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かすてら話。

お歳暮の季節。

昨今は虚礼廃止で減ったようだが、私がOL(死語)のころは、勤め先にもお歳暮が来た。

缶ビールやジュースは打ち上げで全員が消費できたが、モノによっては届いた日に居あわせた者でウハウハの山分けとなる。

なかでもお菓子は、1つ2つ上席のお茶請けに出したら、残りはOL(死語)で分けていい、という暗黙のルールがあり、みな虎視眈々と狙っていた。

ある年、ふだんから気前のいい取引先から、平たくてものすごくデカい箱が届いた。

おおよそ畳半分くらいはあったのではないか。

有名菓子店の包み紙に、OL(死語)たちの期待は高まり、湯沸かし室は押すな押すなの人だかり。

総務のお局様が丁寧に包装を解くと、

…おお…

おさえきれない歓声が、どよめきとなって漏れた。なんと桐箱だ。

清々しい木の香と、それにも負けない甘い香り。

嬉しい予感とともに、フタが上げられる。

…おおーっ!

きりばこいりかすてら

なんと半畳、一面のカステラである。

人生経験の浅かった、若い私たちはキャーと盛り上がったが、お局様がたの様子がおかしい。

やがてお局の1人から重々しいヒトコト。

コレ…どうやって分ける?

一転、歓声は悲鳴に変わった。

畳半分の切らないカステラに対するは、小っちゃな果物ナイフ1丁

ビジネス街には百均もなく、まだコンビニも少なかった時代である。

ナイフに加えて、ティースプーンや割り箸を援軍に戦ったが、切っても切ってもなくならず、最後にはずいぶん荒々しいことになった。

以来30年、あれよりすごいお歳暮に、当たったことはない。



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/12/04 11:30

つういん話。

今日は通院。季節柄、待合室にはマスクの人。

ここでしか読まない雑誌をペラペラめくりつつ待っていたら、ドアの向こうから

…いやー!うわーん!…

漏れ聞こえるのは子供の泣き声である。

たぶん予防接種、注射だな。

やがて診察室の扉が開くと、小さな女の子が、お母さんに連れられて出てきた。目元が赤らんで、ヒックヒックしゃくりあげている。

病弱だった私は、冬の初めには必ず体調を崩し、熱を出した。お休みできるのは嬉しかったが、

さ、ミヤワキさんに行くよ

母が言いだすと途端に憂鬱になった。

ミヤワキ先生は子供の頃のかかりつけ。(→ はしかの話。)昔のお医者様は、熱が出たくらいのことでも、じつに気楽に注射をなさった。

しんどいから行かない…

バカね しんどいから行くんでしょう!

抵抗もむなしく、ミヤワキ医院の門をくぐる。

聴診器の後、銀色の平らなスプーンで舌を押さえられ、やがて看護婦さんが、アルコール綿の容器や様々な器具をのせたワゴンを押して現れる。

もはやこれまで、俎板の鯉とならないのが子供というものである。

泣いて泣いて、泣いた。

帰り道、どうしても泣きやまない私に、母もよほど困ったのだろう。商店街の小間物屋で、珍しくブローチなど買ってくれたこともあった。

あまりつけた覚えのないクマさんのブローチは、今もオルゴールの中にある。

くまのぶろうち




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むかしむかし | コメント(16) | トラックバック(0) | 2019/11/30 11:30

らぐびー話。

初の日本開催のラグビーワールドカップ

今回は日本代表が念願のベスト8入りし、大いに盛り上がったようだ。

スポーツ全般に無関心な私は、むろんどの試合も見てはいないが、よかったな、おめでとう、という気持ちだ。

ルールも知らないのに、ラグビー及びラガーマンに対してそこはかとなく好感を持っているのは、高校時代の記憶のせいかもしれない。

母校は生徒数も多く、運動部はひと通りあった。

バレー部、バスケ部、柔道に剣道、バド部に卓球部、ワンゲル部…。

昔からスポーツに関心がなくて、強いとか弱いとか、そういうことは全く覚えていない。

覚えているのはそれぞれの部員の印象だ。

たとえばサッカー部は、とにかくチャラかった。

授業中も前髪の具合ばかり気にしているような、細身でちょっと見はカッコいい男ばかり、わざと集めたように集まっている。

野球部員は、いつも部室の前にしゃがんで、通りかかる女子に

65点!あっちは39点!

てんでに点数をつけている下品なヤツばかり。

念のため申し添えるが、39点だったから腹を立てたわけではない。

女子高生時代の私は、運動部員という人種全般に相容れないものを感じていたのだ。

そんな中、ラグビー部員はちょっと違っていた。

おそらくわが校では弱小部活だったのだろう。

ギリギリの人数で、グランドでも他の部に押しのけられるように、居所なさげなラグビー部員は、なぜか皆無口な印象である。

同じグランドで練習していながら、ラグビー部は野球部よりサッカー部より、誰よりも泥だらけであった。

練習を終えて引き揚げてくる彼らは、すれ違う文化部の女子に泥んこがくっつかないよう、黙って通路を大きくよけてくれた。

その時の、なんとも恥ずかしそうな様子。

彼らも今頃は、もういいオジサンだろう。テレビの前で、日本代表を応援していたのかな。

ラグビーワールドカップは本日、決勝戦

らぐびーわーるどかっぷ2019



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/11/02 11:30

いちょうの話。

…バッカねえ そんなクッサい思いしなくても…

高校時代のギンナンの話(→ ぎんなん話。)をしたら、おばーちゃんが笑いながら言う。

土に埋めりゃいいのよ!昔、やってたわ

なるほど。姥捨伝説のエピソードを待つまでもなく、老母の教えは尊い。

商家に生まれたおばーちゃん。通りに面した店の前には、立派な銀杏並木があった。

秋になると、枝が風に揺られて、ぽたぽたと黄色な実が落ちてくる。

直に触るとカブレるからね ワリバシで…

拾った実は持ち帰らず、木の根元をほじって埋める。使ったワリバシは、埋めた目印に立てておくのだ。

へえ~ そんで あとで掘り返すのね ワリバシが目印、なるほどねェ

いたく感心していると

いや それがさ…

さっきの勢いはどこへやら、妙に歯切れが悪い。

考えたら、掘った覚えがないのよね…

はぁ?

埋めたは埋めたけど、掘り出したかなあ… 食べた記憶もないし…

えー!じゃあ埋めただけ?

…かなァ?

今も毎年秋には見事に黄葉し、土地の名所にもなっている銀杏並木。

その何本かは、わが母が植えた、かもしれない。

ぎんなん



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/10/26 11:30

ぎんなん話。

私の通った高校には銀杏の大木が数本あり、秋にはそれはそれは見事な金色に黄葉した。

若者は無風流だから、特段の感想もない。散り敷く落葉を熊手でかく、校務員のおばさんの横を、ただ通り過ぎるだけだ。

ある日の体育の授業のあと。

着替えの前に体育館のご不浄に入ったら

うっ!

目にしみる悪臭に思わずのけぞった。

あらゆる設備が老朽化したボロい学校ではあったが、清掃だけは行き届いていた、はずだった。

驚いて用を足すのも忘れ、教室に逃げ戻ると

ハハハ… 銀杏、ギンナンよ!あそこは毎年…

カモシカのように長い脚をした、クラスメートが教えてくれた。

なんでも、個室のいちばん奥、道具入のプレートがついたその中に、バケツ何杯ものギンナンが保管されているのだという。

バスケ部やバド部など、体育館を使う部活のメンバーには、周知の事実らしい。

独特の悪臭を放つギンナンの果肉を取るには、水に浸けて腐らせ、洗い去るのが早い。

場所を選ぶその作業を、比較的利用者の少ない体育館のご不浄を使って、やっているのは校務員のおばさんだった。

落葉かきのついでに、集めたギンナン。

むざむざ捨てるのは惜しいにしても、ご不浄の中で。ギンナンなんて、そこまでして食べたいものだろうか。

コムスメだった私には理解できなかった。

考えてみれば、公立学校の並木である。その果実の所有権とか、どうなんだろう。今なら問題になるかもしれないが、昔のことである。

あのおばさんも、ずいぶんなトシに見えていたが、今の私くらいの年配だったのだろうか。

銀杏並木が明るく染まるころ、いつも思いだす。

ぎんなん



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/10/25 11:30
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