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ちくちく話。

おばーちゃんのSOSから始まった、実家の片付け(→おしいれ話。)。

それきりになるかなと思いきや、ぽつぽつと続いている。

捨てるだけじゃなく、あんがい使えたり、欲しい人がいたりと、モノの行き先が見つかって、母も張り合いが出たらしい。

いいものが出てきたから見にいらっしゃい、と言うので、引き取りがてら行ってきた。

イイモノって何?

指差す先を見れば

ししゅうのがく

ずいぶん子供っぽい絵柄の、クロスステッチの額である。

針目もたどたどしく、糸の引き具合も不均等で、つまりはヘタクソだ。何十年も刺繍を習った、おばーちゃんの作品とは思えない。

イイモノ?これが?

覚えてない?夏休みの宿題

…あ、は!アレかあ!

たしか5年生の夏休み、工作の宿題で、私が刺繍したものだ。手芸本から絵柄を選び、母に生地と糸をもらって、チクチク縫った。

クロスステッチとは、糸で小さなバッテンを作って、空間を埋めていく手法である。

つまりは膨大な単純作業の連続なのだ。

だからこそ小学生にもできるわけだが、ちっとも楽しくはなかった。

チクチクチクチク、ずいぶんやったつもりでも、絵柄はいっこうに現れてこない。

なんでこんなことはじめちゃったんだろう、と後悔しながら、掌の汗をシャツの裾で拭った。

しかし、ああいう作業に耐える練習を、子供の頃にやっておいたことは、その後の人生ではプラスになった気もする。

単純作業でも、倦まずたゆまず続けて、その中に意義を見つけられることは、強みであろう。

あらためて、ゆがんだ針目を眺めた。

小学生の作品と思えば、けっこうよくできている。

やっぱり、イイモノ、かもしれない。畳んであった包装紙にくるんで、バッグに入れた。



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むかしむかし | コメント(5) | トラックバック(0) | 2021/04/13 11:30

わすれな話。

ある日、中学校からの帰り道。

私は、自分の右側を意識しながら、ドッキドキで歩いていた。

理科が得意で、足が速くて、メガネがカッコいいフジモリ君と、帰りが一緒になったのだ。

恥ずかしくてその場から駆けだしたいような、それでいてこの時間がずっと続いてほしいような。

ほんの数分が、永遠に思われた。

バカな子と思われたくなくて、何を話していいか迷っていると、道の脇に、空色の小さな花。

あ、ワスレナグサ

つい、乙女チックな言葉を口にのぼせた。

ところが、フジモリ君は、メガネをこめかみに押し上げながら

違うよ

やけにキッパリ言うではないか。

チガウよ、これはキュウリグサ!

ステキなフジモリ君は、生物部なのであった。

その後何を話したか、サッパリ思い出せない。

キュウリグサの名の由来は、葉を揉むとキュウリに似たニオイがすることから。

花言葉は、「愛しい人への真実の愛」、だそうである。

きゅうりぐさ
(Trigonotis peduncularis ムラサキ科キュウリグサ属)



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むかしむかし | コメント(14) | トラックバック(0) | 2021/04/07 11:30

ぷれはぶ話。

工事中の土地に通りかかった。

囲いの向こうを覗いてみると、予想したような骨組み状態ではなく、すでに立派な白亜の殿堂が建ち上がっているではないか。

先週通った時には確かまだ更地だったから、驚くべきスピードである。

プレハブか!

思わずつぶやく。

プレハブなんて、久しぶりに口にしたなア。

私の通った小学校は、ドーナツ化現象で、人口が急増した地域にあった。

同級生は500人と、予想された人数を大幅に超過して、校舎が足りない。そこで、グラウンドの一角に建ったのがプレハブ校舎である。

新入生は1組、2組と、順に従来の校舎に入り、はみ出したクラスが、プレハブに収まった。

昔のことで、空調もない。水道も、ご不浄も、給食室も、砂塵渦巻くグラウンドを横切って行かねばならない。

プレハブ校舎は、過酷な環境であった。

私はどういうわけか、10組だの、11組だの、はみ出しクラスになることが多かったので

1組いいなあ…

急作りのサッシの窓越しに、鉄筋コンクリートの校舎を見上げたものだ。

思い出しながら歩いて、駅に着いたら、新学期の定期券を買う、行列ができている。

この子たちは プレハブにはみ出したりしないんだろな 少子化も いいことあるじゃん

にぎやかな学生の列を避けて、改札に進んだ。

ぷれはぶこうしゃ
(壁がバツになってるのがなんだかイヤだった)



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/04/06 11:30

◎ろわん話。

暖房をつけずに着替えができたら、衣更えの時期だ。

着ない服の処分も考えなければならない。

捨てにくいものを捨てるについては、トキメクとか、ダンシャリとか、人それぞれ呪文がある。

私の呪文は「ゲロワン」

謎の響きを説明するには、話は50年前に遡る。

春休み、家族で出かけることになった。

イモートと私は、よそ行きのワンピースで、ウキウキと父の運転する車に乗り込んだ。

天気は良し、お花見時分の日曜日。繰り出した観光地はずいぶんな人出で、車はちょっと走っては止まり、ちょっと走っては止まりを繰り返す。

父は短気な人で、渋滞が大嫌い。おかしな走行ペースで、みんなだんだん気持が悪くなってきた。

だいたい想像はつくだろう。車酔いした私は、ワンピースを汚してしまったのである。

母はもちろん、丁寧に洗ってくれたが、汚れは取れても、不快な思い出は消えない。

そのワンピースを見るたびに、イヤーな気持になり、とくに車に乗る時には、

この服はイヤ!

頑強に拒んだことを覚えている。

オトナになった私のモットーは、良くない思い出のある服は処分する、ということ。

それが前述のエピソード、略して「ゲロワン」である。

ぜろわん
(この黄色の人は仮面ライダーゼロワン氏)



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むかしむかし | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/04/02 11:30

ぶちょーの話。

日曜の朝は、ビジネス番組を見る。

バリバリの会社人間とは無縁だから、動物園の動物を見るような気分で、興味深い。

最先端のビジネスを紹介するコーナーに、なんだか見覚えのある人が出ていた。

誰だっけ… あ、ブチョー!

前の会社を辞める前、最後に所属した部の、部長だった人だ。

退職後もポロポロ耳に入る情報で、ブチョーが順調に出世し、専務だか副社長だか、役員になってらしたのは知っていた。

それも、とうにリタイアしたはずのブチョーが、全く畑違いの会社の社長になっている。

天下りではない。リタイア後の起業だというではないか。

どんだけ会社好きなん?!

テレビに向かってヒトリゴトを言いつつ、私はちょっとフクザツだった。

新卒就職で入った会社を辞めたのは、30を過ぎてから。寿退職でも、出産退職でもない、ヘンな時期だった。

いろいろ理由はあるが、あらためて思い返せば、ブチョーになりたくないというのが主因であった気がする。

上役は、いちばん身近な将来像である。

がんばれば課長になれる、部長になれると思えばこそ、組織の理不尽にも耐えることができる。

しかし、当時の私の見る限り、ブチョーの毎日はちっともうらやましくなかった

代わってやる、と言われても、即、けっこうですと答えたであろう。

嬉しくない将来を目の前にして、日々の仕事に追われるのが、突如バカバカしくなったのだ。

若さゆえの浅慮であったが、後悔はない。

ただ、こうして、社長になってニッコニッコしているブチョーを見ていると

なんか、ズルーい!

そんな気分になってしまうのであった。

るそんのつぼ
(関西ローカル番組でしたが今期で終了しました)



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/03/28 11:30
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