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おばさん話。

学生時代の友だちのヨッチャンが、仕事で近くに来るというので、会うことにした。

ほどほどの店に決めて席に落ち着くと、小さい袋に入った地元の銘菓を

出がけに駅で買ったんだけど…

気を使わせない程度の少量なのがニクい、いつもの気配りである。

食事中も粉チーズを渡してくれたり、スカーフが垂れてきてるのを注意してくれたり、相変わらずまめまめしい。

ヨッチャンといると、お母さんと一緒にいるような安心感に包まれる。

いい年のオバサンにこういう人は珍しくないが、ヨッチャンは、まだぼんやりコドモ気分でいる学生時代から、ずっと気配りの人だった。

グループ行動していても、よく気の付くヨッチャンは頼りにされた。私も、人知れず困っているところを助けられた経験がある。

他の子の家庭の事情などもよく知っていて、さりげなく配慮するヨッチャンに、こっそりあだ名をつけた者がいる。

男オバサン

そう、ヨッチャンことヨシムラ君は男性なのだ。

優しい男の子はモテそうだが、そういう面では報われなかった。彼に助けられながら、ご面相のいい別の男に心を奪われてしまう。

当時の私を含め、若い女なんて残酷なものだ。

女が男を優しいと感じるレベルを通り越して、まめまめしすぎるヨッチャンは、親切ゆえに軽んじられていたように思う。

そんな彼も、今は誠実な人柄が評価されて誰にも尊敬される職業に就き、奥さんと2人の子供の、幸せな家庭を築いている。

店を出ると春の突風が吹いてきて

晴れてるけど風、冷たいよ 上着着たほうがいいんじゃない?

ヨッチャンは変わらず優しかった。

そうしゅんふ



本日多忙につき2015年3月28日の記事を再掲いたします。



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2020/03/28 11:30

べいちょう話。

この時代に生まれて、幸せだったのか、と、時々考える。

高度成長の下、未来は右肩上がりに良くなると信じた子供時代。

周囲を満たしたきらめきが、すべて泡沫となるとも知らずに浮かれた、青年期。

そして、世の中悪くなる一方に思える今、それでもこの年に生まれて良かったと思うこと。

それは、東西の名人の落語を、生で聞けたことである。

同級生がポップスターに熱を上げていた時代、私のアイドルは噺家だった。

談志がいた。志ん朝がいた。そして枝雀がいた。

高校生が、行列も徹夜もせず、ロックコンサートよりずっと安く、フツーに独演会の切符を買えたのだから、贅沢な時代である。

すぐ目の前の白木の板の上、汗の滴が見えるほど近くで、彼らの噺を聞けたことは、私の数少ない自慢の1つだ。

そんな私も学校を出て、就職して、銀行だか何だかにお使いに出されたある日。

大阪駅前の大きな交差点で、を見た。

舞台で見るよりずっと小柄で華奢だが、思い切って派手なチェックの上衣と、スッキリした立ち姿が、その世界の人であることをうかがわせる。

上方落語の至宝と呼ばれた人が、意外にも付き人の1人も連れず、信号の変わるのを待っていた。

後で知ったのだが、事務所が近くのビルにあったらしい。

爆笑王・枝雀は既に亡く、その弟子に遅れること15年、米朝師匠も亡くなった。

生で聞いた米朝の地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)は、今も私の宝である。

かつらべいちょうししょう
(三代目桂米朝 1925.11.6- 2015.3.19)



本日没後5年について、2018年6月13日の記事を再掲いたします。



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むかしむかし | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/03/19 11:30

むすかり話。

結婚していたころは、転勤族だった。

何度目かに住んだ、団地の1階の部屋には、小さな庭がついていた。

ムスメもムスコもまだ幼くて、双方の祖父母は、カワイイ孫に会いに来ては

庭に何か植えたら?

お花が咲いたら子供が喜ぶわよ


提案をするが、2人の幼児で手いっぱいの、新米の母親は、園芸に手を出すつもりなど、さらさら無かったから

そうですね~ そのうちに…

言葉を濁しては、ごまかしていた。

ある年の、春のいまどきの時季。

朝、洗濯物を干しに庭に出たら、目の覚めるような青い花が、鈴なりに咲いているではないか。

むすかり

柵ぎわのそこに、雑草にしてはやけにしっかりした葉が茂っていることには、私も気づいていた。

そういえば前の年の秋、遊びに来たシュートメが

ムスメちゃんとお庭で遊びましょ!

出て行く後姿が、なぜか袋を提げていたことも。

何も植えない私に業を煮やし、ついに実力行使に出たのだ。

気づけばムスメとムスコも、庭にしゃがみ、頭を寄せて、見慣れぬ花をめでている。

やられた~!

ひとしきり笑った後、シュートメに送る写真を撮るため、カメラを取りに部屋に戻った。

有難いことに、青い花は特段の手入れも要らず、毎年同じ時期に芽を出し、花を咲かせて、小さな庭で少しずつ陣地を広げていった。

その花をムスカリと呼ぶと知ったのは、いつのことだったか。

あれから20年以上が経つ。

古い団地の窓の下には、今も青い花が咲いているだろうか。



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むかしむかし | コメント(4) | トラックバック(0) | 2020/03/18 11:30

かしぱん話。

人気ピアニストのインタビューをテレビで見た。

彼は母親からスパルタ的音楽教育を受け、朝から晩までピアノ漬けの幼少期を過ごした。

ところが、彼に子供が生まれて、おばあちゃんになると、その同じ母親が

子供はのびのびと育てるのがいちばん!

ぬけぬけと言うので、あきれてしまったという。

鬼の形相で子供を叱り飛ばしていたことはすっかり忘れ、都合のいいことばかり覚えていて、母親としての自画像を描いているのである。

私も母親の1人として、こういうババアにならぬよう、自戒せねば、と思いつつテレビを切って、さあ、オヤツだ。

みっくすじゅーすさんみー

定番の菓子パンの、期間限定ミックスジュース味を見つけて、買ってあった。

写真を撮ったついでに、ふと思いついて、LINEの家族グループに流す。

期間限定のサンミー買ってみたよ!

小さい頃から食べ慣れたパンなので、早速イモートから返信。

サンミー懐かしいわ!こっちでは売ってない~

しばらくやりとりしていると、遅れておばーちゃんが登場したが

サンミーって何?

とぼけている。

菓子パンよ!昔よくオヤツで食べたでしょ

確認のつもりで返すと

私は子供のおやつに出来合いの菓子パンを出したことはありません!

語気強く断言された。

ウッソー!

あるよ絶対!しかも、イモートと半分こで。

菓子パンを袋ごと、バーンと包丁で切っていた、後ろ姿だって覚えている。(→きりわけ話。

料理好きだった母は、マドレーヌなど焼いてくれたこともあったが、いつもじゃなかった。

でも、おばーちゃんにとっては、手作りオヤツで子供の帰りを待つ姿が、自画像なのだ。

ちょっとほろ苦い思いで、反論はせずにおいた。



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むかしむかし | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/03/16 11:30

うぃるす話。

新型ウィルスといえば昔の映画を思い出す。

「復活の日」は、細菌兵器として開発された新型ウィルスで、人類が死滅の危機に瀕するSF作品。

ふっかつのひ
(原作 →「復活の日」 小松左京著)

時は1980年、ショッピングモールにシネコンはなく、映画館は都会のものだった。

田舎の中学生にとって、電車に乗って映画を見に行くというのは、一大事件だ。

あれだけ大掛かりなフィクションを大画面で見たのは初めてだし、特別なイベント感も手伝って、かなり感動し、フワフワ家まで帰った。

携えたるは、大枚をはたいたパンフレット

表紙には、英語の題が載っていた。中学生の語彙にはない、見慣れない単語である。

「復活の日」に相当する外国語だろうか。

バイオテクノロジーの進化が、地球的危機を引き起こすストーリーから察するに、きっと壮大で、哲学的な言葉に違いない。

マジメな中学生の私は英和辞典を引いた。

virus vάɪ(ə)rəs  【名詞】 ウィルス

ウィルス?あの映画の題、「ウィルス」?

確かに、新型ウィルスが流出する話なんだけど、なんだろう、このガッカリ感…。

ラストシーン、杖をついて地平線の向こうから現れるクサカリマサオも、これじゃガッカリだ。



本日体調不良のため、2016年2月16日「げんだい話。」に加筆改題して掲載いたします。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/03/05 11:30
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