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まふらー話。

立春を過ぎたとはいえ、まだまだ寒い毎日。

ムスコはどこに行くにも、何を着てても、同じマフラーを巻いている。

その日も帰宅したムスコは、いつもの姿であったが、なぜか妙にあわただしく巻いていたマフラーをほどき、

… コレ、洗っといて… もうムリ…

と、私に手渡した。

どうしたのよ急に?

いや… もうムリ…

としか言わないので、何の気なしに鼻に近づけると

うわっ!なにコレ!

…だから無理…

なんともいえないニオイが、マフラーから生暖かい湯気となって立ちのぼっている。

クサいけれど、耐えられない悪臭というわけではない。嗅ぎ慣れた、懐かしいニオイでもある。ムスコにいやがられながらつい、二度見ならぬ、二度嗅ぎをした。

うーん… このニオイ、何かに似ている…

味わうなよ!

しかし気になる。確かに昔、嗅いだことのあるニオイなのだ。

目を閉じて、思い出をたどる。子供の頃、近所で…

アッ、わかった!犬!濡れた犬!外の犬小屋で、雨に濡れた犬!

あまりの勢いに、嫌がっていたムスコも、ついもう一度鼻を寄せ

ホントだ… 犬かも…

などと言っている。

以来うちでは

犬がいるから洗って…

ええ~?こないだ洗ったのに、もう犬ぅ?

という、意味不明なやりとりが定着している。

なかむらもんど
(この人の襟巻なども、いい感じにクサそうである)



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ごかぞく | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/02/08 11:29

せんたく話。

洗濯洗剤が切れた。

ふだんの買い物は生協で、食品以外にも重たいもの、かさばるものを配達してもらっている。

しかし便利なものには欠点もある。それは注文を忘れると届かないということだ。

久しぶりの晴れ、なにがなんでも洗濯したい。自転車をぶっ飛ばして、スーパーに向かう。

売り場に立って困惑した。

まず、いつも使っている粉末洗剤がない。

そのくせ、それ以外の銘柄は、バカにたくさんある。

天然だったり、液体だったり、抗菌だったり、いい香りがしたり、半分の量でキレイに洗えたり、なんだかよくわからないがステキだったり、様々なアピールが目に飛び込んでくる。

今まで漫然と「いつものやつ」を選んできた私には、決め手というものがなかった。

どれを選んでも、ぜんぜん汚れが落ちない、ということはあるまいが、一度買えばしばらく使い続ける商品だから、失敗はしたくない。

山ほどある中で、私が買うべき、わが家に最適な洗剤はどれなのか。

売り場を行きつ戻りつするが、決まらない。パッケージの原色が目の中でチラチラし始め、だんだん腹が立ってきた。

だいたいなんでこんなにたくさんの商品が必要なのか。

衣類を洗うのは、汚れを落とすためだ。

極端な話、その目的をもっともよく果たす製品が一つあればそれでいいわけである。

競合する会社が、それぞれに自社製品を売るのはまだわかる。しかし、同じ会社が違う洗剤をいくつもいくつも作るのは、一体全体どういうことか。

今までの製品を上回る、機能の高い新製品を開発するのは当然の企業努力だ。しかし、いったん新製品が出たのなら、それに劣る商品はサッサと片付けてもらいたい。

さもないと私のように、貴重な晴れの日に、売り場を右往左往しなければならないのである。

かなりの時間を無駄にしたあげく、何が決め手かわからない1つを手にとってレジに並び、ムッとしたままお金を払った。

選ぶということは、自由というより、多くの場合束縛なのかもしれない。

洗濯の話かと思いきや、選択についての話なのであった。

せんたくもの



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2017/02/07 10:57

すとれす話。

バカかと思われるので今まで言ったことはないが、私はストレスというのがよくわからない。

私とて小さいながら一戸を構えた社会人なのだから、生きていく上で、困ったなあ、イヤだなあ、疲れたなあ、などと思うことはもちろんある。

そういうのがストレスを感じるということなのだろうか、と思ったりするが、困ったなあ、イヤだなあ、疲れたなあ、というのは、それぞれ全然別の感情だ。

それをひとくくりにストレスとまとめてしまう、おおらかさというか、雑さが解せない。

あなたのストレス解消法は?

などという問答も時に目にするけれど、困ったことを解決する方法と、イヤなことを回避する方法と、疲れたのを治す方法は、やっぱり全然違うだろう。

音楽を聞くとか、早朝ジョギングとか、温泉に浸かるとかで、それらが一括して解消するとは思えないのである。

「現代は、ストレス社会!」などと聞くと、そうかな、と思うものの、どうもピンと来ない。

アンタは精神がデリケートの逆だからね、と言われれば一言もないのだが。

すとれす
(いくらなんでも死の恐怖とイコールで結ぶのはオオゲサだと思う)



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/02/06 11:54

ぎょかいの話。

高校の同級生のミンミンから、敵情視察の電話がかかってきた。

どお~ ムスコ君、勉強してるゥ?

ミンミンのお嬢さんも、ムスコと同じく今年受験生だが、高校も志望大学も、ムスコとは段違いのハイレベル。ミンミンは教育ママなのだ。

国語がイマイチなのよねェ… だいたい漢字を知らないわよ今のコは…

まあ、今はなんでもスマホやパソコンだから…

そう答えかけて、

でもミンミン、昔の女子高生だって漢字は苦手だったよ

あらそお?

ほら、魚介類

へ?魚介類?…ああ!ギョカイルイ!

その昔、女子高生のミンミンは、塾でいい感じに親しくなった他校の男の子に尋ねた。

タナカ君って、下の名前なんて言うの?

ダイスケ… 大小の大に、魚介のカイで、ダイスケ

ふーん、変わってるね…

また別の日。ミンミンは、かわいいビンセンにちょっとしたメモを書き、タナカ君に手渡した。

たたんだビンセンを開くタナカ君の肩が、なぜかおこりのようにふるえだしたかと思うと、ブッと吹き出してしまった。

笑われて、乙女心を痛めたミンミンに、タナカ君が示したのは、彼女の書いた宛名。

田中大貝さま

ギョカイのカイを、魚貝の貝、と間違えたのである。

顔から火の出る思いをしたミンミンと、タナカ君の仲は、その後進展しなかった。

娘にエラそうに言えないわねェ ギョカイルイじゃ…

そーそ、気楽に行こうヨ なにせ親もギョカイルイなんだしサ…

ムスコたちの受験が済んだら、ゴハン食べに行こうね、と約束して、電話を切った。

しんせんなぎょかいるい
(新鮮な、魚貝ではなく魚介)



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/02/05 11:49

がんばる話。

そろそろご飯の支度にかかろうかな、という夕刻。

終日ぞろぞろネマキでいたムスコが、なぜか着替えだした。ジャージでもトレーナーでもない、お出かけの服装だ。

なに?こんな時間からシャレこいちゃって!

…ちょっと出かける… 遅くなるし、メシいらないから…

ええ~っ?!

思ったより大きな声が出たので、ムスコは少し驚いて

…なんだよ、ダメなの?

いや…いいけど…

ここのところ家にこもり、いつになく殊勝に2次試験の勉強をしていたムスコである。私大の受験が終わった友達に、ひさしぶりに会いに行く、と言うのを、止める理由はない。

ない。ないんだけど… ああっ、今晩、どうしよう!

母の動揺を知ってか知らずか、ムスコはジャケットを着、財布をポケットに突っ込んで、さっさと身支度を終えた。

玄関で靴のつま先をトントンやっている、後ろ姿にすがりつきたい。

しかし18にもなるムスコに、そんなみっともないことはできない。必死でこらえる。

…イッテキマース…

と、妙に幼く聞こえる一言を残して、ムスコは行ってしまった。

味気なく夕食を終え、いよいよ夜も更ける。しかたなく重い腰を上げた。

… おには~ そと~!

そう、節分恒例の豆まきである。

ひとりでやる豆まきほど寂しいものがあるだろうか。だからムスコには家にいてほしかったのだ。

しかし、買ってしまった豆は、なんとしてもまかねばならぬ。

… ふくは~ うち~…

いかんいかん、声が小さくなったぞ。これでは鬼が入ってきてしまう。

… おには~ そと~!

… ふくは~ うち~!

近所から苦情が来るかもしれないけど、いいんだ。

がんばれ、私。

がんばるぞ、私。

せつぶん2017
(来年は寂しくないようにこういうのにしようと思う)



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/02/04 11:39

セツブン本。

今日は節分

流行りの恵方巻には、いたずらに反感を抱いている(→ せつぶん話。)私だが、逆に昨今すたれ気味な豆まきは、大マジメにやっている。

スーパーの乾物売り場で、鬼のイラストのついた福豆の袋を見比べていたら、子供の頃を思い出した。

実家の豆まきは、母と子供だけでやっていた。父は仕事でいなかったのか、いたけど参加していなかったのか、よくわからない。

はじめはマジメに鬼は~外~とやっているが、クレヨンで描いた鬼のお面をかぶって豆を投げているうちに、イモートと私は次第にコーフンしてふざけだす。

キャーキャー言いながら豆をぶつけあっていると、母がとつぜん

あかのっぽあおのっぽ、か…

と言ったのだ。

あかのっぽあおのっぽ?

何の脈絡もなく出てきた謎の言葉を、その時聞き返したのか、どうだったか。

それは何?と聞いたけれど、はかばかしい答えは得られなかったような気がする。

もう何十年とそのまま、私の脳ミソの底に沈んでいた疑問が、いま不意に浮かび上がってきたのである。

ありがたいことに今はネット検索というものがある。

あかのっぽあおのっぽ
( 「赤ノッポ青ノッポ」武井武雄 )

昭和の小学生今野桃太郎君が、鬼ヶ島の鬼を日本に招待し、一緒に小学校に通う、というお話らしい。

赤ノッポは赤鬼、青ノッポは青鬼の呼び名なのだ。

半ズボンをはいてランドセルをしょって、小学校に入学した赤鬼と青鬼が、珍騒動を引き起こすのだが、この鬼たちが子供の鬼ではなく、スネ毛にひげヅラのオトナの鬼なのがおかしい。

武井武雄という人は童画家ではあるが、鬼ヶ島の鬼を子供向けにかわいらしく描こうという配慮は一切なく、異界の怪物の姿で、ちゅうちょなく気味悪く、恐ろしく描いている。

いくら鬼の面をかぶっているとはいえ、かわいい年ごろの娘たちを見て、この鬼を思い出すというのは、ちょっとヒドイ。

母が説明をためらった気持ちが、今わかる気がする。



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/02/03 11:31

とくしゅな話。

お昼ご飯の後、テレビを点けっぱなしのまま、ソファでウトウト眠ってしまった。

朝からプールに行って泳いだせいだ。

まだ湿った髪が冷たくて、目が覚めたら画面はワイドショーに変わっていた。

…お笑い芸人のナンノナニガシさんが、一般女性との結婚を発表しました…

ラチもない芸能情報である。

ナンノナニガシ氏に好悪の感情は一切ないのに、何か引っかかったのは

…ナンノナニガシさんが、一般女性との結婚を…

ここだな、一般女性

一般人、一般大衆の一般。

芸能人と付き合って結婚するような女性が一般的といえるかどうかはさておき、お相手が一般だというなら、ナンノナニガシ氏は一般ではない、わけだ。

「一般」の対義語は「特殊」である。

ナンノナニガシ夫人が「一般女性」なら、ナンノナニガシ氏は「特殊男性」というわけだ。

けっこういいんじゃないか、特殊男性という言い方。

私はかねがね、芸も能もないのにテレビに出る人を、芸能人と呼ぶことに疑問を感じていたのだ。

そういう人は今後、特殊男性あるいは特殊女性と呼ぶことにしたらどうだろう。

えーっ?ナニ子結婚するのぉ?相手なにしてる人ぉ?

うーん、ナイショ!特殊男性の人だからぁ…

なんてね。

まつこでらっくす
(特殊な男性といってもこういう特殊ではない)



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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2017/02/02 11:35

きせのん話。

きせのさとゆたか

朝のワイドショーで、新横綱稀勢の里の出身地が話題になっていた。

呼び出しは茨城県牛久市だが、中学生時代までを過ごしたのはお隣の龍ヶ崎市だという。

牛久には現在ご実家があるが、ご本人は中学を卒業してすぐ上京し、部屋に入ってそれっきりなんだから、龍ヶ崎市出身と言っていいような気がする。

後援会もあるだろうし、パレードまでやってもらって言いにくいだろうが、正直なとこ、ご本人は牛久出身と言われても、あんまりピンと来ないんじゃないか。

だいたい、出身地というのはどこを言えばいいのだろう。ちょっと考えて思いつくのは

1・生まれた土地
2・育った土地
3・実家のある土地


私などは、生まれて独立するまで同じ所に住んでいたのでカンタンだが、子供時代に転々としている場合はややこしい。うちの子供たちなんかがそうだ。

元亭主は転勤族だった。

知り合いもいない場所で妊娠して、生まれたらすぐ引っ越して、幼稚園も小学校も、入ったところを出られたことがない。

ちょっと落ち着いたと思ったら離婚である。

食べ物が違い、気候が違い、言葉が、文化が違う土地を移りながら大きくなったムスメとムスコ。

親の都合で連れまわされた2人は、自分はどこ出身だと思っているのだろう。

改めて聞いたことはないけれど、知りたいような、知りたくないような、気持ちである。



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てれびじょん | コメント(12) | トラックバック(0) | 2017/02/01 11:35
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