びしゃびしゃ話。
実家では洗面台の前に、お風呂のと同じマットが敷いてある。
昔っからそうなので、そんなものだと思っていたが、実家を出て自分で洗濯するようになると面倒だ。
以来うちでは敷くのをやめたけど、今日までとくに何も困ることがない。
しかし、実家に帰れば、いまも相変わらず洗面所にはマットがある。
ねーおかーさん、あのマットって必要?
要るわよそりゃ… 床が濡れるでしょ?
へ?濡れる?床が?
濡れるでしょ、顔あらうとき…
私は、未だかつて洗顔で床まで濡らしたことはない。
そりゃあ1つや2つ水滴が飛ぶことはあるかもしれないが、マットを必要とするほどのことはないと思う。
後期高齢者が、一体全体どんな激しい洗顔してるんだ。
どうしても気になるので、嫌がるおばーちゃんを説き伏せて、いつも通り顔を洗わせた。
おばーちゃんはまず、浴用タオルを1枚出し、首に巻く。
アレ?そんなことしてたっけ?
してるよ、いつも…
おばーちゃんは不興げな表情で水を出し、身をかがめて、顔をばちゃばちゃと洗った。
めだって大暴れする様子もない。
それなのに洗い終わったのを見れば、胸元のタオルも、足元のマットも、すでにビショビショだ。
ここまで観察してみて、原因にはだいたい見当がついた。
おばーちゃんは手に水を受け、ヒジを曲げてその水を顔に近づける。
その時に水がヒジをつたってそこいらじゅうにこぼれるのだ。
おかーさんヒジ曲げすぎ~ 顔のほうを水面に近づけてごらん…
いいの!あたしは70年から、こやって洗ってるんだから…
マットもタオルも要らなくなる、建設的な提案は、あえなく却下された。
実家の洗面所は、今日も明日もビシャビシャである。

(タオルがいっぱいあるからいいんだってさ~)

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昔っからそうなので、そんなものだと思っていたが、実家を出て自分で洗濯するようになると面倒だ。
以来うちでは敷くのをやめたけど、今日までとくに何も困ることがない。
しかし、実家に帰れば、いまも相変わらず洗面所にはマットがある。
ねーおかーさん、あのマットって必要?
要るわよそりゃ… 床が濡れるでしょ?
へ?濡れる?床が?
濡れるでしょ、顔あらうとき…
私は、未だかつて洗顔で床まで濡らしたことはない。
そりゃあ1つや2つ水滴が飛ぶことはあるかもしれないが、マットを必要とするほどのことはないと思う。
後期高齢者が、一体全体どんな激しい洗顔してるんだ。
どうしても気になるので、嫌がるおばーちゃんを説き伏せて、いつも通り顔を洗わせた。
おばーちゃんはまず、浴用タオルを1枚出し、首に巻く。
アレ?そんなことしてたっけ?
してるよ、いつも…
おばーちゃんは不興げな表情で水を出し、身をかがめて、顔をばちゃばちゃと洗った。
めだって大暴れする様子もない。
それなのに洗い終わったのを見れば、胸元のタオルも、足元のマットも、すでにビショビショだ。
ここまで観察してみて、原因にはだいたい見当がついた。
おばーちゃんは手に水を受け、ヒジを曲げてその水を顔に近づける。
その時に水がヒジをつたってそこいらじゅうにこぼれるのだ。
おかーさんヒジ曲げすぎ~ 顔のほうを水面に近づけてごらん…
いいの!あたしは70年から、こやって洗ってるんだから…
マットもタオルも要らなくなる、建設的な提案は、あえなく却下された。
実家の洗面所は、今日も明日もビシャビシャである。

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おにぎり話。
今日の行先はいわゆる「閑静な住宅街(笑)」で、徒歩圏内に飲食店も商店もない。
乗換駅でおひるを買っていこうと、構内のコンビニに駆け込んだ。

オニギリの棚の前には先客がいた。
沿線の私立学校の制服を着た女子高生だ。
左手にはスポーツドリンクのペットボトル、今日のおひるごはんを選んでいるらしい。
駅のコンビニは狭くて、オニギリの棚の前に二人は立てないから、彼女の買い物が済むのを待った。
それにしても長い。
最初いくつかのオニギリの間で目を泳がせていたが、最終的に候補は二つに絞られたようだ。
ようやっと右手を出して、一つを取ろうとした。
が、ひっこめる。
そして、もう一つを取ろうとした。
が、また手をひっこめる。
眉間にしわを寄せて、さらに長考に入る模様。
このままでは、乗ろうと思っていた電車が出てしまう。やむなく大きなセキバライをした。
女子高生は、さすがにビクッとして一つを取り、こちらを気にしながらレジに去って行く。
それにしてもいったい、何をあんなに迷っていたのか。彼女が凝視していたところを見れば
手巻 紅しゃけ 140円
直巻 焼きしゃけ 120円
両方しゃけかよ!
どっちでもいいじゃん!
だいたい、スポーツドリンクとオニギリも、どうかと思うぞ!
腹立ちまぎれにテキトーに2個のオニギリを購入し、ギリギリで快速電車に飛び乗った。
お昼に袋を開けてみると、私が買ったのは
直巻 明太子マヨネーズ 120円
手巻 辛子明太子 140円
の、メンタイコ二連発であった。

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乗換駅でおひるを買っていこうと、構内のコンビニに駆け込んだ。

オニギリの棚の前には先客がいた。
沿線の私立学校の制服を着た女子高生だ。
左手にはスポーツドリンクのペットボトル、今日のおひるごはんを選んでいるらしい。
駅のコンビニは狭くて、オニギリの棚の前に二人は立てないから、彼女の買い物が済むのを待った。
それにしても長い。
最初いくつかのオニギリの間で目を泳がせていたが、最終的に候補は二つに絞られたようだ。
ようやっと右手を出して、一つを取ろうとした。
が、ひっこめる。
そして、もう一つを取ろうとした。
が、また手をひっこめる。
眉間にしわを寄せて、さらに長考に入る模様。
このままでは、乗ろうと思っていた電車が出てしまう。やむなく大きなセキバライをした。
女子高生は、さすがにビクッとして一つを取り、こちらを気にしながらレジに去って行く。
それにしてもいったい、何をあんなに迷っていたのか。彼女が凝視していたところを見れば
手巻 紅しゃけ 140円
直巻 焼きしゃけ 120円
両方しゃけかよ!
どっちでもいいじゃん!
だいたい、スポーツドリンクとオニギリも、どうかと思うぞ!
腹立ちまぎれにテキトーに2個のオニギリを購入し、ギリギリで快速電車に飛び乗った。
お昼に袋を開けてみると、私が買ったのは
直巻 明太子マヨネーズ 120円
手巻 辛子明太子 140円
の、メンタイコ二連発であった。

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うなった話。
♪ うう~… ううう~… ♬
駅前の交差点で信号の変わるのを待っていたら、低い音が聞こえる。
車のエンジン音にしては軽い音。
何だろ?と思っていたら、いきなり音程が高く、調子が変わって、独特のバイブレーションが加わった。
♪ ううう~… うおお~… おえあ~… ♬
音じゃない、人のうなり声だ。
信号待ちのミニバイクのオジサンが、けっこうなボリュームでウナっている。
ポップスや歌謡曲ではなく、謡のような、詩吟のような、日本の曲らしい。
お稽古中の曲のおさらいなのか、それにしてもデカい声である。
自動車の中なら大声で歌っても外には聞こえないけれど、バイクではそうはいかない。声を出したら当然丸聞こえなのだが、ヘルメットをかぶって走っていると、密室みたいな感覚になるのだろうか。
信号が変わって、オジサンはバイクを発車させ、
♪ うおう~… えおあ~… ♬
うなりながら去っていく。
ヘンな人がいるものだなあ、と思いながら、自転車置き場に着いた。
ここから家までは自転車である。
調子よく漕ぎだし、下り坂でスピードの乗ってきた時、忘れ物に気付いた。
アッ、パン買うの忘れた!
思わず大きな声でヒトリゴト。
歩道をすれ違う人の驚く顔を、ほんの一瞬横目に見て、トップスピードで疾走する。
人のことは言えない、私もそうとうヘンな人だ。
思い出し笑いがこぼれ、秋風に乗って、はるか後方へ飛んでいった。

(♪ ううう~… うおお~… おえあ~… ♬)

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駅前の交差点で信号の変わるのを待っていたら、低い音が聞こえる。
車のエンジン音にしては軽い音。
何だろ?と思っていたら、いきなり音程が高く、調子が変わって、独特のバイブレーションが加わった。
♪ ううう~… うおお~… おえあ~… ♬
音じゃない、人のうなり声だ。
信号待ちのミニバイクのオジサンが、けっこうなボリュームでウナっている。
ポップスや歌謡曲ではなく、謡のような、詩吟のような、日本の曲らしい。
お稽古中の曲のおさらいなのか、それにしてもデカい声である。
自動車の中なら大声で歌っても外には聞こえないけれど、バイクではそうはいかない。声を出したら当然丸聞こえなのだが、ヘルメットをかぶって走っていると、密室みたいな感覚になるのだろうか。
信号が変わって、オジサンはバイクを発車させ、
♪ うおう~… えおあ~… ♬
うなりながら去っていく。
ヘンな人がいるものだなあ、と思いながら、自転車置き場に着いた。
ここから家までは自転車である。
調子よく漕ぎだし、下り坂でスピードの乗ってきた時、忘れ物に気付いた。
アッ、パン買うの忘れた!
思わず大きな声でヒトリゴト。
歩道をすれ違う人の驚く顔を、ほんの一瞬横目に見て、トップスピードで疾走する。
人のことは言えない、私もそうとうヘンな人だ。
思い出し笑いがこぼれ、秋風に乗って、はるか後方へ飛んでいった。

(♪ ううう~… うおお~… おえあ~… ♬)

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せんてい話。
今年になって、住宅の管理会社が変わった。
制度が新しくなった時、前のほうが良かった、なんて言うのは、ババアっぽくて見苦しいが、慣れないというか、アレ?と思うことが多い。
自転車置き場の管理、外回りの掃除、やることなすことピントが外れてる気がする。
どうも気に食わない。
公平を期するため付け加えるが、屋内の掃除はよくやっていて、エレベーターホールが以前よりキレイだ、と喜んでいる人もいるようだ。
管理会社にも得手不得手があって、この会社は外回りの作業が苦手なのだろう。
この夏は雨が少なかった。
それなのに、新しい会社の管理人は、植え込みにぜんぜん水をやらなかったらしい。
敷地を囲む生け垣が、ところどころ枯れて茶色になっている。
雑草も伸び放題なので、日頃おとなしい私も、さすがにモンクの一つも言ってやろうと思っていたら、9月になって業者の草刈りが入った。
電動草刈り機や剪定用のバリカンを使って、瞬く間に終了。
こんなにすぐ終わるんだからサッサとしろや!と思わないでもないが、しないよりゃマシだ、と、胸を収めたつもりだった。
ところが昨日、本当に腹の立つものを見てしまった。

これなのだが、お分かりいただけるだろうか。
枯れたサツキを、まーるく刈ってあるのだ。
枯れ木を剪定してどうする!
管理会社へのイライラは、しばらく続きそうである。

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制度が新しくなった時、前のほうが良かった、なんて言うのは、ババアっぽくて見苦しいが、慣れないというか、アレ?と思うことが多い。
自転車置き場の管理、外回りの掃除、やることなすことピントが外れてる気がする。
どうも気に食わない。
公平を期するため付け加えるが、屋内の掃除はよくやっていて、エレベーターホールが以前よりキレイだ、と喜んでいる人もいるようだ。
管理会社にも得手不得手があって、この会社は外回りの作業が苦手なのだろう。
この夏は雨が少なかった。
それなのに、新しい会社の管理人は、植え込みにぜんぜん水をやらなかったらしい。
敷地を囲む生け垣が、ところどころ枯れて茶色になっている。
雑草も伸び放題なので、日頃おとなしい私も、さすがにモンクの一つも言ってやろうと思っていたら、9月になって業者の草刈りが入った。
電動草刈り機や剪定用のバリカンを使って、瞬く間に終了。
こんなにすぐ終わるんだからサッサとしろや!と思わないでもないが、しないよりゃマシだ、と、胸を収めたつもりだった。
ところが昨日、本当に腹の立つものを見てしまった。

これなのだが、お分かりいただけるだろうか。
枯れたサツキを、まーるく刈ってあるのだ。
枯れ木を剪定してどうする!
管理会社へのイライラは、しばらく続きそうである。

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がんばる話。
今週末は台風が来るとか、来ないとか。
近所の小学校は、日曜日が運動会。親御さんはお天気がどうなのか、さぞかし気のもめることだろう。
うちの子はもう大きいから、運動会が雨だろうと順延だろうと、もはや他人事だが、あのヤキモキした気持ちは、なんだか懐かしい。
ムスメの小学校の担任のマツカワ先生は雨男と言われていた。
3、4年生を担任していただいたのだが、遠足も、社会科見学も、とにかく先生の受け持ちの2年間、あらゆる行事にかならず雨が降ったのである。
クラス担任は他に3人いらしたが、なぜマツカワ先生ひとりが雨の原因とされたのかは分からない。
楽しみにしている遠足の朝、天気予報を見、空模様を見、
ああ… やっぱり…
と、タメイキをついて、「しおり」に書かれた『雨の日のじゅんび』をととのえる。
そんなことが何度もあった。
子供ひとりの支度はまだいいが、お弁当に、場所取りに、家族全員が右往左往する運動会はたいへんだ。
当日の朝、早起きして準備した家族全員分のお弁当がカラブリになると、本当にガックリする。
順延になると、また一から同じようにお弁当を作らないといけないと思うと、さらに疲労が増す。
お母さん連中は、顔を合わせると
もう~、ホント、カンベンしてほしいわ先生…
これさえなければ、いい先生なんだけどねえ…
などと、くちぐちにボヤいたものだ。
4年生の1学期末の学級懇談会。
学級の様子など、ひとしきり話し終わったマツカワ先生が、あらたまった表情になった。
えー、9月の運動会ですが… 毎回、お母さん方にはご心配、ご迷惑をかけております…
何事か、と、出席の母親たちがざわめく中、先生は続けて
…今年はなんとしてもお天気になるよう、僕も頑張りますので、応援よろしくお願いします!
教卓の上で、深々と頭を下げた。
誰からともなく、パチパチと拍手が起こり、教室は和やかな雰囲気に包まれた。
そして9月になり、運動会前日の予報は曇り一時雨。
迎えた当日、朝方やや雲は多めだったものの、雨にはならず、無事運動会が挙行された。
ホイッスルを首にかけて子供たちの前に立つマツカワ先生の姿は、いつもに増して颯爽としていた。
先生がいったい何を頑張ったのか、それはいまもって謎である。


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近所の小学校は、日曜日が運動会。親御さんはお天気がどうなのか、さぞかし気のもめることだろう。
うちの子はもう大きいから、運動会が雨だろうと順延だろうと、もはや他人事だが、あのヤキモキした気持ちは、なんだか懐かしい。
ムスメの小学校の担任のマツカワ先生は雨男と言われていた。
3、4年生を担任していただいたのだが、遠足も、社会科見学も、とにかく先生の受け持ちの2年間、あらゆる行事にかならず雨が降ったのである。
クラス担任は他に3人いらしたが、なぜマツカワ先生ひとりが雨の原因とされたのかは分からない。
楽しみにしている遠足の朝、天気予報を見、空模様を見、
ああ… やっぱり…
と、タメイキをついて、「しおり」に書かれた『雨の日のじゅんび』をととのえる。
そんなことが何度もあった。
子供ひとりの支度はまだいいが、お弁当に、場所取りに、家族全員が右往左往する運動会はたいへんだ。
当日の朝、早起きして準備した家族全員分のお弁当がカラブリになると、本当にガックリする。
順延になると、また一から同じようにお弁当を作らないといけないと思うと、さらに疲労が増す。
お母さん連中は、顔を合わせると
もう~、ホント、カンベンしてほしいわ先生…
これさえなければ、いい先生なんだけどねえ…
などと、くちぐちにボヤいたものだ。
4年生の1学期末の学級懇談会。
学級の様子など、ひとしきり話し終わったマツカワ先生が、あらたまった表情になった。
えー、9月の運動会ですが… 毎回、お母さん方にはご心配、ご迷惑をかけております…
何事か、と、出席の母親たちがざわめく中、先生は続けて
…今年はなんとしてもお天気になるよう、僕も頑張りますので、応援よろしくお願いします!
教卓の上で、深々と頭を下げた。
誰からともなく、パチパチと拍手が起こり、教室は和やかな雰囲気に包まれた。
そして9月になり、運動会前日の予報は曇り一時雨。
迎えた当日、朝方やや雲は多めだったものの、雨にはならず、無事運動会が挙行された。
ホイッスルを首にかけて子供たちの前に立つマツカワ先生の姿は、いつもに増して颯爽としていた。
先生がいったい何を頑張ったのか、それはいまもって謎である。


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アガサノ本。
アガサ クリスティーの本を初めて読んだのは小学校高学年の頃だった。
母か、父か、誰のかわからないが、創元推理文庫の古い版の短編集が、実家にあったのだ。

(「クリスチィ」の表記が味わい深い→「クリスチィ短編全集4」)
田んぼの中の平屋の畳に寝転がり、8ポイントの小さな活字を夢中で追った。
そこにあったのはヴィクトリア朝の英国。
貴族がいて、執事がいて、館がある。
牧師と老嬢と美しい庭。
避暑地のホテルの日除けの下の醜聞や、舞踏会のさざめきの中のゴシップ。
田舎の小学生を軽々とそんな場所に連れて行ったのだから、想像力というものは素晴らしい。
もう一つこの文庫で素晴らしいものは、本文中の訳注である。

本文の途中に、カッコ書きで、2行の注が入っている。
英国のものの名前や習慣、英語の語呂合わせなどの解説を、本文以上に熱心に読んだものだ。
サマーセットとはどこか、ハンドレッズアンドサウザンズとは、ベデカーとは何なのか、「 Mon ami 」とは何語で、どういう意味なのか。
そんな何もかもを、2列に並んだ1ミリ角の活字が教えてくれる。
ネット検索などない不便な時代、そんな小さな知識の蓄積が、私にとっての世界だった。
情報の量は、今とは比較にならないだろう。
それでも、あの頃の読書は、今の時代の何物にも代えがたい、豊かな体験だった。本当に、そう思う。

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母か、父か、誰のかわからないが、創元推理文庫の古い版の短編集が、実家にあったのだ。

(「クリスチィ」の表記が味わい深い→「クリスチィ短編全集4」)
田んぼの中の平屋の畳に寝転がり、8ポイントの小さな活字を夢中で追った。
そこにあったのはヴィクトリア朝の英国。
貴族がいて、執事がいて、館がある。
牧師と老嬢と美しい庭。
避暑地のホテルの日除けの下の醜聞や、舞踏会のさざめきの中のゴシップ。
田舎の小学生を軽々とそんな場所に連れて行ったのだから、想像力というものは素晴らしい。
もう一つこの文庫で素晴らしいものは、本文中の訳注である。

本文の途中に、カッコ書きで、2行の注が入っている。
英国のものの名前や習慣、英語の語呂合わせなどの解説を、本文以上に熱心に読んだものだ。
サマーセットとはどこか、ハンドレッズアンドサウザンズとは、ベデカーとは何なのか、「 Mon ami 」とは何語で、どういう意味なのか。
そんな何もかもを、2列に並んだ1ミリ角の活字が教えてくれる。
ネット検索などない不便な時代、そんな小さな知識の蓄積が、私にとっての世界だった。
情報の量は、今とは比較にならないだろう。
それでも、あの頃の読書は、今の時代の何物にも代えがたい、豊かな体験だった。本当に、そう思う。

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てんきの話。
雨続きで洗濯が溜まっているので、今日はなんとか洗って乾かしたい。
ベランダに出てみると、雲行きは何やら不穏である。
どうしたものかと腕を組み、リビングに置いた照り降り人形に目をやった。

イモートがドイツ旅行をしたときのお土産だ。
門口に立った男女が、湿度の変化で出たり入ったりして、お天気が分かるはずのお人形。
ところが困ったことに、男女どっちが出てれば晴れなのか、わからないのだ。
筋金入りのスグミル族(→ すぐみる話。)である私は、イモートに
ハイこれ、お土産!
と手渡されるやいなや
わー、ありがとう… バリバリ…(包みをむく音) きゃー、カワイイ!
と中身を出し、箱をつぶして捨てた。
棚に飾って数日経ってから、これってどっちがどっちなんだ?という疑問がきざし、イモートに電話した。
ねーねー、あれってどっちが晴れなの?
えー、知らないよう… 一個しか買ってないもん… 箱に書いてないの?
時、すでに遅し。
燃えるゴミはゴミ収集車に乗ってどこか遠くに行ってしまった。
以来、彼と彼女はうちのリビングで、日々マジメに出たり入ったりしているが、その意味をわかってあげられないのは、非常に心苦しい。
今日も今日とて、晴れるのかなあ、降るのかなあ、と思いながら眺めるが、ちっちゃな二人は黙ったまま、何も言ってくれないのである。

(二人とも後ろ向きの時はどうなんだ…)

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ベランダに出てみると、雲行きは何やら不穏である。
どうしたものかと腕を組み、リビングに置いた照り降り人形に目をやった。

イモートがドイツ旅行をしたときのお土産だ。
門口に立った男女が、湿度の変化で出たり入ったりして、お天気が分かるはずのお人形。
ところが困ったことに、男女どっちが出てれば晴れなのか、わからないのだ。
筋金入りのスグミル族(→ すぐみる話。)である私は、イモートに
ハイこれ、お土産!
と手渡されるやいなや
わー、ありがとう… バリバリ…(包みをむく音) きゃー、カワイイ!
と中身を出し、箱をつぶして捨てた。
棚に飾って数日経ってから、これってどっちがどっちなんだ?という疑問がきざし、イモートに電話した。
ねーねー、あれってどっちが晴れなの?
えー、知らないよう… 一個しか買ってないもん… 箱に書いてないの?
時、すでに遅し。
燃えるゴミはゴミ収集車に乗ってどこか遠くに行ってしまった。
以来、彼と彼女はうちのリビングで、日々マジメに出たり入ったりしているが、その意味をわかってあげられないのは、非常に心苦しい。
今日も今日とて、晴れるのかなあ、降るのかなあ、と思いながら眺めるが、ちっちゃな二人は黙ったまま、何も言ってくれないのである。

(二人とも後ろ向きの時はどうなんだ…)

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しょっき話。
お邪魔したお宅で、果物をむいていただいた。
梨は大好きなので、喜んで食べる。
すると、お皿の底に、黒い足跡が見えてギョッとした。

お皿の模様が、猫の足跡なのである。
ご馳走になっておいて文句を言うのもナンだが、よりによって食器に足跡の模様、というのはどうなんだろう。
もちろん衛生的にはなんら問題ないのだが、気分の問題である。
正直を言えば、私はお皿に動物の模様があるのもあまり好きではない。
ワンちゃんネコちゃんの絵柄はカワイイが、食べるものを乗っけると、毛がくっついてくる気がする。
そんなわけないんだけど、やっぱり気分の問題である。
不思議なのは、同じ犬猫でも、有名キャラクターの犬猫は平気なのだ。
してみると、私はキティーやスヌーピー、ミッフィーなどは、毛の生えないツルツルの動物だと思っているのだろうか。
それはそれで、ずいぶん気持ち悪いような気もするが。

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梨は大好きなので、喜んで食べる。
すると、お皿の底に、黒い足跡が見えてギョッとした。

お皿の模様が、猫の足跡なのである。
ご馳走になっておいて文句を言うのもナンだが、よりによって食器に足跡の模様、というのはどうなんだろう。
もちろん衛生的にはなんら問題ないのだが、気分の問題である。
正直を言えば、私はお皿に動物の模様があるのもあまり好きではない。
ワンちゃんネコちゃんの絵柄はカワイイが、食べるものを乗っけると、毛がくっついてくる気がする。
そんなわけないんだけど、やっぱり気分の問題である。
不思議なのは、同じ犬猫でも、有名キャラクターの犬猫は平気なのだ。
してみると、私はキティーやスヌーピー、ミッフィーなどは、毛の生えないツルツルの動物だと思っているのだろうか。
それはそれで、ずいぶん気持ち悪いような気もするが。

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ほっこり話。

(「BFG:Big friendly Giant」)
新作アニメ映画のCMで、人気の子役がこましゃくれた顔をして
この映画、ホッコリします!
なんて言っているが、どうも変な感じで困る。
まず、子供が使う言葉じゃない、という感じがある。
関西ではこのホッコリ、ばあさんが多用する。皺ばんだ口もとをモグモグさせて
ああ、ホッコリするねえ…
などと言ってこそのホッコリである。
そもそも、ホッコリはホカホカ暖かいという意味ではない。
例えば、早朝からの農作業。
腰を曲げた姿勢で立ちっぱなし、根気のいる仕事を黙々とこなして、ようやくお昼の時間になる。
何時間かぶりに腰を下ろし、共に働いた家族と囲む食卓。
質素だけどしっかりしたお昼ごはんを、よく噛んで、おいしく食べる。
食後のお茶をすすりながら、一言。
あー、ホッコリした
これが私の考える正しいホッコリである。
あるいは、80過ぎたおばあさんが、手押し車なんか押してコトコトと買い物に出る。
トーフを買い、ネギを買い、牛乳と明日のパンを買えばオシマイの買い物だが、ヒザの悪いおばあさんにはひと仕事なのである。
帰り道には、何十年となじみの純喫茶の窓際に座って休憩だ。
ホットコーヒーにミルクを最後の1滴まで入れて、お砂糖はいつも3杯。
ふーふーと湯気を吹いて、ひとくち飲んで
あー、ホッコリした…
これこそホッコリの正しい使い方である。
そこに込められているのは、労働の疲れとそこからの解放、そしてささやかな日々の達成感。
ホッコリの瞬間は、どんな映画を見たって、自ら汗をかかずには、決して得られない。
ホッコリの前には、厚い人生の年輪があり、厳しい日々の労働があるのだ。
わかったか子役よ。ガキンチョにホッコリはないのだよ。

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なんきん話。
もうすぐ収穫かしら…
おばーちゃんが庭の松の木を見上げる。
そうだねえ、ずいぶん大きくなったからねえ
見上げた視線の先には、大人の頭より大きな実。
むろん松の実などではない。
冬瓜なのだ。

冬瓜(トウガン) 学名Benincasa hispida ウリ科の蔓性一年草。果実を食用する夏野菜。
なぜ、松の木に冬瓜が生っているのか、それにはワケがある。
実家の庭にはコンポストがあり、野菜くずなどは地域のゴミ収集に出さず堆肥にし、広からぬ庭のあちこちに撒く。
この堆肥に混ざっている野菜の種が、時々とんでもない場所で芽を出すのである。
中でもとくに運のいいヤツが、成長して花を咲かせ、実をつける。
この冬瓜も、松の木の裏の目立たないところでいつの間にか芽を出し、気づけば幹をつたって頭上高くまで伸びて、黄色い花を咲かせた。
手の届かない高い場所で、冬瓜はどんどんデカくなり、こうして収穫期を迎えたのだ。
アタシが取るんだからね、おかーさんは絶対ゼッタイ取らないでよ!
わかってるよぉ…
おばーちゃんにきつく念を押すにもワケがある。
数年前、今回同様の経緯で、家の裏の石垣の上にカボチャが生えたことがあった。
堆肥のコヤシの効いたカボチャは、ホッタラカシでもすくすくと大きくなり、やがて実をつけた。
石垣の上に、一番立派な実がぶら下がっているのを見たおばーちゃんは、我慢できずに登った。
そして、落っこちたのである。
頭こそ打たなかったが、足をくじき、腰をぶつけ、数日寝込むという大事件になった。
おばーちゃんに大事に抱かれたカボチャは、割れずに無事だったが、煮て食べたんだったか、味がどうだったか、記憶がない。
カボチャのことを関西ではナンキンと呼ぶ。
わが家でナンキン事件といえば、おばーちゃんがアザだらけになった、この件なのである。
娘としては、母がまた松の木に登らないうちに、冬瓜を収穫してしまわねば、と思っている。

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おばーちゃんが庭の松の木を見上げる。
そうだねえ、ずいぶん大きくなったからねえ
見上げた視線の先には、大人の頭より大きな実。
むろん松の実などではない。
冬瓜なのだ。

冬瓜(トウガン) 学名Benincasa hispida ウリ科の蔓性一年草。果実を食用する夏野菜。
なぜ、松の木に冬瓜が生っているのか、それにはワケがある。
実家の庭にはコンポストがあり、野菜くずなどは地域のゴミ収集に出さず堆肥にし、広からぬ庭のあちこちに撒く。
この堆肥に混ざっている野菜の種が、時々とんでもない場所で芽を出すのである。
中でもとくに運のいいヤツが、成長して花を咲かせ、実をつける。
この冬瓜も、松の木の裏の目立たないところでいつの間にか芽を出し、気づけば幹をつたって頭上高くまで伸びて、黄色い花を咲かせた。
手の届かない高い場所で、冬瓜はどんどんデカくなり、こうして収穫期を迎えたのだ。
アタシが取るんだからね、おかーさんは絶対ゼッタイ取らないでよ!
わかってるよぉ…
おばーちゃんにきつく念を押すにもワケがある。
数年前、今回同様の経緯で、家の裏の石垣の上にカボチャが生えたことがあった。
堆肥のコヤシの効いたカボチャは、ホッタラカシでもすくすくと大きくなり、やがて実をつけた。
石垣の上に、一番立派な実がぶら下がっているのを見たおばーちゃんは、我慢できずに登った。
そして、落っこちたのである。
頭こそ打たなかったが、足をくじき、腰をぶつけ、数日寝込むという大事件になった。
おばーちゃんに大事に抱かれたカボチャは、割れずに無事だったが、煮て食べたんだったか、味がどうだったか、記憶がない。
カボチャのことを関西ではナンキンと呼ぶ。
わが家でナンキン事件といえば、おばーちゃんがアザだらけになった、この件なのである。
娘としては、母がまた松の木に登らないうちに、冬瓜を収穫してしまわねば、と思っている。

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