なっとう話。

7月10日は納豆の日

なっとう

うちは両親とも根っから関西人の家系であるが、なぜか納豆を食べていた。

私が子供のころはまだ、食べられない人が多い中、一家で口の周りをネバネバにしているわが家は、異色だったと思う。

私自身は食べて当たり前と思って育ったため、周囲の関西人が納豆を食べないことを知ったのは、かなり大きくなってからである。

そう知った日はビックリして、家に帰って母に報告したのを覚えている。

おかーさんおかーさん!よそんちは納豆食べないんだって!

母は平然と

そーよ アタシだって おとーさんと結婚するまで食べたことなかったもん

えーっ!

今だって別に好きじゃないし 食べるけど

そうなの?

わが家の食卓に納豆をのせたのは、東京の大学に通った父らしい。

コンビニもファストフードもない昔、実家から出た学生が、たちまち困るのは三度の食事だった。

そこで必須なのがまかない付きの下宿である。

朝晩食事を準備してくれる代わり、選択の余地はない。出されたものを食べるのみである。

そこで納豆を繰り返し出されて、食べ慣れたのだろう。

生粋の大阪男であるうえ、芋はイヤだカボチャは食わないと、けっこうワガママだった父。

食べつけない納豆を、食べ慣れるほど食べたということは、つまりそれしか食べるものが無かったのだと思うと、若き日の父が、ちょっとかわいそうになる。

今のようにテレビで食いしん坊バンザイだのケンミンショーだのが見られる時代ではない。

味噌も醤油も、関西とは違ったろう。はじめて関東の食生活に触れたカルチャーショックは、想像に余りある。

これ何?!こんなの食べられるの?と驚いたり、こわごわ口にしたら案外おいしかったり、そんな経験は人生を豊かにする。

情報あふれる現在、見たことも聞いたこともない食品なんて、もはや無いかもしれないと思うと、ちょっぴり父がうらやましい気もする。

はじめて食べた時、納豆にどんな感想を持ったか、聞いてみたいけれど、父はもういない。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/07/10 11:30

たかやす話。

大相撲名古屋場所が初日を迎えた。

今場所注目の力士といえば、断然新大関・高安である。

他のスポーツ同様、お相撲にも疎い私であるが、なぜか高安関には好感を持っている。

この親近感はいったいどこから来るのか、考えてみた。

高校の同級生で、背が高くてスポーツ万能で、小麦色の肌が魅力的な、素敵な女の子がいた。名前はケイコちゃん。

風を切ってグランドを駆け抜ける、カモシカのような姿に、おもわず見とれたものだ。

そんなケイコちゃんには、が1つあった。

日陰のモヤシみたいな虚弱体質の私より、お休みが多いのである。

いちおう病欠だが、休み明け出てきた顔は、病み上がりに見えない、むしろ生き生きして、クラスの誰よりも元気なのである。

不思議に思って尋ねても、いたずらっぽく目を輝かせ、ウフフ♥と笑って答えない。

ずいぶん経って親しくなってから、彼女が野球選手の追っかけをしていることを知った。

キャンプや地方遠征を追って、かなり遠出もしていたようだが、学校への届け出や、交通費なんかはどうしていたのか、今思い出しても謎は深まる一方だ。

そのケイコちゃんが住んでいたのが、高安という町だった。

たかやす

いくら考えても、私と高安関の関係は、それ以外他に見当たらない。

ともあれ、ガンバレ高安!


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むかしむかし | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/07/09 11:30

ぷーるの話。

ぷーるびらき

住宅街に、歓声と水の音が響く。近くの小学校のプールの時間らしい。キャーキャー甲高い声は、低学年だろうか。

昔むかしの大昔、私の通った小学校には、プールがなかった。

水泳の授業の時は、よそに借りに行く

学校の教室で水着に着替え、バスタオルを肩にかけると、商店街を抜け、住宅地を越えて、プールのある隣の小学校まで、歩いて行くのである。

1クラス45人の時代である。ビーチサンダルでペタペタ歩く水着の行列は、さぞかし壮観であったろう。

今ならうるさいお母さんがたが

水着で外を歩かせるなんて!

などと黙っていないだろうが、昔の親や子は、無いものは借りに行かなきゃしかたがないと、ごく単純に考えていた気がする。

高学年になっても、とくに恥ずかしいとかみっともないとか思った記憶はない。

ぞろぞろ先生に引率されていると、校門の外の道も学校の続きみたいに思えたし、プールに入るのは、やっぱり楽しかった。

今住んでいる海なし県では、水泳の授業にいたって不熱心だ。

雨が降っちゃー中止、水温が低いっちゃー中止。4年生の時ムスコは2回しか泳げなかった。

夏休みのプール開放も無いから、学校の授業だけでは泳げるようにならない。みんなお月謝を払って、バスでスイミングスクールに通うのである。

1学期にたっぷり水を張った立派なプールも、ヤゴを育てるだけのトンボ養殖池である。

あのプールが、あの時、私の小学校にあったら。

不平も言わず、炎天下をペタペタ歩いていた子供の自分を思うと、ちょっと泣きたくなる。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/07/01 11:46

しろしゃつ話。

私は高校生になっても、母が買って来る洋服を黙って着ていた。

みっともなければ抵抗しただろうが、母はなかなか着るもののセンスがいい。

若者向けの店にもどんどん入っていくし、物を見る目も肥えている。ステキな洋服をお得に買ってくることにかけては、今も到底かなわない。

昔から母の選んだ服を着ていて、褒められることはあっても、けなされたことはなかった。

そんなわけで、衣類を自分で選ぶということをしないで、高校生になった。

同級生はファッションに夢中なお年頃。学校帰りに洋服屋さんに寄り、買うにせよ買わないにせよ、あーだこーだ言いあうのは女子高生の社交である。

ハンガーから選んだ流行りのお洋服を、あれこれと当ててみては、鏡をのぞき込む友だちが、なにやらキラキラとまぶしくて、自分が遅れたマヌケなやつに思える。

その日、華やかな色と模様の洪水の中にいた私は、ふと1枚のシャツを手にとった。

いつも他の子の選んだ服にとやかく言うばかりの私が、めずらしくお洋服に関心を示したので、友だちは面白がって試着を勧めた。

ドギマギしながら個室に入り、ハンガーから外したシャツを身につける。

新しいシャツの匂い。

まだー?

外から声をかけられて、おずおずと試着室のカーテンを開け

…どお?

待ちかねた友だちにワッととりまかれた。

イイじゃん!

いつもと違う感じだけど、似合うよ!

なぜかガハハと笑う子もいて迷ったが、ついに私はそのシャツを、か、か、買ってしまった!

紙袋を提げて帰った私に、母は

あら!何か買ったの?

と寄ってきたが、袋を開けて見せると

なーんだ、真っ白なの?もっとカワイイのにすればいいのに…

と、つまらなそうだ。

それが私の、初めての、白いシャツだった。

しろしゃつ



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/06/29 11:29

ぽすたー話。

マンションの掲示板に、春から貼りっぱなしの防火ポスター。

背景のピンクも色あせて、風景に溶け込んでいる。

ニッコリ笑ったモデルの目がギラリと光ったので、ギョッとしてよく見ると、両目のところに画鋲が押されていた。

イタズラだろうが、場所が場所だけに、あまりいい気分じゃない。

私が子供の頃から、ポスターにイタズラをする者はいた。

清涼飲料水のビンを持ち、微笑む女優の顔に、描き込まれた鼻毛とおデコのシワ

レコード店の店頭に立つ、アイドルの等身大パネルにこすりつけられた、ガムの噛みかす。

本人の知らないところで、誰かがその人を嫌ったり、妬んだりしている。

人気者に向けられた、小さな悪意の棘

有名になるって、いいことばかりじゃないんだな、と、思ったのを覚えている。

周りを見まわしてから、目に刺さった画鋲を外し、掲示板の高いところに並べてとめた。

翌朝、ポスターは剥がされて、代わりに「資源ごみ回収のお知らせ」が貼られていた。

ぼうかぽすたー



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むかしむかし | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/06/17 12:14
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