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あめにも話。

子供が小さいころ「にほんごであそぼ」という番組をよく見ていた。

同じ局の、「おかあさんとなんちゃら」のようにお子様ランチ的な内容ではなく、古典文学や伝統芸能もためらわず紹介するのが面白い。

この番組の特徴のひとつが、暗唱を勧奨するという点であった。

脳ミソの新しいうちに丸覚えしたことは、以後の言語感覚の礎となる、という考えに違いない。

楽しく番組を見るうち、じゅげむじゅげむごこうのすりきれ、などと自然に覚えていった。

覚えたひとつが宮澤賢治「雨ニモマケズ」。(盛岡弁ではこちら→雨ニモ負ケズ

寿限無よりはだいぶ長く、難しい言葉もある。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ…


行ったり来たりしながらも、ひらがなもアヤシイ年の子が、30行もある詩をそらで言えるようになるのだから、子供の記憶力はすばらしい。

声を揃えて唱えるふたりの声を聴いていると

雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ…


身体は丈夫なほうがいいなあ、とか

ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ…


かしこい人になったら嬉しいなあ、と思い

ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ…


将来の苦難を思い浮かべ、胸を痛めた。親にしてみれば、わが子だから

ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ…


そんな風になるのは悲しいが

サウイフモノニ
ワタシハナリタイ


本人がなりたいなら仕方がない、応援しよう、と考えたりした。

ムスメとムスコの心の底に、あの言葉は今もあるのだろうか。

今日は賢治没後90年である。

あめにもまけず



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/09/21 11:30

ゆうしょう話。

私はかつて、父の薫陶よろしく阪神ファンであった。

遡ること40年の昔、掛布・ブリーデン・ラインバックの時代である。

しかし、可憐な少女の私がどんなに懸命に応援しても、阪神は優勝しなかった。

あまりに勝てないチームに嫌気がさして応援を放棄したとたん、85年のアレだ。

はんしん

ことここに至って、私は自分の応援する選手・チームは決して勝てない、というジンクスに気づいた(→じんくす話。)。

声を枯らして応援したチームが勝つ、という嬉しい体験のないまま、以来スポーツ観戦全般に興味を失くして、大人になった。

とはいえ私とて人の子であるから、地元チーム、日本代表に勝ってほしくないわけではない。

しかしジンクスは強力で、ニュースに興味を持ったり、試合のあることを小耳にはさんで

勝てばいいなァ…

うっすら思っただけで、どんなスポーツも残念な結果になってしまう。

今回の優勝は、私が阪神に完全に興味を失ったことの証左に他ならない。

そう考えると、球団から薄い金一封くらい貰ってもよさそうな気がするが、うっかり好感を持つとまたジンクスが発動してしまうので、難しいところである。



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てれびじょん | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/09/15 11:30

じぇらーと話。

混雑のターミナルで乗換え、到着した駅もまた、観光客で混み合っていた。

さいわいに用件は早々に済んで、長居は無用と帰路を急いでいると

…-ト食べて帰ろっか…

…!

前を行くカップルの、女性の声が耳にとまった。

ちょっと待って、今

ジェラート食べて…

って言わなかった?

わが市は、どういうわけかかき氷が名物で、いつの間にやら氷の聖地などと言われるようになった(→こおりの話。)。

遠くからわざわざやって来た人が、1杯1000円を超すかき氷に行列を作っているのを横目に

ただの氷の何がいいんだかね…

冷ややかに通り過ぎたり、している。

そんな私も、アイスクリームなら大好きだ。

なかでも、色とりどりのバケットから削るようにすくって、ワッフルに盛り上げたジェラートは、本当に楽しいし、美味しいと思う。

ところが市内にはめぼしい店が無い。

この数年、雨後の筍のようにできたかき氷屋のうち、ひとつでもジェラート屋になればいいのに、と思っていたから

ジェラートってどこ?

あやうく彼女を呼び止めそうになった。

オードリー ヘプバーン扮する王女が、ローマのスペイン階段でジェラートを食べるシーンが印象に残る映画「ローマの休日」。

公開されたのが1953年8月27日だから、今日8月27日はジェラートの日だそうだ。

市内にすてきなジェラート屋を見つけたら、興福寺の五十二段階段に座り、猿沢の池を見ながら、食べてみたいものである。

すぺいんかいだん



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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/08/27 11:30

はんおん話。

出先から回ったので、少し遅い時間に実家を訪ねると、母はちょうど庭の水やりの最中だった。

♪…カダン カダン お花をたいせつに…♪

鼻歌など歌って、ゴキゲンである。

懐かしいの 歌ってるじゃない

これって何の歌だっけ?

カダンってほら 花の殺虫剤の…

ああ!カダン!

分からずに歌ってたのか。

テレビっ子だった私はCMソングに強い。

これは 葉の汁を吸うアブラムシ
これは 葉っぱの色が悪くなるハダニ
黒いハンテン 黒星病
白いカビの ウドンコ病
カッパン病は葉を枯らすのです
※カダン カダン カダン お花を大切に
(※繰り返し)


それにしても、即座に歌えたのには、われながらビックリだ。

この歌はメロディーも思い出深い。

CMだからテンポよく、楽しい雰囲気の曲なのだが、おばーちゃんも歌っていた

♪カダン カダン カダン お花をたいせつに♪

この部分だけに印象的な半音が使われており、明るい曲調の童謡に慣れた子供の耳には

お花を大切にしないと 悪いことがおこるのでは

なにやら不吉に響いたのだ。

うっかり花など植えて 枯らしたらエライことだ

園芸音痴の私が、大ごとにとらえてしまう原因のひとつは、この歌ではないかと思っている。


(検索してみたらえらくポップになっていて驚いた)



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てれびじょん | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/08/23 11:30

まじめな話。

テレビを点けたら、たくさんの人が広い場所に集まり、ラジオ体操がはじまった。

どうやら生中継である。壇上の、見覚えのある体操の先生の背後には

1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭

大きな文字が読める。

日本で、世界で、1000万人が手を振り足を曲げていると知って、参加せずにはおられない。

さっそく腕に覚えの体操を始めた。

運動が苦手で、体育の成績もいまひとつだった私だが、1学期だけは少しマシだった。

ラジオ体操が評定に入るからだ。

しっかり曲げ伸ばし、マジメに身体を動かすだけでいいラジオ体操は、私の性分に合っていた。

だるそうにアゴを上げ、猫背でダラダラする男子や、股を開く動きを恥ずかしがってチマチマ動く女子を見ると

マジメにやらんかマジメに!

口には出さねど大声で思ったものだ。

以来50年、性分は変わらず、やっぱり大マジメに手を振り、足を曲げながら、画面の参加風景を眺める。

お母さんに連れられ、見よう見まねで体操する小さい子を微笑ましく見ていたら、3人のオッサンにカメラが切り替わった。

関係者らしいお揃いのポロシャツを着たオッサンどもは、カメラを気にしながらニヤニヤ薄ら笑いを浮かべ、半端な体操をやっている。

身体を曲げる向きも、回数も間違っている。

マジメにやらんかマジメに!

大げさに言えば義憤のようなものがこみあげた。こんなに腹を立てるのは、久しぶりである。

らじおたいそうさい
(1000万人で第62回ってすごくないか)



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てれびじょん | コメント(2) | トラックバック(0) | 2023/08/20 11:30
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