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ちらちら話。

浮世の義理で、マンドリンのコンサートを聞きに行った。

学生時代からマンドリンの音は大好きだが、毎回どう~しても眠ってしまうのはなぜだろう。

どんなに元気いっぱいな時でも、あの音色に包まれると、必ず深い眠りに落ちてしまうのだ。

弦に塗りつけた催眠物質が、振動とともに広がるとか、何か理由があるに違いない。

ともあれ最初の演者はマンドリン2、マンドラ1、ギター1のカルテット。

一曲めは、映画「スティング」のテーマ曲「The Entertainer」。誰もが聞いたことのある曲で惹きつけるのが狙いだろう。

すてぃんぐ

幸いまだ睡魔は訪れないようなので、軽快なラグタイムを楽しむ。

じゃん!と一斉に音を出す時や、一拍置くときなど、メンバーは互いに、アイコンタクトでタイミングをはかっているようだ。

ところが、中の一人、マンドリンの女性が、他のメンバーが目を合わせていないときでも、左右をチラチラ見るのである。

も一人のマンドリンの男性は、その視線を感じてか、時々眼を上げて

ハイハイ、わかってる、わかってるよ

というような顔をしてやっているが、マンドラの女性はめんどくさそうに

アーもう、しかたがないわね…

というような、最低限の応対で済ませている。

ギターの女性にいたっては、終始弦の上に目を伏せたまま見向きもしない。

打率2割くらいで、ロクに目を合わせてもらえないのに、チラチラ、チラチラ、右や左を窺うことをやめないマンドリン女。

なんだか、片思いみたいで、せつない。

ふと気づけば、いつの間にか一曲目も、二曲目も終わっていた。

前の席でごそごそアメを出してなめていたオババも、ハンカチで汗を拭いていた隣のオジサンも、催眠物質の作用で眠りこけている。

私はといえば、四人の人間関係について考えるうち、マンドリンコンサートの最長不眠記録を更新できたようだ。



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2015/08/31 09:31

いかない話。

買いたいものがあるので、今日は近くのスーパーじゃなく、イオンに行こうと思っていた。

リビングではムスコが、往生際悪く、これが最後の夏休みとばかりダラダラしている。

出かける支度をしていたら、点けっぱなしのテレビから、かわいらしい歌声が聞こえてきた。

♪ はつ~か さんじゅ~にちは ごぱ~せんと おっふ ♪

はつーかさんじゅにちは

あー、忘れてた。今日、30日だった…

途端に、支度は中断し、テレビのリモコンを持って、ソファにひっくり返った。

世の中の皆は、割引が好き。だから♪5パーセント おっふ♪の日は、とにかくレジが混む。さらに土曜日曜ともなれば、混雑は倍増する。

そして、私は、何がキライって、混雑がキライなのだ。

私にとって、♪5パーセント おっふ♪のCMは、

今日は出かけないほうがいいわよ

という意味であり、いわば気象警報なのである。

考えてもみるがいい。

5パーセントオフといえばお得なようだが、1万円買ってようやっと500円引き。千円単位の私の買い物など、数十円の得にしかならない。

そんな小銭のために、耳をつんざく騒ぎに巻かれ、汗ばんだ人にはさまれるのはゴメンだ。

ねえ、そう思いませんか…って、おっと…。

どうかどうか、私以外の皆さまは♪5パーセント おっふ♪の日にお出ましくださいませ。

そしてどうか、それ以外の日が、ガラガラに空いていますように。



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てれびじょん | コメント(16) | トラックバック(0) | 2015/08/30 11:27

ぽいんと話。

かつて私はいわゆるテンツマ、転勤族の妻であった。

モト亭主は、2~3年おきに転勤があり、その度にアッチャコッチャへ引越しする。

荷造りは得意だし、引越し自体はあんまり苦にならない。

次々と新しい場所を経験できるのも、面白かった。

職場、ご近所、人間関係、いろんなものが一気にご破算になるというのは、寂しいようだけど、一種爽快だったりもするのだ。

そんな私が、唯一引越しの度に悩まされたもの。

それはポイントカード類の始末である。

日々の買い物をするうちに、あちこちの店でポイントやスタンプが貯まってしまう。

換金できるものを、しないで放ってしまうのは、貧乏性の私にとっては耐え難いことだ。

引越しが決まるとまず、買い物に使えるポイントは全部使う。

全国規模のチェーン店でも、引越し先にあるかは分からない。使ってしまうほうが安心だ。

スタンプ○個で○百円、のタイプで、その○個が貯まってない場合は非常に迷う。

もう少し買い物して、○個にするべきか、引越し荷物を考えると、むやみに買い物もできない。

残り日数の限られた中でチマチマ考えていると、焦りで冷汗が出た。

手品のトランプのようにポイントカードを広げて考え込んでいる時、ふと

そうだ、歯医者も…

と思ってしまった。カードの中に歯科の診察券が混じっていたのである。

歯を診てもらったってポイントは貯まらない。バカな勘違いに、一人で大笑いした。

一瞬で、憑き物が落ちたようになり、束になったポイントカードを、全部ゴミ箱に捨てた。

二度と行かない歯科の診察券も一緒に。

それ以来、私はポイントカードを断るようになった。

テンツマじゃなくなった今、もう引越しはしないけど、習慣はそのままだ。

ぽいんとかーど
(これくらいの貯まり具合が一番迷う)



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2015/08/29 09:11

おでかけ話。

ある日。

友達がグループ展に参加していると聞き、急に思い立って見に行く。

最寄り駅からのバスは、観光客でギッシリで、ラテン系の家族の真ん中にはさまれた。

暑さにもめげず、バアチャンは孫と、オッサンは妻と、活発に意見交換している。

バスが揺れるごとに、ムキダシの毛ズネや二の腕、大きなアクセサリーが触れそうだ。

なじみのないコロンやシェービングクリームの匂い。

外国に来たような気持ちで、バスを降りた。

目的地のギャラリーは、バス停から、静かな路地を何度も折れた突き当り。

ギャラリーという、人に物を見てもらうための場所が、ことさらに分かりにくい場所にあるのはなぜだろう。

何度か迷いそうになり、ようやく到着したが、目印の看板が出ていない。

よく見ると小さな白いボードが裏返され

ギャラリーは本日お休みです

とある。閉じた硝子戸の向こうで、ほっそりした女性が一人、何か作業をしていた。

しかたなく来た道を何度も折れながら戻る。途中の輸入雑貨店で、小さな巻き尺を買った。

次の日。

用事があって、市役所に行く。

ハンコなど、足りないものが無いように、持ち物を何度も点検して出かけた。

1階の14番窓口で書類をもらい、奥の市民課に回って、2階の会計課で順番を待つ。

しやくしょ

ヒンヤリと涼しくてすいていて、不必要にウロウロすることもなく、あっという間に、すべての用事が、きちんと終わった。

昨日と違って、今日は何もかもうまく行った。

でも昨日のほうが楽しかったな。

予定よりかなり早く、市役所の玄関を出ながら思った。



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2015/08/28 09:34

ぼーだー話。

買い物してたら昼を過ぎたので、食べて帰ることにした。

レストラン街のパスタ屋。オープンな雰囲気で、ユニフォームもカジュアルでかわいらしい。

白いシャツなので、トマトソースが飛ばないよう、用心して食べる。

外を見ながら食後のコーヒーを飲んでいたら、二人連れの女性が目についた。

一人は目立つ黄色いワンピース、もう一人はボーダーのTシャツにジーンズの、若い子だ。

確かこの人たち、さっきから2、3回同じところを通っている。

決めかねる様子で、このお店を気にしながら、また通り過ぎてしまった。

これが最後の晩餐ってわけじゃなし、ランチ一食くらい、そんなに迷うものかなあ、と思うが、人はそれぞれだ。

ゆっくりコーヒーを飲んでお店を出たら、驚いたことにさっきの二人が、まだウロウロしている。

いくらなんでも迷いすぎじゃないかと不審に思いつつ、途方に暮れた様子の二人のそばを通ると、何か話している。

もうあそこにしようよ~ パスタ食べたいよ~

ヤダよ~ 「お水ください」とか言われそうじゃん

そう言っているのはボーダーの子である。

なるほど!

さっきのパスタ屋さん、ウエイトレスのユニフォームが、ボーダーにジーンズだった。

ぼーだーしゃつ

黒いエプロンをかけてはいたが、確かにまぎらわしい。

それにしてもアンタたち、いい加減にしないと、ランチタイム終わっちゃうよ!



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2015/08/27 10:29

いながわ話。

軽く先端恐怖の気味がある。

とはいえ、ふだんの生活に支障をきたすほどではない。

やだなー、怖いなーイナガワジュンジのようにつぶやくくらいのことだ。

駅までの道を電動自転車でブッ飛ばしている時、毎回必ずイナガワ化する場所がある。

それは、地区の案内板の立っているところ。

周辺の住宅地図を示した看板に、奥行き10センチくらいの、ブリキのがついているのだが、それが問題なのだ。

私が自転車にまたがった時の目の高さが、ちょうど庇の先端にあたる。

ひさし

いつもは無事に通過しているのであるが、いつかそのうち、この庇の先っぽが目玉をスッとかすめるんじゃないか。

そう想像すると、背中がゾワゾワ、お尻がモゾモゾ

そして、気づくとやだなーやだなー、怖いなー、と、イナガワジュンジのようにつぶやいているのであった。

いながわじゅんじ
(…そのとき、目玉の横を、スーッと…)


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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2015/08/26 11:26

ていどの話。

台風15号。当地は幸い直撃を免れる見込みだが、風向きが怪しくなってきた。

ニュースが気になるので朝からテレビもつけっぱなしだ。

たいふうのにゅーす

各地から、避難の状況や、被害の情報が入ってくる。

強風で住宅の窓ガラスが割れ、室内にいた60代の男性が足に軽いケガをしました

走行中のトラックが強風で横転し、運転していた40代の男性が軽いケガをしました

30代のコンビニ店員の女性が、強風にあおられたドアに指を挟まれて軽いケガをしました


被害にあった方にはお気の毒だが、命に別条がなくてよかった、とも思う。

話は変わるが、私は子供の頃から大変な怖がりである。

病院の採血で気を失い、ツキユビで目の前がマックラになる。

そんな私だから、窓ガラスの切り傷や、コンビニのドアに挟まれたケガを「軽いケガ」と呼ばれると、わりとショックである。

お医者さんや看護師さんに

大丈夫ですよ、傷は軽いです!気を確かに持って!

と励まされて、安心するのとは違うのだ。

怖い痛い目に遭ったあげく、見ず知らずのアナウンサーに

50代の女性が軽いケガをしました

なんて言われたら、かなりムッとすると思う。

まあ、こんな弱虫の私が、もし事故や災害に遭ったとしたら、フラフラでニュースを見るどころではないだろうから、差し支えはないのだが。



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てれびじょん | コメント(12) | トラックバック(0) | 2015/08/25 11:13

おじぞう話。

とある会合の帰り、住宅街の中を通っていたら、にぎやかな子供の声がする。

何気なく角を曲がってみたら、辻にやぐらが組まれ、赤や青の提灯が下がっていた。

ああ、地蔵盆だ。そうか、そんな時期なんだ。

地蔵盆は、地蔵信仰の盛んだった京都を中心とする関西の習慣で、地蔵菩薩のご縁日をお祭りするもの。

周りに下げる提灯は、各家庭で子供が生まれると、子供の名入りでこしらえる。

じぞうぼんのちょうちん
(裏の空いたところに子供の名前を入れる)

早めにお風呂に入れてもらい、首筋に天花粉をはたいて、浴衣に着替える。

妹と手をつないで、辻のお地蔵様まで。小さなお地蔵様が、この日ばかりは幔幕やちょうちんで目覚ましく飾られてうれしそうだ。

母に持たされたお供えを町会のおじさんに渡して、お地蔵さまの前に敷かれたござに座る。

下がっている提灯の中から、自分や妹の名前を探しているうちに、次々とお友達が集まって、お経が始まる。

心得のある町会の役員さんが、ゴルフシャツなんか着たまま、お経を読むのがおかしくて、友達とつつきあって笑ったりする。

それでも神妙に手を合わせておがんだら、お待ちかねの、袋に詰めたお菓子が配られる。

母が妙に厳しくて、買い食い禁止だったので、地蔵盆は駄菓子を食べる唯一のチャンス。

どれから食べようか迷って迷って、一日一個、と自分で決め、惜しみ惜しみ食べるのだ。

最近は、町会行事もうるさがられることが多くなり、地蔵盆が廃れた地区も少なくないらしい。

刺激の多い今の子供には退屈な行事だろう、と勝手に決めていたが、今日出っくわした地蔵盆はなかなかに盛況だ。

しばらくぼうっと立ってその光景を眺めていたが、夕方の風に吹かれて、ハッと我に返った。

もうすぐ、夏が終わる



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むかしむかし | コメント(16) | トラックバック(0) | 2015/08/24 09:35

ちかんの話。

帰宅してつけたテレビは夕方のニュース

バタバタと夕飯の準備にかかりながら、耳はテレビの音を聞いている。

…市職員35歳を、県の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕しました…

バカだなあ…チカンかぁ…

…男は、女性のスカートをめくったことは認めるが、尻を触った覚えはないとして、容疑を否認しています…

ふーん…  …  …  …  え? (脳内プレイバック)

女性のスカートをめくったことは認めるが、尻を触った覚えはないとして、容疑を否認

は? (脳内プレイバック パート2)

スカートをめくったことは認めるが、尻を触った覚えはない

なんじゃと? (脳内プレイバック 三たび)

スカートをめくったことは認めるが、尻を触った覚えはない

ぶはっ!

こんな申し開きを、きちんと聞いて書き留めてくれるなんて、警察もなかなか親切じゃないか。

しかし、お尻の部分を頑強に否定したとして、いくらか罪状は軽くなるのだろうか?

そこら辺はナゾである。

ならけんないのにゅーす
  (ここまで、奈良からお伝えしました)

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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2015/08/23 09:00

メイジン本。

歴史の本を読んでいると、時代を担った人たちの若さに驚く。

もとより、30代で日本を変えた維新の英傑などに、自分をなぞらえるつもりはないが、この人は今の自分より若いんだなあ、と、特別な感情を覚えることはたまにある。

はじめてそれを感じたのは、日曜洋画劇場で見た「ロミオとジュリエット」。

ジュリエットを演じた女優が、当時15歳だと知った時、何とも言えない気持ちになった。

あの感情は何だったんだろう。

ハリウッド女優と田舎の高校生じゃ、比べられないほどかけ離れていて、嫉妬もないし、羨望というのとも違う。

あるいは、自分はまだ何者でもない、という焦燥だろうか。

30年以上が経つけれど、あの気持ちは鮮やかに覚えていて、思い出すたびあの日の自分を、ぎゅっと抱きしめてやりたくなる。

最近、それに似た気持ちを感じることがあった。

かつて愛読したこの本。

ちちのわびじょう
(「父の詫び状」 文春文庫)

ここでの記事に他の著書を紹介した(→ 「すぐみた話。」 )こともあって、久しぶりに手に取った。

学生のころ、この著者の一連のエッセイを、熱心に読んだものだ。

無駄のない文章、鮮やかな結末、まさに「突然現れてほとんど名人」である。

しかし、どんなエピソードにもオチがつく巧みさや、窮屈すぎるほどの美意識が、なんだか鼻につくようになり、少しく離れている間に、あの事故が起きた。

誤解を恐れずに言うが、なるほど、と思った。

巧すぎる文章には、早い結末がふさわしい。痛ましい事故だが、いったんそうなると、他に彼女の退場のしかたはなかったように思えてしまう。

彼女が亡くなったのは、34年前の今日。51歳だった。

自分が、その年齢を越えてしまったことに、ある感慨がある。そして、それが何の感情なのか、この年になってもまだ、うまく説明はできないのだ。

むこうだくにこ
向田 邦子(1929年11月28日 - 1981年8月22日)


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ブックガイド | コメント(10) | トラックバック(0) | 2015/08/22 09:47
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