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ヨメナイ本。

私は絶版の文庫本を買い集める癖がある(→ケサレタ本。)。

買った本はもちろん、読む。

若いころから、読むのは速いほうだ。時間をかけて味わいたい本では、1日に読む頁数を決めたり

ゆっくり… ゆっくり…

読み終わるのが惜しくて、自分に言い聞かせたり。

やっと手に入れた絶版文庫、じっくり読みたいのはたしかだが、それにしてもはかどらない

読んでいると眠くなり

…バタリ

手から本を取り落して

ハッ!

はじめて気づく体たらくである。

絶版になるような作品は、やはりつまらないのか。

ふるいぶんこぼん

いや違う、字が小さいのだ。

くわえて古い本は紙が黄ばんでいるので、字と紙の色の差が曖昧で、より読みにくくなる。

新しい本と比べてみれば、その差は明らか…

あたらしいぶんこぼん

アレ?思ったほど明らかじゃないな。写真が暗いせいかな。

そういえばこのごろ、新刊書を読んでも、昔ほど速く読み進めない気がする。

これってもしかして本のせいじゃなくて、老眼…いや老化?



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ブックガイド | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/03/25 11:30

ケサレタ本。

前から探している絶版文庫本がある。

けされたおとこ
(消された男 フレドリック ブラウン著 創元推理文庫)

シリーズ物のサスペンス小説で、全7作のうちの6作目。

シリーズの他の作品が、同じく絶版でも数百円から、せいぜい3千円までなのに、どういうわけかこれだけが、やけに高価なのだ。

古書には往々にして、こういう謎の価格差があって、内容の面白さとは必ずしもリンクしない。

むしろ、評判が悪くて部数が出なかったもののほうが高かったりする。

ウーン どうしよっかな~

古書店のサイトで検索をかけつつ迷っていたら、ふと妙なことに気がついた。

エジソン、北斎、ダーウィン、ニュートン、島津斉彬、シャクルトン。

誰も知る、歴史上の人物たちだ。中でもシャクルトンはやや知名度で劣るが、南極探検隊を率いた探検家である。

彼らの共通点は、誰かを消したこと。

ナンノコッチャとお思いだろう。探している本の書名が「消された男」。

それを検索するとダレソレに消された男」というのがわんさと引っかかり、上記の人名は、すべてこのダレソレの部分に入る。

「エジソンに消された男」「ニュートンに消された男」「斉彬に消された男」といった具合だ。

どうやら歴史作家のお好みの表現であるらしい。

それにしても、これだけの男が消したり消されたりしているとは、殺伐たるものである。

ちなみに、北斎に消されたのは鍬形蕙斎(くわがた けいさい)、ダーウィンが消したのは、ロバート フックという人であるようだ。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/03/24 11:30

トリテキ本。

いつも拝見しているレツゴー一匹さんのブログの記事(→わたし日々、おもうこと。)で、鬢付け油の香りに春の訪れを感じる、とあった。

相撲といえば春、というのは、大阪ならではの、めでたい感覚である。

私の通った高校の近くにも、相撲部屋の合宿所があって、春先にはよく力士の姿を見かけた。

おそらく練習…いや、稽古の行き帰りであったのだろう、汗っぽい乱れ髪の彼らは、鬢付けの香る力士、というより、普通の若者らしく見える。

むっくり太って、浴衣を裾短に着た様子は、ちょっとかわいらしい。

中学を出てすぐ入門して、自分と同年配の男の子が、厳しい勝負を戦っているのだ、と想像して、勝手に親近感を持ったりした。

友人に遅れて、ひとり帰途に就いたある日。

先を行く仲間に追いつこうと、小走りで角を曲がったら

わっ!

思わず声が出た。

若い力士に、いきなり出くわしたのだ。

遠目に見たのと違い、目前に迫る鍛えた肉体は、巨大で、圧倒的で、おそろしかった。

むっくりしてかわいいなんてとんでもない、彼らは最強の戦士なのである。

後年、夜道を力士に追われるという不条理な小説を読んだときは、その怖さがひしひしと迫って

あのとき まだコレを読んでなくてヨカッタ!

もし小説のイメージが先にあったら、私は出合い頭、気絶していたかもしれない。

めたもるふぉせすぐんとう
(「走る取的」新潮文庫「メタモルフォセス群島」所収)

 

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ブックガイド | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/03/15 11:30

エイゴノ本。

はじめて1冊通して読んだ英語の本は、高校の授業の教材。

主人公は、田舎の村に住む、仲良い2人の少年。1人は農家の、1人は漁師の息子である。

貧しくとも平和な彼らの村を、ある日大きな災害が襲う。家族を失い、生き残った漁師の息子が、たくましく育ち、やがて親友の妹と結婚して一家を構えるまでを描いた作品だ。

もともと子供向けらしく、文字数も少ない、薄い本だった。

英語の先生がこの本を選んだ理由は、おそらくは舞台が日本であったためだろう。

生徒たちが親近感を持って読むのでは、という、かすかな期待があったのではないか。

結論から言えば、目論見は大外れであった。

まず、主人公の少年たちの名前。

農家の息子がキノ、漁師の息子がジヤというのである。

最初の授業でヘンテコな名前が読み上げられると

え… 日本人なんでしょ…?

生徒は当惑し、教室はザワザワした。

アメリカ人の作者が、何を思ってこの名前に決めたのかわからないが、ハリウッド映画で、眼鏡をかけ、前歯が2枚飛び出した「ジャップ」を見た時のような幻滅を感じた。

人というものは、いったん違和感を持つと、あとはアラ探しになるものである。

キノがミソスープを飲んでも、ジヤが道でおじいさんに挨拶しても、玄関で深々お辞儀をしても、ヘンな感じが、ずっとなくならない。

合間合間に、西洋人が東洋的だと思っているアレ

じゃ~ん!

というドラの音が聞こえるようで、話に入り込めないのだ。

なじみのある事柄も、英語で説明すると、知らないことを言われた気がするが、そんなことも作用したかと思う。

生意気盛りの生徒らは、薄笑いでこの本を読み、和訳し、ノートに書いた。

「THE BIG WAVE」の作者は「大地」を書いたパール バック(1892.6.26-1973.3.6)

従来取り上げられることの少ない作品だったが、東北の震災以来、改めて読まれているという。

時機を得て、良い翻訳で読んでいれば、印象が違っただろうと思うと、とても残念である。

つなみ
「つなみ THE BIG WAVE」
パール・S・バック (著), 黒井 健 (イラスト), 径書房刊




著者の没後50年に際し、2017年11月5日の記事を再掲載いたします。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/03/06 11:30

ネコノヒ本。

ある年のクリスマスにもらった1冊の

それはイギリスの田舎町に住む、動物の言葉を話す獣医さんのお話(→ドリトル本。)だった。

風変わりな設定を淡々と描く筆致と特徴ある挿絵に、私は夢中になった。

惜しみ惜しみ読んでも、あっという間に終わったお話の続きを求めて本屋に行くと、嬉しいことに全部で13巻もある。

それからはお誕生日に1冊、お年玉で1冊と買いそろえ、おいしい水を飲むように読み進んだ。

犬やアヒル、チンパンジーやブタと、個性豊かな動物がたくさん登場するうちに、疑問がひとつ。

ネコが出てこないのである。

ネコの居ない国の話ではない。登場人物のひとりは、飼猫のエサ売りを生業としている。

にもかかわらず、獣医の先生の周りには、親しく名前を呼ばれるネコは1匹もいないのだ。

ネコを目の敵にする犬や、ネコに追われるネズミやカナリヤといった小動物が出入りする、という事情はあるかもしれない。

うちではネコを飼っていたから、作者はネコが嫌いなのかしらと、子供心にちょっぴり寂しかったのを覚えている。

物語も終盤、先生はなんと月旅行に乗り出す。

地球で留守番の動物たちが、待ちに待った帰還を出迎えると、その懐には月の猫がいた。

先住の動物に気味悪がられ、嫌われても気にかけることなく、はじめての地球を、光る眼で眺め、音のしない柔らかな足裏で歩き回る。

長い長いこの物語で、ネコが注目された、唯一のシーンである。

危険を冒してはるばるやってきたにもかかわらず、その後このネコに関してさしたるエピソードはない。そんなところも、なんだかネコらしい。

どりとるせんせいつきからかえる
(「ドリトル先生月から帰る」 ロフティング著 井伏鱒二訳)



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ブックガイド | コメント(7) | トラックバック(0) | 2023/02/22 11:30
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