とは言えない。

なにしろ当時の私は、優等生で学級委員。誰かに弱みを見せるくらいなら、死んだほうがマシ、くらいに思っていた。

その日から私のヒミツ練習がはじまった。

クモの巣のかかった赤い自転車を物置から引っ張り出し、めんどくさそうなイモートを拝み倒して練習に付き合わせる。

途中、偶然通りかかったクラスメイトには

ちょっとブレーキの具合が…

などと、整備中を装ってごまかした。

何度転んだだろう。膝から下をアザだらけにして、もう泣きたい気持ちの5日めの夕方、もう暗くなってから、自分の足の下で自転車が走り出した時の感激は、今も忘れられない。

今日、5月の風に吹かれ、ペダルを踏みながら思い出す。

えらかったね、あの時の私。

おかげで40年後の今、こうしてどこにでも、自由に行けるよ。

ありがとう、12歳の私。

じぇいくのじてんしゃ 
(懐かしいイラスト「ジェイクの自転車」葉祥明)



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/05/01 11:36

さくらの話。

子供の歓声にふりかえると、幼稚園の柵のむこうに、八重桜が咲いていた。

やえざくら

ぽってり重い花の房が、緑のリボンでひとつひとつ、枝の先に結び付けたように咲いている。

なんてかわいいんだろう。

思わず胸をつかれて、立ち止まる。

若い頃は、パッと咲いてパッと散る、染井吉野の潔さのほうが、美しく、好ましく見えて、八重桜なんて、と思っていたが、今は違う。

染井吉野が自分の都合でぶわーっと咲いて、あとは知らん、とばかりに葉桜になってから、

遅くなりまして…

と、丸いかわいい顔を出す、かわいらしさ、いじらしさが、なんともいえない。

八重桜を軽視していた昔をふりかえって、申し訳なく、ゴメンネとお詫びしたい。

話は変わるが、私の好物の一つに玉子サンドがある。

まだファーストフードが普及しない子供の頃、母に連れられて外出して昼ごはん、という時、よく喫茶店でサンドウィッチを食べた。

今のように様々な選択肢がある時代ではない。ハムキューリと玉子のミックスサンド一択、というお店が多かった。

喫茶店の玉子サンドには2種類ある。

茹で玉子をマヨネーズで和えてはさんだのと、玉子焼きをはさんだの、である。

私はマヨネーズのほうが断然好みで、玉子焼きのがテーブルに来ると

今日はハズレ

などと思っていた。

ところが先日、お付き合いで久しぶりに喫茶店の玉子サンドを食べたら、これが美味しかった。

フワフワのあったかい玉子焼きが、パンに塗ったバターを溶かしながらほぐれる。ケチャップの甘さも好ましい。

長年ハズレとか思っていてホントにすみません、と、詫びたい気持ちだ。

しかし八重桜も玉子サンドも、どこに向かって謝ればいいのか、わからないのである。



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/04/22 11:26
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