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ベーコン本。

アンタもいいトシなんだし

年初にそんなことを言いながら、母がくれたのは5年日記であった。

これから忘れていく一方なんだから

そう言うおばーちゃん自身も、長く日記をつけている(→にっきの話。)。

ここに毎日書いているから、ホントは心配ご無用なのだ。

しかし、なにしろ話題の何割かが当のご本人なのであるからして、ブログの存在はおばーちゃんには内緒である。

しかたなくもらってきたものの、1行も書けていない日記帳を、久しぶりにペラペラめくってみたところ、欄外に小さい文字を見つけた。

結婚は判断力の欠如。離婚は忍耐力の欠如。再婚は記憶力の欠如。

ほほー。

よく見ると、毎日のページに、名言・格言のたぐいが書かれている。

ちょっと面白くなって、ページを繰っていくと、今日のところにこうあった。

習慣が最も完全になるのは、若いころ身につけたものである

言ったのはフランシス ベーコン、イギリスの哲学者、神学者、法学者である。

「知識は力なり」とか、「若い時は一日は短く一年は長い 年をとると一年は短く一日は長い」とか、名言も多い人のようだが

えー、ほんとにイ?

この格言には賛同いたしかねる。

若い時には、習慣はつきにくいものである。

毎朝6時きっかりに起きるとか、夕飯にかならず納豆半パックを食べるとか、そういうことを決めておこなうのは、ジジイババアだと思うのだ。

そして、年配者のそういう習慣は、例えば定年とか、1人暮らしになったとか、後半生に起因していることがほとんど。

体調も家族の事情も、まったく違った若いころの習慣を、ずっと続けていける人など稀であろう。

コレ、ホントにベーコンの名言?

ちょっとした疑念が兆した。

習慣が最も完全になるのは、若いころ身につけたものである

翻訳口調とはいえ、表現もぎこちないし、検索しても孫引きばかりで、出典が見つからない。

そうなると、がぜん気になるのが私の性分だ。

こんなことでもなければ絶対に手が出なかったであろう、ベーコンの著作を読みだした。

ハイ、大変でした、いっぱいあるんで。

そして見つけました、何冊めかで。

習慣は、若いころに始まる場合に最も完全である。我々はこれを教育と呼ぶ。教育とは、実際には若いころの習慣に他ならない。(「ベーコン随想集」岩波文庫)

これ、この前半でしょう!

そして、前半だけの引用では、ぜーんぜん意味がないということも分かる。

肝心の格言だが、そういえば、この私のしつこさは、たしかに若いころからの習慣かもしれない。 

ふらんしす べーこん
(Francis Bacon, Baron Verulam and Viscount St. Albans、1561.1.22 - 1626.4.9)



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/04/09 11:30

シンカン本。

出先で空いた時間をつぶしに、新刊書店へ。

本誌より付録のデカい雑誌や、同じようなアニメ顔のイラスト文庫本の氾濫にうんざりして、近頃はめっきりご無沙汰している。

流行りものがキライで、そもそもベストセラーを読まない。ビンボーでへそ曲がりの私が読みたい本は、古書店や図書館で間に合うのだ。

不毛な平積みは無視して、店の奥の地味な棚を目指す。ざっと見渡せば

アレ?この店、けっこういいかも?

ひと癖あるセレクトが、好感持てた。

知ってる著者の、知らない本。

好きな分野の、未読の作者。

背を目で追っては、めぼしいのを引き抜き、パラパラめくっては棚に戻す。時間はすぐに過ぎて、吟味した1冊を買い、外に出た。

久々に買った新刊は、紙の香もうれしい。

家に着いて、お茶を淹れて、ページを繰れば期待通りの面白さ。惜しみ惜しみ読んだのに、読みきってしまった。

楽しい気持のまま、ムスメとムスコに

◎◎って本知ってる?

自分だけの発見を、自慢げにLINEしてみたら

あー、あれ 前に読んだ

アタシも~ 2年前くらいかな


どうやら私が知らなかっただけで、少し前に流行った本らしい。

恥ずかしいから、書名は書かない。

ひらづみ



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/03/23 11:30

ダンドリ本。

昨日の記事(→もたもた話。)を読み返していて、あるところで目がとまった。

…すべて、この後の流れるようなダンドリのためである…

無意識に書き流した1行だが、このくだりには、出典がある

おそらくこのマンガだ。

だんどりくん
(「ダンドリくん」泉昌之著 双葉社刊)

世の中データとダンドリだ!と題されている通り、主人公は、あらゆる物事を、いかに段取りよくするか、を常に考えている青年である。

私自身、細かく思い煩う性格で、どうすれば二度手間なく行動できるか、のべつ考えてきた。

しかし、周りの人はみな、そんなことを気にも留めず、無造作に生きているように見える。

曰く、のり弁のオカズは、どの順で食べるか。

曰く、特急電車の降り際はどう振る舞うべきか。

曰く、銭湯とコインランドリーの、最適な周り方とは。


そんなことを日々絶え間なく、いたって真剣に考え続けている人が、たとえマンガでも、自分以外にいると知ったことは、非常に心強かった。

大げさに言えば、私という人間が肯定されたかのように感じた。

久しぶりに読み返してみたら、なんと30年前の本である。バブル景気の中、よくもまあこんなビンボくさいマンガが描けたものだ。

ダンドリとは よどみなさなり

この言葉を胸に、今日もチマチマ生きていく、私である。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/03/19 11:30

クニトリ本。

亡父はお世辞にも読書家とは言えなかった。

教養イコール本を読むこと、という時代の人である。時流に遅れぬため、読まねば、という思いはあるのか、ときおり本屋の紙袋を持って帰る。

しかし、読んでいる姿はサッパリ見なかった。

本はほとんど開かれず、書棚にきちんと収まり、新品のまま古びて、ホコリをかぶる。

また…お父さんのツンドクが…

母が言うから、私も積ん読という言葉を覚えた。

そんな父が、職場近くの書店の紙袋を手に帰った、月曜の夜

まただよ…

皆、そんな空気であった。

前夜、家族で見た大河ドラマの原作は、お弁当箱ほどもある上下巻。

きっと本棚入りだよ、と思っていたが、晩ごはんの後、風呂に入る間も惜しんで読み続け

おい スタンドはどこだ…

父はついには本を寝床にまで持ち込んだ。

勢いは、2冊を読み切っても衰えることはなく、父は同じ著者の別の本を、次々と買ってきては、読破した。

それ以来、その著者の名は、娘の私にとっても、ちょっとだけ特別だ。

お父さんも 小説に夢中になったりするんだな

子供心に思ったのも、なつかしい。

本の名は、「国盗り物語」

くにとりものがたり
(「国盗り物語」司馬遼太郎著 新潮社刊)

今日は、著者の没後25年にあたる。



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/02/12 11:30

オウジノ本。

祖父母の家に遊びに行くと、まずは探検だ。

長く使われていない部屋は、湿っぽく冷たい。

叔父の部屋には、見たこともない美人女優のピンナップやペナント、革のかびた登山用具。

上の叔母の部屋の窓には、自分で縫ったらしきカーテンがかかり、モクメンを固く詰めたバンビのぬいぐるみが、丸い目でこちらを見ている。

間取りに余裕があるせいか、子供世代はめいめい自分の持物を残しており、そんな忘れられた品物を、宝探しのように見つけては、眺める。

手にとってはあった場所にそっと戻す、それだけのことがとても楽しかった。

いちばん最後に家を出た下の叔母が残したのが、硝子戸の付いた小さな書棚だ。

編み物に英文タイプ、切手収集や海外文通…趣味の実用書を引っぱりだして、ホコリくさいページを繰るたのしみ。

大人の顔しか知らない叔母の、娘時代を思う。

中にはもっと小さかった頃に読んだらしい、お話の本も何冊か混じっていた。

書名に惹かれて手に取った小さな本は、茶色の粗末な段ボールの函入り。

赤い模様の表紙を開けば、すっかり黄ばんだページの上、はかなげな少年が風に吹かれ、瞳のない小さな目で、こちらを見ていた。

初めて読んだその本が、なんだか手放しがたくて、つい、こっそり部屋から持ち出した。

ちょうだい、と言えば、きっと祖母は許しただろうに、なぜか言えなくて、黙って手提げに入れたその本は、今も私の書棚にある。

ほしのおうじさま

戦後間もないクリスマスに創刊された岩波少年文庫は、70周年。(→少年文庫創刊70年特設サイト

懐かしい祖父母の家も、今は無い。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2020/12/25 11:30
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