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おわった話。

はぁー…終わったぁ…

ATMから吐き出された、通帳の数字を見て、思わずほっと溜息が出た。

ムスコの後期授業料の引落が、無事済んだのだ。

遠い町の大学に通うムスコは4年生。つまりこれが、最後の授業料である。

ここに至るまでには、まあいろいろあった。

1人でよくやったよな、と思う半面、子供に負担をかけた自覚もある。

さいわいムスメもムスコも健康で、運よくあまりお金のかからない学校に進んでくれたし、高価な塾や習い事もしなかった。

それでも毎度、スコスコ支払えるとは限らない。薄い財布を握りしめ、胸の底が冷たくなるような、綱渡りみたいな思いもした。

ムスメもムスコも何も言わないが、お金さえあれば選べた将来を、あきらめさせたかもしれない。

それは、この先ずっと、私が親として忘れてならない、2人への負い目である。

ムスメに続いて、来春はムスコも社会人になる。

「お母さん」の仕事も、最終盤だ。

ATMのひとたち1
(ありがとうございました またのご利用を…)



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ごかぞく | コメント(18) | トラックバック(0) | 2020/12/02 11:30

ごきげん話。

朝の家族LINE

おはようのすたんぷ

スタンプの後、今日も寒いね、こっちも寒いよ、とイモートとやりとりする。

ところが、いつもならここで入ってくるおばーちゃんが、いっこうに現れない。

今日お母さん遅いね

@お母さん おーい、起きてる?


呼びかけても、なしのつぶてだ。

朝イチのLINEは生存確認でもあるから、ちょっと心配になる。私より遠くに住み、私より心配性なイモートは、さっそく電話をしてきた。

モシモシ…お母さん大丈夫かな?

さあ… 一昨日電話した時はフツーだったけど

昨日の午後からLINEにも来てないワ… 具合でも悪いのかしら

またメマイかなあ 電話してみる?

もし寝てるんだったら 起こしちゃ悪いしねエ

相談の末、しばらく様子を見て、お昼前に電話してみようということになった。

すると、10時を過ぎたころ、

お早う

おばーちゃんからのメッセージが入ったので、とりあえず安心した。

しかし、お気に入りのスタンプも、得意のもつかない、たった3文字。

ご機嫌を損ねただろうか?ここ数日のやりとりを思い返しても、腹を立てるようなことはない。

何かあったのか、別の心配が湧いてきた。同じように感じたらしいイモートから、また電話。

モシモシ… おかーさん、怒ってるのかな?

さあ… アンタ、何か言った?

ううん おねーちゃんは?

いやー いつも怒らせるのはアタシだけど 今回は心当たりないワ

なんだろう?

なんだろうね?

話し合ったが結論は出ない。

おばーちゃんだって1人の人間、ムシャクシャすることもあるだろう。和気あいあいと家族LINE、なんて気になれないこともあるに違いない。

モヤモヤと日が過ぎて、翌朝。

おはようのスタンプ2

私より、イモートより早い、老母のスタンプ。どうやらご機嫌は直ったようだ。

やれやれ、いまごろイモートも遠い町で、ホッとしていることだろう。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/12/01 11:30

てっちり話。

いよいよ鍋ものが恋しい季節。

このご時世、忘年会は無いし、あったとしても鍋は無理だろう。

好きな人たちと、鍋をつつきあえる日はまた来るのだろうか、などと考えていたら、昔食べた鍋のことを思い出した。

それはもう30年も前、若いOLだったころ。

職場では新人から中堅になり、責任も増すのに、なぜかどんどんやりがいを感じなくなっていた。

仕事の忙しさにかまけて、恋愛もうまくいかない。

ビル風が自分にだけ冷たい気がする、やさぐれた冬のある日、職場に電話が入った。

おい メシでも食わないか 話もあるし…

父からだ。

そういえば、しばらく実家にも帰れていない。いいよ、と答えて、待ち合わせを決めた。

久しぶりの父は、見覚えのあるコートを着て、私の姿を認めると、よう、と手を挙げ、私を待たずにスタスタ歩きだす。

待ってよう!

どうやら行先は決まっているらしい。

洗いざらしの紺の暖簾を上げて入っていったのは、小体なふぐ料理の店だった。

私には何も聞かず、てっちりのコースを注文し

こういうもんを食わしてやるのも 親の役目だからな

父はぼそりと言った。

父の話が何だったか、もう覚えていないが、ピリッと一味の効いたポン酢で食べる、初めてのふぐは美味しかった。

ゼラチン質の皮のところを噛みながら、何の脈絡もなく、寿退職なんて止そう、と思ったことは、なんとなく記憶にある。

親の役目、か。

私は親の役目を果たせているだろうか。

ムスメにも食べさせてやりたいな、と調べてみたが、父と鍋を囲んだミナミのあのフグ料理屋は、いつの間に閉店したのか、見つからなかった。

てっちり



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/11/29 11:30

あきすの話。

紅葉の秋は空き巣の季節でもあるとか。

理由としては、気候が良く、窓を開けて過ごす時間が長いこと、行楽シーズンで留守がちなこと。

旅行資金など、まとまったお金が家にある確率が高いことも、不埒者を惹きつけるらしい。

自分ちはさておき、1人暮らしの老母を持つ身としては、そちらがまず心配になる。

鍵を閉め忘れて旅行に出かけて(→とじまり話。)以来、戸締りには非常に気を使っているようだが、最近はどうだろう。

思い立って、ちょっと電話してみた。

モシモシ?アタシ…

ハアハア… あーなに、どしたの?

いや、元気かなと思って… 何してたの?

いや、ちょっとね…

なんだか慌てているし、歯切れが悪い。困ったことになっているのではないだろうか。

どうかしたの?大丈夫?

なによいきなり…大丈夫よ!大丈夫って言ってるでしょ!

こんな風に大丈夫大丈夫を連発するときは、大丈夫でないことが多い。心配になって

今日、そっち行ってもいい?

なに?なんで?何の用?

いや、しばらく行ってないしと思って…

別にいいよ来なくて…また、用があったら呼ぶし

ますますアヤシイ。

いいじゃん別に 用が無くって行っても…

ダメダメ―!

やけに頑強に拒むではないか。

おかしいよ おかーさん、何かあったでしょ?

なんもないって言ってるでしょ!ただ…

ただ?

衣更えはじめたら 大変なことになって…

ハアハア

家じゅうひっくり返ってて…

フンフン

空き巣に入られたみたいになってるから 来ないで!

そういうことでしたか。

そこまでの混乱状態を見たい気もしたが、母が嫌がるので、止しにした。

あきのあきす



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2020/10/29 11:30

ほごしゃの話。

久しぶりのショッピング

自分の買物ではない。おばーちゃんに随行するのである。

やることといっても荷物持ちくらい、スキあらばモノを買い与えようとするのを、断るのも大変だが、娘の義務と思ってついて行く。

ウィンドウショッピングが苦手な私は、おばーちゃんについて歩くだけで、クタクタだ。

そうそう、新聞で見たの ここで聞いてみよう

ふいに折り返し、目についた書店の奥にどんどん入っていく母の後ろを、慌てて追いかけた。

中年の女店員が、丁寧に応対してくれて

昨日の夕刊の 広告で見たんですけど…

これこれこう、と説明するが、うまく伝わらない。店員は手元の端末で検索して、あれこれ画像を出しては、おばーちゃんに見せている。

…店頭では…限定の…ですか?

ん?

気づくと店員が、後ろにいる私に向かってしゃべっている。

いや、私は分からないです 見たのは母なんで

そう言って断っても

…ネットのほうですと…ですよね?

また、前にいる母を素通りして、同意を求めるではないか。

おばーちゃん、だからだろう。高齢者は新しいことは分からない、と決めつけて、後ろにいる娘に判断させようとする。

私、母の保護者じゃないです 

80過ぎた母ですけど、60近い娘を守ってるつもりなんです

ほら、右手に提げた紙袋 私の夕飯の心配して、買ってくれたデパ地下のオカズなんです


頭の中がぐるぐる、うまく言えなくて

ですから分かりません!母に聞いてください!

つい、強めに断ったら

アンタ、店員さんに あんなに言わなくても…

お店を出てから、当のご本人に叱られた。

りんねる12がつごう
(欲しかった雑誌はコンビニ限定販売だったのでした)



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ごかぞく | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/10/25 11:30
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