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すばらし話。

今朝も晴れていい気分。

洗濯物を干しながら、空を見あげたら、ふと歌が口をついて出る。

♪すば~らし~い~だんせ~…♪

そこそこのボリュームで歌ってしまってから、誰も聞いてないだろうなと周囲を見回した。

なんちゅう歌詞!

もちろん、学校で習った歌ではない。

家事の合間に、駅からの帰り道に、歌う母から、年相応より古い歌を刷り込まれた私。

ラジオ時代に青春を過ごし、耳から覚えた歌は、歌詞もよくわからず(→なぞなぞ話。)、歌手も出典も、今となっては不明なものが多い。

このヘンテコな歌も、どういう人が、どういう場面で歌ったのか、わからない。

♪素晴らしい男性 素晴らしい男性
♪明るく陽気で 心健やか


メロディーが明るいからか、母もこんなお天気のいい日、庭で干し物をしながらよく歌っていた。

幼い私は、縁側に座って足をブラブラさせて

おとーさんは すばらしくないのか…

心の中はともかく、いつも無口で、およそご陽気とはいえない父を思い浮かべ

じゃあ おかーさんはなんで おとーさんとケッコンしたんだろう?

首をひねったりした。

♪どこにもいるよ 素晴らしい男性
♪あなたの隣にいるよ 素晴らしい男性


歌詞はこう続くが、残念ながら今、そのへんには見当たらないようである。

すばらしきだんせい
(しかし裕次郎はタイプではない)



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/25 11:30

むらさき話。

コーヒーゼリーも食べ終え(→おかしの話。)、正月の予定についても存分に議論した私たちは、満足して表に出た。

同年代の友人との話はいつも楽しい。目についたものについて、あれこれ話しながら駅に向かう。

そんでさ…んあっ!

なに!どうした?

これ、これこれ…

友だちが指さしたのは、華やかでも、きれいでもない、しょぼくれた路上のプランターだった。

これさ、昔よく…

あ、ホントだ!

紫色をした、その植物を見たとたん、指を向けた友だちも驚くほどの大声が出た。

あったよね~これ、団地の花壇とか…

市民病院の植込とか 古いマンションのベランダとか

最近見ないね なんでかしら

まあ、そんなに素敵でもないけど

こういうもんにも ハヤリスタリってあるのかね

そうかもね

最後の相槌は、少々うわの空に聞こえた。

きっと、この植物があっちこっちに植わっていたころの、ちっちゃな思い出が浮かんだのだろう。

それは私も同じ。

だから同年代の友との話は、いつも楽しい。

むらさきごてん
(ムラサキゴテン:Tradescantia pallida 'Purpurea')



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/23 11:30

さいれん話。

ピー…ポー…ピー…ポー…ピー…ポー…

きゅうきゅうしゃ

サイレンが急を告げて、救急車が通り過ぎる。

家の近くでこの音を聞くと、数年前までは、行先も言わず自転車で出て行ったムスコが、どこかで事故に遭ったのでは、とドキドキしたものだ。

サイレンの音が鳴るとき

ああ、うちの子じゃありませんように…

そこには家族の無事を祈る人が、きっと何人もいることだろう。

しかし私は、これまでにたった1度だけ

あの人だったらいいのに…

思ってしまったことがある。

それは、夫が家を出て行ったころ。

一方的な離婚要求に応じずにいると、暴言や兵糧攻め、あらゆる不快な手段が用いられた。

たとえ身に覚えのないことでも、言葉にしてぶつけられると、じくじく痛む傷になる。眠れない夜が続いて、私は疲れ果てていた。

夜中の団地のベランダで、ぐったりと手すりにもたれ、隣の棟の明かりを見ていたら

ピー…ポー…ピー…ポー…ピー…ポー…

表通りを救急車が走って行く。

あれに乗ってるのが あの人ならいいのに…

ケガでも病気でもいい、私に苦しみを与える存在が、どこか遠くに行ってくれたら。

そんなことを願う、自分がおそろしかった。

もうダメだ、もう続けられない。

夫だった男が、家族でなくなったのは、役所に届けを出すよりずっと前、あの日だったと思う。

今日は119番の日。



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/09 11:30

からまつ話。

中学の頃、私はコーラス部に所属していた。

田舎の中学の弱小クラブではあったが、朝練、筋トレ、それなりに打ち込んでいたと思う。

ある日顧問のシシャモが新しい楽譜を配った。

シシャモとは、4人の子持ち→子持ちシシャモの連想でついたらしいが、大きな目玉とこけた頬の先生には、ぴったりのあだ名である。

市のコンクールはこの曲で出ます 今日から練習ね!

曲名は「からまつ」、作詞は北原白秋。

カラマツって何?

温暖な地方に生まれ育った中学生には、落葉松は全くなじみのない樹木である。

カラマツ、オソマツ、トドマツ、チョロマツ…

おそまつくん

ハハハ… おそ松くん

ガヤガヤふざけていたら、アルトのツルちゃんが片手片足をあげて、渾身のシェー!をした。

赤いセルフレームの眼鏡に、出っ歯気味のツルちゃんのシェー!に、箸が転んでもおかしいお年頃の女子中学生は、涙が出るほど笑い転げた。

はい!静かに!

シシャモが怖い顔で皆を黙らせて、やっと練習がはじまったが

♪からまつのはやしをすぎて♬

♪からまつをしみじみとみき♬


歌詞にカラマツが出るたびに、先ほどのシェーを連想して、にやにや笑ってしまう。

同じように笑いをこらえて肩を震わせているソプラノのケーコちゃんと、ヒジでつつきっこ。

♪からまつはさびしかりけり♬

♪たびゆくはさびしかりけり♬


避暑地の秋のもの寂しさなど、中学生に分かるわけがないのだ。

それでも、音楽の力は素晴らしい。繰り返し歌ううちに、静かな歌詞が染み込んでくる。

次第に、声が澄んでくる。

少女らは、いつのまにか手に手を取りあい、金色の落葉松林の中、落ち葉を踏んで歩いていた。

今日、白秋忌

落葉松の黄葉は、まだ見たことがない。



北原白秋没後80年に際し2016年11月2日の記事に加筆再掲載いたします。



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/02 11:30

かしぱん話。

さいきんは、台風が接近するとコロッケを食べる台風コロッケという風習があるらしい。

ややこしい時に揚げ物?と思うのはオバサンの感覚で、若者にとってコロッケは、100%買って食べるものなのだ。

手に持って食べられて、冷めてもおいしく、満足感が得られる点で、いい非常食かもしれない。

私が子供のころ、台風は菓子パンだった。

今夜は台風直撃、という予報が出ると、母は菓子パンを買い込んできた。

50年前の、シャレたベーカリーもない田舎町、大手メーカーの袋入りパンは、種類も乏しかったが、それでも嬉しかった。

甘いパンはなかなか買ってもらえなかったから

晩ごはんが菓子パン!

不吉な雲の渦巻く空を見上げ、台風の行方を気にしつつも、ワクワクしてならない。

やがて生ぬるい、湿っぽい風が吹き始めるのを見計らって、ふだんより厳重に戸締りをして、家族全員がテレビの前に集まる。

1時間…2時間…。

どうやら大丈夫そうね!

母がテーブルに手をついて立ち上がり、いつものとおり食事の準備をはじめると

あーあ…

ホッとすると同時にガッカリした。

非常食の菓子パンは、手を付けぬまま蠅帳にしまわれ、明日からのオヤツになるのだ。

台風の去った朝、淡青色の空を見上げたら、甘い菓子パンが食べたくなる。

さんみー



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/09/20 11:30
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