はこんだ話。
街路樹も山も、緑に萌える季節となった。
歩道の植え込みの陰、足元のモシャモシャした茂みが懐かしくて、ふと足を止めた。
その昔、ムスメが幼稚園に上がったばかりの、春の日のこと。
手をつないで通う通園路にもまだ慣れなくて、物珍しくアッチコッチを見ながら歩く。
住宅地の道をノンビリ歩いていたら、道の真ん中に緑のカタマリがある。
何だろう?と近づくと、それは引っこ抜いた雑草の束だった。
枯らしてから捨てるにしても、道に投げるとは感心しないなあ、と、草のカタマリを道脇によけ、園に向かった。
ボーッとしているムスメを預けた帰り道、誰が取り捨てたのか、もう草は無くなっていた。
数日後。
少しは園にも慣れたムスメの手を引いて歩いていたら、道に面した住宅の門が開き、60代くらいの奥様が出てこられるところだった。
奥様は持ってきたものを道に投げかけたが、私とムスメに気付いて手を止め
ハイこれ
と、当たり前のようにそれを手渡してきた。
引き抜いたばかりの雑草の束。この前、道に投げてあったのと同じものだ。
?????
戸惑っている私の様子に気付いた奥様は、あっ、という顔をしてから、ほがらかに笑い、
これね… ハコベ… コッコちゃんとウサちゃんの…

聞けばこの奥様は、庭の草取りでハコベをとると、幼稚園のニワトリやウサギのためにそれを取り除けておいてくださるのだという。
お宅が通園路に面しているため、道にポイと投げ出しておくと、誰かが拾って園まで持って行く、そういう習慣になっていたらしい。
それから何度、ハコベを拾って登園しただろうか。
みずみずしくやわらかい春先のハコベは、ニワトリもウサギも大好物だった。
ハコベを運んだ、春の思い出である。(今回ダジャレ)

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歩道の植え込みの陰、足元のモシャモシャした茂みが懐かしくて、ふと足を止めた。
その昔、ムスメが幼稚園に上がったばかりの、春の日のこと。
手をつないで通う通園路にもまだ慣れなくて、物珍しくアッチコッチを見ながら歩く。
住宅地の道をノンビリ歩いていたら、道の真ん中に緑のカタマリがある。
何だろう?と近づくと、それは引っこ抜いた雑草の束だった。
枯らしてから捨てるにしても、道に投げるとは感心しないなあ、と、草のカタマリを道脇によけ、園に向かった。
ボーッとしているムスメを預けた帰り道、誰が取り捨てたのか、もう草は無くなっていた。
数日後。
少しは園にも慣れたムスメの手を引いて歩いていたら、道に面した住宅の門が開き、60代くらいの奥様が出てこられるところだった。
奥様は持ってきたものを道に投げかけたが、私とムスメに気付いて手を止め
ハイこれ
と、当たり前のようにそれを手渡してきた。
引き抜いたばかりの雑草の束。この前、道に投げてあったのと同じものだ。
?????
戸惑っている私の様子に気付いた奥様は、あっ、という顔をしてから、ほがらかに笑い、
これね… ハコベ… コッコちゃんとウサちゃんの…

聞けばこの奥様は、庭の草取りでハコベをとると、幼稚園のニワトリやウサギのためにそれを取り除けておいてくださるのだという。
お宅が通園路に面しているため、道にポイと投げ出しておくと、誰かが拾って園まで持って行く、そういう習慣になっていたらしい。
それから何度、ハコベを拾って登園しただろうか。
みずみずしくやわらかい春先のハコベは、ニワトリもウサギも大好物だった。
ハコベを運んだ、春の思い出である。(今回ダジャレ)

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むーびー話。
朝まず点けたテレビから、シロウトが撮ったらしい結婚式の映像が流れてきた。
新郎新婦から、両親に感謝の言葉を述べる、ありがちなシーン。
留袖を着た新婦の母が、ハンカチを目に当てる姿からカメラが動き、1人の男性が映った。
ハンカチが間に合わないほどの大泣きをしているのは、新婦の兄だという。
新婦のお兄さんが、当の新婦よりも、両親よりも泣く、というのは確かに珍しいし、きっと仲良いご家族なんだろうが、なんだかお兄さんが気の毒になった。
妹の結婚披露宴のその時、お兄さんが何を思い、何に感極まって涙を流したのか。
大のオトナが、ちょっとおかしな状況で大泣きしてしまった、それは確かに滑稽かもしれないが、赤の他人がテレビで見て、笑っていいこととは思えない。
個人情報の保護が言われ始めて久しく、住所氏名電話番号といった個人のデータに対する配慮は、どこでもなされるようになった。
だけど、感情って、住所氏名よりよほど個人的なものじゃないのだろうか。
あなたのスマホにとっておきの家族動画がありませんか?
ぜひ、みなさんの家族の映像をお寄せください!
にこやかにそう言ってのけるアナウンサーを見ていたらバカバカしくなり
ネタは自前で探せ バカ…
言わずもがなのヒトリゴトのあと、チャンネルを変えた。


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新郎新婦から、両親に感謝の言葉を述べる、ありがちなシーン。
留袖を着た新婦の母が、ハンカチを目に当てる姿からカメラが動き、1人の男性が映った。
ハンカチが間に合わないほどの大泣きをしているのは、新婦の兄だという。
新婦のお兄さんが、当の新婦よりも、両親よりも泣く、というのは確かに珍しいし、きっと仲良いご家族なんだろうが、なんだかお兄さんが気の毒になった。
妹の結婚披露宴のその時、お兄さんが何を思い、何に感極まって涙を流したのか。
大のオトナが、ちょっとおかしな状況で大泣きしてしまった、それは確かに滑稽かもしれないが、赤の他人がテレビで見て、笑っていいこととは思えない。
個人情報の保護が言われ始めて久しく、住所氏名電話番号といった個人のデータに対する配慮は、どこでもなされるようになった。
だけど、感情って、住所氏名よりよほど個人的なものじゃないのだろうか。
あなたのスマホにとっておきの家族動画がありませんか?
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ネタは自前で探せ バカ…
言わずもがなのヒトリゴトのあと、チャンネルを変えた。


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めろでぃー話。
コールセンターに電話で問い合わせる。
カスタマーサービスの電話番号にかけると、申し訳ございませんがこちらではわかりかねます、と言われるが、この程度は想定の範囲内なので、腹も立たない。
あーハイハイ、じゃあ分かるところに回してください
おそれいりますが少々お待ちください
ところがその少々が、少々の少々ではない。
♪ぴろりろぴろりろ ぴろりろぴろりろ ぴろろりりぴろりろろ♬
保留音が延々と流れる。
この、保留音というのも、会社によってさまざまだ。
この会社はピアノ曲、それも、その昔カレーのCMでナカムラヒロコが弾いていたような、華麗で速いテンポの曲を採用している。

♪ぴろりろぴろりろ ぴろりろぴろりろ ぴろろりりぴろりろろ♬
早いタッチで気がせいて、イライラを助長する。
しかし、かといって
♪り~ら~ り~ら~ り~らら~り~り~♬
というような悠長な曲が流れたら、それはそれでムカつくかもしれない。
大変ながらくお待たせしております まことに申し訳ございません
というお詫びが流れる会社もあるが、私のようなひねくれ者は、申し訳ないとか思ってないくせに、と、無用な反感を抱いてしまう。
保留音ひとつとっても、難しいもんだ。
けっきょく、3カ所をタライマワシにされ、とくに得るところのないまま、電話を切った。
まあこの程度は覚悟していたので、いちいち腹を立てたりはしない。
唯一ムカつくのは、
♪ぴろりろぴろりろ ぴろりろぴろりろ ぴろろりりぴろりろろ♬
このメロディーをソラで歌えるほど、バッチリ覚えてしまったことである。

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カスタマーサービスの電話番号にかけると、申し訳ございませんがこちらではわかりかねます、と言われるが、この程度は想定の範囲内なので、腹も立たない。
あーハイハイ、じゃあ分かるところに回してください
おそれいりますが少々お待ちください
ところがその少々が、少々の少々ではない。
♪ぴろりろぴろりろ ぴろりろぴろりろ ぴろろりりぴろりろろ♬
保留音が延々と流れる。
この、保留音というのも、会社によってさまざまだ。
この会社はピアノ曲、それも、その昔カレーのCMでナカムラヒロコが弾いていたような、華麗で速いテンポの曲を採用している。

♪ぴろりろぴろりろ ぴろりろぴろりろ ぴろろりりぴろりろろ♬
早いタッチで気がせいて、イライラを助長する。
しかし、かといって
♪り~ら~ り~ら~ り~らら~り~り~♬
というような悠長な曲が流れたら、それはそれでムカつくかもしれない。
大変ながらくお待たせしております まことに申し訳ございません
というお詫びが流れる会社もあるが、私のようなひねくれ者は、申し訳ないとか思ってないくせに、と、無用な反感を抱いてしまう。
保留音ひとつとっても、難しいもんだ。
けっきょく、3カ所をタライマワシにされ、とくに得るところのないまま、電話を切った。
まあこの程度は覚悟していたので、いちいち腹を立てたりはしない。
唯一ムカつくのは、
♪ぴろりろぴろりろ ぴろりろぴろりろ ぴろろりりぴろりろろ♬
このメロディーをソラで歌えるほど、バッチリ覚えてしまったことである。

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かこんだ話。
年に一度、イースターの休暇に帰省する友だちを囲む会がある。
花どきだけれど花見をするでもなく、ウバザクラが5、6人集まって、飲み食いするだけの会である。
帰省の日にちが決まるとメールがあり、来られそうなメンバーに声をかけ、お店を予約する。
毎年恒例のこの会に、今回異変が起きた。囲まれる当人が、直前になって熱を出したのだ。
やむをえず、囲まれる人不在の、囲む会が行われた。
囲む会といってもじっさい囲むわけではない。みんなで居並んで、ご飯を食べるだけである。

(このようなことをする会ではない)
囲まれる人だって、他の人に比べて特に注目されるでもなく、テーブルスピーチをするでもなく、メンバーの1人に過ぎない。
どこから来ようが、1年ぶりに会う、という点では、みんな同じなのだ。
今年の囲む会が囲んでいるのは、囲まれる人がご所望のスキヤキである(ややこしいなあ)。
ナニナニ牛と名前のある高級牛肉が、花びらのように煮えている。
おしゃべりなウバザクラ連のこと、何があろうとも、いつもどおり話は弾んだが、牛肉の高級さにかかわらず、心なしか目出度さに欠ける会となった。
やはり囲まれる人がいないせいかもしれない。
会費を肉の枚数で割り、千円札を煮て食べたようなものだなあ、と思いつつ、家に帰った。
玄関に立てば、いずこからとも知れぬ桜の花びらひとつ。
今年も花見をしないまま、花ももう終わりである。

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花どきだけれど花見をするでもなく、ウバザクラが5、6人集まって、飲み食いするだけの会である。
帰省の日にちが決まるとメールがあり、来られそうなメンバーに声をかけ、お店を予約する。
毎年恒例のこの会に、今回異変が起きた。囲まれる当人が、直前になって熱を出したのだ。
やむをえず、囲まれる人不在の、囲む会が行われた。
囲む会といってもじっさい囲むわけではない。みんなで居並んで、ご飯を食べるだけである。

(このようなことをする会ではない)
囲まれる人だって、他の人に比べて特に注目されるでもなく、テーブルスピーチをするでもなく、メンバーの1人に過ぎない。
どこから来ようが、1年ぶりに会う、という点では、みんな同じなのだ。
今年の囲む会が囲んでいるのは、囲まれる人がご所望のスキヤキである(ややこしいなあ)。
ナニナニ牛と名前のある高級牛肉が、花びらのように煮えている。
おしゃべりなウバザクラ連のこと、何があろうとも、いつもどおり話は弾んだが、牛肉の高級さにかかわらず、心なしか目出度さに欠ける会となった。
やはり囲まれる人がいないせいかもしれない。
会費を肉の枚数で割り、千円札を煮て食べたようなものだなあ、と思いつつ、家に帰った。
玄関に立てば、いずこからとも知れぬ桜の花びらひとつ。
今年も花見をしないまま、花ももう終わりである。

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たまごの話。
イースターに、イギリスでは子供が玉子の形のチョコをもらう。
日本から来たばかりのムスメでも、なんだかんだで3個はいただいたし、幼稚園の友だちなどは、10個もらうという話もザラだった。
玉子の形といっても鶏卵大ではない。
ダチョウか、エミューか…仔犬くらい軽く入れる大きさの、デカい玉子である。
芯までチョコレートでは歯が立たないから、中はもちろん空洞だが、なにせデカいので、食べきるのに苦労する。
チョコの玉子といえば、こういうものもあった。

中に小さなオモチャが入った玩具菓子で、日本でも季節関係なく売られている。
このオモチャ、いわゆる食玩を、夢中で集めたことがあった。
子供の頃ではなく、立派な大人、しかも母親になってからである。
キッカケは、外食の帰り、フラフラと入ったコンビニで、せがまれるままに買った1個。
チョコの中のカプセルを開けると、驚くほど精巧にできたフィギュアが出てくる。子供も喜んだが、もっと惹きつけられたのは私だった。
こんな小さな玉子の中に、毛並みまで再現した動物が入っているという感激。
シリーズに10個あると聞けば10個全部欲しくて、買い集めた。
指の先ほどのオモチャの動物を、かわるがわる掌にのせ、あっち向けこっち向けして眺めていると心が和むが、もっと嬉しいのはレアなキャラクターが出たときである。
通常品とはカラーリングが違うものや、隠しキャラが飛び出してくると、震えるほど嬉しかった。
あまりモノを集めない私が、あの時なぜあれほど熱中したのか、今となってはわからない。
思えば、離婚前提の別居で、元亭主が家を出て行った頃のことだった。
集めたフィギュアは段ボール1つ。あれもそろそろ処分どきかもな、と思いつつ、時おり押入れの天袋に目をやったりする。

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日本から来たばかりのムスメでも、なんだかんだで3個はいただいたし、幼稚園の友だちなどは、10個もらうという話もザラだった。
玉子の形といっても鶏卵大ではない。
ダチョウか、エミューか…仔犬くらい軽く入れる大きさの、デカい玉子である。
芯までチョコレートでは歯が立たないから、中はもちろん空洞だが、なにせデカいので、食べきるのに苦労する。
チョコの玉子といえば、こういうものもあった。

中に小さなオモチャが入った玩具菓子で、日本でも季節関係なく売られている。
このオモチャ、いわゆる食玩を、夢中で集めたことがあった。
子供の頃ではなく、立派な大人、しかも母親になってからである。
キッカケは、外食の帰り、フラフラと入ったコンビニで、せがまれるままに買った1個。
チョコの中のカプセルを開けると、驚くほど精巧にできたフィギュアが出てくる。子供も喜んだが、もっと惹きつけられたのは私だった。
こんな小さな玉子の中に、毛並みまで再現した動物が入っているという感激。
シリーズに10個あると聞けば10個全部欲しくて、買い集めた。
指の先ほどのオモチャの動物を、かわるがわる掌にのせ、あっち向けこっち向けして眺めていると心が和むが、もっと嬉しいのはレアなキャラクターが出たときである。
通常品とはカラーリングが違うものや、隠しキャラが飛び出してくると、震えるほど嬉しかった。
あまりモノを集めない私が、あの時なぜあれほど熱中したのか、今となってはわからない。
思えば、離婚前提の別居で、元亭主が家を出て行った頃のことだった。
集めたフィギュアは段ボール1つ。あれもそろそろ処分どきかもな、と思いつつ、時おり押入れの天袋に目をやったりする。

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いーすた話。
ハロウィンの次はイースターか!
テレビの前で、誰にともなくつぶやく。

大型スーパーのイベント商法にもいいかげんうんざりだ。
4月は新入学、新入社と、お花見!お目出度いことがすでにいっぱいある。
日本の春に新しい行事はもう要らないと思う。
しかし、ヨーロッパにいると、キリスト教徒でなくても、イースターを祝いたい気分がなんとなくわかる。
寒い寒い時期が続いて、ようやく日が長く、暖かさの兆しが見えだすのがこのころなのだ。
凍った土を割ってスイセンが咲き、牧場では緑が芽吹き、仔羊が生まれる。
固くむすぼった自然が、目の前で色彩のパノラマを描いてほどけていく、その爆発的な喜びが、イースターなのだ。
イースターの目出度さは、日本でいうならお正月だと思う。
そういえば、イースターの頃、小さいムスメはあちこちでチョコレートの玉子をもらった。
ふだんあまりお付き合いのないようなご近所さんが、
イースターおめでとう!
の言葉とともに、ハデな包装のチョコレートを下さる。
スーパーに山積みになっている玉子型のチョコレートを、がさっとカートに入れるオバサン連中の様子からは、どうやら誰にやるというあてもなく、まとめ買いしているらしい。
お義理にくれるその感じは、義理チョコのようでもあり、またお年玉に似ていた。
人って、遠く離れた場所で、案外似たようなことをしているものだ。

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テレビの前で、誰にともなくつぶやく。

大型スーパーのイベント商法にもいいかげんうんざりだ。
4月は新入学、新入社と、お花見!お目出度いことがすでにいっぱいある。
日本の春に新しい行事はもう要らないと思う。
しかし、ヨーロッパにいると、キリスト教徒でなくても、イースターを祝いたい気分がなんとなくわかる。
寒い寒い時期が続いて、ようやく日が長く、暖かさの兆しが見えだすのがこのころなのだ。
凍った土を割ってスイセンが咲き、牧場では緑が芽吹き、仔羊が生まれる。
固くむすぼった自然が、目の前で色彩のパノラマを描いてほどけていく、その爆発的な喜びが、イースターなのだ。
イースターの目出度さは、日本でいうならお正月だと思う。
そういえば、イースターの頃、小さいムスメはあちこちでチョコレートの玉子をもらった。
ふだんあまりお付き合いのないようなご近所さんが、
イースターおめでとう!
の言葉とともに、ハデな包装のチョコレートを下さる。
スーパーに山積みになっている玉子型のチョコレートを、がさっとカートに入れるオバサン連中の様子からは、どうやら誰にやるというあてもなく、まとめ買いしているらしい。
お義理にくれるその感じは、義理チョコのようでもあり、またお年玉に似ていた。
人って、遠く離れた場所で、案外似たようなことをしているものだ。

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たいたん話。
昔の友達と、街で会う。
お互いもういいトシになったのだから、昔のようにオーショーでギョーザでは済まない。落ち着いた和食屋を見つけて、そこに入った。
細い格子の引き戸を開けた時、ちょっとした予感はあったのだ。
壁にミツヲ風の筆文字と、ツルタロー風の野菜の絵。上手いんだかヘタなんだか、わからない。
カウンターにはお寺のスリバチほどのデカい器がずらり。中身はナニヤラ惣菜らしい。
モケモケした和紙のメニューを見て、友達と顔を見合わせた。
竹の子と蕗のたいたん
蕪とお揚げさんのたいたん
…等々。
「たいたん」は関西弁で、「煮たもの」という意味。
おかーさん、今日ゴハン何?
サバの塩焼きと… 子芋の炊いたん!
などと用い、ウールのスカートに前掛けをかけた、昭和のお母さんから聞かまほしい言葉である。
しかし、炊いたん、と口で言うことはあっても、字に書くことはない。
「おばんざい」がまるで高級グルメみたいに持ち上げられたころからだろうか。この「炊いたん」と、妙な場所で出くわすようになった。
ビジネス街の小料理屋だとか、高層ビルのテナントに入っている居酒屋とか、客単価の高い店で、場所も関西とは限らない。
カウンターの奥には、美容院行きたて、ツヤツヤ頭のエセ京女がソロバンをはじいている。
ホッコリとかハンナリとか、イメージで原価の低いものを高く売る、古都商法なのだ。
芋の皮を剥いていたとは思えない、真っ白な割烹着のオンナが、注文を取りに来たので、最低限の注文をして追い払ってから
出たな… たいたんの妖女…
コソッと言うと、SF研出身の友達が、爆笑した。

(出典→「タイタンの妖女」ハヤカワ文庫)

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お互いもういいトシになったのだから、昔のようにオーショーでギョーザでは済まない。落ち着いた和食屋を見つけて、そこに入った。
細い格子の引き戸を開けた時、ちょっとした予感はあったのだ。
壁にミツヲ風の筆文字と、ツルタロー風の野菜の絵。上手いんだかヘタなんだか、わからない。
カウンターにはお寺のスリバチほどのデカい器がずらり。中身はナニヤラ惣菜らしい。
モケモケした和紙のメニューを見て、友達と顔を見合わせた。
竹の子と蕗のたいたん
蕪とお揚げさんのたいたん
…等々。
「たいたん」は関西弁で、「煮たもの」という意味。
おかーさん、今日ゴハン何?
サバの塩焼きと… 子芋の炊いたん!
などと用い、ウールのスカートに前掛けをかけた、昭和のお母さんから聞かまほしい言葉である。
しかし、炊いたん、と口で言うことはあっても、字に書くことはない。
「おばんざい」がまるで高級グルメみたいに持ち上げられたころからだろうか。この「炊いたん」と、妙な場所で出くわすようになった。
ビジネス街の小料理屋だとか、高層ビルのテナントに入っている居酒屋とか、客単価の高い店で、場所も関西とは限らない。
カウンターの奥には、美容院行きたて、ツヤツヤ頭のエセ京女がソロバンをはじいている。
ホッコリとかハンナリとか、イメージで原価の低いものを高く売る、古都商法なのだ。
芋の皮を剥いていたとは思えない、真っ白な割烹着のオンナが、注文を取りに来たので、最低限の注文をして追い払ってから
出たな… たいたんの妖女…
コソッと言うと、SF研出身の友達が、爆笑した。

(出典→「タイタンの妖女」ハヤカワ文庫)

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おやぶん話。
春眠暁を覚えず。
目が覚めても、フトンの中でモゾモゾしているのが楽しい季節になった。
寝室の白い天井をボンヤリ見ると、何者かが浮遊している。
虫?
しかし、動く方向に目をやっても、何もいない。
どうやら起きてからも私の視界にいるらしい、謎のフワフワ。
じつはこれについては、かねがねお友達から聞いていた。
飛蚊症である。
飛蚊症(ひぶんしょう) … 加齢により自然発生する、視界に蚊のようなものが動き回るように感じる症状。白壁や空を見た場合によく見える。
「加齢により」かあ。私は近眼なので、来るべきものが来た、という感じではある。
小虫が飛ぶ感覚をうっとうしく感じる方も多いようだが、治療らしい治療はなく、付き合っていくしかないようだ。
観察を続けたところ、フワフワは今のところ2つ。
少し大きくて独特の形をしたやつと、それより小さくて丸いやつ。
加齢と思うといまいましいが、親しみが湧かないでもない。そこで名前をつけることにした。
大きいほうがオヤブン、小さいのがコブン。
朝起きて天井を見ると、オヤブンがまずフワフワと動き出し、コブンが慌ててそれについてくる。
おはよう、オヤブン おはよう、コブン
最近はそんな風に挨拶したりするが、つい声に出ないように、気をつけている。

(「ブン」と読むのは当然のようでけっこうハードルが高い)

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目が覚めても、フトンの中でモゾモゾしているのが楽しい季節になった。
寝室の白い天井をボンヤリ見ると、何者かが浮遊している。
虫?
しかし、動く方向に目をやっても、何もいない。
どうやら起きてからも私の視界にいるらしい、謎のフワフワ。
じつはこれについては、かねがねお友達から聞いていた。
飛蚊症である。
飛蚊症(ひぶんしょう) … 加齢により自然発生する、視界に蚊のようなものが動き回るように感じる症状。白壁や空を見た場合によく見える。
「加齢により」かあ。私は近眼なので、来るべきものが来た、という感じではある。
小虫が飛ぶ感覚をうっとうしく感じる方も多いようだが、治療らしい治療はなく、付き合っていくしかないようだ。
観察を続けたところ、フワフワは今のところ2つ。
少し大きくて独特の形をしたやつと、それより小さくて丸いやつ。
加齢と思うといまいましいが、親しみが湧かないでもない。そこで名前をつけることにした。
大きいほうがオヤブン、小さいのがコブン。
朝起きて天井を見ると、オヤブンがまずフワフワと動き出し、コブンが慌ててそれについてくる。
おはよう、オヤブン おはよう、コブン
最近はそんな風に挨拶したりするが、つい声に出ないように、気をつけている。

(「ブン」と読むのは当然のようでけっこうハードルが高い)

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かぜふく話。
静かな朝、洗濯物を干そうとベランダに出る。
サッシを開けて、いつもの位置にサンダルが無いのでアッと思う間もなく、強風が吹きつける。
メデューサのように髪を乱しながら、吹っ飛んでいたサンダルを、ようよう拾い集めた。
こんなに風が強いのに、家の中にいると全然わからないのだ。
ぴゅーぴゅー ひゅーひゅー びゅーびゅー
風の音を表せと言われたら、そんな風に書く人がほとんどだろう。
都心に住んでいた時は、寝床の中でも
ああ、風の音がする… 今夜は風が強いなあ…
そんなことをよく思った。
ところが、今の家に越してきてからというもの、そういうことは絶えて無い。
風が吹かないわけじゃない。山の上をひらいて建った団地だから、むしろ吹きっさらしだ。
それなのにヒューともピューとも聞こえないのが、最初は不思議で仕方なかった。
その理由に気付いたのは、久しぶりにビル街に出た日である。
コートの裾がはためく程度の風が吹いて、しばらく聞かなかったヒューの音が、頭上で鳴った。
わかった!
ヒューと鳴るのは、張り渡された電線なのだ。
それがないから、いくら風が吹いても、ヒューともピューとも鳴らないのである。
風の音、と思っていたのは、電線の音だった。
電線がなくても、よく注意すれば、風の日だな、と分かることもある。
山で木の葉がざわざわと騒ぐからである。
それは、音とも言えない、気配のようなもの。
今日も春の風が吹き、山は騒ぐ。
何かがそこまで来ていることを感じて、洗濯物のカゴを抱えたまま、目を閉じた。

(風の歌か、あるいは電線の歌か)

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サッシを開けて、いつもの位置にサンダルが無いのでアッと思う間もなく、強風が吹きつける。
メデューサのように髪を乱しながら、吹っ飛んでいたサンダルを、ようよう拾い集めた。
こんなに風が強いのに、家の中にいると全然わからないのだ。
ぴゅーぴゅー ひゅーひゅー びゅーびゅー
風の音を表せと言われたら、そんな風に書く人がほとんどだろう。
都心に住んでいた時は、寝床の中でも
ああ、風の音がする… 今夜は風が強いなあ…
そんなことをよく思った。
ところが、今の家に越してきてからというもの、そういうことは絶えて無い。
風が吹かないわけじゃない。山の上をひらいて建った団地だから、むしろ吹きっさらしだ。
それなのにヒューともピューとも聞こえないのが、最初は不思議で仕方なかった。
その理由に気付いたのは、久しぶりにビル街に出た日である。
コートの裾がはためく程度の風が吹いて、しばらく聞かなかったヒューの音が、頭上で鳴った。
わかった!
ヒューと鳴るのは、張り渡された電線なのだ。
それがないから、いくら風が吹いても、ヒューともピューとも鳴らないのである。
風の音、と思っていたのは、電線の音だった。
電線がなくても、よく注意すれば、風の日だな、と分かることもある。
山で木の葉がざわざわと騒ぐからである。
それは、音とも言えない、気配のようなもの。
今日も春の風が吹き、山は騒ぐ。
何かがそこまで来ていることを感じて、洗濯物のカゴを抱えたまま、目を閉じた。

(風の歌か、あるいは電線の歌か)

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はなみた話。
どなたもあちこちへ、お花見に行かれる季節。
思い立って出かけても、まだ全然咲いてなかったり、逆に散った後だったり、あるいは雨が降っていたりと、どうもお花見運が悪い。
その日は出先で仕事だった。
地味で根をつめる作業、よく知らない方に混じって、ムダ口の一つもきけずに午前中を過ごした。
ようやく昼休み。
配られたお弁当とお茶をひらこうとした時、1人がふと、思い立ったように口を開いた。
平城宮跡の桜…今日あたり満開じゃないかしら…
実はその作業場所、広い公園の近く。せっかくだから、と、ぞろぞろと外に出た。
降らず照らずのお花見日和、平日なので人出はほとんどない。
波うつ桜色の雲のむこうには壮麗な宮殿。かつての都の繁栄を思わせて、ことのほかめでたい。
三々五々、花の見え方を考え、好きな場所に陣取って、お弁当をひらく。
誰もが口数少なく、こめかみに当たる柔らかな春の風を楽しんでいる。
やがてお昼休みが終わると、皆てんでに立ち上がり、おしりをはたくと仕事場に戻った。
午後の仕事場は相変わらず静かだが、空気は親しみを増していた。
お酒を飲むでなく、ご馳走を食べるでなく、仲良い友達が集まったのでもない。
それでも、あの日のお昼のほんの1時間は、いまだに私のいちばんのお花見である。


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思い立って出かけても、まだ全然咲いてなかったり、逆に散った後だったり、あるいは雨が降っていたりと、どうもお花見運が悪い。
その日は出先で仕事だった。
地味で根をつめる作業、よく知らない方に混じって、ムダ口の一つもきけずに午前中を過ごした。
ようやく昼休み。
配られたお弁当とお茶をひらこうとした時、1人がふと、思い立ったように口を開いた。
平城宮跡の桜…今日あたり満開じゃないかしら…
実はその作業場所、広い公園の近く。せっかくだから、と、ぞろぞろと外に出た。
降らず照らずのお花見日和、平日なので人出はほとんどない。
波うつ桜色の雲のむこうには壮麗な宮殿。かつての都の繁栄を思わせて、ことのほかめでたい。
三々五々、花の見え方を考え、好きな場所に陣取って、お弁当をひらく。
誰もが口数少なく、こめかみに当たる柔らかな春の風を楽しんでいる。
やがてお昼休みが終わると、皆てんでに立ち上がり、おしりをはたくと仕事場に戻った。
午後の仕事場は相変わらず静かだが、空気は親しみを増していた。
お酒を飲むでなく、ご馳走を食べるでなく、仲良い友達が集まったのでもない。
それでも、あの日のお昼のほんの1時間は、いまだに私のいちばんのお花見である。


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