ふじみの話。
今年は花が早い。
例年なら連休ごろに咲く藤の花なども、早くも満開らしい。
亀戸天神は浮世絵にも描かれた藤の名所だ。 (→ 亀戸天神社公式HP )

(名所江戸百景 亀戸天神境内 安藤広重)
もうずいぶん前になるが、東京に住んでいた頃、父が珍しく、1人でうちに来たことがあった。
大学の同窓会か何かだったろう。
少し早めにやってきた父に、どこか行きたいところある、と聞いたら
亀戸天神に行ってみたいな 藤には少し早いかも知れんが
と言うので、電車を乗り継いで出かけた。
晩年膝を悪くしてしまった父だが、その時分はまだ、駅の階段を上り下りしていたのだ。
はじめての駅を降りて、言葉少ない父と2人ブラブラ。すぐに赤い鳥居が見えた。
鳥居をくぐればすぐ、浮世絵で見た太鼓橋。渡れば左右には五分咲きの藤棚。
たしかに赤い橋に紫が映えてキレイだが、ずいぶんな混雑だ。
意外に狭い境内に、花より多い人があふれかえっている。
そう、狭いのだ。
これが名高い亀戸天神か、拍子抜けするほどの狭さである。
すぐそばまでビルが迫り、ちょっとした児童公園か、マンションの敷地くらいしかない。
せっかく来たのだから、ケチをつけるようなことは言うまい。黙ってさらに混んだ参道を進むと、ぶった切るように境内が無くなった。
それまで黙っていた父が
おい、これで終いか
つい不満の声を漏らしたのを聞いて、いきなり、堰を切ったように、笑いがこみ上げた。
…ほんとにね、ビックリね…
やっとのことでそう言ったきり、ゲラゲラ笑いがとまらない。
すれ違う参拝客が、身体を折って笑う私を見て、驚いている。
憮然たる面持ちの父だったが、帰りに立ち寄ったのらくろ記念館で、機嫌を直してくれた。
父と2人の外出は、あれが最後だった、かもしれない。

→ 田河水泡・のらくろ館

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例年なら連休ごろに咲く藤の花なども、早くも満開らしい。
亀戸天神は浮世絵にも描かれた藤の名所だ。 (→ 亀戸天神社公式HP )

(名所江戸百景 亀戸天神境内 安藤広重)
もうずいぶん前になるが、東京に住んでいた頃、父が珍しく、1人でうちに来たことがあった。
大学の同窓会か何かだったろう。
少し早めにやってきた父に、どこか行きたいところある、と聞いたら
亀戸天神に行ってみたいな 藤には少し早いかも知れんが
と言うので、電車を乗り継いで出かけた。
晩年膝を悪くしてしまった父だが、その時分はまだ、駅の階段を上り下りしていたのだ。
はじめての駅を降りて、言葉少ない父と2人ブラブラ。すぐに赤い鳥居が見えた。
鳥居をくぐればすぐ、浮世絵で見た太鼓橋。渡れば左右には五分咲きの藤棚。
たしかに赤い橋に紫が映えてキレイだが、ずいぶんな混雑だ。
意外に狭い境内に、花より多い人があふれかえっている。
そう、狭いのだ。
これが名高い亀戸天神か、拍子抜けするほどの狭さである。
すぐそばまでビルが迫り、ちょっとした児童公園か、マンションの敷地くらいしかない。
せっかく来たのだから、ケチをつけるようなことは言うまい。黙ってさらに混んだ参道を進むと、ぶった切るように境内が無くなった。
それまで黙っていた父が
おい、これで終いか
つい不満の声を漏らしたのを聞いて、いきなり、堰を切ったように、笑いがこみ上げた。
…ほんとにね、ビックリね…
やっとのことでそう言ったきり、ゲラゲラ笑いがとまらない。
すれ違う参拝客が、身体を折って笑う私を見て、驚いている。
憮然たる面持ちの父だったが、帰りに立ち寄ったのらくろ記念館で、機嫌を直してくれた。
父と2人の外出は、あれが最後だった、かもしれない。

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行ってみるとがっかりしたってことでも、後で笑えたりするので、良い想い出ですね。
藤を見ると思いだすんでしょうね。
今、藤が、きれいに咲いております。
ゴールデンウィークには藤もつつじも散ってしまうでしょう。
昔、亀戸の駅を通過して通勤していました、「(名所江戸百景 亀戸天神境内 安藤広重)」なんて全く知りませんでした。
そうですか、拍子抜けするほど狭いんだ。
うーん。
ひょっとした昔はもっと広かったのかもしれません。
のらくろ記念館。
救われました。
たくさんの藤の写真を見せていただいて嬉しかったです。
私も出かけるつもりでしたが、今日こちらは雨になってしまって残念です。
東京の名所ってこういう拍子抜け多いんですよね。
昔はきっともっと広々してたんだろうと思うんですけど。
(コメント順狂ってごめんなさい。)
亀戸は梅でも有名でした。広重の浮世絵ではこちらのほうが有名かもしれません。
地価の問題が、名所旧跡を圧迫しているんでしょうね。