きまずい話。
お天気がいいので、起きるなり身支度もそこそこに洗濯機を回した。
すぐに干してしまおうとベランダに出る。
春まだ浅く、濡れた洗濯物は冷たくて、急いでハンガーにかけていると、お隣の気配。
まずい!
とりあえずそこらのものを引っ掛けただけで、髪もモシャモシャ、顔もロクに洗っていない。
こんな時、箱みたいな真四角の物件なら隣を気にすることもないのだろうが、うちは敷地が変形で、ベランダもまっすぐじゃなく、部屋によって出たり引っ込んだりしている。
そのため、立つ位置によっては、バッチリお互いの姿が見えるのだ。
むこうに垣間見されるのは仕方ないとして、このヒドい顔を合わせてご挨拶をするのは、いかにも気まずい。
ここは知らん顔の一手と決め、洗濯物の上に目を伏せた、まさにその瞬間。
ばっしょい!
お隣のベランダで、大迫力のクシャミが炸裂した。
こうなっては無視するのも難しい。やむをえず、あたかもたった今気づきました、という風に顔をあげて
あ、オハヨウゴザイマス…
と言うと、お隣の奥様は鼻を押さえながら
おばようございばず…
とおっしゃったが、その服装は私以上にいいかげんで、髪は私よりもっとモシャモシャだった。
ホッとしたような、気まずいような、ビミョーな気持ちで空のカゴを抱え、部屋に入った。
どうやら今日は、花粉の飛散が多い模様である。

日本気象協会 花粉情報

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すぐに干してしまおうとベランダに出る。
春まだ浅く、濡れた洗濯物は冷たくて、急いでハンガーにかけていると、お隣の気配。
まずい!
とりあえずそこらのものを引っ掛けただけで、髪もモシャモシャ、顔もロクに洗っていない。
こんな時、箱みたいな真四角の物件なら隣を気にすることもないのだろうが、うちは敷地が変形で、ベランダもまっすぐじゃなく、部屋によって出たり引っ込んだりしている。
そのため、立つ位置によっては、バッチリお互いの姿が見えるのだ。
むこうに垣間見されるのは仕方ないとして、このヒドい顔を合わせてご挨拶をするのは、いかにも気まずい。
ここは知らん顔の一手と決め、洗濯物の上に目を伏せた、まさにその瞬間。
ばっしょい!
お隣のベランダで、大迫力のクシャミが炸裂した。
こうなっては無視するのも難しい。やむをえず、あたかもたった今気づきました、という風に顔をあげて
あ、オハヨウゴザイマス…
と言うと、お隣の奥様は鼻を押さえながら
おばようございばず…
とおっしゃったが、その服装は私以上にいいかげんで、髪は私よりもっとモシャモシャだった。
ホッとしたような、気まずいような、ビミョーな気持ちで空のカゴを抱え、部屋に入った。
どうやら今日は、花粉の飛散が多い模様である。

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コソコソ本。
今でこそ誰はばかることなく、のべつ本を読んでいるが、昔はなかなか気を使うことも多かった。
私は、不活発で外遊びの嫌いな子供だった。
ガキが集まって、走ったり飛んだりして何が面白い、そんな生意気なガキであった。
しかし、母親族とは子供は風の子信仰に憑かれているものである。
寒くても暑くても、晴れていれば読みかけの本を取り上げられ、外で遊びなさい、と玄関を放り出される。
しかたなく外にいるものの、何をするわけでもない。電柱にもたれて、さっきまで読んでいた本の挿絵の一場面から、まだ読んでない先を想像したりして、時間をつぶす。
しばらくして母のガードが緩くなったころを見計らって家に忍び入り、こっそり本を取り戻して、オシイレに入る。今度こそ見つからないように、最後まで読むのだ。
夢中になっていると、背後からアヤシイ気配を感じる。振り向けば鬼の形相の母がいて、
そんな薄暗いところで!目が悪くなるでしょう!
また、こっぴどく叱られたものだ。
風の子信仰や視力低下恐怖の他にも、私を阻むものがあった。
それは、子供らしい本主義である。
学校の図書室で借りてきた本なら、母はちらりと見るだけで、すぐに無関心に目を背けた。
しかし街の古本屋の50円コーナーから、ワクワクするようなミステリーを掘り出してくると、
そんな大人の本、まだ早いわ
と眉をひそめ、いい顔をされない。
もっと子供らしい本を読みなさい!
とも言われた。でも、子供らしい本なんか、全然面白くないのである。
早く大人になって、好きな本を好きな時に好きなだけ読みたい!少女期の私の将来の希望といえば、ただそれだけであった。
今になってしみじみ思うが、大人に隠れてコソコソ読む本ほど、面白いものはない。
見つかったら叱られる、とドキドキしながら隠れて読む、半裸の美女や残虐な密室殺人、衒学的な名探偵の言辞の魅惑的なこと。
この本も、そんな風にコソコソ読んだ中の一冊である。

(「夜歩く」 ハヤカワミステリ文庫)
今日は作者カーの没後、40年らしい。

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私は、不活発で外遊びの嫌いな子供だった。
ガキが集まって、走ったり飛んだりして何が面白い、そんな生意気なガキであった。
しかし、母親族とは子供は風の子信仰に憑かれているものである。
寒くても暑くても、晴れていれば読みかけの本を取り上げられ、外で遊びなさい、と玄関を放り出される。
しかたなく外にいるものの、何をするわけでもない。電柱にもたれて、さっきまで読んでいた本の挿絵の一場面から、まだ読んでない先を想像したりして、時間をつぶす。
しばらくして母のガードが緩くなったころを見計らって家に忍び入り、こっそり本を取り戻して、オシイレに入る。今度こそ見つからないように、最後まで読むのだ。
夢中になっていると、背後からアヤシイ気配を感じる。振り向けば鬼の形相の母がいて、
そんな薄暗いところで!目が悪くなるでしょう!
また、こっぴどく叱られたものだ。
風の子信仰や視力低下恐怖の他にも、私を阻むものがあった。
それは、子供らしい本主義である。
学校の図書室で借りてきた本なら、母はちらりと見るだけで、すぐに無関心に目を背けた。
しかし街の古本屋の50円コーナーから、ワクワクするようなミステリーを掘り出してくると、
そんな大人の本、まだ早いわ
と眉をひそめ、いい顔をされない。
もっと子供らしい本を読みなさい!
とも言われた。でも、子供らしい本なんか、全然面白くないのである。
早く大人になって、好きな本を好きな時に好きなだけ読みたい!少女期の私の将来の希望といえば、ただそれだけであった。
今になってしみじみ思うが、大人に隠れてコソコソ読む本ほど、面白いものはない。
見つかったら叱られる、とドキドキしながら隠れて読む、半裸の美女や残虐な密室殺人、衒学的な名探偵の言辞の魅惑的なこと。
この本も、そんな風にコソコソ読んだ中の一冊である。

(「夜歩く」 ハヤカワミステリ文庫)
今日は作者カーの没後、40年らしい。

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うめみの話。
うちの近所には、わりとおいしいパン屋がある。
住宅地の中にポツンと1軒、心細そうに建つ小さなパン屋は、経営が心配になる佇まいであるが、ずっとつぶれずにあるということは、あんがい繁盛しているのかもしれない。
ここに越してきたばかりの頃のこと。日曜の朝、遅く起きたら、朝食のパンがない。
コンビニで何か買おう、と靴をはいていたら、朝ごはんを自分で選びたい子供たちも、寝ぼけ眼でついてきた。
広い通りに出て周囲を見渡すと、赤い三角屋根の、住宅とは思えない建物が見える。
ちょっと行ってみようか
提案すると、ムスメもムスコも異論はない。3分ほど歩いたら、そこにその店があった。
私はこういう時、みょうに気前がよくなる癖がある。トングをカチカチ鳴らし、ムスメとムスコが指さすパンを、次々とトレーにのせる。
レジのそばに、あんまり見たことのないジュースのパックがあったので、それも3つ。
思ったより重くなった紙袋をムスメに持たせて店を出ると、ハレバレと青い空。
そうだ、どっか外で食べよう!
衆議一決、方向転換だ。住宅地の中の小さな緑地には、犬の散歩をする人がちらほら。
石のベンチに腰かけ、パンを手に持ったら、どこからかふわりと爽やかな匂いがした。
見まわせば、梅の花。

梅林というほどではないが、手入れの悪い梅の木が数本、それでもたくさんの花をつけている。
子供と3人、梅が香の中で食べるあんパン。
忙しさに固まっていた心が、ゆらゆらとやわらかく溶けて、晴れた空高く昇っていった。
昨日大学受験を終えて、遅く起きてきたムスコに
梅見にでも行こうか パン買って…
と言うと
イイね…
と、ニッと笑った。
今日は日曜。よく晴れた、梅見日和である。

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住宅地の中にポツンと1軒、心細そうに建つ小さなパン屋は、経営が心配になる佇まいであるが、ずっとつぶれずにあるということは、あんがい繁盛しているのかもしれない。
ここに越してきたばかりの頃のこと。日曜の朝、遅く起きたら、朝食のパンがない。
コンビニで何か買おう、と靴をはいていたら、朝ごはんを自分で選びたい子供たちも、寝ぼけ眼でついてきた。
広い通りに出て周囲を見渡すと、赤い三角屋根の、住宅とは思えない建物が見える。
ちょっと行ってみようか
提案すると、ムスメもムスコも異論はない。3分ほど歩いたら、そこにその店があった。
私はこういう時、みょうに気前がよくなる癖がある。トングをカチカチ鳴らし、ムスメとムスコが指さすパンを、次々とトレーにのせる。
レジのそばに、あんまり見たことのないジュースのパックがあったので、それも3つ。
思ったより重くなった紙袋をムスメに持たせて店を出ると、ハレバレと青い空。
そうだ、どっか外で食べよう!
衆議一決、方向転換だ。住宅地の中の小さな緑地には、犬の散歩をする人がちらほら。
石のベンチに腰かけ、パンを手に持ったら、どこからかふわりと爽やかな匂いがした。
見まわせば、梅の花。

梅林というほどではないが、手入れの悪い梅の木が数本、それでもたくさんの花をつけている。
子供と3人、梅が香の中で食べるあんパン。
忙しさに固まっていた心が、ゆらゆらとやわらかく溶けて、晴れた空高く昇っていった。
昨日大学受験を終えて、遅く起きてきたムスコに
梅見にでも行こうか パン買って…
と言うと
イイね…
と、ニッと笑った。
今日は日曜。よく晴れた、梅見日和である。

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みおくる話。
ムスコが遠方の大学を受験するので、ターミナル駅まで見送る。
玄関で見送っても構わないようなものだが、実はここんとこあまりツイてないムスコ。
まず、センター試験のあと、気晴らしに出かけた繁華街で、サイフを落とした。
お年玉をほとんど使っていなかったので、中身はけっこうな金額である。
つぎに、家に帰っていた大学生のムスメが、夜中に常にない高熱を出した。
ムスメもかわいそうだが、もしインフルエンザなら、試験日前のムスコに移ったら一大事。
さいわいサイフは奇特な方が警察に届けてくださったし、ムスメの熱もインフルではなく、一晩で下がったのだが、よりによって試験前にこんなことになるとは。
他にもコマゴマつまらないことがあり、行く手に暗雲がたちこめるようで、心穏やかではない。
沈滞ムードのまま行かせるのが心配になり、せめて見送りなりと、と思ったのだ。
とはいえ、18のムスコに母親がくっついていったからといって、何がどうなるわけでもない。
終始ムッとした表情で、ただバスに乗り、電車に乗り、乗換駅に着く。入場券を買っていると
いいよ、ここまでで…
と、うるさそうだが、せっかく来たのだから、と、改札を入り、ホームまでついていく。
やがてムスコの乗る特急が、スルスルとホームに入ってきた。
窓の外から見ていると、ムスコの席はホーム側だ。
見える位置まで移動して、手でも振ろうと思った時、不意に身体が動いた。
その場でピョンピョン飛び跳ね、足を左右に蹴って、グーに握った手を突き上げる。
ポンポンはないけれど、チアガールのダンスである。
ムスコはギョッとして凍りつき、それから噴き出した。
ガラスのむこうでゲラゲラ笑っているムスコを乗せて、特急電車が定刻に発車する。
さあ、私ができることは、もう何もない。
がんばれ、ムスコ!

「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」

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玄関で見送っても構わないようなものだが、実はここんとこあまりツイてないムスコ。
まず、センター試験のあと、気晴らしに出かけた繁華街で、サイフを落とした。
お年玉をほとんど使っていなかったので、中身はけっこうな金額である。
つぎに、家に帰っていた大学生のムスメが、夜中に常にない高熱を出した。
ムスメもかわいそうだが、もしインフルエンザなら、試験日前のムスコに移ったら一大事。
さいわいサイフは奇特な方が警察に届けてくださったし、ムスメの熱もインフルではなく、一晩で下がったのだが、よりによって試験前にこんなことになるとは。
他にもコマゴマつまらないことがあり、行く手に暗雲がたちこめるようで、心穏やかではない。
沈滞ムードのまま行かせるのが心配になり、せめて見送りなりと、と思ったのだ。
とはいえ、18のムスコに母親がくっついていったからといって、何がどうなるわけでもない。
終始ムッとした表情で、ただバスに乗り、電車に乗り、乗換駅に着く。入場券を買っていると
いいよ、ここまでで…
と、うるさそうだが、せっかく来たのだから、と、改札を入り、ホームまでついていく。
やがてムスコの乗る特急が、スルスルとホームに入ってきた。
窓の外から見ていると、ムスコの席はホーム側だ。
見える位置まで移動して、手でも振ろうと思った時、不意に身体が動いた。
その場でピョンピョン飛び跳ね、足を左右に蹴って、グーに握った手を突き上げる。
ポンポンはないけれど、チアガールのダンスである。
ムスコはギョッとして凍りつき、それから噴き出した。
ガラスのむこうでゲラゲラ笑っているムスコを乗せて、特急電車が定刻に発車する。
さあ、私ができることは、もう何もない。
がんばれ、ムスコ!

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はなきん話。
今日はプレミアムフライデー、らしい。
新しいものにはもれなく反感を持つ私としては、やはり気にいらない。
だいたい、月に1回というのがケチ臭い。
タレントまで雇って大層に宣伝するなら、毎週金曜早帰りくらいの約束してみろバカ、と、怠け者の私などは思うわけである。
さらに気に入らない最大の点は、なんといってもその名称である。
政府の肝煎り、鳴り物入りで始まる新制度が、何でスーパーの特売日みたいな英語なのか。
休み前の金曜日の、ウキウキした気分を表すなら、いいのが既にあるじゃないか。
花の金曜日、略してハナキン。
バブルの残り香がチョイと気になるが、間が抜けてて明るくて、いい言葉だと思う。
少なくとも、プレミアムナントカよりは数倍マシだ。
ところが周りの若い衆に聞いてみたところ、このハナキンも半ドン同様、(→ 「はんどん話。」)もはや死語らしい。
ハナキン?スターウォーズの…?
違う!それはアナキン スカイウォーカー!

( "The Chosen one" Anakin Skywalker )

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新しいものにはもれなく反感を持つ私としては、やはり気にいらない。
だいたい、月に1回というのがケチ臭い。
タレントまで雇って大層に宣伝するなら、毎週金曜早帰りくらいの約束してみろバカ、と、怠け者の私などは思うわけである。
さらに気に入らない最大の点は、なんといってもその名称である。
政府の肝煎り、鳴り物入りで始まる新制度が、何でスーパーの特売日みたいな英語なのか。
休み前の金曜日の、ウキウキした気分を表すなら、いいのが既にあるじゃないか。
花の金曜日、略してハナキン。
バブルの残り香がチョイと気になるが、間が抜けてて明るくて、いい言葉だと思う。
少なくとも、プレミアムナントカよりは数倍マシだ。
ところが周りの若い衆に聞いてみたところ、このハナキンも半ドン同様、(→ 「はんどん話。」)もはや死語らしい。
ハナキン?スターウォーズの…?
違う!それはアナキン スカイウォーカー!

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あまざけ話。
あまり好き嫌いのない私だが、どろどろして薄ら甘いものがちょっと苦手だ。
おかゆはキライだし、バナナジュースやシェイクも好きではない。
スムージーなんてものが流行ったが、固形で食べられる果物や野菜を、わざわざ電気を使って粉砕する意味が分からない。人間には歯というものがあるだろう。
この手の苦手食品の一つ、甘酒が、ちかごろ流行っているらしい。
夕方のローカルニュースで、自家製甘酒の作り方を紹介している。
灘や伏見に酒どころのイメージを奪われ、パッとしないわが県だが、実は清酒発祥の地であって、県内には酒造所がたくさんあるのだ。
甘酒そのものには興味は無いが、地場産品には注目しておこうと、腰を据えて見た。
…米麹210グラムをよくほぐします…
なるほど酒粕ではなく麹を使うのだな。
…炊いたご飯210グラムはさましておき、さきほどの麹とよく混ぜます…
ん?
…次にボウルに80度のお湯580ccを注ぎます…
んんん?
なんで580cc?
どうして210グラム?
キリのいい200グラムと550ccでいいように思うが、それじゃダメなのだろうか。
甘酒苦手な私には、もとより無関係なことではあるが、どうやら甘酒作りは厳密な計量を要する、むずかしいものらしい。

(甘酒が飲める酒蔵カフェには行ってみたい→久保本家酒造 酒蔵カフェ)

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おかゆはキライだし、バナナジュースやシェイクも好きではない。
スムージーなんてものが流行ったが、固形で食べられる果物や野菜を、わざわざ電気を使って粉砕する意味が分からない。人間には歯というものがあるだろう。
この手の苦手食品の一つ、甘酒が、ちかごろ流行っているらしい。
夕方のローカルニュースで、自家製甘酒の作り方を紹介している。
灘や伏見に酒どころのイメージを奪われ、パッとしないわが県だが、実は清酒発祥の地であって、県内には酒造所がたくさんあるのだ。
甘酒そのものには興味は無いが、地場産品には注目しておこうと、腰を据えて見た。
…米麹210グラムをよくほぐします…
なるほど酒粕ではなく麹を使うのだな。
…炊いたご飯210グラムはさましておき、さきほどの麹とよく混ぜます…
ん?
…次にボウルに80度のお湯580ccを注ぎます…
んんん?
なんで580cc?
どうして210グラム?
キリのいい200グラムと550ccでいいように思うが、それじゃダメなのだろうか。
甘酒苦手な私には、もとより無関係なことではあるが、どうやら甘酒作りは厳密な計量を要する、むずかしいものらしい。

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しゅうかつ話。
テレビを見ていたら、年配の男女が出てきて、ニコニコと自分たちのシュウカツについて話している。就職活動かと思ったら、終活だという。
終活とは、葬儀や墓など、自分の死んだ後の事前準備をすること。
近頃は誰かが何か思いつくと、すぐ「○○活」で、流行り物の嫌いな私は反感を持っているが、残された者に迷惑をかけまいという心がけはアッパレである。
数年前に亡くなった父が、生前そういうことを一切口に出さなかったため、どうするのが父の意にかなうのか、いろいろ迷った。(→ 「おはかの話。」)
一言、俺が死んだらこうしてくれよ、と言い残してくれていたら、母もどんなに気が楽だったろう、と何度も思ったものだ。
しかし番組を見ているうちにだんだん違和感が膨れ上がってくる。
出演者はみな、墓は要らない、葬儀も要らない、と、こだわらない風を装っているが、よくよく聞けばそうでもない。
夫の実家の代代の墓には絶対入りたくない、とか、思い出のあの海に遺灰を撒いてほしい、とか、漠然と死んで漫然と墓に入るより、よほど強いこだわりである。
彼らの死後の希望を聞くうちに、つい、やらされる側の気持ちになり、ああメンドクセエ、と思ってしまった。
でっかい墓や盛大な葬式を要求するのも迷惑だけど、ナントカの曲を流せとか、ナニナニの木を植えろとか、コマゴマ指示を残すのも、同じくらいワガママじゃないのだろうか。
死ぬのは怖い。死んだ後のことを考えるのも怖い。
だから自分の思うままになると想像すれば、その時少しは安心していられるのかもしれない。
私ならどうかちょっと考えてみた。
私は自分は死んだら物体になると思っている。
物体になったら、法律に触れない限り、残った者が一番楽な方法で片付けてくれればいい。
逆に、どーしても私の偉業をたたえ、後世に残したい!と思うなら、巨大な墓石を立て、何千人も会葬者を集めて、ど派手な葬式をしてくれてもかまわない。
どんなハズカシイ葬式でも、物体だから平気だ。
テレビを見ながら、ちょうどそこにいたムスメとムスコに言ってみた。
アタシはさ~ 葬式だの墓だの 本当にどーでもいいから! 何をどうしたって化けて出たりしないから!
2人はちょっとギョッとした様子だったが、わりに素直にうなずいた。
子供には、これから時々こういうことも言っておこう。それが私のシュウカツである。

(全人類の墓標 「2001年宇宙の旅」より)

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終活とは、葬儀や墓など、自分の死んだ後の事前準備をすること。
近頃は誰かが何か思いつくと、すぐ「○○活」で、流行り物の嫌いな私は反感を持っているが、残された者に迷惑をかけまいという心がけはアッパレである。
数年前に亡くなった父が、生前そういうことを一切口に出さなかったため、どうするのが父の意にかなうのか、いろいろ迷った。(→ 「おはかの話。」)
一言、俺が死んだらこうしてくれよ、と言い残してくれていたら、母もどんなに気が楽だったろう、と何度も思ったものだ。
しかし番組を見ているうちにだんだん違和感が膨れ上がってくる。
出演者はみな、墓は要らない、葬儀も要らない、と、こだわらない風を装っているが、よくよく聞けばそうでもない。
夫の実家の代代の墓には絶対入りたくない、とか、思い出のあの海に遺灰を撒いてほしい、とか、漠然と死んで漫然と墓に入るより、よほど強いこだわりである。
彼らの死後の希望を聞くうちに、つい、やらされる側の気持ちになり、ああメンドクセエ、と思ってしまった。
でっかい墓や盛大な葬式を要求するのも迷惑だけど、ナントカの曲を流せとか、ナニナニの木を植えろとか、コマゴマ指示を残すのも、同じくらいワガママじゃないのだろうか。
死ぬのは怖い。死んだ後のことを考えるのも怖い。
だから自分の思うままになると想像すれば、その時少しは安心していられるのかもしれない。
私ならどうかちょっと考えてみた。
私は自分は死んだら物体になると思っている。
物体になったら、法律に触れない限り、残った者が一番楽な方法で片付けてくれればいい。
逆に、どーしても私の偉業をたたえ、後世に残したい!と思うなら、巨大な墓石を立て、何千人も会葬者を集めて、ど派手な葬式をしてくれてもかまわない。
どんなハズカシイ葬式でも、物体だから平気だ。
テレビを見ながら、ちょうどそこにいたムスメとムスコに言ってみた。
アタシはさ~ 葬式だの墓だの 本当にどーでもいいから! 何をどうしたって化けて出たりしないから!
2人はちょっとギョッとした様子だったが、わりに素直にうなずいた。
子供には、これから時々こういうことも言っておこう。それが私のシュウカツである。

(全人類の墓標 「2001年宇宙の旅」より)

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おはかの話。
父が亡くなって困ったのは、お墓をどうするかということであった。
父は5人兄弟の三男なので、お墓も仏壇もない。
自分が死んだらどうしろこうしろと、事細かに指図を残す人もあるようだが、物言わずの父の意向は、50年そばにいた母も知らなかった。
うちは女の子しかいないしねえ… 永代供養でいい気もするんだけど…
いいんじゃない タカコおばちゃんと同じとこにしたら?
遠縁のおばのお参りは、父亡き後、私の仕事になっている。(→ 「やさしい話。」)
でも、お墓がなくて、本当にいいのかしら…
さあ… おとーさんって そういうのこだわらない人だったでしょう?
そうねえ…
「お前らのエエようにしたらエエ」しか言わなかったじゃない
そうねえ…
だから おかーさんのエエようにしたらエエと思うよ
そうねえ…
そうね、そうねと言いながら、話はなかなか決まらず、春が過ぎ、夏が過ぎた。
秋風が吹き始めたころ、母は夢を見た。
病院で亡くなったはずの父が、食卓のいつもの位置にいつものように座って、新聞なんか読んでいる、と思ったら、ふと顔をあげ、母に向かって
ちょっと寒いなぁ…
と言ったのだという。
朝起きてすぐ、母は見晴らしの良い丘陵の霊園に、予約の電話を入れた。
やっぱりお墓に入れてあげる おとーさん寒そうだったから…
母の決めたことに否やはない。丘の上の霊園に、父のお墓ができた。
今年ももうすぐ、父の命日だ。


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父は5人兄弟の三男なので、お墓も仏壇もない。
自分が死んだらどうしろこうしろと、事細かに指図を残す人もあるようだが、物言わずの父の意向は、50年そばにいた母も知らなかった。
うちは女の子しかいないしねえ… 永代供養でいい気もするんだけど…
いいんじゃない タカコおばちゃんと同じとこにしたら?
遠縁のおばのお参りは、父亡き後、私の仕事になっている。(→ 「やさしい話。」)
でも、お墓がなくて、本当にいいのかしら…
さあ… おとーさんって そういうのこだわらない人だったでしょう?
そうねえ…
「お前らのエエようにしたらエエ」しか言わなかったじゃない
そうねえ…
だから おかーさんのエエようにしたらエエと思うよ
そうねえ…
そうね、そうねと言いながら、話はなかなか決まらず、春が過ぎ、夏が過ぎた。
秋風が吹き始めたころ、母は夢を見た。
病院で亡くなったはずの父が、食卓のいつもの位置にいつものように座って、新聞なんか読んでいる、と思ったら、ふと顔をあげ、母に向かって
ちょっと寒いなぁ…
と言ったのだという。
朝起きてすぐ、母は見晴らしの良い丘陵の霊園に、予約の電話を入れた。
やっぱりお墓に入れてあげる おとーさん寒そうだったから…
母の決めたことに否やはない。丘の上の霊園に、父のお墓ができた。
今年ももうすぐ、父の命日だ。


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あがらぬ話。
今日も展覧会の受付当番。
初日よりは人出が多くなった。会場内でstaffの名札など下げて、作品の説明をしていると
ぢょん子さん!お客様…
と、声がかかった。
振り返ると、受付の前に小柄な女性。リュックにニット帽で、山歩きにでも出かけるような姿だ。
どなたか心当たりがなくて、首をかしげながら近づくと、相当の年配に見える女性は
マチダです ぢょん子ちゃんお久しぶり!
と、ハリのある声でおっしゃるので驚倒する。
先生?!まさか、マチダ先生ですか?!
ハイ~ マチダですよ ぢょん子ちゃんお久しぶり!
先生に、まるで同じことを2回言わせてしまった。
私がそれほど驚いたには理由がある。
マチダ先生は、私の幼稚園の先生である。
卒園以来50年、年賀状のやりとりが続いているが、お会いする機会はなかった。
確か大学生の時分、駅で偶然お見かけして、立ち話をしたのが最後だから、30年は過ぎている勘定になる。
教わっていた時分、ゆうに30は過ぎて見えたから、今は80代か、もしかしたら90か。
近況報告のつもりで作品展の案内を差し上げたが、ご高齢でもあり、来ていただく気持ちなどさらさらなかった。
まさかこんなにシャンシャン歩いて、電車に乗ってバスに乗って、お一人で来てくださるとは。
先生は、丹念に一つ一つの展示をご覧になり、わからないことはいちいち質問をなさる。その質問の的確さ、知的好奇心の旺盛なこと、若い人に勝るとも劣らない。感嘆して
先生ちっともお変わりにならない!
と申し上げると、ホホホ…なんて笑っていらっしゃる。すっかり先生のファンになったお友だちが
ぢょん子さんは変わりましたか?
と尋ねると
昔はかわいかったですよ
と、ニコニコされた。
頭が上がらない、というのは、まったくこういうことを言うのである。


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初日よりは人出が多くなった。会場内でstaffの名札など下げて、作品の説明をしていると
ぢょん子さん!お客様…
と、声がかかった。
振り返ると、受付の前に小柄な女性。リュックにニット帽で、山歩きにでも出かけるような姿だ。
どなたか心当たりがなくて、首をかしげながら近づくと、相当の年配に見える女性は
マチダです ぢょん子ちゃんお久しぶり!
と、ハリのある声でおっしゃるので驚倒する。
先生?!まさか、マチダ先生ですか?!
ハイ~ マチダですよ ぢょん子ちゃんお久しぶり!
先生に、まるで同じことを2回言わせてしまった。
私がそれほど驚いたには理由がある。
マチダ先生は、私の幼稚園の先生である。
卒園以来50年、年賀状のやりとりが続いているが、お会いする機会はなかった。
確か大学生の時分、駅で偶然お見かけして、立ち話をしたのが最後だから、30年は過ぎている勘定になる。
教わっていた時分、ゆうに30は過ぎて見えたから、今は80代か、もしかしたら90か。
近況報告のつもりで作品展の案内を差し上げたが、ご高齢でもあり、来ていただく気持ちなどさらさらなかった。
まさかこんなにシャンシャン歩いて、電車に乗ってバスに乗って、お一人で来てくださるとは。
先生は、丹念に一つ一つの展示をご覧になり、わからないことはいちいち質問をなさる。その質問の的確さ、知的好奇心の旺盛なこと、若い人に勝るとも劣らない。感嘆して
先生ちっともお変わりにならない!
と申し上げると、ホホホ…なんて笑っていらっしゃる。すっかり先生のファンになったお友だちが
ぢょん子さんは変わりましたか?
と尋ねると
昔はかわいかったですよ
と、ニコニコされた。
頭が上がらない、というのは、まったくこういうことを言うのである。


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にている話。
出品が危ぶまれた趣味のグループ展(→ 「しめきり話。」)であったが、なんとか間に合って、今日は開催初日。
作品搬入のあと、受付のお手伝いをする。
ミゾグチさん、という、よく知らない女性と一緒に、芳名帳の前に座ることになった。30代後半くらいだろうか、意志の強そうな眉が印象的な美人だ。
ふと、ハラちゃんに似ているな、と思った。
学生時代の友人のハラちゃんとはしばらく会わないが、似顔絵を描くとしたらまず描きたくなるような、濃くてきれいな眉をしていた。
今日の案内ハガキはいちおう出したけれど、どうしているかしら。
友だちに似ていると思うと親しみが湧いて、初対面のミゾグチさんが好きになった。
シロウトの集まりが見せるタダの展覧会だから、応対に困るほど人が来ることはない。合間合間にお話しながら、ポツポツとやってくる人に応対をするうち、午後も遅くなった。
会場の入り口に新しくやって来た女性の顔に、なんだか見覚えがある。
ハラちゃん?ハラちゃんなの?!
驚いたことに、数年来会わないハラちゃんが、ハガキを見て来てくれたのだ。
嬉しくなって思わず席を立ち、久闊を叙する。しばらくは夢中で会わない間の話をしてから、では作品を見てね、と、いったん受付に戻った。
お友だちですか?
ミゾグチさんはニコニコして尋ねてくれたが、その顔を見て、内心驚いた。
似てない。
ハラちゃんとミゾグチさん、並べて見るとぜんぜん似てない。
フリーダ カーロとヴィヴィアン リーくらい、似てない。
一体全体どこをどう見てこの二人が似てると思えたのだろう。
誰に似てるとか彼にそっくりだとか、うかうか口に出すべきではない、とあらためて自戒した。

( Frida Kahlo 、1907.7.6- 1954.7.13 )( Vivien Leigh、1913.11.5-1967.7.8)

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作品搬入のあと、受付のお手伝いをする。
ミゾグチさん、という、よく知らない女性と一緒に、芳名帳の前に座ることになった。30代後半くらいだろうか、意志の強そうな眉が印象的な美人だ。
ふと、ハラちゃんに似ているな、と思った。
学生時代の友人のハラちゃんとはしばらく会わないが、似顔絵を描くとしたらまず描きたくなるような、濃くてきれいな眉をしていた。
今日の案内ハガキはいちおう出したけれど、どうしているかしら。
友だちに似ていると思うと親しみが湧いて、初対面のミゾグチさんが好きになった。
シロウトの集まりが見せるタダの展覧会だから、応対に困るほど人が来ることはない。合間合間にお話しながら、ポツポツとやってくる人に応対をするうち、午後も遅くなった。
会場の入り口に新しくやって来た女性の顔に、なんだか見覚えがある。
ハラちゃん?ハラちゃんなの?!
驚いたことに、数年来会わないハラちゃんが、ハガキを見て来てくれたのだ。
嬉しくなって思わず席を立ち、久闊を叙する。しばらくは夢中で会わない間の話をしてから、では作品を見てね、と、いったん受付に戻った。
お友だちですか?
ミゾグチさんはニコニコして尋ねてくれたが、その顔を見て、内心驚いた。
似てない。
ハラちゃんとミゾグチさん、並べて見るとぜんぜん似てない。
フリーダ カーロとヴィヴィアン リーくらい、似てない。
一体全体どこをどう見てこの二人が似てると思えたのだろう。
誰に似てるとか彼にそっくりだとか、うかうか口に出すべきではない、とあらためて自戒した。


( Frida Kahlo 、1907.7.6- 1954.7.13 )( Vivien Leigh、1913.11.5-1967.7.8)

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