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ふたりの話。

早朝のは、昼前まで止まなかった。

楽しくなって表に出れば、いつもの景色を覆う雪が、周りの音を吸って、しんと静かだ。

このマンションも高齢化が進み、雪にはしゃいで飛び出してくる、子供もいない。

誰もいないと思っていたら、団地の児童公園に、動くものがある。

うつむき加減の顔は、フードで隠れて見えないが、私より少し上の女性らしい。かがんで歩き回っているのは、落し物探しだろうか?

詮索しているようで気の毒だから、あまり見ずに通り過ぎた。

やがて夕刻。

郵便物を取りにホールに降りると、ドアの横に小さな影が見える。

エントランスのライトに照らされているのは

ゆきだるまふたり

心細そうに肩を寄せた、雪だるまふたり。

そうだ、あの女性の姿勢は、雪だるまを作っている人のそれだったのだ。

作りたくなる気持も、ひとりじゃ寂しそう、と、ふたつ作る気持も、どちらも分かる気がする。

雪はあらかた溶けて、明日には無くなるだろう。



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ごきんじょ | コメント(7) | トラックバック(0) | 2021/01/13 11:30

ゆきふる話。

外が静かで、目が覚めた。

カーテンの隙間がしらしら明るくて、窓に寄ればが降っている。

温暖な当地で、こんなに降るのは久しぶりだ。コートを羽織ってベランダに出た。

牡丹雪というより、白梅の花のような雪。

くぼんだカップの形を保って、クルクルと周りながら落ちてくる。

水分の多い大粒の雪は積もらない、というから、今のうちにゆっくり見ておこう。

家の屋根や木の枝が、見る間に白くなっていくのに、寒さも忘れて見とれていたら、隣の棟の窓に動きがあった。

カーテンが絞られ、外を見ている顔は、高さも窓の半分あたり、小さなオバアサンだ。

ちょっと外を眺めて、すぐ引っ込んでしまった。

しばらくして、同じ窓がパッと開いたので、注目していると、さきほどのオバアサンがピュッと現れた。

サッとカメラを構え、パシャッと撮ったら、スッと引っ込み、シャッと窓が閉まる。

その間、じつに5秒たらず。

いくら寒いにしても、なかなかの素早さである。

閉じたカーテンをぼんやり見上げていたら、身体がすっかり冷えていることに気づいた。

雪は次第に細かくなってくる。これはあんがい、積もるかもしれない。

ならこうえんのゆき



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/01/12 11:30

はつでの話。

ちょっと遅めの仕事始め。

ミミ先生は、今年も年齢不詳の美女だ。

シワシミのひとつもない雪白の肌に、ちょっぴり眠そうな目。

ほっそりした身体を包む、アヴァンギャルドな服装は若々しいし、仕事の感覚も、50代後半の私には追いつけないほどの、最先端である。

しかし、仕事にあたる時の世故たけた雰囲気は、私なんかよりよっぽど年上にも思える。

相手の年齢によって態度を変えるつもりはないが、いろんな方と会っていて、ミミ先生ほど見当のつかない方は初めてなのだ。

今日は時間があったので、珍しく雑談をした。

ぢょん子さんは今日が初出ですか?

ハイ…着物じゃないですけど…

は?ああ、フフフ… ありましたね…

あら?先生も?

ええ 昔…会社勤めのころは…

ステキ!うちの会社は初日からガンガン仕事で 松の内から事務服だったし うらやましいです

でも早朝から お着付けやら頭やら…

大変でしょうね!

今もやってるところあるのかしら、着物っていいですよね、と、話は流れ、表面は穏やかに仕事に移行したが、内心はドキドキしていた。

初出が着物なんてのは昭和の習慣で、私が若い時でさえ、既に廃れかけていたはずだ。

もちろん、証券取引所など、ずっと着物の初出を続けている業種もあるだろう。

はたしてミミ先生の年齢は?

わかったような、わからぬような。

きものでしごとはじめ
(京都市役所では、今年もやっているらしい)



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/01/09 11:30

そこつの話。

何年か前、ビックリするほど字がヘタになっているのに、ショックを受けた。

時を同じくして、パソコンが具合悪くなった。

それまで住所録もパソコンで管理していたので、それをきっかけに、宛名を手書きにしてみた。

住所録も作らず、前年のハガキを見て書く。

アナログ逆行もいいところだが、長く会えない友人の顔を思い浮かべつつ、名前や住所を書くのはいいものだ。

受け取った賀状を数えてみると、7対3で印刷が優勢ながら、手書き派も案外いる。

そんな中の1枚、幼馴染のミッコちゃんの字に、ちょっと引っかかった。

彼女の住む町、雪深いその土地の名を、この手で書いた覚えがないのだ。

記憶を辿る時、人の視線は左上にさ迷うという。

うーんと唸りつつ、頭上左、天井の隅をギロギロにらんでも、思い出せない。

余分のハガキにミッコちゃんの名前と住所を書いてみたら、どうも初めて書く気がする。

せっかく書いたので

2枚目だったらごめんね!

添え書きをして、投函することにした。

ミッコちゃんとはもう50年の付き合いで、私の粗忽は先刻承知である。これしきで怒ったりは、しないだろう。

2021ねんがはがき



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/01/04 11:30

ぽすとの話。

元旦の賀状の中に、出してない人のがあった。

急いで書いたハガキを手に、コートをひっかけて、玄関を出る。

冷たい朝も、新年の空気だと思えば爽快だ。

信号のない住宅街を抜けて、最寄りのポストには先客がいた。

くりくり坊主の兄弟と、小柄なお母さん。

投函するお兄ちゃんの後ろに、弟くんが自分のハガキを手に、並んで待っている。

ふだん郵便を出すことなどないのだろう。儀式のようにうやうやしく、1枚ずつハガキを入れているのを見て、とっさに電柱の陰に隠れた。

ところが、不自然な動きが、かえってお母さんの目にとまってしまったみたいだ。

あ、ホラ、早くしなさい!

いいですいいです!ごゆっくり!

慌ててそう言ったけれど、時すでに遅し。驚いたお兄ちゃんは、残りのハガキを、まとめて差入口に突っ込んでしまった。

恐縮したお母さんに、スイマセン、ほら早く…と急かされて、弟くんも続く。

背伸びした手のハガキには、2Bの濃い鉛筆で書かれたおめでとうの文字。

ゴメンね~ せっかくだったのに…

いきなり現れた知らないオバサンは、つい話しかけてしまう。

年賀状 自分で書いたの?

ふたつの丸いアタマがコクンと動いた。

エライね~ きっと イイコトあるよ!

何の根拠もないそんなオバサンの言葉に、小さい兄弟の表情がパッと明るくなる。

会釈するお母さんと子供たちの後ろ姿を見ながら、ハガキをポストに入れた。

あるよ、イイコト、きっと。

ポカポカ暖かい胸を抱いて、うちに帰った。

ねんがじょうぽすと



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ごきんじょ | コメント(18) | トラックバック(0) | 2021/01/02 11:30
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