FC2ブログ

オモタイ本。

依然閉鎖中の図書館に、予約した本2冊を取りに行く。

どちらもネットやテレビで話題になった本なのだが、運よく順番待ちもなく回ってきた。

ショウショウおまちクダサイ…

カウンターの奥から現れた窓口嬢は、顔の3分の2をマスクで、残りをメガネで覆っている。

表情を窺い知れぬまま、貸出手続を始めた手元を見て、オバサンの余計なこと言いたい病が発症した。

わー、思ったより分厚いわ 重たそう…

じっさいその本は厚みが5センチちかく、どう見ても1キロ越えの重量級であった。

いいなづけ
(「いいなづけ」マンゾーニ著 河出書房新社 838頁8ポ2段組)

すると窓口嬢は

もう1冊は内容が重たいですけどね…

ちょっと驚いて彼女の顔を見ると、メガネの奥の目が親しげに笑っている。

手渡された2冊の重たい本を大切にカバンに入れ、礼を言って図書館を出た。

ときがとまったへや
(内容が重たい「時が止まった部屋」小島美羽著 原書房)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

スポンサーサイト



ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/03/22 11:30

ベツヤク本。

若い頃、長く付き合った彼氏はカイショナシであった。

むろん愛すべき点も多くあり、だからこそ付き合っていたわけだが、いかんせん生活力がない。

時代はバブル、よほどのことがなければ職は選り取り見取りのはずが、いっこうに就職できない。

よほどのこと、があったのか。

趣味も嗜好も、浮世離れした人ではあった。戯曲や詩集、幻想小説。彼の書棚ではじめて見る本は、どれも不思議で謎めいていた。

年下の私がさきに社会人になり、残業に追われて、自然に会わなくなり、長い長い時が流れた。

その本をうちに持ち込んだのは、ムスメが先だったか。

こころみくん

やらなくていいこと、ひたすらココロミました!

ウェブサイトで人気の連載をまとめた、楽しい本。続編も求めて、親子で楽しく読んだ。

この人のお父さん 劇作家なんだって~

ある日ムスメが言って、私の脳ミソの中で何かがピキンと光った。

あー、ベツヤクミノルか…

へ~ 有名なんだ~

確信はなかったが、きっとそうだ。

30年以上前、あの本棚で見た不思議な本。

同じ著者の名前は、サミュエル ベケットなどと並んで、何冊もあったと思う。

彼は何になりたかったのかなあ。

彼の夢を聞いたことがなかったのか、聞いたけど忘れたのか、そんなことももう、思い出せない。

独自の不条理劇を確立した劇作家、別役実が3日、肺炎のため死去した。82歳。

むしづくし
(こんな装丁だったかなあ?)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/03/11 11:30

シマイノ本。

楽しみにしていたお出かけが中止になった。

テレビを点けてもクサクサするニュースばかりなので、気晴らしになる本でも読もう。

あさがやしまいののほほんふたりぐらし
(「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」 幻冬舎)

ちょうどこんなエッセイ本が手元にあった。

昔のネグリジェみたいなピンクのヒラヒラドレスを着て、歌ったり踊ったりするオバサン(私よりずっと年下だけど)芸人コンビの著書である。

私生活についてはほとんど知らなかったが、この本によると、売れっ子になってからもワンルームマンションに2人で住んでいたらしい。

芸名は姉妹でも、赤の他人。よくまあ我慢できるものだが、彼女たちの日々は淡々と、あんがい楽しげに、過ぎていく。

この「あんがい楽しそう」というのが、オバサンの面目躍如であって、オバサン仲間である私は、うんうん、とうなずきつつ読む。

同じビジネス姉妹でも、スイカのような胸を突き出したカノウさんには、得られない共感である。

姉役のエリコさんは、妹役を「ミホさん」と呼ぶが、ミホさんのほうは文章の中でもエリコさんを「姉」と呼ぶ。

「以前、姉が弟と同居していた時…」とある、この弟は、ミホさんとは何のかかわりもない。

またエリコさんが「家族と日光に初詣に行き…」と書くとき、そこにミホさんはいないのだ。

当然だけど、なんだかややこしくて、おかしい。

しかし、いちばん不思議でおかしいのは、うちにこの本を置いて行ったのが、21歳・大学生の、ムスコであるということである。

次に帰ったら、感想を聞いてみたいと思う。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/03/06 11:30

2.26本。

2月26日といえば、2.26事件

学生時代から歴史はサッパリなので、うっかりしたことを書くとボロが出る。

さてどうしようかな、と思っていたら、2.26事件を知らなかった浪人生が主人公の、この本を思い出した。

がもうていじけん
(「蒲生邸事件」宮部みゆき著 文春文庫他)

主人公は、受験を目前に控えていながら、歴史の知識がほとんどない、たよりない若者である。

自らの無知をてんとして恥じず、人の好意をちゃっかり当てにする彼に対して、大人の読者は感情移入しにくいだろう。

つづめて言えば

まったく、イマドキの若いヤツは…

としか言いようのない主人公なのだ。

むろん小説の常として、彼も経験を通じて成長するが、そもそもこの著者には、少年が活躍する作品が多い。

それも登場の瞬間から大人びて冷静で、自分の弱さも世の不条理も、きちんと理解したデキスギ君ばかりなのである。

のび太的な主人公はむしろ少数派だ。

この小説の主人公、孝史のダメダメさも、あくまで平成生まれのイマドキ具合の表現であり、ファンタジーの味付けなのだろう。

大人から軽視される少年少女が、知恵と機転で事態を見事にひっくり返していく爽快さ。

小さきもの、弱きものに注ぐ優しい視線は、豊かなストーリー造形と併せてこの著者の魅力であるが、それにしても理想化し過ぎではないか。

少年なんて、バカで衝動的で、一寸先も想像できない生きものである。

そう思うのは私が、子供の現実を目の当たりに育ててきた、母親であるからかもしれない。

平成と昭和を描いた作品も発表から25年、時代は令和である。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/02/26 11:30

ロンドン本。

英国に住むと決まったが、何をしてよいか分からない。ネット検索はまだ一般的でなかった時代である。

図書館でカードを見て、それらしき本を探すことを思いついた。

ガイドブック、旅行記、滞在記…端から借りて、とにかく読んだ、その中にこの本があった。

ろんどんろんどん

明治、大正、昭和を生きたジャーナリスト長谷川如是閑の著書である。

時は明治43年。シベリア鉄道で渡欧した如是閑の、英国見聞記。

パラパラめくると「英皇崩御の翌朝」とある。

滞在中に王様の御大葬に接した、貴重な記事であるが、その王様というのがエドワード7世、今のエリザベス女王のおじいさんである。

これからの生活に役立てるには、なんぼなんでも古すぎるだろう。自分でもおかしかった。

しかし、読んでみるとこれが面白い。

先立つこと10年、文豪漱石の滞英記が、劣等感と不全感に満ちたジメジメモードであるのに対し、如是閑の筆致は乾いて明るい。

未知のものを見て、分析して、結論を出す。

そういうことを習慣的にやっている人の、訓練された観察眼が、建築、風俗、政治の在り方、女の服装に至るまで、まっすぐに注がれる。

加えて文章が簡潔で、上手いのだ。

さまざまなガイドを読んだけれども、英国と英国人の端っこを理解するのに、いちばん参考になったのは、もしかしたらこの本かもしれない。

今日は著者長谷川如是閑の没後50年に当たる。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/11 11:30
 | HOME | Next »