ぐらたん話。
グラタン皿の買い替えを考え(→おさらの話。)ながら、学生街を久しぶりに歩いたときのことを思い出した。
すっかり入れ替わった一角があれば、昔の記憶そのままの建物もある。
コピー屋だった場所が、コンビニになっていた。そうか、今はコピーをとったりしないんだ。
変わった場所と変わらない場所が、モザイクのように入り混じって、脳ミソが忙しい。
見慣れないカフェの角を曲がったら
この店まだあるんだ…
表通りを入った細い小路の奥に、喫茶店を自称しつつ、安くて多くて味はまあまあの、多種多様な定食を出す、典型的な学生街の店があった。
学生たちでにぎわっているけれど、けっしてキレイとは言えない店構えで、女子学生にとっては、避けられるなら避けたい店だった。
サークルやグループの流れで、やむを得ず入るとき以外、行かなかったと思う。
いちばんイヤだったのがグラタン皿だ。
その店のグラタン皿は、楕円形で左右に耳のようなつまみがついており

その耳の部分が黒く焦げ付いて、洗っても取れないのか、焦げ色のままで使われている。
洗い落そうという努力の跡も見られない。
高温で焼けば消毒になると考えていたのではないかと、今も疑っている。
いまだにつぶれもせず営業を続けているということは、もしかしたらグラタン皿もキレイになっているかもしれない。
気まぐれに入店し、試しにグラタンを注文してみたい気もしたが、さいわいお腹は減っておらず、思いとどまった。

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すっかり入れ替わった一角があれば、昔の記憶そのままの建物もある。
コピー屋だった場所が、コンビニになっていた。そうか、今はコピーをとったりしないんだ。
変わった場所と変わらない場所が、モザイクのように入り混じって、脳ミソが忙しい。
見慣れないカフェの角を曲がったら
この店まだあるんだ…
表通りを入った細い小路の奥に、喫茶店を自称しつつ、安くて多くて味はまあまあの、多種多様な定食を出す、典型的な学生街の店があった。
学生たちでにぎわっているけれど、けっしてキレイとは言えない店構えで、女子学生にとっては、避けられるなら避けたい店だった。
サークルやグループの流れで、やむを得ず入るとき以外、行かなかったと思う。
いちばんイヤだったのがグラタン皿だ。
その店のグラタン皿は、楕円形で左右に耳のようなつまみがついており

その耳の部分が黒く焦げ付いて、洗っても取れないのか、焦げ色のままで使われている。
洗い落そうという努力の跡も見られない。
高温で焼けば消毒になると考えていたのではないかと、今も疑っている。
いまだにつぶれもせず営業を続けているということは、もしかしたらグラタン皿もキレイになっているかもしれない。
気まぐれに入店し、試しにグラタンを注文してみたい気もしたが、さいわいお腹は減っておらず、思いとどまった。

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あのまち話。
友だちとランチの約束をした。
都会で会社勤めを続けている彼女が、お店を決めてくれたので、最寄り駅を確認すると
???
ぜんぜん聞いたことのない駅名である。
私も離れてかなり経つけれど、そんなことあるだろうか。
カン違いかしらと検索してみたら、いつの間にかできた路線に、知らない駅が並んでいる。
異次元に迷い込んだような不思議な気分。
どこをどう走っているのか知りたくなって、沿線の地図を画面に出してみた。
知っている場所を縫うように、知らない路線が走る。
スクロールしてその駅に近づくにつれ、もしやの思いが強まり、そして
やっぱり…
聞き慣れない駅は、あの町だった。
結婚して娘が生まれるまでの短い間、住んでいたアパートの風景が、鮮やかに頭に浮かぶ。
古い住宅や商店が残る、パッとしない町並みの記憶と、友人が予約してくれた、洒落たレストランのイメージは、まったく重ならない。
考えてみれば、あれから30年経っている。
家を移り、亭主と別れ、私の身の上は大きく変わったが、街の景色も変わっているのだろう。
いい店だったら、これまで足を向けずにいた場所に、また何度も通うことになるかもしれない。
それもまたよし、なんて思ったりしている。


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都会で会社勤めを続けている彼女が、お店を決めてくれたので、最寄り駅を確認すると
???
ぜんぜん聞いたことのない駅名である。
私も離れてかなり経つけれど、そんなことあるだろうか。
カン違いかしらと検索してみたら、いつの間にかできた路線に、知らない駅が並んでいる。
異次元に迷い込んだような不思議な気分。
どこをどう走っているのか知りたくなって、沿線の地図を画面に出してみた。
知っている場所を縫うように、知らない路線が走る。
スクロールしてその駅に近づくにつれ、もしやの思いが強まり、そして
やっぱり…
聞き慣れない駅は、あの町だった。
結婚して娘が生まれるまでの短い間、住んでいたアパートの風景が、鮮やかに頭に浮かぶ。
古い住宅や商店が残る、パッとしない町並みの記憶と、友人が予約してくれた、洒落たレストランのイメージは、まったく重ならない。
考えてみれば、あれから30年経っている。
家を移り、亭主と別れ、私の身の上は大きく変わったが、街の景色も変わっているのだろう。
いい店だったら、これまで足を向けずにいた場所に、また何度も通うことになるかもしれない。
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あのみせ話。
見たかった映画の終映が近いことに気づき、慌てて見に行った。
封切館は多かったのに、今は少し離れたミニシアター1館、しかも1日に1回のみの上映になってしまっている。
いつでも見に行ける、と腰を上げずにいると、こんなふうに見逃すことが多いが、さいわい今回は仕事帰りに立ち寄ることができた。
およそ2時間の別世界。
厚い扉を出てほっとタメイキをついたとき、空腹をおぼえた。
すでに夕食には遅い時間、このまま家まで帰るのもちょっとツラいから、駅ビルの食堂街で食べて帰ろうとプラプラ歩いていると
アラ?
ラーメン屋に目がとまる。学生時代に通った店と同じ名前だ。
痩せたオバチャンと無口なニイチャンが、腹ペコの学生に、問答無用でカロリーと塩分過剰のラーメンを食べさせていた。
こんなシャレたアーケードに入るような店じゃないから、きっと違う店だろうけれど、たまにはラーメンもいいかな、と入ることにした。
高いカウンターの前のスツールに陣取れば
アララ?
なんとなく見たことがある…ような?
ラーメンの種類が増え、昔はなかったサイドメニューやセットなどがあるようだけれど、いちばん安いラーメンの写真に、なんだか見覚えがある。
人に人相があるように、ラーメンには麺相がある。
ここはどうやら昔のあの店の、子だか、孫だか、フランチャイズだか、そういう店らしい。
思えば私があの小汚い店に通っていたのは、もう40年になろうとする昔なのだ。
麺相の似たそのラーメンは、記憶の中のそれに比べて、ずいぶんサッパリ軽快な味わいだったが、アチコチ弱った今の私には、ちょうどよかった。


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封切館は多かったのに、今は少し離れたミニシアター1館、しかも1日に1回のみの上映になってしまっている。
いつでも見に行ける、と腰を上げずにいると、こんなふうに見逃すことが多いが、さいわい今回は仕事帰りに立ち寄ることができた。
およそ2時間の別世界。
厚い扉を出てほっとタメイキをついたとき、空腹をおぼえた。
すでに夕食には遅い時間、このまま家まで帰るのもちょっとツラいから、駅ビルの食堂街で食べて帰ろうとプラプラ歩いていると
アラ?
ラーメン屋に目がとまる。学生時代に通った店と同じ名前だ。
痩せたオバチャンと無口なニイチャンが、腹ペコの学生に、問答無用でカロリーと塩分過剰のラーメンを食べさせていた。
こんなシャレたアーケードに入るような店じゃないから、きっと違う店だろうけれど、たまにはラーメンもいいかな、と入ることにした。
高いカウンターの前のスツールに陣取れば
アララ?
なんとなく見たことがある…ような?
ラーメンの種類が増え、昔はなかったサイドメニューやセットなどがあるようだけれど、いちばん安いラーメンの写真に、なんだか見覚えがある。
人に人相があるように、ラーメンには麺相がある。
ここはどうやら昔のあの店の、子だか、孫だか、フランチャイズだか、そういう店らしい。
思えば私があの小汚い店に通っていたのは、もう40年になろうとする昔なのだ。
麺相の似たそのラーメンは、記憶の中のそれに比べて、ずいぶんサッパリ軽快な味わいだったが、アチコチ弱った今の私には、ちょうどよかった。


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めがねの話。
大学時代はいろんな単発バイトをしたが、地味な裏方や工場労働ばかり。
中華総菜販売・チャイナドレス着用の募集に、胸をふくらませて(比喩表現)行ったら、体型をチェックされて着用免除になったこともある。(→ばいとの話。)
そんな私にも表舞台に立つチャンスが訪れた。
京都の学生には、祭りのエキストラという特権的なバイトがある。
馬に乗って歩くような主だった役割は、ゆかりのある人から選ばれるが、その他大勢は学生バイトでまかなわれていた。
たとえ端役でも、時代装束を着られて、そのうえ時給をもらえるなんてステキすぎる。
掲示板を見た私は、ちょうど休講の教室から出てきた同級生を誘い、面接に出かけた。
チェックのシャツに銀縁メガネのミヤザワ君は、裏方でいいや、と言い、帰国子女のエミリちゃんは、着物を着てみたいとウキウキしている。
簡単な面接で採用が決まり、それぞれが持ち場に振り分けられた。
エミリちゃんは英語に堪能なので、外国人観光客にパンフレットを販売することになり、裏方希望のミヤザワ君のほうが行列に加われと言われた。
そして私は、またしても事務室詰めである。
当日はバイトの名簿管理や弁当の手配、売店の釣銭を数えるなど、雑務に忙殺された。
沿道に観客が集まり始めるとヒマになったので、休憩がてら行列を見に出ると、スネを出し、素足にゾウリのその他大勢の中にミヤザワ君がいる。
装束は意外に似合っているが、銀縁メガネがそのままだ。
ミヤザワ君!メガネメガネ!
指さすしぐさにハッとして、外したメガネの行き先に困ったミヤザワ君は、着物の打合わせの部分にひっかけてしまった。
芸能人がよく、サングラスをシャツの胸元にかけている、あの状態。
おかしい!そのほうがおかしいよ!
必死で呼びかけたけれど、しずしずと進みはじめた行列は、そのまま行ってしまった。
やっぱり表舞台には出られなかった時代祭は、本日。

(平安神宮公式HP → 時代祭)
本日早朝より他出のため、2015年10月22日の記事に加筆再掲いたします。

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中華総菜販売・チャイナドレス着用の募集に、胸をふくらませて(比喩表現)行ったら、体型をチェックされて着用免除になったこともある。(→ばいとの話。)
そんな私にも表舞台に立つチャンスが訪れた。
京都の学生には、祭りのエキストラという特権的なバイトがある。
馬に乗って歩くような主だった役割は、ゆかりのある人から選ばれるが、その他大勢は学生バイトでまかなわれていた。
たとえ端役でも、時代装束を着られて、そのうえ時給をもらえるなんてステキすぎる。
掲示板を見た私は、ちょうど休講の教室から出てきた同級生を誘い、面接に出かけた。
チェックのシャツに銀縁メガネのミヤザワ君は、裏方でいいや、と言い、帰国子女のエミリちゃんは、着物を着てみたいとウキウキしている。
簡単な面接で採用が決まり、それぞれが持ち場に振り分けられた。
エミリちゃんは英語に堪能なので、外国人観光客にパンフレットを販売することになり、裏方希望のミヤザワ君のほうが行列に加われと言われた。
そして私は、またしても事務室詰めである。
当日はバイトの名簿管理や弁当の手配、売店の釣銭を数えるなど、雑務に忙殺された。
沿道に観客が集まり始めるとヒマになったので、休憩がてら行列を見に出ると、スネを出し、素足にゾウリのその他大勢の中にミヤザワ君がいる。
装束は意外に似合っているが、銀縁メガネがそのままだ。
ミヤザワ君!メガネメガネ!
指さすしぐさにハッとして、外したメガネの行き先に困ったミヤザワ君は、着物の打合わせの部分にひっかけてしまった。
芸能人がよく、サングラスをシャツの胸元にかけている、あの状態。
おかしい!そのほうがおかしいよ!
必死で呼びかけたけれど、しずしずと進みはじめた行列は、そのまま行ってしまった。
やっぱり表舞台には出られなかった時代祭は、本日。

(平安神宮公式HP → 時代祭)
本日早朝より他出のため、2015年10月22日の記事に加筆再掲いたします。

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ばいばい話。
あれは中学1年生の、季節は秋だったろうか、たしか制服は長袖になっていた。
コーラス部の練習を終え、楽譜をカバンに入れていると、音楽準備室のドアが開いて、中から誰かチョイチョイと手招きをしている。
見れば同級のマミちゃんとカナエちゃんだ。
彼女たちは音楽に詳しくて、周りの他の中学生とは、ちょっと違うオトナっぽい雰囲気を漂わせた2人組だった。(→みゆきの話。)
私はオクテな優等生だったのだが、どういうわけか折々に、2人の企みに引き入れられた。
呼ばれてノコノコ近寄っていくと、揃ってミョーに興奮した様子で
ちょっとちょっと!これ聞いてみてくれない?
とにかくスゴイのよ!
振りかざすマミちゃんの手にカセットテープ。
すかさずカナエちゃんがOPENにした学校の備品のデッキに、カセットを突っ込んだ。
…ざざざ…
ダビングにダビングを重ねたらしい、ざらついた無音の時間のあと、やがて前奏もないアカペラで、ささやくような男性の歌が始まった。
語りかける歌声に耳を傾けていると、静かに鳴りだしたピアノとギターが、音を合わせる。
しばらくは反応をはかるように私の顔を見ていたカナエちゃんが
うまいでしょ すごい、うまいと思わない?
ガマンしきれなかったのか小声で聞いてきた。
塾の友だちがさ ダビングしてくれたんだよね
塾なんてない田舎だが、お金持のカナエちゃんは、電車に乗って都会の学習塾に通っている。
誰だかわかんないけどさ たぶんアマチュアの デモテープだろうね
アコギとピアノだけだしね~
ダビングにダビングを重ねた末、来歴も分からなくなったカセットを繰り返し聞きながら、2人はすごい新人を発掘したとばかりに自慢げだった。
その歌が、デビュー前の新人などではなく、実力派の人気グループ、アリスの「帰らざる日々」であったことは、音楽に疎い私でさえも、ほどなく知ることとなる。
2人はその後、あの放課後のことなど、すっかり忘れたような顔をしていたが、さぞかし恥ずかしかっただろうと思う。
チンペイと親しまれたヴォーカリストの訃報に、ふと思い出した小さな出来事である。

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コーラス部の練習を終え、楽譜をカバンに入れていると、音楽準備室のドアが開いて、中から誰かチョイチョイと手招きをしている。
見れば同級のマミちゃんとカナエちゃんだ。
彼女たちは音楽に詳しくて、周りの他の中学生とは、ちょっと違うオトナっぽい雰囲気を漂わせた2人組だった。(→みゆきの話。)
私はオクテな優等生だったのだが、どういうわけか折々に、2人の企みに引き入れられた。
呼ばれてノコノコ近寄っていくと、揃ってミョーに興奮した様子で
ちょっとちょっと!これ聞いてみてくれない?
とにかくスゴイのよ!
振りかざすマミちゃんの手にカセットテープ。
すかさずカナエちゃんがOPENにした学校の備品のデッキに、カセットを突っ込んだ。
…ざざざ…
ダビングにダビングを重ねたらしい、ざらついた無音の時間のあと、やがて前奏もないアカペラで、ささやくような男性の歌が始まった。
語りかける歌声に耳を傾けていると、静かに鳴りだしたピアノとギターが、音を合わせる。
しばらくは反応をはかるように私の顔を見ていたカナエちゃんが
うまいでしょ すごい、うまいと思わない?
ガマンしきれなかったのか小声で聞いてきた。
塾の友だちがさ ダビングしてくれたんだよね
塾なんてない田舎だが、お金持のカナエちゃんは、電車に乗って都会の学習塾に通っている。
誰だかわかんないけどさ たぶんアマチュアの デモテープだろうね
アコギとピアノだけだしね~
ダビングにダビングを重ねた末、来歴も分からなくなったカセットを繰り返し聞きながら、2人はすごい新人を発掘したとばかりに自慢げだった。
その歌が、デビュー前の新人などではなく、実力派の人気グループ、アリスの「帰らざる日々」であったことは、音楽に疎い私でさえも、ほどなく知ることとなる。
2人はその後、あの放課後のことなど、すっかり忘れたような顔をしていたが、さぞかし恥ずかしかっただろうと思う。
チンペイと親しまれたヴォーカリストの訃報に、ふと思い出した小さな出来事である。

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