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おさない話。

その日私は珍しく荷物が多かった。

通勤カバンのほかに手提げ、降り出した雨に折り畳み傘を広げたうえ、通りかかったスーパーでは買物までした。

また、よりによってその買物が、特売の玉子に大根、食パン。

重い、柔らかい、割れるの三重苦である。

寒いバス停で待ちかねて、やっと来たバスに乗ったら、これがまた大混雑。

座席どころか、吊革を確保するのがやっとだ。

手提げをムリヤリ肩にかけ、カバン2個とカサを片手にまとめて、ようよう吊革にぶら下がった。

カーブ、上り坂、下り坂。車の揺れが遠心力となって荷物を振り回すたび、よろけないよう懸命に脚を踏ん張る。

やがて車窓が見慣れた景色になりはじめても、吊革からも、荷物からも、手が離せない。

信号が青になり、降りるバス停がどんどん近づく。

誰か、ボタン押して!

大声で念じても、心の声は誰にも聞こえない。

このままでは通過してしまう。雨の中、重い荷物を手にとぼとぼ歩いて戻るのはイヤだ。

吊革を離すか、荷物を離すか。

年齢を考えたら、やはり安全策を取るべきだろう。

カバンを足の間に下ろし、苦心惨憺、膝にはさんで固定して、自由になった片手を伸ばすと

グラッ…

とたんに車体が揺れて、ヒヤリとするが、

♪ぺんぽーん♪つぎ とまります

こうしゃぼたん

やれやれ、なんとかボタンを押すことができた。

やがてバスが停まり、降車口に向かおうと目をやると、私の前にむくりと立ち上がる姿が見えた。

窓際の1人掛に、安穏と座っていた女性である。

降りるんならボタン押せやババア!

大声で思ったけれど、やはり心の声は誰にも聞こえないのであった。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2020/01/28 11:30

はっけん話。

ピアノに物をしまうようになった(→ぴあのの話。)にはキッカケがある。

どこのお宅にも、ちょっとした抽斗はあるだろう。

ボールペン、便箋、貰い物のキーホルダーや、宅急便の伝票。なんでもないけど、時々必要なものが、こまごまと入れてある。

ある日私は、そこに美術展のチケットを入れた。

見に行く予定がかなり先だったので、おサイフに入れていて折れたりしては困ると思ったからだ。

ところが、いざ出かけようと抽斗を開けたら、そのチケットが無い

たしかにここに入れたはずのチケットが、煙のごとく消えてしまったのである。

思い違いかと、他の場所を探しても見つからず、仕方なく当日券を購入して観覧した。

ケチの私にとって、1600円の損害はヒジョーに痛かった。

ところが先月のこと。

抽斗がふいに開かなくなったので、一つ下の抽斗を抜いて奥を探ると、何かが手に触る。

ひっぱり出したら、3つ折りにしたチラシにゼムクリップで止めた、消えたチケットが現れた。

むろん、とっくのとうに会期は終わっている。

チキショー!

その悔しさたるやいかばかりか。お察しいただきたい。

この抽斗はアカン!

以来、しまい場所の試行錯誤は続いている。

ぎゅうにゅうをそそぐうさこちゃん
(展覧会で買った、ミルクを注ぐうさこちゃん)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/01/26 11:30

ぴあのの話。

友だちのカナイさんと、ひさびさにランチした。

彼女の息子さんは目出度く就職が決まったのだが

困ったなあと思って…

何事かと思えば、息子さんの年金手帳が見当たらないのだという。

20歳で国民年金に加入すると交付される年金手帳。就職して厚生年金に入ると、提出だか、呈示だかが求められるはずだ。

失くしちゃいけないと思って しまったのは確かなの ただそのしまい場所がねえ…

あー、あるある!

これは大事だ、と特別な場所にしまったら、特別すぎて忘れてしまう、オバサンあるある。

アナタもムスコ君の年金手帳、預かってるでしょ?どこにしまってる?

あー、うちはね ピアノ

は?

ピアノのフタ開けて 鍵盤の上に並べてる…

私も、ムスメもムスコも、ピアノを習ったから、うちにはピアノがある。

子供たちが家を出て、鳴らさなくなった楽器を、私は収納家具として使っているのだ。

ホコリはかからないし、ドロボーにも(たぶん)見つかりにくいと思うし、いい考えだと思うが、どうだろうか。

とうめいぴあの
(YOSHIKIさんのピアノではマルミエだけど)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/01/25 11:30

ていでん話。

予定通り始まった(→ だんすい話。)マンションの全館停電

うちは電気が止まるとネット回線も給水設備も使えないから、手も足も出ない。

2か月前に予告があったので、この日は仕事が無くても出かけてしまおう、と思っていた。

予定開始時刻は11時。

朝起きて部屋を暖め、電気のあるうちに洗濯機を回して料理してと立ち働き、ひと段落して時計を見たら、10時になっていた。

めんどくせーな 出かけるの…

たかが知れた停電を前に、逃げ出すのもバカバカしい気がする。

そうと決まれば、せっかくなら快適に過ごしたい。

電気がアレだから、暖房が入らない。暖かくなることは何か考えて、1つ思いついた。

入浴である。

水は出なくても桶でかかり湯できるし、しっかり浸かれば暖房ナシでも数時間は暖かいだろう。

いそいでお湯を溜めた。10時50分、停電開始の10分前に

おフロがわきました…

人工音声の風呂子さんに呼ばれ、嬉々として風呂場に向かう。

眠い時のお風呂は億劫だが、朝風呂はいい。

今ごろ他の人々は、せっせと働いたり学んだりしているのだと思うと、入浴剤を入れただけの水道の水が、天下の名泉に思えてくる。

わが世の春などという言葉が、頭に浮かぶ。

われながら、お風呂は名案だった。のびのび手足を伸ばして解放感を味わっていると

フッ…

いきなり電気が消えたので、ビクッとした。

想像できないでもなかったのだが、予想外の暗さである。停電とわかっていても、いざ消えたら、やっぱり驚いてしまう。

なんだかおかしくてクククと笑ったら、薄暗い浴槽の水面に、さざ波が立った。

やみぶろ
(お風呂を暗くして入ると何か効果があるらしい)



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2020/01/22 11:30

てんてき話。

争いを好まない温厚な性格の私。

くわえて年々気が長くなり、今では少々のトラブルにはあまんじて目をつぶる用意がある。

そんな私をムカつかせる天敵が、マンション管理会社の管理人の1人、ナニガシである。

赴任してきた時から印象は良くなかった。

こちらがコンニチハ~と言った瞬間から、アゴが上を向いている。

マンションの管理人というのは、リタイア後の再就職が多いが、このナニガシもそうだ。

おそらく前職ではそれなりの役職だったのであろう、エバりにエバってきたエバり臭が消えずに残っていた。

ちょっとした依頼をした時、その印象はさらに強まった。

依頼といっても、ヤツにしてみれば職務に該当することである。困りごとに対処できるからこそ、管理人の存在意義があるのではないか。

ところがこの男、入居者の持ち込む問題を、基本的に厄介事と思っている。

無ければヨシ、見ないふりできればラッキー。運悪く持ち込まれても、まず全力で門前払いしようとする。

こちらだって即刻解決せよとねじ込んでるわけじゃない。

困った、どうしましょうと相談しているのだから、そうですか、それは大変ですね、と共感がまずあれば、腹は立たない。

それなのに、うちは関係ないの一点張りなのだ。

こやつにとって仕事とは、ふりかかる火の粉を払うことなのである。

おまけにこの男、仕事もデキないくせに、名前が難しい

ナニガシ、と仮名にしなければバレてしまうくらい、珍しい姓なのだが、意地でも覚えてやらないと決めている。

えーと、何とおっしゃいましたっけ?変わったお名前で、オホホ…

用件の度に言ってやるのが、ささやかな復讐である。

そして私は、こういうことをやりだすと、大変にしつこいのである。

こぶらたいまんぐーす



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もろもろ | コメント(18) | トラックバック(0) | 2020/01/20 11:30
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