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みなづき話。

6月も末になると、思い出す小さなこと。

若い頃、しばらく京都の旧市街に住んだ。

お金は無かったけど、生まれ育った土地とは違う色々を発見しては、毎日楽しく過ごしていた。

梅雨時の薄曇りのある日、路地をブラブラ歩いていたら、小さな食堂の前に出た。

京都によくある、うどん屋の傍ら、おはぎやお稲荷さんを売る、ごくごく庶民的な店だ。

店頭に、筆文字のハリガミ。

みなづき2

みな月

みな月って何だろう?

ちょうどお昼時で、お腹も減っていたので、お店に入ることにする。

京都ではきつねうどんをシノダと呼ぶことは学習済みだ。

ウドンを運んできた小柄なオバサンに

あの… ミナヅキって何ですか?

と、聞いてみた。

あの時のオバサンの表情を、私は30年経った今でも、アリアリと思い出すことができる。

さげすむような、憐れむような、それでいて上品さを保った、複雑な微笑。

あれは、文化果つる土地から来た、ポッと出の山猿を、気の毒に思う文明人の顔である。

もちろん、オバサンはごく慇懃に教えてくれた。

ミナヅキとは和菓子の名前であること。

6月の晦日には、上賀茂神社で夏越の大祓(なごしのおおはらえ)という神事があり、今年前半の厄を払い、残り半年の無事を祈るということ。

その神事に用いられるお菓子が、ミナヅキであること。

そして、京都の人は皆、この時期にミナヅキを食べる、ということ。

丁寧な説明に礼を言い、伸びかけたウドンを食べながら、思った。

親切にしながら、劣等感を覚えさせる、これこそホンマモンのイケズというやつだ、と。

じつは今も、ミナヅキを食べたことはない。

みなづき
(水無月の正体は小豆がのった三角のウイロウ)



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もろもろ | コメント(16) | トラックバック(0) | 2018/06/30 11:30

ジョオウノ本。

ヘプバーンといえば、オードリー。聞けば9割の日本人がそう言うだろう。

アカデミー主演女優賞1回の彼女に対し、60年のキャリアの中で、オスカー像を4つまで獲得した女優・ヘプバーン。

それがキャサリン ヘプバーンである。

名優の定評はあるものの、人気の点ではパッとしない。かく言う私も、鼻の穴の目立つオバサン、という程度の認識だった。

なんだか色気が無いのである。もっと言えば夢がない、のである。

例えばかの名作「旅情」

休暇旅行のオールドミスが、洗練の極みみたいなイタリア男にボーッとしたものの、我に返って逃げ帰るというオハナシ(ひでえ要約)だ。

頭はよくても繊細さに欠け、背ばかり高くて肉体的魅力のないアメリカ女の存在感が同情を呼ぶのだけど、さてそういう女に憧れるか、といえば、それは別問題である。

流し目で斜に構えるだけで観客を惹きつけたモンローなどとは、対極にある女優なのだ。

ある時、本屋でこんな本を目にした。

『アフリカの女王』とわたし またはボギーとバコール、ジョン・ヒューストン。はじめてやってきたアフリカで、わたしの頭はどうにかなってしまいそうだった。

あふりかのじょおうとわたし
(原著もほとんど同じ題名で同じ装丁)

何じゃこの長い題名は。

「または」の後に内容説明をくっつけるこういう題名は、実は英米圏にはけっこうある。

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」なんてのもそれだ。

単純に題名に惹かれてこの本を手にしたが、読んでみるとめっぽう楽しい。

ハンフリー ボガート、ローレン バコール、ジョン ヒューストンらの個性はもちろん、何よりも書き手のキャサリン ヘプバーンである。

この人、ものすごーく面白い人なのだ。

観察眼に優れ、率直な感想を述べるにはばからず、いい格好をしない。

知的で自立した女性の象徴、アメリカのもっとも偉大な女優と呼ばれたキャサリン ヘプバーン。

知的であるということは、ユーモラスであることを恐れない、ということである。

そういう人にとっては、カメラの前でスタア然とふるまうことのほうが、ずっと恥ずかしいのかもしれない。

「冬のライオン」での彼女について、ライフ誌は「演技の女王が現実の女王を演じる」と評したが、本質はむしろ「アフリカの女王」にあるのではないか。

美しい女でいて、なおかつ面白いとはどういうことか。そんなことを考えるのである。

きゃさりんへぷばーん
(Katharine Houghton Hepburn  1907.5.12 - 2003.6.29)



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2018/06/29 11:30

ちけっと話。

街のチケットショップの前を通った。

何の気なしに覗き込んだウインドウに、私鉄の株主優待乗車券が出ている。

沿線ならどこへでも、制限なしに乗れる切符だ。

遊園地にも、水族館にも、お城にも、お寺にも。

山へも、高原へも。

にも。

あおいうみ

もう長らく、海を見ていない。

アスファルトの照り返しでむせかえる歩道の上、ふと意識がとぶ。

気づけば、往復切符を入れた封筒を手に、もう店を出ていた。

さあ、どうする。

休みはとれるだろう。急ぎの仕事もないし、帰りを待つ家族も、家にはいない。

チケットの期限は、2018年7月末

なんだか、忙しくなってきた。




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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/06/28 11:30

かくにん話。

デスクに向かっていたら、額に汗がたらり

暑い。

見回しても、同僚はみんな涼し気な表情だ。

私は昔から暑がりの汗っかきなうえ、いろいろと複雑なオトシゴロ。(→ としごろ話。

あまりの暑さにタオルが欲しいくらいなのに、周りはハンカチを当てる様子もない。

もしかしてこんなに暑いのって私だけ?

不安でドキドキ、さらに暑くなった気がする。思い余って、若いミヨシさんに聞いた。

…ねえ、今日って暑い?

今日はホント暑いですね!暑いってか、蒸しますね!

ヨカッタ!私だけじゃなかった!

やはり何でも確認はしてみるものだ。

ホッとするあまり体感温度が2度下がった。

その日の帰り道、電車の中も暑かった。

しかし、赤鬼みたいにのぼせた顔に、ダラダラ流れる汗を押さえているのは私ひとり。

他の人々はみんなヘーキそうに見える。

ねえ、暑くない?今日は暑いよね?

ずっとスマホをいじっている隣席の若者。

化粧崩れの気配もない、アラサーOL風の女性。

長袖シャツのボタンを衿元までキチンと止めたご老人。

みんなに確認したかったが、懸命にこらえた。

びあぐらすのあせ
(こういう汗は大歓迎)



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/06/27 11:30

6666話。

スマホの中身を整理しようと思い立った。

出先で撮った時刻表とか、打ち合わせのホワイトボードとか、用済みの写真を削除していく。

得意のくだらない写真(→ かんばん話。)も多数あり、なんで撮ったのか、不明なものも。

たとえばこんなの。

6666の1

エレベーターの定員を示した箇所。慌てていたのかピンボケである。

そこまでして何が撮りたかったのか。自分でも分からなくて、首をひねりつつ画面を送っていく。

すると、しばらくして同じ写真がまた現れた。

6666の2

今度はピントも合ってるが、よく見ると同じじゃない。定員と、積載重量が違う。

こういうのって1人何キロなんだろう、と思って撮ったらしい。

その場で計算すればいいようなものだが、私は暗算が苦手だ。

スマホの電卓機能を使えば、とも言われるが、スマホを持って1年余、まだ、その機能を見つけることができないのである。

かさねがさね、なさけない。

もの悲しい気持ちで、抽斗から電卓を探し、

1000÷15=

600÷9=


の、ふたつの計算をしたところ、いずれも

66.6666666666…

割り切れなかった。



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/06/26 11:30

よふかし話。

根を詰める仕事で、久しぶりに夜更かしした。朝からサエナイ顔をしていたせいか

あら 眠そうですね?

ご不浄に向かう通路で見とがめられる。

ええ、ちょっと寝不足で…

そう答えると、相手は

そうですよね 今日は皆さん、寝不足

モナリザのような、謎の微笑を浮かべて行ってしまった。

皆さん?皆さんって、誰?

見回しても、その場には私しかいない。不条理劇に巻き込まれたような混乱を感じた。

ご不浄に入って、スマホを見たら、

ロシアW杯 日本対セネガルは引き分け

の文字が目に飛び込んできた。あー、昨日やってたんだサッカー… あっ!

私、寝ないでサッカー見てたと思われた?

ちがう!違うのよ!

好きでもないサッカーの、ファンだと誤解されたら困るし、流行りにのっかるにわかファンと思われるのは、もっとイヤだ。

訂正したくても、モナリザの姿はすでに無く、探して駆け回りたい気持ちを抑えるのに苦労した。

ろしあわーるどかっぷ



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/06/25 11:30

ぐらすの話。

仕事で時々会うシミズさん。

プライベートはあまり存じ上げないが、地震の震源に近い場所にお住まいだったことに気づいた。

おうちは大丈夫だったんですか?

おかげさまで うちのほうはグラスが割れたくらいでしたけど 実家はちょっと…

ご実家もお近く?

ええ 駅の近くが よく揺れたみたい

それは大変でしたね!

さいわい母屋は無事で 両親もなんともなくて ただ離れの瓦が落ちて…

ん?

まあ、お茶会の時くらいしか使わないので とりあえず雨漏りの手当だけ…

んん?

あと 玄関脇の石灯籠が倒れてしまって 通るのが不自由で…

んんん??

シミズさんは、自慢でも何でもなく、事実だけを述べているのだが、私は分かってしまった。

あの街で、駅近に、離れと石燈籠のある実家。

プラス、自分が住む分譲マンション。

この人、スゴイお金持ちだ!

そうなると、お家で割れたグラス、というのも、まさか百円均一じゃあるまい。

バカラか、ラリックか、モーゼルか。

お見舞いの言葉を述べつつ、つい被害額を考えて、激しい自己嫌悪に襲われる。

baccarat.jpg
(バカラパルメワイングラス ¥32,400)



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/06/24 11:30

ゆうきの話。

月イチの、いつもの美容院

はじめにシャンプーをしてもらっていると、フロアが何だか騒がしい。

天井を向いているので分からないが、なぜか聞こえてくるのは英語

何事かと想像を巡らせつつも、ゆっくり丁寧にシャンプーが続き、椅子が起こされた時には静かになっていた。

カットの椅子に座ると、いつもの美容師さんが

はー疲れた 大変でした!

タメイキをつきながら、私の髪をくるんだタオルを外した。

聞けば、日本語がひとっことも分からない外国人観光客が来店したのだという。

けっこう多いんですよ ココ… 通り道だからでしょうね

このあたりは国際的に有名な観光地。現に私もさっき、スマホ片手にスーツケースをゴロゴロ引く集団をかき分けかき分け、ここまで来たのだ。

観光で来て美容院って なんか不思議~

私だったら 海外行くんなら 旅行前にカットして行きますけどね 写真も撮るし

フツーはそうよねえ

鏡の中、ハサミを動かす美容師さんと2人、首をひねる。

だいたい、外国で美容院って、怖くないですか?

そうよね 気に入らなくても、なんて言えばいいか分かんないし…

どんな頭にされるか分かんないんですよ!勇気あると思いませんか?

美容師さんは力説するが、だんだん変な気持ちになってきた。

「どんな頭にするか分からない」のは、他でもない彼女本人なのである。

いやー、勇気あるわあ!私には無理!

なんだか自分に言われているようで、どんな頭にされるのか、心配になってくる。

内心穏やかでなく椅子に座り続けること30分、さいわいベテランの彼女の技術は確かで、いつも通りの髪型が仕上がった。

外国人観光客も、きっと新しい髪型に満足して、店を出たことだろうと思う。

やきゅうきょうのうた
(この人は水原勇気さん)



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/06/23 11:30

どかべん話。

…1972年に始まった水島新司さんの人気野球漫画「ドカベン」が完結します 少年チャンピオンに連載中のシリーズ最終章が終了し 46年余り続いた傑作に幕が下りることになりました…

ニュースを聞いてまず、残念というより、まだやってたのか、と思った。

私にとっては、ちょっぴり懐かしいマンガ。

テレビでアニメもやっていたが、少年漫画である。一応オンナノコのハシクレでありながら、手に取ったのは意外なキッカケから。

私は中学生の時、社会科の先生が大キライだった。

たぶん、たいした理由はない。

視野が狭くかたくなな、この年頃の子供は、1度キライになると何から何までイヤになる。

ちょーうぜー マジムカつくんですけど~

といったところだ。

顔を見るのも、声を聞くのもイヤで、逃げ出したくても、その勇気は出ない。そんな時誰だかが、ドカベン全巻をクラス文庫に入れたのだ。

その日から私は、社会科の時間にはドカベンを読むことに決めた。

特に野球が好きなわけでもない。そこにドカベンがあるから、ただそれだけである。

立てた教科書に隠し、姿勢はあくまで正しく、目だけを伏せてドカベンを読む。

居眠りをしてる子や、私語する子は叱られたが、私は一度も注意されたことは無かった。

中身は忘れてしまったが、授業も聞こえないほど熱中したのだから、面白かったのだろう。

進級して、担当の先生も変わって、それからドカベンは読んだことがない。

もう、40年近く前のことだ。

どかべん31かん
(山田太郎はプロ入りしたが、やはりドカベンといえば明訓高校)



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むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/06/22 11:30

まだある話。

た、タスケテー!

おばーちゃんからの電話に、時節柄ドッキリしたが、聞けばいつものアレだった。

お友だちのイノウエさんから、どっと届く夏野菜のおすそ分け。(→ たすけた話。

毎回、おばーちゃん1人で食べきれない野菜は、わが家の台所にも押し寄せてくるのである。

傷みやすい夏野菜の山を前に慌てているおばーちゃんに、今日行くから、と約束した。

まいどー!

御用聞きのように、勝手知ったる勝手口から入ると、おばーちゃんはちょうど、私にくれる予定の野菜を袋に入れていた。

うわー、また、スゴい量だねえ!

イノウエさんは 野菜作りが上手いからねえ… また年々、お上手になるみたいで…

ハハハ… たいがいにしてほしいよね 

おばーちゃんの淹れてくれたお茶を飲みながら、持参のお菓子を食べる。

まあ おすそ分けでも何でも、あげるものがあるうちが

珍しくしみじみと、おばーちゃんが言った。

重たい野菜の袋を提げて吊革につかまりながら、バスの中で考えた。

おばーちゃんも、イノウエさんも、なんだかんだ言って、こうしてあげたりもらったりできるのは、元気だからこそ、だもんなあ。

くれるというものは、四の五の言わず気持ちよくもらうのも親孝行ってものかもしれない。

いつになく殊勝な気持ちになり、家に帰って袋を開けてみると、野菜の下に新品のTシャツが2枚入っていた。おばーちゃんに電話をかけ

ありがとう でも私にお洋服とか、わざわざ買わないでね

としおらしくお礼を言うと

あー、いいのいいいの 前に買ったけど、アタシ着ないから、あげる

なんだとう!

タンスにぎっちぎちの洋服を持っているくせに、まだ新品を秘蔵してるのか。

このぶんでは、着てない洋服はまだありそうだと、ゲンナリした。

かていさいえんのきゅーり
(今回は大量のキューリ)



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/06/21 11:30
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