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かれいの話。

かかりつけのヒカワ先生で、持病のお薬をいただくついでに、ちょっとした不調を訴えた。

それは持病のほうとは関係ないでしょう 強いて言えば…

先生は言いにくそうにチラリ、と私の顔を見ると

えーと、その、カレイによる…

カレイ?

華麗でも、家令でも、はたまた平たい白身魚でもない、ということくらいは、私にもわかる。

あーあ、加齢ってやつだ。

アタシだってさー 50過ぎてんだからさー わかってるけどさー

その夜、電話でおばーちゃんにブーたれていると

そりゃヒカワ先生がダメよ!そんな言い方…

まあ、言い方変えたって、加齢は加齢だけど

い~え、言い方は大事よ!

やけに語調が強い。

私より、言われる機会も多いであろうおばーちゃんのこと、何か意見があるのだろうか。

モリ先生を見習ってほしいわね!

駅前のモリ整形はおばーちゃんのかかりつけ。

モリ先生は、痛いのはトシのせいでしょうか、と尋ねると

イヤイヤ… うー… まあ… こんな風に痛いことは… 幼稚園児にはないでしょうけど…

などとおっしゃるのだそうだ。

なんとジェントルで遠回しな表現であることか。

しかし、先生がそうなるまでに、歴代のオバアサン患者たちが示してきた強い反発は、想像に難くないのである。

ようちえんのなふだ
(あのころはどっこも痛くなかったのに)



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2018/07/11 11:30

れぽーと話。

朝起きてテレビを点けたら、土砂災害の現場中継に目を奪われた。

ヘルメットをかぶり、作業着様のジャケットを着たレポーターが、つい先週は平和な住宅地だった場所の、変わり果てた姿を示す。

眉をしかめ、声をひそめて、災害の悲惨を伝える、こういう人を見るといつも

はしゃいでるな

と、思ってしまう。

かけがえのない人を亡くす悲惨や、被害から立ち直る日々の苦労は彼らにも分かるはず。

それでも、日常を大きく逸脱した、見たことない景色を見て、人は興奮してしまうのだ。

どんなきれいな言葉で覆っても隠せない、好奇心とヤジウマ根性。

部外者がそこから逃れるのは難しいし、災害報道を見つめる気持ちの中に、それらの感情が一滴も混じっていないとは、私には断言できない。

テレビのこちらでスゴーイ、と思ってしまう前に、スイッチを切った。



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2018/07/10 11:30

がちゃがちゃ話。

昨日ランチをした(→ ざんねん話。)のは、高校時代の友だち。

ご主人の実家を建て替え、ご両親と同居している。

ランチの席上、近況を聞いたところ、関東にいた息子さんが、転勤で戻ってきたという。

戻ってきたって、関西に?それとも家に?

にきまってるじゃな~い アパート代がモッタイナイ!

たしか下に大学生の女の子もいて、家から通える大学という方針だから、まだ家にいるはずだ。

ご主人と、ご両親と、子供2人、そして彼女。

大人が6人かあ…。うーん、想像がつかない。

一緒にデパ地下を歩いても、買うものの量が尋常じゃない。

トンカツ屋でロースカツを3枚、エビフライを6本。お惣菜店では500グラムのサラダを2パック、デザートのゼリーに…。

あっという間に、彼女の両手はデパートのロゴが入った紙袋でフサフサになった。

デパートを出て繁華街を歩いていたら、外国人観光客がガチャガチャのキカイにたかっている。

ア~ッ!カワイイ~♥

両手の紙袋をわっさわっさと揺らしながら、友だちが駆け寄ったのは

ねこやさいちゃん

なにコレ?

ネコのかぶりもの~ うちの子たちに似合いそう~!

え?あなた、猫まで飼ってんの(しかも「たち」ということは複数

うん~ 黒い子と~、ミケと~…

家族5人にネコ7匹!

小銭が足りない、と騒ぐ彼女の、並外れた包容力に敬意を表し、ガチャガチャはプレゼントさせてもらった。

帰りつけば、1人暮らしの自宅は静かで涼しい。

冷蔵庫から麦茶を出しながらスマホを見たら、タマネギの帽子をかぶせられ、暴れる猫を押さえつけている、友だちの写真が届いていた。



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/07/09 11:30

ざんねん話。

友だちと会った帰り、デパ地下に寄る。

賑わう中にもひときわ人を集める行列は、関西のデパートには必ず出店しているコレ。

ぶたまん

個人的には、もっとおいしい豚まんはいくらでもあると思うが、たまにものすごく食べたくなるのは、やはり関西人ゆえだろうか。

今日は食べたい日ではないようなので、行列を横目に通り過ぎながら、そういえば、と思い出す。

電車の中で、スマホの写真ファイルを見直した。

わすれもの1

むし暑いある日、駅前のバス停のベンチにあったもの。

きっとお買い物帰りだったのだろう。待っていたバスが来たので、身の回りの荷物をひっつかみ、運賃を気にしながら、あわてて乗り込んだのだ。

座席に落ち着いて、涼しい冷房の風に吹かれて、ホッとして膝の上を見たら

ない!551がない!なんで…あ、バス停!

その時の落胆たるやいかばかりか。

取りに戻ったとてこの気候である。常温に何時間も放置された豚まんが、無事かどうか。

私の想像の中には、ふっくりした色白のオバサンがガッカリしている姿がアリアリと浮かび、同情と共感がふつふつと湧き上がるのである。

この紙袋を、今年上半期最も残念な忘れ物に認定いたしたい。

わすれもの2
(4個入りの箱が1つ入っていました)



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/07/08 11:30

ひこぼし話。

各地で大雨。

避難指示の出た地域に住んでいるムスメには、うちに来るように言ってやった。

ムスコの住む地方にも警報が出ているが、遠いのでLINEでメッセージを送る。

雨どう?裏の用水路の様子を見に行ったりしないでね

よろしくのすたんぷ

アイドルのスタンプで、念を押す。

ムスコの下宿の裏には、小川だか用水路だかわからないが、小さな流れがあるのだ。

しばらくして返信。

そっちこそ畑の作物の心配をしないように!

私は園芸全般ニガテで、もちろん畑など作っていない。ニュースでよく言われる、災害時の注意をふまえた悪い冗談だ。

軽くムッとして

なんやてのすたんぷ

スタンプで返したが、愛想が無い気がしたので

そっちもハシゴで屋根に上がって、落ちないでよ!

付け加えておいた。アパート暮らしのムスコに、悪い冗談返しである。

返事を待っていたけれど、既読がつかない。まあ、無事が確認できれば、それでいい。

やがて玄関のチャイムが鳴って、ムスメが帰ってきたので

おやすみのすたんぷ

ドアを開けに立ちながら、スタンプを送って、スマホを閉じた。

ムスコにも、大雨の中、会いに行きたい織姫ができたかな。

そんなことを考えたりする、今日は七夕



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2018/07/07 11:30

ぜんれい話。

毎年今頃、自治体と共催のイベントを行う。

予算や開催場所など、単体で無理なところで自治体の補助を願うわけだが、関連して様々な書類仕事がある。

毎年同じような資料を大量に出すが、どーせ見てないだろうに、紙の無駄だと思っていた。

ところが先日、その件で電話があったのだ。

内気そうな女性の声で

…あのう… 添付のコレコレの部分なのですが…

は?少々お待ちを…

問合せなんてあると思わないので、控えが乱雑だ。慌ててガサガサとファイルをひっくり返す。

あーハイハイ、ここですね…これが何か?

…あのう… 昨年とドコソコが異なりますが、これはどういった…

詳しくは書けないが、たしかにそこは変更した部分である。

あー、それはですね…

るる説明して、電話を切った後、考えた。

ちゃんと読んでるんだなあ。しかも、違うと気づいたってことは、去年も読んだんだ。

お役人、スゲエな。

退屈に耐え、物事は常に例年通り、それがお役所気質。

私には役所勤めはできそうにない、と、あらためて思ったことであった。

おやくしょしごと
(昨日役所の悪口を書いたので、今日は感心したことを書きました)



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/07/06 11:30

おやくしょ話。

会社で某お役所宛の書類を作成する。

なにしろ先方はお役所だから、否も応もない。送りつけられた書類を、言われるがままに記入し、判を押して送り返すだけだ。

私はマジメなのでさっそくとりかかったが、説明を読んでもイマイチはっきりしない。

やむなく封筒にある電話番号(むろんフリーダイヤルではない)にかけた。

…おかけになった電話番号は、タダイマ大変に混み合っておりますので、申し訳ありませんが、このままお待ちになるか、しばらくしておかけ直しください…

待つよ!

…おかけになった電話番号は、タダイマ大変に…ぷるるるる ぷるるるる…

大変に混み合ってるわりにはすぐつながったな。

モシモシ…ドコソコのナントカでございます お問い合わせのご用件をお願いします

報告書の記入方法についてお教え願いたいんですが

ハイ どの部分でしょうか?

この、従業員数と内訳についての欄なんですが…

ハイ、そこは、従業員が何名か、またその内訳を書いていただきますように…

それは読めばわかります

いかんいかん、落ち着いて、大人になれワタシ。

業種柄、人数も職種の構成も、変動しますので、いつ時点でどう集計すればいいのか…

あー、なるほどねー

なんだ急に馴れ馴れしくなったぞ。

まあその部分は当方も参考のためにおうかがいしてますので…

参考?何かに反映する数字じゃないんですか?

はア… まあ、アンケート的な…

アンケートお?

思わず声が大きくなる。

アンケートだから、テキトーに書いとけということですか?

はア…

では、そちらさまでは、アンケートをするのに、報告書たらいう書式をお作りになって、わざわざお送りいただいた、と、そういうことですか?

気づけば事務所の全員が、私のほうを見ている。

はア…

それを私どもが、切手を負担させていただいて、送り返させていただく、と、いうことですね?

はア…

こういう時、私の口調はなめらかに、丁重になる。

ドコソコのナントカ氏はハアハア言うだけである。昔よくかかってきたエロ電話を思い出す。

口先では丁寧に、アリガトウゴザイマシタと言いつつ、叩っ切るように受話器を置いた。

書類?もちろん送りましたよ。なにしろ相手は、お役所だから。

おやくしょしごと



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/07/05 11:30

しんぽの話。

買い物も終わり、喫茶店で休憩。

くりーむそーだ

冷たいグラスを前に、ふくらんだ袋に囲まれたおばーちゃんは幸せそうだ。

…でね、まえに書いた字を見てたらね…

健康体操(→ たなあげ話。)から、習い事の話になる。

おばーちゃんは、昔から字のキレイな人だ。

会社では熨斗紙や祝儀袋を頼まれていたし、家でもヒマがあれば硯を出して何か書いていた。

イモートが長じて書道師範になったのも、おそらくはその影響だろう。

ざんねんながら母の達筆はイモートにだけ遺伝し、私のほうは父譲りのクセ字である。

…それがもうヘタクソで… ガッカリして捨てちゃった…

若かりし頃の作品は、恥ずかしく思えたりするものらしい。

へえ~ いつごろ書いたやつ?

話の接ぎ穂に、なんとなく尋ねたら

うーん… 3年くらい前かな…

え?3年?

ぜんぜん若い頃じゃない、最近じゃん。

私なんか、3年前から、何にも変わっていない。

日々進歩を続ける後期高齢者、か。

いたってフツーの顔でストローをくわえている、母の顔を見直した。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2018/07/04 11:30

たなあげ話。

今日はおばーちゃんと買い物。

2人でショッピングモールを歩いていたら、後ろから名前を呼ばれた。

振り返ると、杖をついた60年配の女性がニコニコ笑っているが、ぜんぜん知らない人だ。

誰だ?面食らっていると、おばーちゃんが

あら~センセイ!お買い物ですか?

なんだ、おばーちゃんの知り合いか。姓で呼ばれたので、私かと思った。

ホッとして半歩下がり、おしゃべりを遮らずに待つ。

じゃあまた来週ね!

「センセイ」がそう言い残して去っていくのを会釈で見送りながら、おばーちゃんに尋ねた。

何の先生?

健康体操の先生よ

そういえば、最近行きはじめたって言ってたな。

後期高齢者ともなると、転んだり、姿勢を悪くしたり、運動不足にもなりがちだから、けっこうなことだ。それにしても

ついてらっしゃるけど、ケガでもされた?

ちょっと気になって聞くと

ううん あの先生はずっとああよ ヒザかなんか痛いんだってさ

ふーん…

そう答えたものの。

健康体操の先生、ヒザ痛いんだ。体操してるのに、痛くなって、ずっと治らないんだ。

いまいちスッキリしないが、おばーちゃんは体操の効能を得意げに話しているので、黙っていた。

てにもつ
(腕を~伸ばして~自分のことは棚に上げる運動~)



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/07/03 11:30

はらはら話。

せんぷうき4だい

今でこそ、4台の扇風機の冷風をほしいままにしている私だが、10年以上前、この家に越してきたときは、1台だけだった。

新居が暑くてブツブツこぼす私に、母が言った。

ガレージに タカコさんとこの扇風機があるけど

父方の遠縁にあたるタカコおばちゃんは、戦争未亡人だった。(→ でんわの話。

うちより近い身内がいなかったので、亡くなった時、小さなアパートの後始末は、父と母がした。

大半の所帯道具は処分したが、使えそうな電化製品などは持ち帰ってあるという。

引越し貧乏の私にとっては朗報である。

さっそくガレージを見に行くと、買った時のままの段ボールはずいぶんと古びていたが、

ちゃんと動いたわよ

との母の言を信じ、持ち帰った箱を開けると、出てきたのは、懐かしい青い羽根の扇風機。

むかしのせんぷうき

金属っぽい外見こそ今風ではないが、タイマーも角度調整もついて、機能にはまったく問題ない。

驚いたのは、新品同様にピカピカだったことである。

亡くなる前の最後の夏、磨いてから片付けたのかと思うと、いじらしいような気持ちになった。

ホコリだらけの段ボール箱を捨てようと畳んでいたら、フラップのところに何か貼り付けてある。

それは古い新聞の家庭欄の切り抜き。

扇風機の正しいお手入れ法

きれいに切り抜いた新聞記事の4辺を止めたセロテープは、すっかり黄ばんでいて、手を触れるとハラハラ…と剥がれ落ちた。



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ごかぞく | コメント(14) | トラックバック(0) | 2018/07/02 11:30
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