こうべの話。
その日私は神戸にいた。
天気は快晴、絶好の街ブラ日和である。
さあこれからどうしよう、と思った時、ふとわが母・おばーちゃんの顔が頭に浮かぶ。
おばーちゃんは元・兵庫県民であって、女学生時代のお友達とも、いつも神戸で会っている。
ターミナルビルの公衆電話に50円入れて、実家に電話した。
あ、モシモシおかーさん?今さ、神戸にいるんだけど…
あら~、どうして?また変なバスツアー※でも当たったの?
(※ みすてり話。を参照)
違うよ!仕事があってさ…
神戸のどこ?元町?六甲?今年はまだ行ってないなあ… 前に行った時はさ…
おばーちゃんは世間話のテンポだが、えらい勢いで10円玉が落ちるので、気が気じゃない。
おーかーあーさん!ちょっと聞いて!おかーさん神戸詳しいじゃない?だから…
詳しいなんてそんなあ~… 私なんかさ~あ、友達について歩いてるだけでさ~あ…
謙遜はいいから!あー!もう30円無くなっちゃった…
え?30円?何が30円?神戸のバスはさ…
バスじゃない!電話!あーもう40円!早く早く、どこでお昼食べたらいいか教えて!
あー、お昼ごはん?だったらねえ、北野のねえ… プツッ … … ぷー ぷー ぷー …
けっきょく、情報は何一つとして得られなかった。
仕方がない。10円玉5個分軽くなった財布をカバンに入れ、当てもなく歩き出す。

(南京町のファミマにて)

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天気は快晴、絶好の街ブラ日和である。
さあこれからどうしよう、と思った時、ふとわが母・おばーちゃんの顔が頭に浮かぶ。
おばーちゃんは元・兵庫県民であって、女学生時代のお友達とも、いつも神戸で会っている。
ターミナルビルの公衆電話に50円入れて、実家に電話した。
あ、モシモシおかーさん?今さ、神戸にいるんだけど…
あら~、どうして?また変なバスツアー※でも当たったの?
(※ みすてり話。を参照)
違うよ!仕事があってさ…
神戸のどこ?元町?六甲?今年はまだ行ってないなあ… 前に行った時はさ…
おばーちゃんは世間話のテンポだが、えらい勢いで10円玉が落ちるので、気が気じゃない。
おーかーあーさん!ちょっと聞いて!おかーさん神戸詳しいじゃない?だから…
詳しいなんてそんなあ~… 私なんかさ~あ、友達について歩いてるだけでさ~あ…
謙遜はいいから!あー!もう30円無くなっちゃった…
え?30円?何が30円?神戸のバスはさ…
バスじゃない!電話!あーもう40円!早く早く、どこでお昼食べたらいいか教えて!
あー、お昼ごはん?だったらねえ、北野のねえ… プツッ … … ぷー ぷー ぷー …
けっきょく、情報は何一つとして得られなかった。
仕方がない。10円玉5個分軽くなった財布をカバンに入れ、当てもなく歩き出す。

(南京町のファミマにて)

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だいがく話。
大阪弁の抜けない大学教授のヨネザワ君(→ おおさか話。)に、引越見舞の電話をした。
ほたらナニか、キミのとこのボクも、もう受験生か!早いなあ!
「ほたらナニか」というのも上方落語みたいだが、「キミのとこのボク」!
キミ=私のところにボク=ヨネザワ君がいるという意味では、もちろんない。
「ボク」は「少年」という意味であり、「キミのとこのボク」は、うちのムスコのことなのだ。
こんな表現がスラッと出るなんて、やはりヨネザワ君はスゴイ。
そうなのよ~ あんまり難しいとこは無理だし… 私立は学資も高いし…
首都圏は下宿からなにから、えらい高いしなあ… 地方の国立なんかどや?
いいねえ!金沢とか、東北とか… 遊びに行けるし…
ちゃうちゃう、四国か九州や ボクにもそない言うたれ
え、なんで?
雪降って、寒いやろ? 冬が長い… なんし大阪もんは、根性ナシやよってな
ええ~、そおお?
あんな、遊びに行くんやったらナ、ものごっつエエとこやねん せやけど一人で住んだらな、そらしんどいデ
ヨネザワ教授は独身なのである。
あ!ヨネザワ君、アンタ!
彼の前の勤務地は北陸の某都市であった。
エエでえ~太平洋側は… ぬくいし、天気はエエし…
寒いのが苦手な根性ナシの大学教授は、へへへと笑った。

(米朝師匠の高座が聞きたくなった)

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ほたらナニか、キミのとこのボクも、もう受験生か!早いなあ!
「ほたらナニか」というのも上方落語みたいだが、「キミのとこのボク」!
キミ=私のところにボク=ヨネザワ君がいるという意味では、もちろんない。
「ボク」は「少年」という意味であり、「キミのとこのボク」は、うちのムスコのことなのだ。
こんな表現がスラッと出るなんて、やはりヨネザワ君はスゴイ。
そうなのよ~ あんまり難しいとこは無理だし… 私立は学資も高いし…
首都圏は下宿からなにから、えらい高いしなあ… 地方の国立なんかどや?
いいねえ!金沢とか、東北とか… 遊びに行けるし…
ちゃうちゃう、四国か九州や ボクにもそない言うたれ
え、なんで?
雪降って、寒いやろ? 冬が長い… なんし大阪もんは、根性ナシやよってな
ええ~、そおお?
あんな、遊びに行くんやったらナ、ものごっつエエとこやねん せやけど一人で住んだらな、そらしんどいデ
ヨネザワ教授は独身なのである。
あ!ヨネザワ君、アンタ!
彼の前の勤務地は北陸の某都市であった。
エエでえ~太平洋側は… ぬくいし、天気はエエし…
寒いのが苦手な根性ナシの大学教授は、へへへと笑った。

(米朝師匠の高座が聞きたくなった)

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おおさか話。
ヨネザワ君から転居ハガキが来たので、ちょっと電話してみた。
地方大学から、首都圏の有名大学への転勤だから、ご栄転だ。
大学教授の彼は、私の友人の中でずば抜けてインテリであるのだが…
もしもし、ヨネザワ君?私…
あー、キミか!どや、機嫌良うしてるか?
うちはみんな元気だよ ヨネザワ君、えらいご栄転じゃない
せやろ! 来おへんか、て、言うてくれはる人があってなぁ~
関西を出てもう30年になろうとするのに、いっこうに大阪弁の抜けないヨネザワ君。
現に関西に住んでいる私よりずうっと、大阪人らしい大阪弁である。
字にすると伝わりにくいが、ガラが悪いわけではない。人品高潔、物腰オダヤカな紳士だ。
それにしても、大阪弁抜けないねえ…
せやねん こないだもなあ…
おっとりしたヨネザワ君が、少し困った声を出した。
ワシこないだ、学会で英語で講演したんや… ほしたら、あとの懇親会で、知らん子おがスルスルッと寄ってきてなあ 「ヨネザワ先生、関西のご出身ですか?」て…
え?英語だったんでしょ?
ワシ、どうやら英語も訛っとんのや… 英語も大阪弁やねん… て、なに笑ろとんねん
ハハハ… 嬉しいなあ… 米朝師匠が来たみたい…
電話を切っても、しばらくは、ほのぼのとした気分が続いた。

(「味の招待席」がまた見たい)

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地方大学から、首都圏の有名大学への転勤だから、ご栄転だ。
大学教授の彼は、私の友人の中でずば抜けてインテリであるのだが…
もしもし、ヨネザワ君?私…
あー、キミか!どや、機嫌良うしてるか?
うちはみんな元気だよ ヨネザワ君、えらいご栄転じゃない
せやろ! 来おへんか、て、言うてくれはる人があってなぁ~
関西を出てもう30年になろうとするのに、いっこうに大阪弁の抜けないヨネザワ君。
現に関西に住んでいる私よりずうっと、大阪人らしい大阪弁である。
字にすると伝わりにくいが、ガラが悪いわけではない。人品高潔、物腰オダヤカな紳士だ。
それにしても、大阪弁抜けないねえ…
せやねん こないだもなあ…
おっとりしたヨネザワ君が、少し困った声を出した。
ワシこないだ、学会で英語で講演したんや… ほしたら、あとの懇親会で、知らん子おがスルスルッと寄ってきてなあ 「ヨネザワ先生、関西のご出身ですか?」て…
え?英語だったんでしょ?
ワシ、どうやら英語も訛っとんのや… 英語も大阪弁やねん… て、なに笑ろとんねん
ハハハ… 嬉しいなあ… 米朝師匠が来たみたい…
電話を切っても、しばらくは、ほのぼのとした気分が続いた。

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はいくの話。
ずいぶん前だが、見るものがなくて、教育テレビの俳句講座をつけっぱなしにしていた。
投稿された視聴者の句に、ステキなのがあったのを覚えている。
春の雨の中、傘を差さず小走りで郵便受けに行くと、遠い人からの手紙
雨が一粒、宛名の上に落ちて、万年筆の懐かしい筆跡が、少しにじむ
…という情景を描いたものだ。
ところが肝心の句がどうであったのか、全然思い出せない。
それでは、と再構成を試みたが、これだけの内容を17文字で表すのは、到底無理なのだ。
俳句ってスゴイ、と思う。
それにしても、メールが普及して、昔に比べて手紙をもらうことはぐっと少なくなった。
郵便受けを覗いて、DMばかりの中、たまーに手書きの封筒があると、とっても嬉しい。
ベリルには英会話を習ったのだが、年も近かったし、先生と生徒から、お友達になった。
今は国に帰っていて、年に一度クリスマスカードが来る。
パソコンを買った時にアドレスを知らせてきたので、しばらくはメールもしたが、尻切れトンボとなり、今は郵便だけのやりとりである。
5年前、東北の震災のすぐ後、クリスマスでもないのに、まるまっちい字の封筒が届いた。

きれいなお花のカードに
恐ろしいニュースを聞きました TUNAMIを逃れ、このカードが無事に届くことを祈ります
とある。
ニュースを見て、すぐに書いてくれたのだろう。いつも以上に字が乱雑である。
しかし、私の住まいは近畿地方、しかも海なし県。
3年も日本に住んでたくせに、地理音痴にもほどがあるよベリル!
だけど、遠いとおい国で、私のこと心配してくれて、ありがとう。
ベリルの手紙は、暖かな春の雨に濡れていた、ような気がする。

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投稿された視聴者の句に、ステキなのがあったのを覚えている。
春の雨の中、傘を差さず小走りで郵便受けに行くと、遠い人からの手紙
雨が一粒、宛名の上に落ちて、万年筆の懐かしい筆跡が、少しにじむ
…という情景を描いたものだ。
ところが肝心の句がどうであったのか、全然思い出せない。
それでは、と再構成を試みたが、これだけの内容を17文字で表すのは、到底無理なのだ。
俳句ってスゴイ、と思う。
それにしても、メールが普及して、昔に比べて手紙をもらうことはぐっと少なくなった。
郵便受けを覗いて、DMばかりの中、たまーに手書きの封筒があると、とっても嬉しい。
ベリルには英会話を習ったのだが、年も近かったし、先生と生徒から、お友達になった。
今は国に帰っていて、年に一度クリスマスカードが来る。
パソコンを買った時にアドレスを知らせてきたので、しばらくはメールもしたが、尻切れトンボとなり、今は郵便だけのやりとりである。
5年前、東北の震災のすぐ後、クリスマスでもないのに、まるまっちい字の封筒が届いた。

きれいなお花のカードに
恐ろしいニュースを聞きました TUNAMIを逃れ、このカードが無事に届くことを祈ります
とある。
ニュースを見て、すぐに書いてくれたのだろう。いつも以上に字が乱雑である。
しかし、私の住まいは近畿地方、しかも海なし県。
3年も日本に住んでたくせに、地理音痴にもほどがあるよベリル!
だけど、遠いとおい国で、私のこと心配してくれて、ありがとう。
ベリルの手紙は、暖かな春の雨に濡れていた、ような気がする。

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しーとの話。
一夜明けて、まだ恐ろしい時間が続く。
週末の天気の崩れに備え、避難所で雨除けのシートが配布される模様が、テレビに映った。
鮮やかな青に、動悸が早まる。
神戸の震災の時にも、家という家を覆っていた、あの色だ。
震災の後、大阪梅田から阪急電車に乗って、宝塚の親戚まで、何度も往復した。
季節の商品に彩られた梅田のターミナルから乗車して、しばらくは繁華な街の景色を眺める。
しかし、神戸に近づくにつれて様子は変わってくる。
屋根瓦の崩れを青いシートで覆った家屋が、ぽつぽつと見え始めて、あ、と思った時には、地震の激しかった地域だ。
陥没した屋根。膝を折った人のように、柱の支えをなくして、傾いた家。
あったはずの家がなくなって、ぽっかりできた空き地に、積み重なる瓦礫。
そしてそれらの多くが、青いシートで覆われていた。
何か月も経っても、シートはなかなかなくならない。工事が間に合わないのである。
梅田から宝塚まで、青に包まれた家が一軒もなくなったのは、いつのことだったろう。
あれから、ブルーシートを見ると、心穏やかではいられない。
あの人工的な青い色は、どんなに自然に抗っても勝てない人間の、敗北の旗であった。


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週末の天気の崩れに備え、避難所で雨除けのシートが配布される模様が、テレビに映った。
鮮やかな青に、動悸が早まる。
神戸の震災の時にも、家という家を覆っていた、あの色だ。
震災の後、大阪梅田から阪急電車に乗って、宝塚の親戚まで、何度も往復した。
季節の商品に彩られた梅田のターミナルから乗車して、しばらくは繁華な街の景色を眺める。
しかし、神戸に近づくにつれて様子は変わってくる。
屋根瓦の崩れを青いシートで覆った家屋が、ぽつぽつと見え始めて、あ、と思った時には、地震の激しかった地域だ。
陥没した屋根。膝を折った人のように、柱の支えをなくして、傾いた家。
あったはずの家がなくなって、ぽっかりできた空き地に、積み重なる瓦礫。
そしてそれらの多くが、青いシートで覆われていた。
何か月も経っても、シートはなかなかなくならない。工事が間に合わないのである。
梅田から宝塚まで、青に包まれた家が一軒もなくなったのは、いつのことだったろう。
あれから、ブルーシートを見ると、心穏やかではいられない。
あの人工的な青い色は、どんなに自然に抗っても勝てない人間の、敗北の旗であった。


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ろーかる話。
持ち帰りの仕事をチビチビやりながら、刑事ドラマを見ていたら、画面に地震速報が出た。
身体に揺れは感じないが、心が強くざわつく。
テレビ画面に近づいて文字を読んだら、震度7とあるので、驚いてチャンネルを変えた。
NHKをつけたつもりが、慌てていたのだろう。
画面に、青々とした芝生で平和そのものにゴルフを楽しむ男女が映った。

(「牧野裕のEnjoy Golf」 チバテレ)
ローカル局のKBS京都だ。
すぐにNHKにチャンネルを変えると、局の屋上カメラが大きな揺れを映している。
暗くて様子は定かではないが、大変なことになった、という感じがだんだん伝わってくる。
しばらく見ていて情報が一巡したようなので、民放に変えたら、そちらもそれぞれに通常の番組を中止して、地震のニュースを伝え始めていた。
なんだかもう座っていられなくて、立ったままリモコンを持ち、チャンネルをアチコチしているうちに、またKBS京都になった。
晴天のゴルフ場、楽しそうなプレー風景が、まだ映っている。
こんな時に不謹慎な、何がエンジョイゴルフだ!
と、とっさに、つい思った。
ふだん不真面目な人間が、ガラにもなくカッとしたが、しばらく考え直して、反省した。
ノンキな番組を流しているから、ローカル局の人がノンキなわけじゃない。
遠く離れて、今はなすすべもなく、ただ胸を痛めるだけなのは、私だって同じなのだ。
そんなヤツが、安い正義面をするのは、間違ってるし、恥ずかしいことだ。
テレビを消して歯を磨き、布団を敷いた。
心の中がどうでも、今日という日、私は私の日常を過ごすしか、できることはない。

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身体に揺れは感じないが、心が強くざわつく。
テレビ画面に近づいて文字を読んだら、震度7とあるので、驚いてチャンネルを変えた。
NHKをつけたつもりが、慌てていたのだろう。
画面に、青々とした芝生で平和そのものにゴルフを楽しむ男女が映った。

(「牧野裕のEnjoy Golf」 チバテレ)
ローカル局のKBS京都だ。
すぐにNHKにチャンネルを変えると、局の屋上カメラが大きな揺れを映している。
暗くて様子は定かではないが、大変なことになった、という感じがだんだん伝わってくる。
しばらく見ていて情報が一巡したようなので、民放に変えたら、そちらもそれぞれに通常の番組を中止して、地震のニュースを伝え始めていた。
なんだかもう座っていられなくて、立ったままリモコンを持ち、チャンネルをアチコチしているうちに、またKBS京都になった。
晴天のゴルフ場、楽しそうなプレー風景が、まだ映っている。
こんな時に不謹慎な、何がエンジョイゴルフだ!
と、とっさに、つい思った。
ふだん不真面目な人間が、ガラにもなくカッとしたが、しばらく考え直して、反省した。
ノンキな番組を流しているから、ローカル局の人がノンキなわけじゃない。
遠く離れて、今はなすすべもなく、ただ胸を痛めるだけなのは、私だって同じなのだ。
そんなヤツが、安い正義面をするのは、間違ってるし、恥ずかしいことだ。
テレビを消して歯を磨き、布団を敷いた。
心の中がどうでも、今日という日、私は私の日常を過ごすしか、できることはない。

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たけのこ話。
何かいいことあったんですか?
そう聞いてみたのは、マルミさんの表情が、なんだかとても晴れやかだったから。
ウフフ… タケノコがね… タケノコが来たのよ…

へ?
私は???な顔をしていたのだろう。詳しく話してくれた。
マルミさんには、女学生時代からの親友がいる。彼女を、仮にカズコさん、と呼ぼう。
カズコさんは農家に、マルミさんはサラリーマンに嫁いだが、離れても仲良くしてきた。
住まいが遠くてなかなか会えないが、春先には、カズコさんからタケノコが届き、マルミさんからはお手製のイカナゴのくぎ煮を送る、という友情の交換が、ずっと続いている。
ところが、昨年の春、マルミさんは、カズコさんからタケノコが来てない、と気付いた。
催促するのもおかしいので黙っていたが、待てど暮らせど、来ない。
時は過ぎ、ついに全国的にタケノコは竹になってしまった。
もしや自分は、カズコさんを怒らせるようなことをしたのか?
それとも、なにかタケノコどころじゃない事情があるのか?
マルミさんは悩んだ。
その後いつも通り暑中見舞いや年賀状が来て、ひと安心したものの、タケノコのことを思うと、マルミさんの心に、小さな暗雲が兆すのであった。
そして今年、カズコさんから、例年と変わらぬ立派なタケノコが届いたのである。
段ボールを開けてすぐ、マルミさんは電話に飛びついた。
あ、カズちゃん?私… あの、タケノコ、タケノコありがとう…
マル? 今年のは立派でしょ? 去年はごめんね、不作で、いいのがなくて…
そうだったの! ううん、いいの…
そう電話で話しながら、マルミさんは、頬に安堵の涙を感じた。
フフフ… おっかしいでしょ、タケノコで泣いちゃって… トシとるとダメね…
ちょっと恥ずかしそうな、マルミさん。
セーラー服のマルミさんとカズコさん、二人の仲良し女学生の姿が、目に浮かぶ気がした。

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そう聞いてみたのは、マルミさんの表情が、なんだかとても晴れやかだったから。
ウフフ… タケノコがね… タケノコが来たのよ…

へ?
私は???な顔をしていたのだろう。詳しく話してくれた。
マルミさんには、女学生時代からの親友がいる。彼女を、仮にカズコさん、と呼ぼう。
カズコさんは農家に、マルミさんはサラリーマンに嫁いだが、離れても仲良くしてきた。
住まいが遠くてなかなか会えないが、春先には、カズコさんからタケノコが届き、マルミさんからはお手製のイカナゴのくぎ煮を送る、という友情の交換が、ずっと続いている。
ところが、昨年の春、マルミさんは、カズコさんからタケノコが来てない、と気付いた。
催促するのもおかしいので黙っていたが、待てど暮らせど、来ない。
時は過ぎ、ついに全国的にタケノコは竹になってしまった。
もしや自分は、カズコさんを怒らせるようなことをしたのか?
それとも、なにかタケノコどころじゃない事情があるのか?
マルミさんは悩んだ。
その後いつも通り暑中見舞いや年賀状が来て、ひと安心したものの、タケノコのことを思うと、マルミさんの心に、小さな暗雲が兆すのであった。
そして今年、カズコさんから、例年と変わらぬ立派なタケノコが届いたのである。
段ボールを開けてすぐ、マルミさんは電話に飛びついた。
あ、カズちゃん?私… あの、タケノコ、タケノコありがとう…
マル? 今年のは立派でしょ? 去年はごめんね、不作で、いいのがなくて…
そうだったの! ううん、いいの…
そう電話で話しながら、マルミさんは、頬に安堵の涙を感じた。
フフフ… おっかしいでしょ、タケノコで泣いちゃって… トシとるとダメね…
ちょっと恥ずかしそうな、マルミさん。
セーラー服のマルミさんとカズコさん、二人の仲良し女学生の姿が、目に浮かぶ気がした。

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はんかち話。
わが家の春の大掃除は続く。
衣装ダンスのハンカチの引き出しが、ギッチリ詰まって出しにくいのが気になっていた。
テーブルに中身をあけたら、小さい引き出しなのに、かなりの枚数が入っている。
その数、実に、ひ、ひ、122枚!
材質で分けると、
タオル 42枚
ガーゼ 7枚
布帛 73枚
絵柄で分けると
キャラクター 31枚
花など柄物 55枚
チェック 25枚
無地 11枚
驚きのあまり、思わず分類してしまったが、さてこれをどうするか。
一番簡単なのは、元通りギッチリ詰めて戻すことだが、分類しながら見たところ、どう考えても使わないのが、何枚もある。
春霞のように絵柄が薄れてしまったもの。
あんた誰?と尋ねたくなる謎のキャラクターもの。
やっぱり、そんなのは処分して、スッキリしよう。
使う… 要らない… 迷う… 要らない… 要らない… 使う…
トランプを配るみたいに、要らないハンカチは決まったが、問題はどう処分するか、だ。
ぼろいタオルでさえ、すぐには捨てにくい私である。きれいな色、かわいい模様のハンカチは、いきなりゴミにはできない。
「ハンカチ 再利用」で検索してみた。
使わなくなったハンカチで かわいいポーチ♥を作りましょう!
というような、手芸の記事が、わんさかヒットする。
しかし、ハンカチの隣の引き出しには、既にポーチが13個も入っている。
使わないハンカチを、使わないポーチにしても、なんの解決にもならない。
色とりどりのハンカチの山を前に、腕を組んで顔をしかめ、ウーンと唸る。
それもまた、私のspring cleaningである。

(趣深い「古都鎌倉の見どころ」ハンカチ)

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衣装ダンスのハンカチの引き出しが、ギッチリ詰まって出しにくいのが気になっていた。
テーブルに中身をあけたら、小さい引き出しなのに、かなりの枚数が入っている。
その数、実に、ひ、ひ、122枚!
材質で分けると、
タオル 42枚
ガーゼ 7枚
布帛 73枚
絵柄で分けると
キャラクター 31枚
花など柄物 55枚
チェック 25枚
無地 11枚
驚きのあまり、思わず分類してしまったが、さてこれをどうするか。
一番簡単なのは、元通りギッチリ詰めて戻すことだが、分類しながら見たところ、どう考えても使わないのが、何枚もある。
春霞のように絵柄が薄れてしまったもの。
あんた誰?と尋ねたくなる謎のキャラクターもの。
やっぱり、そんなのは処分して、スッキリしよう。
使う… 要らない… 迷う… 要らない… 要らない… 使う…
トランプを配るみたいに、要らないハンカチは決まったが、問題はどう処分するか、だ。
ぼろいタオルでさえ、すぐには捨てにくい私である。きれいな色、かわいい模様のハンカチは、いきなりゴミにはできない。
「ハンカチ 再利用」で検索してみた。
使わなくなったハンカチで かわいいポーチ♥を作りましょう!
というような、手芸の記事が、わんさかヒットする。
しかし、ハンカチの隣の引き出しには、既にポーチが13個も入っている。
使わないハンカチを、使わないポーチにしても、なんの解決にもならない。
色とりどりのハンカチの山を前に、腕を組んで顔をしかめ、ウーンと唸る。
それもまた、私のspring cleaningである。

(趣深い「古都鎌倉の見どころ」ハンカチ)

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おそうじ話。
私はかねがね、年末の大掃除なんて、辛くて不合理なことはやめよう!というキャンペーンを地味に続けている。(→ そうじの話。)
寒い、暗い、せわしい時期に、バタバタ家をひっくり返すなんて、愚の骨頂ではないか。
代わりにするのが、spring cleaning。
なんと軽やかにして楽しげな響きであろうか。
進学、進級、就職、転居…環境の変化は春に多い。
不用品を処分し、生活を一変するにふさわしいのは、今の時期なのだ。
明るく暖かな春の日差しの中で、家をサッパリさせるのは本当に気持ちがいい。
そんなわけで、私も春の大掃除中である。
ところが、これがなかなか、一筋縄ではいかない。
要らないものを捨てればそれでいいじゃんか、というのは、コドモの考えである。
例えばタオルが寿命を迎えたら、まず半分に切り、二つ折りにして縫う。
それを台拭きとしてしばらく使用してから、ゾウキンに下げる。
ゾウキンとしてもくたびれたら、外回りや自転車の油拭きに使って、やっと捨てることになるが、捨てるとなれば今度はゴミの分別の問題がある。
もちろん、減ったタオルの引き出しには、新しいのを補給しなければいけない。
一枚のタオルの処分にも、様々な要素が有機的に絡み合っている。
そんな不用品が、一度に無数に発生し、目まぐるしくアッチへ行き、コッチへ移動する。
要らないものをちょいと出して、袋に入れて捨てる、なんて、カンタンな話じゃないのだ。
いくつもの引き出しをぶちまけ、その真ん中で、なぜか鬼の形相でミシンをかけている。
それが私のspring cleaningである。

(私のと、だいぶイメージが違う)

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寒い、暗い、せわしい時期に、バタバタ家をひっくり返すなんて、愚の骨頂ではないか。
代わりにするのが、spring cleaning。
なんと軽やかにして楽しげな響きであろうか。
進学、進級、就職、転居…環境の変化は春に多い。
不用品を処分し、生活を一変するにふさわしいのは、今の時期なのだ。
明るく暖かな春の日差しの中で、家をサッパリさせるのは本当に気持ちがいい。
そんなわけで、私も春の大掃除中である。
ところが、これがなかなか、一筋縄ではいかない。
要らないものを捨てればそれでいいじゃんか、というのは、コドモの考えである。
例えばタオルが寿命を迎えたら、まず半分に切り、二つ折りにして縫う。
それを台拭きとしてしばらく使用してから、ゾウキンに下げる。
ゾウキンとしてもくたびれたら、外回りや自転車の油拭きに使って、やっと捨てることになるが、捨てるとなれば今度はゴミの分別の問題がある。
もちろん、減ったタオルの引き出しには、新しいのを補給しなければいけない。
一枚のタオルの処分にも、様々な要素が有機的に絡み合っている。
そんな不用品が、一度に無数に発生し、目まぐるしくアッチへ行き、コッチへ移動する。
要らないものをちょいと出して、袋に入れて捨てる、なんて、カンタンな話じゃないのだ。
いくつもの引き出しをぶちまけ、その真ん中で、なぜか鬼の形相でミシンをかけている。
それが私のspring cleaningである。

(私のと、だいぶイメージが違う)

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なのはな話。
次の約束まで時間があったので、バス停2つ分を歩くことにした。
桜の花時から少し咲き遅れて満開になった、菜の花の堤。

一面の菜の花が空気まで染めて、うっとりと金色に光る土手道を歩いていると、起きているのに夢の中みたいだ。
足が地につかない、フワフワした気分で進んでいると、向こうから若い男女がやってきた。
オンナノコのほうが、盛んに
なにこれ、くっさーい!菜の花って、くっさーい!
と、騒いでいる。
確かに菜の花のニオイは、いい香りではない。
おヘソのゴマのような、洗わない犬のような、ちょっと動物的なニオイだ。
私などはそのニオイをかぐと、古い布団に顔を埋めた時みたいに、懐かしい気分になる。
しかし、菜の花なんか嗅いだことのないオンナノコは、くさい、くさいを連発している。
バカだなあ。
オトコノコと一緒の時には、思ったことを何でも言えばいいってもんじゃない。
くさい、くさい言ってると、彼の中で、あなたはくさいオンナノコになっちゃう。
口をむすんで、オトコノコの手につかまって、この一面の金色を、ただ見ていれば、その時間はふたりの宝物になるんだよ。
そう思いつつ口には出さず、私は自分の夢に戻って、また歩き始めた。

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桜の花時から少し咲き遅れて満開になった、菜の花の堤。

一面の菜の花が空気まで染めて、うっとりと金色に光る土手道を歩いていると、起きているのに夢の中みたいだ。
足が地につかない、フワフワした気分で進んでいると、向こうから若い男女がやってきた。
オンナノコのほうが、盛んに
なにこれ、くっさーい!菜の花って、くっさーい!
と、騒いでいる。
確かに菜の花のニオイは、いい香りではない。
おヘソのゴマのような、洗わない犬のような、ちょっと動物的なニオイだ。
私などはそのニオイをかぐと、古い布団に顔を埋めた時みたいに、懐かしい気分になる。
しかし、菜の花なんか嗅いだことのないオンナノコは、くさい、くさいを連発している。
バカだなあ。
オトコノコと一緒の時には、思ったことを何でも言えばいいってもんじゃない。
くさい、くさい言ってると、彼の中で、あなたはくさいオンナノコになっちゃう。
口をむすんで、オトコノコの手につかまって、この一面の金色を、ただ見ていれば、その時間はふたりの宝物になるんだよ。
そう思いつつ口には出さず、私は自分の夢に戻って、また歩き始めた。

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