ぷりんの話。

アッ!また忘れた!

自転車を漕ぎだすなり、思わず出た大きなヒトリゴトに、すれ違った人が振り向く。

何を忘れたって、タイヤの空気である。

走れないほどではないが、ペダルが重い。道の凸凹が、よりハッキリ、おしりに伝わる。

昨日も一昨日も、空気入れなきゃ、と思ったのだ。

毎日帰り道はヘトヘト。家に着いたらくたびれて、いまさら空気入れをひっぱりだしてくる元気なんか、残っちゃいない。

かといって、朝はギリギリで、空気を入れてからゆるゆる参りましょう、というような、優雅な気分にはなかなかならない。

重たいペダルを踏みながら、私ってダメだなあ、などと反省する。

そういえば、同じように忘れていることがあと1つか2つ、ある気がする。

何だっけ、と頭をひねったが、思い出せないから忘れていることを、思い出そうったって思い出せるわけがない。

自己嫌悪に包まれながら、いつものプールに着いた。

タメイキをつきつつ水着に着替え、プールサイドへ出れば、はつらつとしたコーチのかけ声で、準備運動がはじまる。

いっち、に、さん、しい…

身体を曲げたら、つま先が見えた。

アッ!足の爪!

そう、昨日、お風呂で、足の爪が伸びて来たな、と思ったのである。

裸足で過ごす夏場なら、手の爪を切ったついでに足も切ってしまう。

ところが、寒くなって靴下を穿くと、脱ぐのがめんどくさい。つい足は後回しになる。

爪、空気、爪、空気、爪…

今度こそ忘れないように、泳ぎながら頭の中で繰り返した。

1時間ほど泳いで、今日のレッスンは終わり。

外に出れば、まだ乾かない髪に風が冷たい。下り坂を漕がずに、惰力で家まで帰る。

自転車を停めて玄関を入ったら、冷蔵庫のプリンを思い出した。

泳いで冷えた身体にプリンの甘さがしみていく。疲れを忘れるほど、美味しい。

確か何かあった気がするが、もう思い出せないのであった。

だいぶつぷりん
(奈良の名物 まほろば大仏プリン)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

スポンサーサイト
もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/11/23 11:30

ひっぱる話。

喫茶コスタリカ(→こーひの話。)の

コーヒ

という表記。

昔はこの手の庶民的なお店でけっこう目にした。

ひっぱる音を省くなら「コヒ」とでもなりそうなものを、なんで文末だけ、音引きを略しちゃうんだろう。

思い当たるのは、短い言葉の語尾をひっぱる、関西弁の特性である。

特に1字の語では、この特性が著しい。

関西人は、手を「てえ」と発音する。

目は「めえ」で、歯は「はあ」だ。

しかし、字に書く時は、ちゃんと手、目、歯と書く。

かのばか
(これは「かあ」である)

同様に、「こおひい」の末尾の「い」は、省くべきだと考えたのではなかろうか。

「コーヒ」と書いたオバチャン(なぜかオバチャンのような気がする)も、口頭では「こーひー」と発音しているに違いない。

おお、結論が出た。

しかし、この仮説は、その隣に書かれた

コーラー

によって、軽々と覆されてしまうんである。

おしょゆう
(オバチャンはこれを「おしょゆう」と呼ぶ)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/11/19 11:30

あきかん話。

1人暮らしにもかかわらず、空き瓶や空き缶はかなりのペースで溜まる。

リサイクルに協力したいのはやまやまだが、分別回収のめんどくささはなんとかならないのか。

分別回収といっても、分けるだけでは終わらない。

牛乳パックは洗って、乾かして、平らに切り開いて。ペットボトルは洗って、ラベルとふたをとって、つぶして。

それぞれに細かくやり方が決まっている。

なんだかんだいって私はマジメなので、チマチマやるが、つぶすというのがよくわからない。

缶をつぶす機械が市販されているのは知っていても、買わされるのは業腹だ。

ぺっちゃんこにするならともかく、手でつぶしたくらいでは、たいしてカサは減らないだろう。

そんなの迷信だと思っていた。

現に回収ボックスの中を見れば、つぶさない缶がほとんどではないか。

ところが先日、回収ステーションまで持って行くのに、アルミ缶を1つ、何気なくつぶした。

すると、手提げに入りきらなかった缶が、あっさりおさまったのだ。

驚いて、残りの缶を全部つぶしてみた。

特別な用具を使ったわけではないし、満身の力を込めたわけでもない。缶の胴中を指で押しただけである。

あきかん

それだけのことで、手提げ袋に入る缶の数が、おおかたになったのだ。

つぶせつぶせというのにも理由があったのである。

今後はじゃんじゃんつぶしていきたいし、あらゆる空き缶はつぶすべきだ、と強く思っている。

曰く、過ちて改むるに憚ること勿れ

しかし、そう思って回収ボックスを見ると、つぶしていない缶ばかりが目につく。

まったく、どいつもこいつも!

以前の自分を忘れたかのように、義憤に駆られる私である。

曰く、君子豹変す



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/11/16 11:30

753の話。

休日の駅前、よそ行きを着た家族連れが、そわそわとタクシーを待っている。

大切に囲まれているのは、色鮮やかに着飾った小さな女の子

753

七五三だ。

近くの有名な神社で、ご祈祷を受けるのだろう。

3歳で髪置、5歳の袴着、7歳は帯解。洋装が主体の時代にはどれも意味がないが、七五三の習慣はすたれずに続いてきた。

年中行事が定着するポイントは2つある。まず食べ物、そしてもう1つは服装

その時だけの特別な食べ物があれば、行事は楽しみになる。

そして、ふだんできないような服装もまた、行事の楽しみに違いない。

七五三を祝う気持ちの中には、わが子に非日常的でカワイイ服装をさせる喜びが、必ず含まれているはずだ。

この日だけはパーッと派手に、せっかくだからアイドルみたいに、何枚も写真を撮って。

つつましさが美徳とされた時代にも、周囲をはばからず、大っぴらにコスプレさせられる口実が、七五三だったのだ。

しかし最近ではハロウィーンが定着して、気楽に子供に仮装をさせてうろつける。

かたや七五三は、着物にかかり、ご祈祷にかかり、何かとモノイリだ。

決まりごとが多くて気の張る七五三より、ハロウィーンで楽しくやりましょうという若い母親が増えてきそうな気がする。

なにより、伝統行事である七五三にはシュートシュートメの姿がちらつくが、ハロウィーンなら、うるさい外野抜き、ママと子供だけでやれる。

もはや他人事ながら、七五三の未来が、ちょっと心配になってきた。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/11/15 11:30

おはしの話。

海外の女性雑誌をめくっていたら、ストレスをぶっ飛ばす20の方法!という特集が載っていた。

身体を動かそう!とか、時には人の頼みを断ろう!とか、なるほどと思うことの中に

お箸でご飯を食べよう!

chopsticks.jpg

お箸で食べるディナーは、あなたをスピードダウンさせ、ストレスをなくし、心を落ち着かせます

ホントかオイ!

本当なら、1億日本国民はみんな、ゆったりとストレスなく暮らしていることになる。

周囲を見回しても、とてもそうは思えない。

おそらく重要なのはお箸じゃなく、日ごろ使わない食器を使う、というのがミソなんだろう。

ふだんナイフフォークを使う人が、慣れないお箸でぎこちなく食べるからこそ、食事に時間がかかり、生活がペースダウンする。

それではわれわれは、おでんやサバの塩焼や、筑前煮やお好み焼を、ナイフフォークで食べればいいのだろうか。

しかし、明治維新以前ならともかく、現代の日本人は、ナイフフォークに不慣れではない。

使ったことのない食器って無いか、と考えてみたが、思いつかない。ストレスをぶっ飛ばすのは、他の19の方法にするしかないようだ。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/11/13 11:30
 | HOME | Next »