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もふもふ話。

マグを片手にソファにかけたら、クッションが邪魔っけで、行儀悪く足で蹴落とした。

ボルスターというのだろうか、円筒のクッションだ。

もふもふくっしょん

モフモフだった毛並みも、今はダマダマになり、見る影もない。

そろそろ処分の潮時かしら…

床に落ちたクッションを眺めていたら、ふと疑問が湧いてきた。

そもそも なんでこんなの買ったんだろ?

記憶をたどれば、それはたしか仕事帰りだった。

駅からバス停へ、通り抜けたショッピングモールの中の雑貨店。

店頭セールで、コロッケのように積み上げてあるそれを、つい手を伸ばして触ったのだ。

ふあ~… もふもふ~

気がつけば、かさばる紙袋を抱えていた。

うちに帰ってソファに腰掛け、買ってきたクッションをさっそく抱え込む。

モフモフの柔らかい毛並みに、ネコを撫でるように触れていると、かたくこわばっていた心の中の何かが、とろとろと溶けていった。

ムスメに続き、ムスコが家を出て、1人暮らし。

あんまり認めたくないけど、あの時はちょっぴり寂しかったのだ、と思う。

そんな生活にも慣れて、さいきんはクッションを膝に乗せることもなくなった。

モフモフの役割は終わったらしい。

コーヒーを飲み終え、ゴミ袋をとりに立ち上がる、4度目の春



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/03/15 11:30

しゅうでん話。

…関西の鉄道各社は 深夜利用客の減少を受け 今日から終電の時刻を繰り上げます…

しゅうでんくりあげ

ニュースの声に目をやれば、作業員が、時刻表の表示板を入れ替える映像。

終電に乗る生活はしていないけれど、報じられた中には、ムスメの通勤路線が含まれていた。

けっして要領のいいほうでない彼女は、納期の直前にはよく残業する。繰り上げを知らずに終電を逃したら、さぞかしショックだろう。

私だって人の親である。

人けのない改札で呆然とする、ムスメの顔がアリアリと浮かんで、胸が痛んだ。

ちゃんとニュースに気をつけているかしら。言ってやらなきゃ、と思う。

しかし、思うには思っても、連絡はしない。

以前は、人いちばい迂闊なムスメに、ああしなさい、こう注意しなさいと、指示ばかりしていた。

ただの取り越し苦労もあるし、余計な差し出口になることも多い。

それでも子供が痛い目に遭うのを、むざむざ見てられない、というのが、安い親心なのだ。

それが、思春期にさしかかったムスメを見ていて、徐々に考えが変わっていった。

ムスメにだって失敗する権利はあるだろう。

スッ転ぶのだって経験であって、その機会を自分の安心のために奪っていいのか。

手も口も、出すより出さないほうがめんどくさい。家族LINEでつい

終電早くなってるよ 気をつけてね

送ってしまいたい思いを、ガマンしている。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/03/13 11:30

あのひの話。

いつも通りのイモート一家の朝。

慌ただしくお弁当を提げて、ダンナのコージさんは会社へ、メイちゃんは幼稚園へ。

お弁当の残りでお昼ごはんを済ませたイモートが、卒園謝恩会の打合せに、着替えて出かけようとしたその時。

大きな大きな何かが、アパートを気味わるく揺らした。

ドスンと重いものが落ち、ガチャンと食器が割れ、続いてビシビシとひび割れる音。永遠と思える恐ろしい時間が過ぎて、やがて静かになった。

しゃがみ込んで頭を抱えていたイモートが顔をあげると、年末に買ったばかりのTVボードが壊れ、液晶テレビが床に落ちている。

放心状態で床に足を投げ出していたが、メールの着信でハッと我に帰った。

幼稚園からの連絡だ。

鍵もかけずに飛び出し、いっさんに駆けて駆けて園庭に飛び込むと、園児たちは小さくしゃがんで丸い輪になり、先生に囲まれていた。

上履きのままメイちゃんの手を引いて家に帰り、手を洗わせようとしたら、小さい握りこぶしの中に、何かがかたく握り込まれている。

それは1本の赤いクレヨンだった。

日中、どうしても連絡がつかなかったコージさんは、夜半を過ぎて、ビックリするほどドロドロに汚れ、ヘトヘトになって戻った。

いわゆる帰宅難民ってやつよ~

ここまで電話で話してきた、イモートが言う。

あとで考えればさ~ そんな必死こいて帰んなくてもいいわけよ~ 会社に泊まればさ~

まーそうよね でも帰りたかったんでしょ アンタとメイちゃんのとこに

そうかな~

そうだよォ オトコは家が好きだからネ だよ愛 

へへへ… そっかな~

電話口で、イモートは照れている。

今、ノンキにこんな話ができるのも、たまたまのこと、ただの僥倖にすぎない。

あの日あの場所にいた人も、いなかった人も、この地球上で命があることは、得難いめぐりあわせなのだと、10年の月日が過ぎて思う。

お友だちと肩を寄せ、しゃがんで震えていたメイちゃんも、ママより背が高くなった。



本日は2017年3月11日の記事に加筆して掲載いたします。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/03/11 11:30

ぼしぼし話。

し…

ぼしぼし??

電話の声は、久しぶりのムスメ。

便りの無いのは良い便りを体現する彼女からの連絡は、つまりは困りごとである。

んか カオがカユイ… メもカユイ~

はっはーん。

アンタそれ 花粉症よ 来るものが来たねエ

ウッソ!

うちではムスコが早くから発症し、遅れて私にも症状が出はじめた。

ムスメひとり、花粉が多かろうと少なかろうと、ずっと平気の平左で居たのだが

そん~!アリエイ~!

どうしても認めたくないようである。

ダビズも出ないし チガ…… はくしょん!

ハナミズは出なくても詰まってるじゃない

え~?つってなんか…

モシモシ言えずにボシボシ言ってたくせに。

とりあえずネットで調べて、花粉症対策をしなさい、それでおさまったらやっぱり花粉症だから、と言ってやりながら、フフッと笑いがもれた。

ムスメにはえばってみせたものの、数年前、私が発症した時も、最初のうちは

そんな!私が?アリエナイ!

なかなか認めなかった覚えがあるから、往生際の悪さは、私に似たのかもしれない。

今日も当地の花粉情報は「多い」である。

かふんじょうほう



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/02/24 11:30

いえいの話。

職場の先輩の、スマホの写真を拝見した。

見せてくださったのは風景写真だが、指で画面を送る中に、何枚もご自分の写真がある。

私はつい、不思議そうな顔をしたのだと思う。彼女は恥ずかしそうに

いえその…イエイをね…

は?

お天気いいし 新しいセーター着たし…

やっとピンと来た。

ああ、遺影ですか!早くないですか?

ハハハと笑って、その場は終わった。

うちの母も、よく撮れた写真があると

これを遺影にしてちょうだい!

冗談なのか本気なのか、言ったりするから、そういう考えは自然なことなのかもしれない。

父の時は、適当な写真がなくて本当に困った。

暗いの、斜めを向いてるの…やっとちゃんと写っていると思えば、シカメ面をしている。

近頃は終活などといって、生前から事細かに指示を残す人も多いようだが、父は違った。

遺影はおろか、お墓はどうするかなど、わが亡きあとの話を一切しないのだ。

痛いのも、病気も、嫌がった人である。

母が手術をするときは、本人より怖がって、本人より弱っていた。

遺影にはけっきょく、旅行会の会員証の、小さな写真を引き伸ばして、使った。

額におさまった、ムッとした顔を見るたび

おとーさん 死ぬの怖かったんだね

父には悪いけど、すこし笑えてくる。

もうすぐ、父の祥月命日だ。

いえい



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2021/02/23 11:30
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