こーひの話。

昔の高校生は喫茶店に屯した。

たわいないおしゃべりとバカ笑い、そして流行のインベーダーゲーム

すぺーすいんべーだー

お小遣いが潤沢なクミポンは百円玉を何枚もテーブルに積み、ピュンピュンと音を立てて、光る虫をやっつけている。

私とサオリッチは、フトコロの温かい時にはパフェやクレープ。ふだんは飲み物1杯で、いつまでもネバる。

喫茶店で一番安いのはだいたいホットコーヒーである。冷たい飲み物は氷が溶けて薄くなるので、長居には不向きなことを知った。

あそこはコーヒー200円だよ、などと、安い喫茶店の情報にはみな敏感だった。

高校周辺で一番安いのは、喫茶コスタリカ

店名から連想される南米感はゼロ。ウエイトレスと呼ぶのもはばかられる、年齢不詳のオバチャンが、ぬるい水を運んでくる。

うっすら汚れた化粧合板の壁には手書きのメニュー。

コーヒ 100円

コーヒー、じゃないんだな、などと思いつつ、その隣に目をやると

コーラー 150円

「-」はなぜか、50円高いほうに引っ越している。

頭が痛くなるほど長っちりをして、外に出れば日は既に傾き、冷たい空気がほてった頬に快い。

あの店はどうなったのだろう。心当たりを歩いてみても、今では何のあとかたもないのだ。



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/11/18 11:30

こーらの話。

高校生になった私には、果たしたい夢があった。

コカコーラを飲んでみたい。

その頃コーラは既に普及していたのだが、うちでは母に禁じられていたのである。

何が入ってるかわからない、あんな黒いもの…

という母のお気に入りは、透明なキリンレモン

中学の前の駄菓子屋には、チェリオという量ばかり多い炭酸飲料しかなかった。

高校で電車通学になり、小遣いもいくらか潤沢になったので、ぜひともコーラデビューをしたいものだと思っていた。

お弁当の時、その夢を語ったところ、一緒に食べていたサオリッチは、意外な反応をした。

ええっ!それは珍しいよ!

そお?

確かに、高校生でコーラ飲んだことないって珍しいね

横からクミポンも同意する。

笑われたことはあっても、珍しがられたのは初めてで、嬉しい気もしたが、話は意外な方向に転がっていく。

せっかくなんだから記録を更新して行くべきだよ!

そうだよね コーラなんて珍しくもない 飲んだことないほうがずっと…

珍しいし貴重だよね!

その日その場で、クミポンとサオリッチによる「ぢょん子をコーラから守る会」が、私の同意なく結成された。

構内の自販機に近寄ると、2人が駆け寄ってきて

何飲むの?

えーと… コーヒー牛乳…

厳しいチェックが入る。

守る会の活動は、いつしかクラス全員の知るところとなり、会員でない男子までが、通りがかりに

おい コーラ飲むなよ…

と、声をかけていく始末。

なんだかなあ、と思いつつも、私のコーラ飲まない記録は1日、また1日と伸びていく。

どれくらいやったのだろうか。けっこう長かったような、そうでもなかったような。

女子高生は移り気だ。

いつのまにか、守る会は消滅し、私もいつのまにか、当たり前にコーラを飲んでいた。

はじめてのコーラの味は覚えていないが、ただ自販機の前でキャーキャー騒いでいた、あの頃が思い出される。

あれからずいぶん経つけれども、あいかわらずコーラには、何が入っているかわからないままだ。

きょうりゅうのこーら
(今じゃお土産にもらってしまうほどのコーラ好き)



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むかしむかし | コメント(16) | トラックバック(0) | 2017/11/17 11:30

おこのみ話。

商店街を歩いていたら、ふわふわんと、ソースのニオイが漂ってきた。

お好み焼き屋さんだ。

そういえばずいぶん長いこと食べていない。

関西人でありながら、私はオコノミ、タコヤキをほとんど食べないし、家でも作らない。

子供がうちにいる20年ほどの間に、2、3回作ったかな?という程度である。

しかし実家では、オコノミヤキといえば休日の昼食の定番で、週に1度は食べていた。

今のようにホットプレートなどない。母がフライパンで一枚ずつ焼き上げるオコノミを、イモートとジャンケンして、先を争って食べる。

そんな大昔の思い出をたどると、奇妙な記憶が浮かび上がる。

オコノミは、ハンバーグやトンカツの時も使う、洋皿にのって出た。

あのサイズの平らなものをのせる大きさがあるのが、それだけだったのだろう。

ホカホカのオコノミを前にしたら、各自でソースとカツブシ、青海苔をかける。マヨネーズはかけたり、かけなかったり。

しばらく新鮮なカツブシが踊るのを観察してから、おもむろに切り分けて食べる。

問題はそこだ。

私の右手にはナイフ、左手にはフォーク

そう、うちではオコノミをナイフフォークで食べていたのだ。

お皿がハンバーグと同じだから、当然みたいに思っていたが、今思い返すとヘンテコである。

確認のため、イモートに電話してみた。

ねーねー、うちってさ、昔 オコノミを、ナイフフォークで…

そうそう!私、結婚してすぐオコノミにナイフフォーク出して、コージさんに笑われたのよ!

あれってうちだけかねえ?

うちだけかなあ?

久しぶりに、オコノミ焼いてみようかな。一番大きい洋皿にのせて、ナイフとフォークで食べたら、美味しいかもしれない。

おこのみやき
(お店ではコテで切って食べる)



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むかしむかし | コメント(22) | トラックバック(0) | 2017/11/12 11:30

ぶんかの話。

私が生まれたころ、実家は田中の一軒家だった。

夏の夜はうるさいほどカエルが鳴き、秋は稲架の間で落ち穂を拾い、刈穂のあとに積もった雪で、ユキダルマを作った。

高度成長期まっただ中、そんな田舎にも変化が訪れる。

昨日まで遊んでいた田んぼに柵がされたと思うと、ライトバンが横付けされ、工事が始まる。

田んぼの時は広く見えた場所が、思いのほか狭い敷地になり、あれよあれよと建ちあがったのは、小さなアパートだった。

物件が建てば人が来る。

ある日私のクラスにやって来た転校生は、そのアパートの1室に入った家族だった。

長い髪も、大きな目も茶色くて、ハーフみたいな色白の美少女はマサエちゃん。

机を寄せて給食を食べている時、マサエちゃんが

今日みんなでうちに遊びに来ない?

と、班の女子を誘った。

いつも外から見ているアパートの玄関に立ち、キレイにお化粧したお母さんに招かれて中に入ると、新建材のにおい。

だだっ広い古い家に住んでいる私には、コンパクトなシステムキッチンや、ピカピカのリノリウムの床、デコラのテーブルが珍しく、眩しく見えた。

白い三面鏡と、ピンクのスツール。楕円形の鏡の前に、いろんな色のキレイなビンが並んで、少女漫画の女の子の部屋のようだ。

母の鏡台は、座敷に置いた四角い鏡が1枚だけで、それも日中は布をかけてある。

ダイニングテーブルで、お店のクッキーと紅茶をご馳走になり、ボーッとしたまま家に帰ると

おかえり どこ行ってきたの

母に聞かれた。

転校してきた…マサエちゃんとこ…

ああ… ブンカの子ね…

ブンカって何だろう?

わからないながら、母の返事に、どことなく軽侮の響きを感じ、イヤな気持ちになった。

今思えば、田んぼの持ち主ともご近所づきあいがあった母は、新しいアパートのお家賃や、住人の素性など、子供が想像する以上に色んなことを知っていたのだろう。

文化住宅 … 近畿地方における集合住宅の一呼称。 高度経済成長期に使われ始め、主として瓦葺きの木造モルタル2階建ての、風呂なしアパートを指す。略称「文化」。

マサエちゃんのブンカはそのままに古び、今ではサスペンスドラマで刑事が事情を聞きに来そうな、そんな風情になっている。

マサエちゃんはどうしているのか、わからない。

ぶんかじゅうたく



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/11/03 11:30

せんにち話。

子供の頃の娯楽といえば、街のデパート

エレベーターで階上へ。大食堂でお昼を食べたら、婦人服、子供服、オモチャ、書籍。どんどん下りて、化粧品の匂いの1階フロアを、ハンカチやハンドバッグを横目に突っ切って、外に出る。

店内でかなりの時間を過ごしたあとだから、日は傾き始めている。

アーケードに響くのは、レコード店が流す最新のヒット曲と、そぞろ歩く人のざわめき。

映画館の絵看板と、中華料理のスパイスの匂い。

繁華街もこの時間はまだ、赤い顔で大きな声を出すヨッパライはいない。

それでも曲がり角の奥に、灯りはじめたネオンがちらつくので、つい近寄りかけると

フラフラしないで おかーさんと手をつなぎなさい!

叱られてふくれて、よそ行きのエナメル靴が痛い、とゴネれば、喫茶店で休憩である。

レモンスカッシュかクリームソーダ。母の機嫌がよければ、プリンアラモード

法善寺に抜けてお地蔵さんを拝んだら、動くカニを見て道頓堀を歩くのだ。

お土産は551の豚まんか、エーワンベーカリーのチーズパン。

そんな休日が幾度あっただろうか。

せんにちまえ

東京オリンピックまであと1000日。

1000日前にちなんで、大阪千日前の思い出を書いてみた。

tokyo2020.jpg
(OKKANABIKKURINGは2020年東京オリンピックパラリンピックを応援します)



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むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/10/28 11:30
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