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こうれい話。

おばーちゃんの付き添いで、大きい総合病院に来た。

数年前に建った新しい建物は、受付ロビーもガラス張りで、外の陽射しが明るい。

昔の病院は建物から陰鬱で、病気の身の上を恨みたくなるような薄暗さだったから、こういう環境改善はありがたい。

数値には出なくとも、きっと患者の回復につながるだろう。

手続きの間、窓際に腰かけ、ぼんやりガラスの外を見れば、車回しのむこうは、広い駐車場。

点々と見えるオレンジ色に、ドキリとする。

こうれいうんてんしゃひょうしき

枯葉マークなどと揶揄されて形が変わった、高齢運転者標識

街でもたまに目にする、それが広い駐車場に、いくつもいくつも見える。

具合悪い人が来るところだもの、高齢者の比率が高いのは当然だよね、と思いつつ、病院の駐車場で起こった高齢運転者の暴走事故のことなど、頭に浮かぶ。

明るい広いガラス窓が、急に危うく見え始めて、思わず窓を離れ、柱を背にした席に移った。

おばあさんが、ご主人らしいおじいさんを座らせた車椅子を押して、しっかりした足取りで私の前を過ぎる。

高齢者があふれるロビーで、こんなことを考えるなんて、ほんとうに申し訳ない。

ごめんね、おじいさん、おばあさん。

思うだけだから、許してね。

私だって、高齢者になるまで、生きたいから。



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ごきんじょ | コメント(2) | トラックバック(0) | 2018/12/10 11:30

ソウセキ本。

夏目漱石について、語るべきことは何もない。

猫や坊ちゃんの江戸前の笑談は、関西人の私にはいっこう通じないし、かといって則天去私などと深刻ぶられても、さらに面白くない。

だいたい私は、外でいい顔をしてきて、家で妻子に当たり散らす男はキライなのだ。

そのくせ、漱石のナントカ、などとという本を見るとつい読んでしまう。

漱石山脈などという言葉があるように、彼の周囲には彼を師と仰ぐ若者が集まっていた。木曜が面会日、と決めないと、仕事に差し支えるくらい、うじゃうじゃ集まった。

なんぼ洋行帰りの文学者だといって、40そこそこの若いヤツが、もっと若いヤツを集めて喜んでいる、そのことが不思議で興味深い。

こういう集まり方を女はしない。

男、それも若い男のすること、という感じがする。

集めたんじゃない、先生のご人徳を慕って集まったのだ、と言う人もあるかもしれないが、本人が嫌がってるのにそんなになるわけがない。

迷惑顔をしつつも内心では嬉しがり、余は苦しゅうないという態度であったればこそ、山をなすほど人が集まったんである。

師弟といっても何を習うでもない。若々しい野心と未熟な自尊心のまま、ただ集まって、各自の趣味やら失敗談やら、披露しては月旦している。

そんなわちゃわちゃ感、うだうだ感がよく出ているのがこの本。

せんせいとぼく
(「先生と僕 ~夏目漱石を囲む人々~」)

漱石門下が実名で登場し、それぞれに、大好きな先生に愛されたいと願いながら、仲良くしたりケンカしたりしている、その感じは男子高校生の集団とそう変わらない。

今日12月9日は、漱石忌。


本日早朝より他出のため、2016年12月9日の記事を再掲いたします。



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ブックガイド | コメント(0) | トラックバック(0) | 2018/12/09 11:30

よぼうの話。

寒くなってきた。くわえて公私で忙しく、疲れ気味である。

トシをとって良いことは、自分の体調が分かること。

ノドの違和感、節々の疲れ…そう、このままでは、風邪をひく!

確信に近い予感がする。

風邪なんてものは、ひいてしまってから薬を飲んだってしょうがない。

身体を冷やさぬよう暖かく、マスクでノドの湿度を保ち、栄養補給のため、食事にも気をつける。

おかげで、アヤシイ症状は潮が引くように無くなった。

ムチャをして風邪をひくなんて若者の愚行、やっぱりオトナは予防だよね。

鼻たかだかで、普通の生活に戻ったが、半日も経たぬうちに

ノドの違和感、節々の疲れ…そう、このままでは、風邪をひく!

あわてて厚いクツシタを履きマスクをかけ、念のためビタミン剤と葛根湯を飲んで寝た。

見事対策が功を奏し、翌朝は爽やかな目覚め。

そうそう、オトナはこうでなくちゃ。やっぱり、予防よね。

意気揚々と、オシャレをして出かけた。

ところが、出かけた先で

ノドの違和感、節々の疲れ…そう、このままでは、風邪をひく!

またしても、不吉な予感に襲われる。

慌ててドラッグストアに駆け込み、カイロとドリンク剤とマスクを購入してホッとしたものの、新たなる疑念が湧いてきた。

毎日毎日、巻いたり貼ったり、ほぐしたり温めたり、こんな攻防が、冬じゅう続くのだろうか。

なんかメンドクセーなー もう熱出しちゃおっかなー

誰かが頭の右上でささやいた。

うどんやかぜいちやぐすり



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2018/12/08 11:30

つりーの話。

街はクリスマス

店頭に飾られたツリーに思わず近づくと、当然ながら人工物であって、近頃のツリーは本当によくできていると感心する。

子供の頃のツリーはこんなに立派じゃなかった。

物置にしまってあったボール箱から出てくるのは、緑のタワシみたいなお粗末なツリー。

それでも子供にとっては、待ちに待ったワクワクする瞬間だ。

母の指示のもと、すぼめてあるのを丁寧に伸ばし終わると、細かい針のような葉っぱがチラチラと落ちていた。

もっと嬉しいのは、飾りつけである。

モールのサンタ、銀紙の星、ロウソクやねじりキャンディー、金銀のティンセル。

一番のお気に入りは、小さな紙の家だった。

赤い三角屋根に、緑の煙突。現実に見たことのない、外国のお家。

雪の積もった窓は十字の窓枠を残して切り抜かれ、青いセロハンのガラス張りだ。

小さな家の、小さな窓の中に、小さい人の暮らしを見たくて、小指の先ほどの窓を熱心に覗いた。

中は空っぽだと、とっくのとうに知っているのに。

今日はクリスマスツリーの日。

130年前、横浜で日本初のクリスマスツリーが飾られたという。

もーるのさんた
(顔も怖いが、赤以外の色がいるのが解せなかった)



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/12/07 11:30

せいせき話。

郵便受に白く厚い封筒

ダイレクトメールやお気楽な手紙ではない、マジなたたずまいに緊張しつつ、差出人を見てドキンとした。

ムスコの通う大学だ。

不出来なムスコを受け入れてくださった、ありがたーい大学である。

その名を見て喜びを感じこそすれ、恐れおののく必要などないはずが、不吉な予感しかしない。

ハサミを出す暇も惜しんでベリベリと封を切ると、中から数枚の白い紙が現れた。

成績表である。

この大学は、頼みもしないのに、ムスコの成績を送って寄越す。

近頃の大学はそういうところが多いらしいが、昔ならおよそ考えられないことだ。

4年間の学生生活は山あり谷あり

希望に胸を膨らませ、勉学に励むフレッシュマンも、やがて中だるみで進級を危ぶまれる。

気持ちを引き締めて落とした単位を取ったものの、また異性によそ見をし、あるいは試験日に熱を出して危機一髪。

友人や先輩の救いの手を借り、再びギリギリの一線をくぐって、卒業というゴールに滑り込む。

結果オーライである。

かつて、おおかたの大学生は、中途のこんなあれこれを、親には黙って乗り切ってきた。

いちいち報告したところで、あたら老親の尊い寿命を縮めるばかりではないか。

しかし、今の大学は、保護者の寿命が延びるのを食い止めたいらしい。

封筒からひっぱりだした紙を、並んだ字を見ないように伸ばす。

わがムスコの、1年間の粒粒辛苦の結果である。直視せねばと思いつつ、老眼気味の目の焦点がなかなか合わない。

数字の1つが目に飛び込んできたとたん、動悸が激しく、胸が苦しくなったので、慌てて畳んで元の封筒にしまった。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2018/12/06 11:30
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