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やまいく話。

子供のころ住んだ町は、県境の山際にある。

標高600mほどのなだらかな山は、鍛錬遠足の行先になることもあり、いつも視界の中にある、身近な存在だった。

ときどき、遊び仲間の誰からともなく

明日、に行かない?

という提案が持ち上がり、そうしよう、そうしようと、あっという間に話がまとまる。

キッカケは、季節の花の便りであったり、珍しい虫が獲れたというウワサだったり。

翌日、約束の場所には、思い思いの装備を凝らした子供が集まった。

虫取り網にデカい虫かごで、虫という虫を捕るつもりの者あり、水筒にオヤツと、食べ物重視の者あり、かと思えばまるで手ブラの者もあり。

山での目的はそれぞれでも、みな意気揚々と列を作って、住宅地を越えて行くのである。

先はクローバーの花畑に入り込み、首が重くなるほど長い、花輪を作った。

は網に継ぎ竿をして、高い枝からセミをとった。

は木立に入り込み、落ち葉の山に繰り返しダイブした。

は朽ちた切株を蹴飛ばして、木の皮の下に宝石のようなタマムシを探した。

畑にしろ林にしろ、大胆に私有地に侵入していたわけだが、誰にも、一度も叱られたことは無い。

思えば大人が子供に寛大な時代であった。あんな山遊び、きっと今は無理だろうな。

本日、山の日。

やーまん
(オマエ誰やねんと言いたくなるキャラクター)



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/08/11 11:30

くわれた話。

夕方、洗濯物を取り込みにベランダに出る。

例年ならスネを刺されるのを気にしながらの作業だが、とんでもなく暑いと、蚊も出ないそうだ。

文章だから「蚊に刺される」と書くが、話し言葉では「蚊に噛まれる」という。

どうやら関西の方言らしい。

蚊の口の形状も重々分かってはいるが、「噛まれる」と言い言いして育ったものは直らない。

大学時代、所属サークルの夏合宿

合宿といっても、運動部じゃないから、何をするでもない、ただの遊びである。

海に行って、泳いで、夜は花火とバーベキュー。バブル以前の大学生活はノンキなものだった。

花火を手に、キャーキャー騒いでいたら、隣にいた男の子が

あ、蚊に食われた

なにげなくTシャツの袖をまくった。

ずきゅーん
(画像は筆者の大学時代ではなく、イメージです)

噛まれた、じゃない。食われた、って言うんだ。

なんか、男っぽいな。

彼の腕の、袖の位置に、日焼けの境界線。

そんなことで誰かを好きになる、若い女なんて本当にバカである。

とてつもなくバカだったあの夏は、しかし、いちばん美しい季節だった、かもしれない。



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むかしむかし | コメント(14) | トラックバック(0) | 2018/08/10 11:30

ずるいの話。

法事の後は和食屋で会食。

気取ったお品書きを読んでいたら、イモートがバッグから見慣れないメガネを出してきた。

イモートは近眼で、ふだんはコンタクトである。

私は何も聞かないが、ナニソレという表情をしていたのだろう。顔を思い切りしかめて、

ローガンよ 老眼鏡

と、答えてよこした。

おねーちゃん まだ平気? 手元見えてるの?

ウン 夕方とか ちょっと見にくいな、と思うことはあるけど 不自由するほどでは…

ズルーい!アタシより年上なのにぃ!

そりゃまあ姉だからね。

いいトシして、口をとんがらしたイモートの顔を見ていて、なんだか懐かしくなった。

ズルーい!おねーちゃんばっかり!

子供の頃はよくそう言われたものだ。

新しい持ち物であったり、お稽古事であったり、それは2年経てば間違いなく、イモートにも与えられるものなのだが、そんなことは関係ない。

イモートは必ず、口をとんがらしてズルい、と言い、なだめてもなだめてもふくれっ面で、しまいに子鬼のように真っ赤になって泣き出した。

小さいイモートにとって大事なのは、今この時点で「おねーちゃんとおんなじ」であること、だったのだろう。

…おねーちゃんなんか 本ばっかり読んでるくせに 私より近くも遠くも見えるって…

イモートはまだブツブツ言っているが、さすがにもう泣いたりはしない。

私たち姉妹、どちらも50を過ぎた。

ろうがんきょう
(今はリーディンググラスなんていうらしい)



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/08/09 11:30

げっこう話。

今日はお盆でお寺様がいらっしゃる日。帰省中のイモートと、実家で待ち合わせた。

時間はどうなの?

10時から12時の間だって

…と、いうことは…

9時には行っとかなきゃね

大した準備もないのに、なぜ1時間も前に集まるか。それにはちゃんと理由がある。

うちのお寺様は若くて元気、読経の声も立派で、とっても良いかたなのだが、勢い余って約束よりかなり早く来てしまわれる傾向にある。

去年は2時間もフライングしていらしたので、私も子供も間に合わず、法要が終わってしまった。(→ ブッダノ本。

私など、近所だからまだいいが、新幹線に乗ってわざわざ来るイモートが、間に合わないと情けなさすぎる。

そんなわけで、マジメで用心深い一家は、法要開始1時間前に、茶の間に顔をそろえた。

おばーちゃんが淹れたお茶を飲み、時計を見ながら、今か今かと待つ。

9時15分… 30分…

意外と遅いわネ

まあ、まだ9時だから

10時5分… 25分…

あら?もう10時よ?

どうしたんだろう?電話してみようか?

いやいや、10時からって言われてるのに、10時に催促したらおかしいでしょ!

そうなだめつつ、次第に不安になる気持ちを抑えるため、ご不浄に立つ。

おばーちゃんもソワソワするのか、お茶のおかわりを、と、台所に去った。

用を済ませてレバーを押したら、ジャーと流れる水音のむこう、窓の外にパスパス…と、かすかな草履の足音が聞こえた。

慌てて飛び出し廊下を走ったが、時すでに遅し。

♪げーっこーう かーめんーはー いーつでーしょーおー♪

歌いながら台所を出て来たおばーちゃんと、インターフォンを押さずに入って来たお寺様が、玄関で鉢合わせしていた。

暑いですなあ!お母さん、お元気そうで!

アワアワしているおばーちゃんを尻目に、勝手知ったる仏間に入っていかれる。

そして読経がはじまったと思うと終わり、お盆の上のお茶には手をつけず、しかしその隣のお布施は忘れず、お坊様は去っていかれた。

♪はやてのよーにー あらわれてー はやてのよーにー さってゆくー♪

月光仮面というのは、おばーちゃんがつけた、お坊様のあだ名である。





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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/08/08 11:30

きゅうりの話。

今年はキュウリが豊作らしく、ほうぼうからいただく。

まな板に向かって1本目のヘタをすとんと落としながら、そういえば、と思い出した。

昔はこの、切り落としたヘタを切り口に合わせ、クルクルとこすっていたなあ。

しばらくこすっていると切り口に浮いてくる、白い細かい泡のようなもの、それがキュウリのアクなのだ、と教わった。

母の料理を興味津々で覗き込んでいた頃のことだ。

自分で料理するようになっても、しばらくはやっていたが、いつの頃からかしなくなった。

目に見えて味が違う!というほどの効果もなかったのだろう。

私がしないから、ムスメもムスコも、多分こんなことは知らないだろうと思う。

だいたい私は台所に子供を入れるのがイヤだった。

不本意にも主婦をしていた時代、料理は苦痛でしかなかったし、最短距離でサッサと済ませたい時に、子供がウロウロしていると、イライラした。

台所にいる時の私は、おそらく鬼の形相であったろう、子供もほとんど寄ってこなかった。

今流行りの食育なんてとんでもない。

何も教えないのに、ムスメもムスコも、それぞれに、それなりに料理ができる人間になったのは、奇跡みたいなものである。

久しぶりに、キュウリの切り口をクルクルとこすってみた。

昔の記憶通り、白いアクが出てくる。

…ねえ それなあに? なにしてるの?

…これ? アクをとってるの こうすると美味しくなるのよ


火垂るの墓の節子ちゃんみたいな女の子に、そう説明する自分を想像したら、おかしくなった。

この先も、たぶん実現しない夢を振り払って、勢いよくキュウリを刻む。

なすのうしときゅうりのうま



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/08/07 11:30

かもめの話。

しばらく寝込んでいたものだから、集合ポストを見に行かなかった。

近頃は郵便物なんて来ないから、2、3日取りに行かなくても、そんなに溜まることは無い。

つかみ出した宣伝チラシの中から、はらりと青いハガキが1枚、ホールのタイルの床に落ちた。

暑中お見舞い申し上げます

丁寧だがそっけない文面も、宛名も印刷のそれは、ツルタ弁護士事務所からの暑中見舞い。

ツルタ先生には、離婚の時にお世話になった。

若くて気さくで威張らない、いい先生だ。

独立したばかりだという小さな事務所には、お母さんみたいな事務員さんが1人だけ。

他の依頼者とぶつかることもほとんどなく、いつも静かな部屋で、ゆっくりと話をした。

料金とかはどうなってたんだろう?もう覚えていないが、話の先を急がされた記憶もない。うまく言えない時は、黙っていても催促されなかった。

ツルタ先生は根気よく、親切で、用件の合間には、ご家族の話なんかもされた。

そして、離婚が決着してしばらく経ったころ、ツルタ事務所の暑中見舞いが届く。

涼しげなかもめーるのハガキに、まだ痛い傷口をつつかれるような、イヤな気持ちになった。

先生にはお世話になるばかりだったのに、人とは現金なものである。

過ぎた不幸はもう見たくない、そんな気持ちで、ハガキをゴミ箱に捨てた。

以来、ツルタ事務所の暑中見舞いは届き続ける。

今年はツルタ先生のお名前に並んで、新人の先生の名前があった。事務所経営は順調なようだ。

もうハガキも、すぐに捨てたりしない。かもめーるの当選番号が分かるまで、冷蔵庫に貼っておくのだ。

気づけばその後、また先生のお世話になることもなく、10年以上の月日が過ぎていた。

かもめーるが当たったことは、まだ無い。

かもめーる



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/08/06 11:30

てんてき話。

病弱で怖がりだった子供時代、最大の恐怖は注射であった。

今のお医者さんと違い、昔はわりに気軽に注射をしてくれた。

針で刺される… ワタシ、針で刺される

気が遠くなりそうな私をよそに、腕にはスースーと涼しいアルコール綿の感触。

もう逃げられない。

首も折れよとばかり顔を背けて、その場所を見まいとするが、恐怖の瞬間は容赦なく訪れる。

痛い!刺さった!針が刺さった!

後はもう何もわからない。

渡された綿の小片で腕を押さえ、涙目で診察室を出ながら、

まったく大げさねえ アンタは…

毎回、母に言われた。

そんな注射恐怖はいいトシの大人になっても続いている。

今回、夏風邪で受診して、点滴をすることになった。

俎板の鯉となり、ゴムで上腕を縛られ

ちょっとチクッとしますよ~

かけ声にギュッと身を固くする。が、アレ?痛くない?

昔より針もよくなっているのだろう。予期したチクッが無い。

急に気が楽になり、緊張が緩み、意識が薄れた。

昨夜来の寝不足もあって、何と私は、大キライな注射針を刺されたまま、眠ってしまったのだ。

てんてき

目が覚めると点滴は空っぽで、身体は心なしかひんやりとしている。清潔な白い天井を見ながら、ほんとうに気分がよかった。

いいじゃん、点滴!

ここに1人、注射は怖いが点滴が好き、という、ややこしい患者が誕生した。



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もろもろ | コメント(16) | トラックバック(0) | 2018/08/05 11:30

りょうよう話。

数年ぶりの風邪のため、3日に渡り蟄居閉門を余儀なくされたが、どうやら治ったようである。

家でダラダラして暇さえあれば寝ているだけで、たいした治療をしたわけではない。

唯一おこなった積極的な行為といえば、

おばーちゃんを遠ざける

これのみである。

私と母はバスで10分ばかりの近居。ふだん行き来するし、けっして不仲ではない。

LINEで不調を聞きつけた母は、さっそく

食べるものある?様子見に行こうか?

と言ってきたが、あまり来てほしくない。

食べられそうなもの(しかし私は食べたくないもの)を持ってハリキってやってきた母に、周囲をウロウロされる、と考えただけで熱が上がる。

母の心配、善意は分かる。わかるのだが、ほっといてほしいのだ。

大丈夫だから! 後期高齢者にウツしたら 冗談じゃ済まないから!

痛いノドを振り絞ってお見舞いを断った。

子供のころ、今よりはるかに病弱であった私は、ちょっとしたことですぐ熱を出し、寝込んだ。

氷枕を当てる最適な位置を探し、寝返りを打っては具合良い姿勢を探す。

にがい薬、白湯の味、新しいシーツのにおい。

穴の中の仔狐のように、じっと回復を待つ時間は、決して嫌なものではなかった。

痛くても、苦しくても、病気の私は、不思議に満足していたのである。

母は枕元に座っては

どう?まだ頭痛い?

食べたいものある?


と問いながら、脇の下に体温計をはさませ

イタイ…

イラナイ…


答えを聞き、体温計の目盛を見ると、タメイキをつく。

母の意に染まぬ答えをした、罪悪感のようなものがチクリと胸を噛んだ。

心配してくれるのは分かる。

でも、ほっといてほしいとも思う。

静かに身体の不調を聞く時間は、誰にも共有されない、自分だけのもの。

今ひとり、小さなねぐらで丸まっていても、私は決して不幸ではない。

てんてき
(点滴なんて出産以来で、効きめに驚く)



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ごかぞく | コメント(16) | トラックバック(0) | 2018/08/04 11:30

おみまい話。

…暑さが続きますが、絶対にご無理なさらないでくださいね!

メールの結語を読んで、つい笑みが漏れた。

最近知り合ったアヤノさんから、私は病弱な人と思われている。

笑ってはいけない。本当のホントの話だ。

はじめて会った日、たまたま顔が満月のようにハレていた私。(→ あいでぃー話。

げっせかいりょこう
(ロケットは刺さっていないがこんな感じ)

マスクのままで失礼します、と断って、仕事自体はつつがなく終わったものの、ポンポンに腫れた顔面が強烈な印象を残したらしい。

検査を受けても異常はなく、腫れた顔もしぜんにしぼんで事なきを得たのだが、彼女にとって私は、原因不明の奇病にとりつかれた、気の毒な人なのである。

そんなわけで、彼女のメールは必ず、このように私の体調を気遣う言葉で締めくくられる。

…暑さが続きますが、絶対にご無理なさらないでくださいね!

一見普通の文章だが「絶対に」が強い。

…栄養のあるものを召し上がって、夏バテにはくれぐれもご留意ください!

とか

万が一にも熱中症で倒れないように、水分は十分摂りましょう!

どれも一通りの挨拶に、ちょっとだけ過剰な言葉が添えられている。

はじめは戸惑ったが、だんだん、なんとなく楽しくなってきた。

食欲旺盛、夏バテとも無縁の日々を送り、周囲からも象が踏んでも壊れない頑丈なオンナと思われている私。

完全な勘違いでも、こうして気遣ってくれる人がいるのは、嬉しいものだ。

当分、彼女の誤解は解かずにおこう、と思う。



昨日に続き、2017年8月3日の記事が偶然病気の話でしたので、これ幸いと再掲載しました。ちなみに記事中の顔面の腫れは全快しました。



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/08/03 11:30

しもねた話。

高校生のムスコが、部活の合宿で、肝試しをするらしい。

学生のすることなんて、意外に変わってないものだ。

その小道具にコンニャクを持っていくというのだが、私は聞いてなかったので、買ってきてやれなかった。

じゃあオレ買ってくるよ!

と、飛び出して行きそうになったので、つい引き留めた。

こ、コンニャクだけ買うってヘンじゃない?何か他のもんも買えば?

なんで?オレ別に欲しいもんもないし、コンニャクだけでいいよ

こんにゃく

普段から、無駄なもの買うなというのが口癖の私が、珍しいことを言うものだ、とでも思ったか、ムスコは心底不思議そうだ。

だってさ…と説明しようとして、ウッと詰まってしまった。

若い男がコンニャクを買うのは恥ずかしいっていう昔のシモネタは、今の人には通じないの?

肝試しのコンニャクは生き残っているけど、シモネタのコンニャクは絶滅したのかな。



本日体調不良のため、2014年8月2日の記事を再掲載させていただきます。
記事では高校生の息子も、現在は大学生になっておりますので念のため申し添えます。




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ごかぞく | コメント(26) | トラックバック(0) | 2018/08/02 11:30
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