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せいせき話。

郵便受に白く厚い封筒

ダイレクトメールやお気楽な手紙ではない、マジなたたずまいに緊張しつつ、差出人を見てドキンとした。

ムスコの通う大学だ。

不出来なムスコを受け入れてくださった、ありがたーい大学である。

その名を見て喜びを感じこそすれ、恐れおののく必要などないはずが、不吉な予感しかしない。

ハサミを出す暇も惜しんでベリベリと封を切ると、中から数枚の白い紙が現れた。

成績表である。

この大学は、頼みもしないのに、ムスコの成績を送って寄越す。

近頃の大学はそういうところが多いらしいが、昔ならおよそ考えられないことだ。

4年間の学生生活は山あり谷あり

希望に胸を膨らませ、勉学に励むフレッシュマンも、やがて中だるみで進級を危ぶまれる。

気持ちを引き締めて落とした単位を取ったものの、また異性によそ見をし、あるいは試験日に熱を出して危機一髪。

友人や先輩の救いの手を借り、再びギリギリの一線をくぐって、卒業というゴールに滑り込む。

結果オーライである。

かつて、おおかたの大学生は、中途のこんなあれこれを、親には黙って乗り切ってきた。

いちいち報告したところで、あたら老親の尊い寿命を縮めるばかりではないか。

しかし、今の大学は、保護者の寿命が延びるのを食い止めたいらしい。

封筒からひっぱりだした紙を、並んだ字を見ないように伸ばす。

わがムスコの、1年間の粒粒辛苦の結果である。直視せねばと思いつつ、老眼気味の目の焦点がなかなか合わない。

数字の1つが目に飛び込んできたとたん、動悸が激しく、胸が苦しくなったので、慌てて畳んで元の封筒にしまった。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2018/12/06 11:30

しまいの話。

おばーちゃんがちょっとした手術をする。

命にかかわる問題ではなく、日常の不快感を取り除くためのものだ。

日帰りでも手術なので、事前説明から付き添うことにした。

症状の説明を受け、諸注意を聞くうち、おばーちゃんの顔が、どんどん心細げになっていく。

病院にお世話になった方ならご存知だろうが、

手術中に○○の場合、○○することがあります

○○を○○した場合、後遺症が残ることがあります


まあこんな風に、最悪の事態を軽く示されてしまうわけだ。

おばーちゃんはだいたいがクヨクヨするタチである。

○○したらどうしよう…

○○したせいじゃないかしら…


ふだんから、取り越し苦労や繰り言が多い彼女に対し、私は言っても仕方がないことは言わない、というタイプ。

若い頃はそういう母と

そんなこと今さら言ってもしょうがないでしょ!

アンタには思いやりというものはないの!

などと、よく衝突したものだ。

私も年をとり、ケンカもめんどくさくなったが、内心は付き合い切れねーなと思っている。

おばーちゃんのほうも、不安だったり、眠れなかったりすると、イモートに電話しているようだ。

イモートは私と違って、母の根拠のない不安を、うんうんと聞いてやる余裕がある。

優しい妹と、意地悪な姉娘。

まるで童話みたいだ。

残念なことに、優しい妹娘は、遠く離れた場所に住んでいて、助けに来られない。

お気の毒さまだが、おばーちゃんには意地悪な姉娘の付き添いで、我慢していただこう。

あねむすめ
(ホウレイセンの描き方に悪意を感じるシンデレラの姉娘)



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/12/05 11:30

ばたばた話。

連休そっちで予定あるから、帰ろっかな~

と、ムスメからLINE。いいよーと返事しつつ、内心ちょっと慌てた。

わが家は絶賛散らかし中

衣更えから派生して、あっちこっちの収納を開けたものだから、家ん中がぶっくら返っている。

寝室も寝られる状態ではないため、ここのところムスメの部屋で寝ている。

とにかくひと通り見られるようにしておかなきゃ、と、バタバタ片付けに取り掛かった。

ホコリを払いかけて、アレ?と手が止まる。

他人様ならともかく、わがムスメである。

少し前まで、散らかってようが汚れてようが、この同じ家で、顔を突き合わせていた相手なのだ。

表面を繕って片付ける意味って、何なんだろう。

おかーさん1人でこんな情けない生活してるのか、と思われるのがイヤなのかな。

そういえば、私が実家に帰ろうと電話すると

今日は散らかしてるから 来ちゃダメ~

と、おばーちゃんに断られてしまうことがたまにある。

百年前から散らかしてるくせに、何をいまさら、とバカバカしく思っていた。

ムスメが家を出て5年が過ぎ、あれと同じ心の働きが、私にも生まれてきたということだろうか。

…などと感慨にふけっている場合ではなかった。

ムスメのベッドで寝たのがバレないよう、サッサと片付けねばならないのだ。

衣類の山をでたらめにクローゼットに押し込み、バタバタの連休後半。

今日もいいお天気だ。



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/11/25 11:30

はんてん話。

朝夕が冷えてきたのでハンテンを出して着る。

去年おばーちゃんから

マワタが入ってる 軽くて暖かいわよ

さもありがたそうにお下げ渡しになった品だ。

既製品ではなく、和裁をなさる方に縫ってもらったものだという。仕立下ろしの印の、しつけ糸がついていた。

市販のハンテンの袖は、洋服のように袖口のつぼまった筒袖だが、このハンテンは、普通の着物と同じようにタモトがある。

羽織ってみると軽く暖かく、腕を動かせば、タモトがゆったりついてくる感触が優雅である。

今でこそフリースだダウンだと新素材はたくさんあるが、重たい綿入れしかなかった時代、この軽さは高価なマワタだけのものだったのだ。

しかし、朝っぱらから、異変は起こった。居間に入ろうとドアを開けたら

びっ!

ギャッ!

レバー式のハンドルに引っかかって、袖口が破れた

優雅なタモトが、雑な動きについてこないのだ。

その後も、椅子の背やら、物干し竿の端やらに引っかかり、ハンテンの袖口は見るも無残な有様。

気づくたびに繕うものの、引っかかる頻度にとても追い付かない。

由緒正しきハンテンなので気がひけて、しばらく黙っていたが、いくらなんでも破れ過ぎだ。おばーちゃんにやんわりその旨を伝えると

あー、生地が弱ってるのかもね~

と、軽く返された。

弱ってる?新品なのに?

うーん…結婚するときに持たしてもらったやつだから…

は?!ケッコン?!

後期高齢者の嫁入り支度が、形状を保っているだけで驚きだ。

なんでそんなものが今日まで新品だったのか、物持ちのいいのにもほどがある。

正倉院か!

にほんかいみそ
(ハンテンが世界一似合うといえばこの人)



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/11/17 11:30

ぜりーの話。

299円のコーヒーゼリー(→ せっとの話。)を前に、嬉しそうなおばーちゃん。

ドリンクバーで汲んできた氷無しのコーラを飲みながら

美味しいかねえ そんなブルブルしたもんが

そう言うと

ブルブルじゃない フルフルよ 値段のわりに美味しいのよ ここのは…

ここで食べるのは初めてではないらしい。

私はこの、ゼリーというのが好きでない。コンニャクがキライなのと関係ある、かもしれない。

おかーさんゼリーなんか好きだっけ?

好きよ ゼリーがキライな人なんかいるの?

アタシだよ。

娘と生まれて50年以上経つが、この人は私の好き嫌いをいっこうに覚えてくれない。

グリーンピースがキライだ、と、百万回言っても、春先に豆ご飯を炊いて食べさせようとする、そんな母である。

コーヒーゼリー コーヒーゼリーねえ…

やけにこだわるね今日は

そうなのだ。ふだんはぜったい食べない、久しぶりに見たコーヒーゼリーに、何か引っかかるものがあるのだ。

なんだろうコーヒーゼリー。なんかあるなコーヒーゼリー。

分からないまま家に帰り、パソコンを開いたら、ハッとひらめくものがあった。

自分のブログを検索すると、ちゃんと書いてある。(→ こうぶつ話。

こうぶつ
(コーヒーゼリーが特に好きらしい)

すっかり忘れていたが、ムスコの好物だ。

子供の好き嫌い覚えない遺伝子があるとすれば、それはハッキリおばーちゃんから私に遺伝しているものと思われる。



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/11/15 11:30
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