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つうじぬ話。

外国人観光客も、ずいぶん戻ってきた。

改札を通ろうとしたら、見上げるような背の高い人が、窓口の駅員さんに何か言っている。

困っているならお手伝いしようかと、それとなく耳を澄ましたら

…なんですけど どっちが早いですかね?

私なんかよりよっぽど流暢な日本語だったから、ホッとしてホームへの階段へ向かう。

この20年ほどの間に、日本語ができる人は増えたなあと思う。

私が在外生活を送ったのは、30年ほど前。

SNSやインターネットの普及以前で、日本文化に興味を持つ人はぽつぽつ出始めたものの、日本語を学ぶ人はまだ少なかった。

病院で、カルテに書いたムスメの名前を見て

マンガの○○と同じね!

アニメ好きな若い看護師さんが、話しかけてくれたこともあった。日本に興味があると言いつつ、日本語はわからないらしい。

緑の瞳とバラ色の頬の彼女は、絵本のお姫様のようで、ムスメは注射が怖いのも忘れ、ポーッと見とれていた。

次の通院日。

注射器を手に、われわれ母子を迎えたのは、魔女めいたおばあさんのナースだった。

泣きわめくムスメに、優しく、辛抱強く

怖いのね~ 大丈夫よ~ すぐ終わるからね~

声をかけながら、手早く注射を済ませてくれたが

きれいなおねえさんがいいの~!

ムスメがずっと叫んでいた日本語が、彼女に通じなかったことは、まったく幸いであった。

きれいなおねえさん



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むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/02/28 11:30

ゆうとう話。

諸式高騰の折柄、電気代と並んで多く話題に上るのは玉子である。

たまご

毎週生協で買う玉子も、10個パックで5~60円は値上がりしている。

私などビンボー人にとってイタい打撃であることはたしかだが、そもそも安すぎたよな~、という気もする。

つい忘れそうになるけれど、玉子は工場で機械をガチャガチャ動かして作るものではない。

生きた鶏がウーンと頑張っても、1日1個しか生めないのだ。

そう考えると、安売で1個10円なんて、今までがおかしかった、とも言えるんじゃないか。

今後はもっと、玉子そのものの価値を勘案して、値段をつけてもいいと思う。

たとえば、かけウドンが300円の店で月見が350円でも、誰もおかしいとは思わない。

玉子1個にはそれだけの力があるのである。

ニュースなどでよく聞く物価の優等生という言い方にも疑問だ。

私は子供のころ学校の成績が良かったので、

ぢょん子ちゃんは優等生で いいわねエ~

よそのオバサンによく言われた。あれは決して、ホメコトバではなかった。

ガリベンのモヤシっ子…

勉強だけできたってねエ…


いくらカンの悪い私でも、薄笑いの陰にそれくらいの含みは読み取れた。

私は優等生と呼ばれたくて努力したわけじゃない。玉子だって同じだと思う。

勝手に優等生呼ばわりしておいて、ちょっと成績が振るわないと

どうした 優等生のくせに!

やいのやいのと大騒ぎされ

ぐれてやる~!

玉子の気持が、わかる気がする。



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/02/19 11:30

おでんの話。

立春を過ぎてもまだまだ寒い。

こんな日はおでんが食べたくなるが、1人暮らしになってからはすっかりご無沙汰だ。

子どもの頃のおでんには、コロという謎の物体が入っていた。

カボチャの薄切りみたいな扇形に黒い縁取りがあり、白くてベロベロして、味らしい味はない。

噛めば噛みきれるけど、柔らかさの中にもミョーな粘っこさがあって、無味の奥の遠~いところに肉の仲間らしきケモノ臭がする。

ヘンテコリンなものだが、ヘンなもの好きの私は、好んで食べたものだ。

しかも、コロはけっこうお高いのである。

市場の乾物屋でも、豆だの干瓢だの煮干しだのが手前に並んでいるのに、コロは奥のちょっと高いところに置いてある。

私はキライだけど、みんなが食べるからね…

母はなぜか、いつも言い訳をした。

そんなコロが、なんとマッコウクジラの皮だ、と知ったのはいつだったか。

遠く北洋から来たお方だと知っていれば、箸でつまんでブルブル振ったりせず、もっと有難がって食べたものを。

今は子供が帰るときにだけ作る、私のおでんにはコロは入れないが、自分は食べないコンニャクをゴロゴロ入れてしまう。

私はキライだけど、みんな食べるからね…

なんて言い訳しながら。

くじらころ
(右がコロ、左はさえずり 大阪のおでん=カントダキの具です)



本日早朝から多忙のため、2014年2月16日の記事に加筆掲載いたします。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/02/16 11:30

じしゃくの話。

百円均一の前を通ったので、マグネットを買った。

使っているフックの磁石が弱くて、ちょっと重いものをかけると、ポロッととれるのだ。

超強力!の字が頼もしい、新しい磁石をバッグに入れかけて

待てよ…

ふと手が止まる。

バッグの中のサイフには、各種カードが入っている。持物の中でも抜群に高価な精密機器である、スマートフォンもある。

それらに超強力!がくっついたら、マズいのではないだろうか。

理屈はわからないが、そんな気がして、バッグにしまうのをやめ、手に持ったまま、店を出た。

なにか強力な、電磁波的なものが、ビヨビヨ周囲に発散しているような気がする。

マグネットを持った手を、なるたけ身体から離して歩いていたら、昔のことを思い出した。

はじめて買ってもらった腕時計は、赤いベルトのディズニーウォッチ。

両親と一緒のときに、時計なんか要らないのだけれど、お出かけというとウキウキと手首に巻いて行った。

おうちに帰ってよそいきのワンピースを脱ぐ前、茶の間で腕時計を外したら

ダメよ テレビにのせちゃ…

母に注意された。

時計は精密機器だから、電気製品に近づけたら、具合が悪くなる、というのだ。

マジメな私は、ながらく母の言を信じてきたが

ホンマか?

齢50を過ぎるころ、ようやく疑いを持った。

いま、80を過ぎた老母に確かめても

へえ~ アタシそんなこと言った?

とぼけるだけだし、確かめようにも今の薄型テレビには、時計を置ける場所など無いのである。

ぶらうんかんてれび



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/02/11 11:30

ぬーどる話。

子供の頃は、土曜日はお昼までの半ドンだった。

給食がないから、お昼ご飯はうちで食べる。

母が外出するときは、食事は準備しておいてくれるのだが、高学年になると、たまーに出はじめのカップ麺が置いてあることがあった。

ヤカンでお湯を沸かせるようになったからだ。

小学生が親の留守にガスを使うなんてけっこうドキドキだが、電子レンジもコンビニもない時代はそんなものである。

めったにないことなので、食卓にイモートと私の分、2個のカップ麺がポコポコと置いてあると、珍しくて嬉しかった。

カップ麺の銘柄も限られていた当時、母が買ってくるのはもっぱらコレ。

さっぽろいちばんかっぷすたー

私もイモートも、ホントはカップヌードルのほうが好きだった。

カップヌードル、食べたいなあ

次はカップヌードルにしてもらおうね

姉妹で言い合いつつ食べ終えて、帰宅した母にもそう伝えたはずなのだが、次もまたカップスターが買ってある。

お母さん忘れちゃったのかな…

特売だったのかな…

カップ麺を食べるのは楽しい。基本的には嬉しいんだけど、できればカップヌードルがいいなあ。いつもそんなことを思っていた小学生の私。

なぜカップヌードルではなく、頑としてカップスターだったのか。

今になって思い当たるのは、容器の問題

カップスターは上の写真のように、波板状に加工したカップだったが、カップヌードルは当時、スチロールのカップだった。

紙なら燃えるゴミに出せるが、スチロールのカップは洗ってから分別せねばならない。

母の真意を問うたことはないが、楽をするためのカップ麺にその手間をかけるのが、イヤだったんじゃないかなあ、と思う。

本日1月18日は、カップスターの日



カップスターの発売48周年を記念し、2019年9月18日の記事に加筆再掲載いたします。



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/01/18 11:30
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