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ガンテイ本。

読み終えた本が溜まってきたので、古書店に払うために箱詰めした。

2か月でミカン箱ほどの段ボールがほぼいっぱいになって、まだ少し入る。

着払いだからギュー詰めにしなくてもいいのに、つい生来の貧乏性が発動して

他に何か…なにか要らん本は…

本棚をギロギロ睨む。

本棚に立てている本については、いちおう吟味はするけれど、当落線上の本は常にあるものだ。

厚めの上下巻で場所をとっている、ハードカバーに目がとまった。

ひかるげんじのものがたり
(「光る源氏の物語」中央公論社 丸谷才一・大野晋)

この本の処遇を考えるのは何度目だろうか。

読みたければ図書館にある。文庫化もされている。

さらに言えば、この本の内容は、そんなに好きではない。

表題の通り、国語学者と小説家のふたりが、源氏物語についてさまざま語り合うのだが、その話がなんちゅーか、なのだ。

ご案内の通り、源氏物語というのは、光源氏という文武両道、容姿端麗、血統書付のモテモテ男の女性遍歴が主たるストーリーである。

もちろん、教養溢れる対談には得るものも多いし、知識量には圧倒される。

しかし、色ごとに慣れないセンセイがたに、希代のドンファンを語らせるのは、やはり無理があるとも感じる。

紫式部の流麗な筆致は、男女の秘め事を直接に描くことはない。

それに対して、嬉々として実事の有りや否や(つまりヤッたかヤラないか)を検討しているのなど読むと、いささかゲンナリする。

女が描く理想を、現実の男が語ることの難しさは、知性をもってしてもいかんともしがたい。

アリテーに言って、読んでムカつくのだ。

にもかかわらず本棚にあるのは、王朝継ぎ紙を使ったダストジャケットのデザインが美しいから。

包み紙がきれいだから取っておく、と聞いたら、泉下の玩亭先生はさぞかしお怒りであろう。

さて、どうすっかな この本…

本書の著者のひとり、玩亭こと丸谷才一、今日が没後10年になる。



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ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/10/13 11:30

ヘチマノ本。

病人の看護が苦手である。

子供が小さい時は面倒も見たが、大人の男の看病なんて、想像するだけでもウンザリだ。つくづく離婚しておいてよかった。

そんな私が、なぜかこの本は読んでしまう。

ぎょうがまんろく
(「仰臥漫録」正岡子規著 岩波文庫)

「仰臥漫録」の書名の通り、仰向けのまま寝返りもうてない重病人でありながら、その感受性には曇りなく、筆を執ることを忘れない。

驚くべきは著者の食欲。例えば明治34年の今日、9月19日には

朝飯 粥三碗
午飯 冷飯三碗 鰹さしみ 味噌汁さつまいも 佃煮 奈良漬 梨一つ 葡萄一房
間食 牛乳五勺ココア入り 菓子パン 塩煎餅 飴一つ 渋茶
晩飯 粥三碗 泥鰌鍋 キャベツ ポテトー 奈良漬 梅干し 梨一つ


付き添う妹と母は、これだけの食事を用意し、看病に心を配っても、絶えず不満を言われ、激しく当たり散らされている。

文学史に偉大な足跡を残した子規であるが、じつに難儀な病人である。

私だったらやってられねえと思ってしまう。

考えてみれば、40にならない若造なのだ。

夏目漱石や秋山真之ら、友人が各々の分野で活躍する中、自分ひとり病床から離れられない現状への苛立ち、意に任せぬ身体に対する怒り。

その鬱憤を、彼は母に妹に、いっさいの遠慮なくぶつけている。

それは甘えであり、血縁への安心であるだろう。

怒号に身を縮めるわが母、わが妹の眼の中に、死にゆく己への憐みの色を見て、病んだ胸をさらに苦しめる日もあったろう。

痰一斗糸瓜の水も間にあはず

子規の忌日を、糸瓜忌と呼ぶ。



子規没後120年に際し、2018年9月19日の記事に加筆再掲いたします。



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/09/19 11:30

ノハナシ本。

ブログをつけていることは、隠しているわけではないけれど、周囲にはあまり話していない。

なかでもネタの宝庫おばーちゃんには、絶対に秘密である。

先日、ひょんなことで、知人にブログの存在を知られた。さっそく読んだらしく、2、3の感想をくれたあと

あのタイトルはアレ?イジューイン?

は?

教えてくれたその本はコレ

のはなし
(「のはなし」伊集院光著 宝島社刊)

「○○」の話と題する挿話を、五十音順に並べたエッセイ集だ。

私が毎回のタイトルを「○○○○話。」としたのは、毎日書くなら、何かひとつ制限があるほうが書きやすいだろう、と思っただけである。

なんとなく親近感をおぼえて、読んでみた。

立川談志に会ったエピソードがいい。

噺家だった著者は、談志の噺に衝撃を受け、自分はとてもこうはなれない、と思い知らされて落語を辞めた。

ラジオ番組で人気を得たのち、ゲストに迎える機会があって、興奮気味にその旨を伝えたところ

上手い理屈が見つかったじゃねえか

ズバリと返されたというのだ。

人は新しく動き出すとき、つい誰かのおかげで、とか、誰かのせいで、と言いたくなる。

もちろん、他人の言動が、きっかけとなり、判断の材料になることもあるだろう。しかし、本当の本当の理由は、自分の中にしかないのである。

この話だけじゃなく、短い文章のどれもにちゃんと落ちがあって、面白い本だった。

そりゃそうだ、噺家からラジオパーソナリティーになった、いわば言葉のプロだ。

こんな本に倣ったと思われちゃマズい、ひじょーにマズい。某さんには、力を込めて否定しておきたい。

本日、落ちナシ!



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/07/21 11:30

リストノ本。

今日は燃えるゴミの日。

朝もまだ早い時間、ほんの10袋ほどの小さな山に、寄りかからせるように自分のゴミ袋を置く。

ん?

中のひとつ、丸めた紙ゴミが透けて見える袋に目がとまった。

のぞき見はよくないと思いつつ

…川菜穂
…修平


字があると読んでしまう。

寺田玄…
…井峯子


人名みたいだ。

仕事上の付合や慶弔関係で、お名前のリストを作ることはままあるが、このリストはそんな事務的なものではない気がする。

印刷ではなく、ボールペンの手書き。筆圧の弱い細い文字が、微妙に震えて

藤山雅…
清瀬…


怖くなって、立ち去ろうとしたその時



目の端に、ひときわ物騒な文字が飛び込んできた。

これはもしや、犯罪にかかわる何か…

上杉博…

お行儀が悪いと思いながら、目をそらせない。

…賀恭一郎

は~、ヤレヤレ…

ようやく探していた名前を見つけ、ホッとしてその場を離れた。

しんざんもの
(たしかに登場人物が多い小説である)



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/06/23 11:30

アキコノ本。

今日は與謝野晶子の没後80年である。

ここの記事は、前もって心づもりがあるのと、朝思いついたことを書くのが、だいたい半々。

○○の日をきっかけに書くときは、その日がそれと知った時点で、書いてしまうこともある。

もちろん、あらゆる○○の日に対応できるわけではない。

あ、今日はジェットコースターの日だ…

分かっていても、エピソードが無ければ、書くことも無い(→○○のひ話。)のである。

與謝野晶子の没年は、2年前に知った。つまり、その時点で没後78年だったわけだ。

晶子の出身は大阪だし、歌もいくつか知っているし、彼女を題材にした小説も読み、面白かった。何か書けば書ける気はした。

しかし78年はいかにもキリが悪い。

書くとしたら2年後だな…

その時、私は思ったのである。

そして、2年の歳月は瞬く間に過ぎた。歌人晶子について書くべきことの、ひとつとして思い浮かばぬまま。

80年の節目を、そのままに措くのは惜しい。

さりとて10年後に先送りするのは、なんぼキリがよいからとて、無茶というものであろう。

本でも紹介して、お茶を濁すこととしよう。

與謝野晶子(1878.12.7 - 1942.5.29)、その為人を知るため、1冊挙げるならばこれか。

ちすじのくろかみ
(「千すじの黒髪-わが愛の與謝野晶子」田辺聖子著 文藝春秋刊)

せんすじ、ではなく、ちすじ、と読む。念のため。



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ブックガイド | コメント(2) | トラックバック(0) | 2022/05/29 11:30
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