にづくり話。
ムスコは去ったが、荷物は残る。
がらんとした部屋に置かれた段ボールには、文庫本やマンガなどが無造作に詰めてある。そこに洗濯した衣類を入れて、下宿に送るのだ。
数枚のTシャツと下着を、ポソッとのっけてみたが、まだだいぶスペースが余る。
送料をかけて空気を送るのもナンなので、スキマに買い置きの缶詰や即席めんを詰め込んだ。
愛情というより、モッタイナイ精神の発露である。
コンビニで宅配を頼み、戻ると電話。おばーちゃんだ。
なに?どうしたの?
いや 別に用事はないんだけどさ…
お盆のうち、滞在していたイモート一家が、昨日帰った。
今日、荷物を出したのよ そしたら ちょっと ガランとしちゃってね…
寂しくなっちゃったらしい。
イモートは昔から荷物が多い。とても持てないので、帰省の荷物はあらかじめ宅配で送ってくる。
帰る時、あらかたの荷造りはしていくが、最後に忘れ物や洗濯の済んだものを詰め込んで発送するのが、おばーちゃんの仕事になる。
思えば30年ちかく、そうしてきたわけだ。
そして私も、これからそうするのだろうか。
今は寂しくもなんともないが、そのうち私も、こんな風にムスメに電話するようになるのかな。
いつもより、ちょっとだけ優しい娘になって、おばーちゃんの話に、相槌を打つ。


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がらんとした部屋に置かれた段ボールには、文庫本やマンガなどが無造作に詰めてある。そこに洗濯した衣類を入れて、下宿に送るのだ。
数枚のTシャツと下着を、ポソッとのっけてみたが、まだだいぶスペースが余る。
送料をかけて空気を送るのもナンなので、スキマに買い置きの缶詰や即席めんを詰め込んだ。
愛情というより、モッタイナイ精神の発露である。
コンビニで宅配を頼み、戻ると電話。おばーちゃんだ。
なに?どうしたの?
いや 別に用事はないんだけどさ…
お盆のうち、滞在していたイモート一家が、昨日帰った。
今日、荷物を出したのよ そしたら ちょっと ガランとしちゃってね…
寂しくなっちゃったらしい。
イモートは昔から荷物が多い。とても持てないので、帰省の荷物はあらかじめ宅配で送ってくる。
帰る時、あらかたの荷造りはしていくが、最後に忘れ物や洗濯の済んだものを詰め込んで発送するのが、おばーちゃんの仕事になる。
思えば30年ちかく、そうしてきたわけだ。
そして私も、これからそうするのだろうか。
今は寂しくもなんともないが、そのうち私も、こんな風にムスメに電話するようになるのかな。
いつもより、ちょっとだけ優しい娘になって、おばーちゃんの話に、相槌を打つ。


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せんぱい話。
その昔、就職協定というものがあった。
会社訪問や採用選考、内定日に制限があり、その解禁日の1つが8月20日。
ウブだった学生時代に念じすぎたためか、いまだにこの日付を見ると緊張感が蘇る。
あの頃はリクルートスーツも決まったものが無く、今ほど黒一色ではなかった。
暑い盛り、キチンとしてかつ涼しい格好がよかろう、と、ワンピースなんか着てオフィス街をウロウロしたのだから、ノンキな時代である。
その日は、有名企業にお勤めのセンパイを訪問する日。
先輩といっても、学部が同じだけの見ず知らず。志望する会社にお勤めの人に個別に連絡を取り、人事につないでもらうというのが、当時の就活の常套手段だった。
下宿のピンク電話から、大学の名簿を見て、ドキドキしながらご自宅に電話をかけ、なんとかアポイントメントを取り付けたのである。
指定された高級ホテルのロビーで柱にもたれていると、
えーと、ぢょん子さん?
優しい声で呼びかけられた。
銀縁の眼鏡で、紺のスーツをスッキリと着こなした、細身の若い男性。センパイだ。
あわてて会釈をしながら
き、今日はお忙しいのに お時間をいただいてありがとうございます!
使い慣れない敬語を精一杯使ってご挨拶すると、センパイはけむったそうに顔の前で手を振り
そんなにしゃっちょこばらなくてもいいですよ 気楽に…
そう言いつつ、ホテルの喫茶室にいざなわれた。

はじめて会う男性とお話しするのだ。気楽にと言われても、そうリラックスできるものではない。
促されて飲み物を注文したものの、ストローをくわえるのもためらわれて、結露したグラスの中では氷が溶けていく。
センパイは優しかった。
会社の業務について、社風について、福利厚生について。ひととおりの紹介に続いて
ぢょん子さんは専攻は?
サークルでは何を?
モタモタと答える私を急かすこともなく、軽くうなずきながら、いかにも興味がある表情。
天井が高く、ひんやりと冷房された喫茶室。一張羅のワンピースで、豪華なソファに埋まるように座って、まるでお姫様になったようだ。
やがて約束の時間がきて、センパイは伝票をさっと取り、お支払いをしてくださる。
ぎこちないお辞儀をしてオフィス街を右左に分かれた後も、フワフワと夢の中だった。
あれが就職活動だったなんて、今思えばおかしくって、笑えてくる。
センパイの会社とは、ご縁が無かった。あれ以来、お会いする機会もない。

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会社訪問や採用選考、内定日に制限があり、その解禁日の1つが8月20日。
ウブだった学生時代に念じすぎたためか、いまだにこの日付を見ると緊張感が蘇る。
あの頃はリクルートスーツも決まったものが無く、今ほど黒一色ではなかった。
暑い盛り、キチンとしてかつ涼しい格好がよかろう、と、ワンピースなんか着てオフィス街をウロウロしたのだから、ノンキな時代である。
その日は、有名企業にお勤めのセンパイを訪問する日。
先輩といっても、学部が同じだけの見ず知らず。志望する会社にお勤めの人に個別に連絡を取り、人事につないでもらうというのが、当時の就活の常套手段だった。
下宿のピンク電話から、大学の名簿を見て、ドキドキしながらご自宅に電話をかけ、なんとかアポイントメントを取り付けたのである。
指定された高級ホテルのロビーで柱にもたれていると、
えーと、ぢょん子さん?
優しい声で呼びかけられた。
銀縁の眼鏡で、紺のスーツをスッキリと着こなした、細身の若い男性。センパイだ。
あわてて会釈をしながら
き、今日はお忙しいのに お時間をいただいてありがとうございます!
使い慣れない敬語を精一杯使ってご挨拶すると、センパイはけむったそうに顔の前で手を振り
そんなにしゃっちょこばらなくてもいいですよ 気楽に…
そう言いつつ、ホテルの喫茶室にいざなわれた。

はじめて会う男性とお話しするのだ。気楽にと言われても、そうリラックスできるものではない。
促されて飲み物を注文したものの、ストローをくわえるのもためらわれて、結露したグラスの中では氷が溶けていく。
センパイは優しかった。
会社の業務について、社風について、福利厚生について。ひととおりの紹介に続いて
ぢょん子さんは専攻は?
サークルでは何を?
モタモタと答える私を急かすこともなく、軽くうなずきながら、いかにも興味がある表情。
天井が高く、ひんやりと冷房された喫茶室。一張羅のワンピースで、豪華なソファに埋まるように座って、まるでお姫様になったようだ。
やがて約束の時間がきて、センパイは伝票をさっと取り、お支払いをしてくださる。
ぎこちないお辞儀をしてオフィス街を右左に分かれた後も、フワフワと夢の中だった。
あれが就職活動だったなんて、今思えばおかしくって、笑えてくる。
センパイの会社とは、ご縁が無かった。あれ以来、お会いする機会もない。

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せっかち話。
ムスメが休暇旅行から帰って来た。
お土産のベトナムコーヒーをさっそく淹れてみようと、お湯を沸かす。
うちでは飲み物や料理に、ポット型の浄水器の水を使っている。

(ブリタマレーラ 浄水ポット 1.4L)
上から注いだ水道の水が濾されて下に溜まるのだが、濾過した水でさっき麦茶を作ったばかり。
コーヒーを淹れるにも、ぜんぜん足りないポットの水をぜんぶヤカンに入れて、まず火にかけた。
振り返って、浄水ポットに水を入れていると
も~ セッカチだなあ!
ムスメが言う。
セッカチ?私が?
それさ~ ポットに水がたまったら ヤカンにつぎたすんでしょ~?
そうだよ
フツーはたまってから入れるよ~ そんなチョッピリの水を いきなり火にかけるなんてさ~
だって 早くかけたほうが 早く沸くでしょ
それがセッカチなんじゃない~
50歳を過ぎる今日まで、トロいと言われたことはあっても、セッカチ呼ばわりは初めてである。
ほら前にもさ~ チヂミの粉をさ~ 作り方見ずに先に袋捨てちゃって ゴミ箱覗きながら作ってたよね~
あー そんなこともあったね。
あとさ~ 回ってる洗濯機とか 煮物の鍋のフタとか よく途中で開けてるし~
だって、中で何やってるか、気になるんだもん。
それにしても、セッカチ?それがセッカチ?
ぜんぜん、ピンと来ない。
根を詰める細かい作業も平気だし、幼い頃は降る雨粒を眺めて飽きなかった私。
セッカチなんて言葉とは無縁のつもりが、そう思われていたとはいささか心外である。
ポタポタと、一滴ずつ、ゆっくり落ちたベトナムコーヒーは、濃くて苦くて、おいしかった。


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お土産のベトナムコーヒーをさっそく淹れてみようと、お湯を沸かす。
うちでは飲み物や料理に、ポット型の浄水器の水を使っている。

(ブリタマレーラ 浄水ポット 1.4L)
上から注いだ水道の水が濾されて下に溜まるのだが、濾過した水でさっき麦茶を作ったばかり。
コーヒーを淹れるにも、ぜんぜん足りないポットの水をぜんぶヤカンに入れて、まず火にかけた。
振り返って、浄水ポットに水を入れていると
も~ セッカチだなあ!
ムスメが言う。
セッカチ?私が?
それさ~ ポットに水がたまったら ヤカンにつぎたすんでしょ~?
そうだよ
フツーはたまってから入れるよ~ そんなチョッピリの水を いきなり火にかけるなんてさ~
だって 早くかけたほうが 早く沸くでしょ
それがセッカチなんじゃない~
50歳を過ぎる今日まで、トロいと言われたことはあっても、セッカチ呼ばわりは初めてである。
ほら前にもさ~ チヂミの粉をさ~ 作り方見ずに先に袋捨てちゃって ゴミ箱覗きながら作ってたよね~
あー そんなこともあったね。
あとさ~ 回ってる洗濯機とか 煮物の鍋のフタとか よく途中で開けてるし~
だって、中で何やってるか、気になるんだもん。
それにしても、セッカチ?それがセッカチ?
ぜんぜん、ピンと来ない。
根を詰める細かい作業も平気だし、幼い頃は降る雨粒を眺めて飽きなかった私。
セッカチなんて言葉とは無縁のつもりが、そう思われていたとはいささか心外である。
ポタポタと、一滴ずつ、ゆっくり落ちたベトナムコーヒーは、濃くて苦くて、おいしかった。


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やざわの話。
盛夏の1か月は新規プロジェクトには取り組まず、最低限の行動でやり過ごす。
暑い時に何かしてもロクなことは無い、という、経験からの習慣である。
納戸と呼ばれるアトリエ(→ あとりえ話。)を片付ける、というささやかな計画さえ放棄され、今に至る。
ところが、昨日今日と信じられないほど涼しい。
すると、ぐでぐでしていたのがウソのように何かしたくなるのだから、人体とは現金なものだ。
しかしまあ、イキナリそう立派なことは思いつくものではない。とりあえず、録画したっきり見ていないテレビでも見よう。

(「激レアさんを連れてきた。」月曜夜11時15分より ※一部地域を除く ←ウチはその一部地域)
極端な経験をした人が次々に出てくる、楽しい番組。
まず見たのは、闘病中バックギャモン世界一になった女性の回である。
勝負事に弱い私には想像もつかない経験だが、この女性が自分に課しているYAZAWAルール(ヤザワさんという人なのだ)というのが頭に残った。
それは「1年間で10個挑戦すべし」というもの。
私は良く言えば柔軟、悪く言えばエーカゲンな性格で、人生においてこういう目標というか、決め事をしたことがない。
50代のここらで、いっちょやってみっか。
小学校の「なつやすみのめあて」すら守れたことのない私。
だが、よしんば10は出来なかったとしても、やろうとすること自体は悪いことではない。
複数の選択肢がある時、未経験のほうを選んでみる、という行為は、もしかしたら人生を動かす、かもしれない。
少し遅めの夏休みの目標ができて、楽しくなってきた。

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暑い時に何かしてもロクなことは無い、という、経験からの習慣である。
納戸と呼ばれるアトリエ(→ あとりえ話。)を片付ける、というささやかな計画さえ放棄され、今に至る。
ところが、昨日今日と信じられないほど涼しい。
すると、ぐでぐでしていたのがウソのように何かしたくなるのだから、人体とは現金なものだ。
しかしまあ、イキナリそう立派なことは思いつくものではない。とりあえず、録画したっきり見ていないテレビでも見よう。

(「激レアさんを連れてきた。」月曜夜11時15分より ※一部地域を除く ←ウチはその一部地域)
極端な経験をした人が次々に出てくる、楽しい番組。
まず見たのは、闘病中バックギャモン世界一になった女性の回である。
勝負事に弱い私には想像もつかない経験だが、この女性が自分に課しているYAZAWAルール(ヤザワさんという人なのだ)というのが頭に残った。
それは「1年間で10個挑戦すべし」というもの。
私は良く言えば柔軟、悪く言えばエーカゲンな性格で、人生においてこういう目標というか、決め事をしたことがない。
50代のここらで、いっちょやってみっか。
小学校の「なつやすみのめあて」すら守れたことのない私。
だが、よしんば10は出来なかったとしても、やろうとすること自体は悪いことではない。
複数の選択肢がある時、未経験のほうを選んでみる、という行為は、もしかしたら人生を動かす、かもしれない。
少し遅めの夏休みの目標ができて、楽しくなってきた。

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なまえの話。
ゴミ出しで、隣の棟のオカモトさんと会った。
いつものように会釈して、右と左に別れかけたが、つい
あっ!そうだ… あの…
と声が出た。
オカモトさんは足を止め、何か?という表情でこちらに向き直る。
オカモトさんの息子さんと、うちのムスコは同い年で、小学校の時はよく遊んだ。
笑うと目が細くなる、やさしい子だったが、デキのいいオカモト君は、中学受験をして私学に進んだので、いつしか疎遠となってしまった。
昨日夕飯を食べながら、ムスコがふいに
オカ どうしてるのかなあ…
と言ったのだ。
それを伝えたかったのだが、さあ、オカモト君の下の名前が分からない。
お母さんだってオカモトさんなのだから、オカモト君、ではおかしいし、あだ名の「オカ」では、もっとおかしい。
あの…と言いかけたまま、続きが出ずに固まってしまった。
オカモトさんはしばらく待っていたが、何かを察したのだろう
ムスコ君はお元気?うちのケンゴは明日、東京に帰るって…
と、先に話しかけてくれた。
オカモト君にソックリな、やさしい笑顔。
ホッとして、男の子がいると部屋が狭いわよね、だの、ゴハンの準備が大変ね、だのと、帰省あるあるを話して、別れた。
ムスコも今日、大学のある街に帰る。


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いつものように会釈して、右と左に別れかけたが、つい
あっ!そうだ… あの…
と声が出た。
オカモトさんは足を止め、何か?という表情でこちらに向き直る。
オカモトさんの息子さんと、うちのムスコは同い年で、小学校の時はよく遊んだ。
笑うと目が細くなる、やさしい子だったが、デキのいいオカモト君は、中学受験をして私学に進んだので、いつしか疎遠となってしまった。
昨日夕飯を食べながら、ムスコがふいに
オカ どうしてるのかなあ…
と言ったのだ。
それを伝えたかったのだが、さあ、オカモト君の下の名前が分からない。
お母さんだってオカモトさんなのだから、オカモト君、ではおかしいし、あだ名の「オカ」では、もっとおかしい。
あの…と言いかけたまま、続きが出ずに固まってしまった。
オカモトさんはしばらく待っていたが、何かを察したのだろう
ムスコ君はお元気?うちのケンゴは明日、東京に帰るって…
と、先に話しかけてくれた。
オカモト君にソックリな、やさしい笑顔。
ホッとして、男の子がいると部屋が狭いわよね、だの、ゴハンの準備が大変ね、だのと、帰省あるあるを話して、別れた。
ムスコも今日、大学のある街に帰る。


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おっけー話。
お盆に集まるといっても、お坊様はハヤテのように去ってしまった(→ げっこう話。)し、万事いいかげんなわが家では何をするでもない。
仏様が何人もいる立派なお仏壇のある知人宅では、人数だけお膳をこしらえて供えるらしい。
しかも1日目は何々、2日目は何々と、決まった献立通りにしないといけないというから、考えただけでメマイがする。
食の細い母は毎日ご飯は炊かないので、何日もお供えを忘れ
しまったー 忘れた まーいいや
などということもしばしばである。この、まーいーや、の後には
おとーさん怒んないし
という、言い訳が続く。
確かに亡き父はそんな風だった。お仏飯が炊き立てだろうが、乾いてカリカリだろうが、怒らず、かといって笑いもせず、黙ーっているだろう。
テレビを見ていたらこんなCM があった。

うちの父はぜんぜんおっけー、が口癖のこのお父さんのようにハゲてはいないし、母は酒井和歌子みたいにホッソリしてはいない。
しかし、父の没後、持ち物を処分する時も、お仏壇やお墓を決める時も、母は
だいじょうぶ おとーさん怒んないし
と言い、イモートも私も異論なく従った。
父は物を言わない人だったし、流行りのエンディングノートなどつける気もなかっただろう。
それでも、どんなときも、父ならこうするだろう、と、共通の想像ができることはありがたい。
ぜんぜんおっけー、のお父さんも、きっと良い人なんだと思う。
それに、仏壇のお水を換え忘れ
まーいーや おとーさん怒んないし
と言っている時、母はなんだか幸せそうなのだ。
そして今年もお盆が終わる。

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仏様が何人もいる立派なお仏壇のある知人宅では、人数だけお膳をこしらえて供えるらしい。
しかも1日目は何々、2日目は何々と、決まった献立通りにしないといけないというから、考えただけでメマイがする。
食の細い母は毎日ご飯は炊かないので、何日もお供えを忘れ
しまったー 忘れた まーいいや
などということもしばしばである。この、まーいーや、の後には
おとーさん怒んないし
という、言い訳が続く。
確かに亡き父はそんな風だった。お仏飯が炊き立てだろうが、乾いてカリカリだろうが、怒らず、かといって笑いもせず、黙ーっているだろう。
テレビを見ていたらこんなCM があった。

うちの父はぜんぜんおっけー、が口癖のこのお父さんのようにハゲてはいないし、母は酒井和歌子みたいにホッソリしてはいない。
しかし、父の没後、持ち物を処分する時も、お仏壇やお墓を決める時も、母は
だいじょうぶ おとーさん怒んないし
と言い、イモートも私も異論なく従った。
父は物を言わない人だったし、流行りのエンディングノートなどつける気もなかっただろう。
それでも、どんなときも、父ならこうするだろう、と、共通の想像ができることはありがたい。
ぜんぜんおっけー、のお父さんも、きっと良い人なんだと思う。
それに、仏壇のお水を換え忘れ
まーいーや おとーさん怒んないし
と言っている時、母はなんだか幸せそうなのだ。
そして今年もお盆が終わる。

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つくつく話。
ムスコともども、イモート一家が帰省中の実家に帰る。
バスを降りて周囲を見回すと
変わらんなー…
頻繁に来る私と違い、ムスコは久しぶりである。
灼けたアスファルトの歩道、むせかえる夏の熱気の中でいつもの角を曲がって、家が見えた時。
なぜか周囲が不思議に静かになり
…ツクツクウォー ツクツクウォー ツクツクウィーオー ツクツクウィーオー…
秋のシッポがさっと頬を撫で、一陣の風が過ぎて行く。
アレ?ツクツクホウシ?
つい口に出した途端、あ、間違えた、というように、ピタリととまる。
転瞬、ワンワンと降るようにクマゼミが鳴きだし、さっきまでの熱気が戻った。
今のは何だったんだろう?
思わず無言でムスコと顔を見合わせる。
亡き父が、暑さに疲れた子に孫に、秋の気配を見せてくれたような。
そんな、お盆の中日。


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バスを降りて周囲を見回すと
変わらんなー…
頻繁に来る私と違い、ムスコは久しぶりである。
灼けたアスファルトの歩道、むせかえる夏の熱気の中でいつもの角を曲がって、家が見えた時。
なぜか周囲が不思議に静かになり
…ツクツクウォー ツクツクウォー ツクツクウィーオー ツクツクウィーオー…
秋のシッポがさっと頬を撫で、一陣の風が過ぎて行く。
アレ?ツクツクホウシ?
つい口に出した途端、あ、間違えた、というように、ピタリととまる。
転瞬、ワンワンと降るようにクマゼミが鳴きだし、さっきまでの熱気が戻った。
今のは何だったんだろう?
思わず無言でムスコと顔を見合わせる。
亡き父が、暑さに疲れた子に孫に、秋の気配を見せてくれたような。
そんな、お盆の中日。


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Tしゃつ話。
ムスコが帰省して3日目、早くも夕飯が種切れとなり、回転寿司に行く。
久しぶりの生ビールが美味しく、量を過ごした。
昔から私は酔っぱらうと気前がよくなる。
靴とか服とか なんか要るもんないの?何でも買っちゃるよ
うーん… Tシャツ?
何でも、と言ったからと、高価なものを要求しないあたり、親孝行である。
ヨシヨシ、と、ショッピングモールの衣料品店に行くが、ムスコは浮かない顔。
あんまり… 好きなのが無い…
どういうのがいいの?
シャケ… みたいな…

(ムスコが帰って来た日に着ていたシャツ)
どこで買うんだ、こんなの。
仕方なく買い物はあきらめた帰り道、そういえばムスメがもうせん、ヘンテコなTシャツを置いてったのを思い出す。
おかーさん着てていいよ、と言ったから、ムスコに着せてもいいだろう。
こんなのどう?レディースだけどサイズは大丈夫でしょ
広げて見せてみた。

(仔猫がビームを出して海水浴客を襲うの図)
ムスコは一瞥
ぜ…ったい着ねえ!
そうだろうな。
それにしても、うちの子供らは、揃いも揃ってどこでTシャツを買っているのだろうか。

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久しぶりの生ビールが美味しく、量を過ごした。
昔から私は酔っぱらうと気前がよくなる。
靴とか服とか なんか要るもんないの?何でも買っちゃるよ
うーん… Tシャツ?
何でも、と言ったからと、高価なものを要求しないあたり、親孝行である。
ヨシヨシ、と、ショッピングモールの衣料品店に行くが、ムスコは浮かない顔。
あんまり… 好きなのが無い…
どういうのがいいの?
シャケ… みたいな…

(ムスコが帰って来た日に着ていたシャツ)
どこで買うんだ、こんなの。
仕方なく買い物はあきらめた帰り道、そういえばムスメがもうせん、ヘンテコなTシャツを置いてったのを思い出す。
おかーさん着てていいよ、と言ったから、ムスコに着せてもいいだろう。
こんなのどう?レディースだけどサイズは大丈夫でしょ
広げて見せてみた。

(仔猫がビームを出して海水浴客を襲うの図)
ムスコは一瞥
ぜ…ったい着ねえ!
そうだろうな。
それにしても、うちの子供らは、揃いも揃ってどこでTシャツを買っているのだろうか。

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オススメ本。
お盆でムスコが帰省してきた。
正月に大学に戻った時と比べても、とくに太りも、痩せもせず、元気そうである。
ムスコのほうも、代わり映えのせぬ母親をマジマジと眺め
うーん… ちょっと痩せた?
いんや 1グラムも痩せてない
そっか… 気のせいか…
お互い体型のみをチェックする親子である。
大学生のムスコなど、家にいて何をするでもない。
夜更かしに朝寝坊、お腹が減ればハラヘッタ、満腹になったら床に長くノビている。
大きめの猫が1匹いるようなものだ。
テレビを見ていたら、新作アニメ映画の紹介をしていたので
これの原作ってどうなの?
と聞いてみた。
SFが好きなムスコなら読んでいそうだと思ったからだが
あー… 面白いよ モリミでいちばんじゃない?ヘンな京大生の男も出てこないし…
やっぱり読んでいた。
私は書評を読まないし、人のお勧めも信用しないが、いつの頃からか、ムスコの意見は聞くようになった。
身近にいていちばん読むのがムスコだからだ。
ムスコが面白い、という本は、面白かったり、そうでもなかったりするが、こういうのが面白いのか、とわかるのも楽しい。
それは一種の親の覗き趣味であって、子供の日記を盗み読みするのに似ているかもしれない。
合法的なのにどこか後ろめたい気持ちで、今日もムスコの勧めた本を買いに行く。

(ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦著 角川文庫)

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正月に大学に戻った時と比べても、とくに太りも、痩せもせず、元気そうである。
ムスコのほうも、代わり映えのせぬ母親をマジマジと眺め
うーん… ちょっと痩せた?
いんや 1グラムも痩せてない
そっか… 気のせいか…
お互い体型のみをチェックする親子である。
大学生のムスコなど、家にいて何をするでもない。
夜更かしに朝寝坊、お腹が減ればハラヘッタ、満腹になったら床に長くノビている。
大きめの猫が1匹いるようなものだ。
テレビを見ていたら、新作アニメ映画の紹介をしていたので
これの原作ってどうなの?
と聞いてみた。
SFが好きなムスコなら読んでいそうだと思ったからだが
あー… 面白いよ モリミでいちばんじゃない?ヘンな京大生の男も出てこないし…
やっぱり読んでいた。
私は書評を読まないし、人のお勧めも信用しないが、いつの頃からか、ムスコの意見は聞くようになった。
身近にいていちばん読むのがムスコだからだ。
ムスコが面白い、という本は、面白かったり、そうでもなかったりするが、こういうのが面白いのか、とわかるのも楽しい。
それは一種の親の覗き趣味であって、子供の日記を盗み読みするのに似ているかもしれない。
合法的なのにどこか後ろめたい気持ちで、今日もムスコの勧めた本を買いに行く。

(ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦著 角川文庫)

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あべっく話。
昨日の記事(→ やまいく話。)を書いていて、私って意外にオテンバだったな、と思った。
自分ではインドア派の文学少女のつもりが、それなりに暴れていたらしい。
電話をかけて来たおばーちゃんにそう言うと
そりゃそうよ アタシと違って アンタは田舎育ちだもん
と、ちょっと得意げに言われた。
母方は商売をしており、おばーちゃんは中学まで、目抜き通りにある店の2階に住んでいたので、文句なしの街っ子である。
子供時代の遊び友達はいたものの
ショーウインドー見て歩いたり 図書館に行ったり 花っていえば公園のバラだったワ
わー オシャレ!
アタシは身体も弱かったし アンタと違っておとなしかったからネ
あー、そうかい。
そんなことを話すうちに、だんだん昔のことを思い出したおばーちゃん。
そうそう公園といえばさ 昔もアベックって結構いたのよ
へえ~ そうなの?
今みたいに大っぴらにデートできるとこ あんまりなかったんじゃない?手をつないで…
フフフ…かわいいね
その、手をつないだアベックの後ろから…
へ?
走ってって 2人のあいだ、手の下をくぐって通り抜けて…
は?
ほらアタシ、小柄だったからさ みんなビックリして面白かったあ!
悪っりぃガキだな!
しかも、みんなってことは、1度や2度じゃないね?
ハハハ…そうかもね
おばーちゃんは、愉快そうに笑った。


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自分ではインドア派の文学少女のつもりが、それなりに暴れていたらしい。
電話をかけて来たおばーちゃんにそう言うと
そりゃそうよ アタシと違って アンタは田舎育ちだもん
と、ちょっと得意げに言われた。
母方は商売をしており、おばーちゃんは中学まで、目抜き通りにある店の2階に住んでいたので、文句なしの街っ子である。
子供時代の遊び友達はいたものの
ショーウインドー見て歩いたり 図書館に行ったり 花っていえば公園のバラだったワ
わー オシャレ!
アタシは身体も弱かったし アンタと違っておとなしかったからネ
あー、そうかい。
そんなことを話すうちに、だんだん昔のことを思い出したおばーちゃん。
そうそう公園といえばさ 昔もアベックって結構いたのよ
へえ~ そうなの?
今みたいに大っぴらにデートできるとこ あんまりなかったんじゃない?手をつないで…
フフフ…かわいいね
その、手をつないだアベックの後ろから…
へ?
走ってって 2人のあいだ、手の下をくぐって通り抜けて…
は?
ほらアタシ、小柄だったからさ みんなビックリして面白かったあ!
悪っりぃガキだな!
しかも、みんなってことは、1度や2度じゃないね?
ハハハ…そうかもね
おばーちゃんは、愉快そうに笑った。


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