ええこえ話。
あんまり高くなくて、店主も威張ってないけど、まあまあ美味しい焼肉屋がある。
見たところぜんぜんパッとしない店だが、週末は混んでいる。
なんとか席を確保して、とりあえずカンパイ、皆が一息ついた時にそれは聞こえた。
…そういうモンダイもあるよね たしかに…
混雑でざわつく店内、けっして大声ではないのに、はっきりと聞きとれる声。
…だからさ やっぱりコジンコジンの…
誰が誰とも区別のつかない喧騒の上を、その声だけがなめらかに滑ってくる。
思わず同席の皆で顔を見合わせ
これは…やっぱり…タダモノではない…
とくにヤジウマ精神の強い1人が席を立った。ゆっくりと周囲を見回しながら手洗いに向かう。
隅の卓にハッと目を止めると、そそくさと個室に入り、あっという間に戻ってきた。
ダレソレ… テレビナントカの…
小声で教えてくれた名前は、関西ローカル局のアナウンサー。
思い浮かべた姿は、オーラもカリスマ性もない、ただの中年のオッサンである。
やっぱりエエ声やねえ!
あんなパッとせんオッサンがねえ…
プロっちゅうのは エラいもんやねえ…
しばらくは感心しきりだったが、やがて注文した肉が運ばれてくると
…それじゃいけないブブンもあるんだよな…
マジメに業務を話し合うらしい、エエ声は続いたが、肉に夢中の御一行様は、もはや聞いていないのであった。

(「以上、関西のニュースでした」)

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見たところぜんぜんパッとしない店だが、週末は混んでいる。
なんとか席を確保して、とりあえずカンパイ、皆が一息ついた時にそれは聞こえた。
…そういうモンダイもあるよね たしかに…
混雑でざわつく店内、けっして大声ではないのに、はっきりと聞きとれる声。
…だからさ やっぱりコジンコジンの…
誰が誰とも区別のつかない喧騒の上を、その声だけがなめらかに滑ってくる。
思わず同席の皆で顔を見合わせ
これは…やっぱり…タダモノではない…
とくにヤジウマ精神の強い1人が席を立った。ゆっくりと周囲を見回しながら手洗いに向かう。
隅の卓にハッと目を止めると、そそくさと個室に入り、あっという間に戻ってきた。
ダレソレ… テレビナントカの…
小声で教えてくれた名前は、関西ローカル局のアナウンサー。
思い浮かべた姿は、オーラもカリスマ性もない、ただの中年のオッサンである。
やっぱりエエ声やねえ!
あんなパッとせんオッサンがねえ…
プロっちゅうのは エラいもんやねえ…
しばらくは感心しきりだったが、やがて注文した肉が運ばれてくると
…それじゃいけないブブンもあるんだよな…
マジメに業務を話し合うらしい、エエ声は続いたが、肉に夢中の御一行様は、もはや聞いていないのであった。

(「以上、関西のニュースでした」)

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あげあし話。
生来の揚げ足取り体質である、と、自分でも思う。
それにしても、世の中はスキだらけだ。

「ドサッと」という名前のチラシが

ドサッと入っている。

フルーツでもナッツでもないものが、コソッと。

いきなり謝られても。

了解、ほりこみます。
本日、オチ無し!

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それにしても、世の中はスキだらけだ。

「ドサッと」という名前のチラシが

ドサッと入っている。

フルーツでもナッツでもないものが、コソッと。

いきなり謝られても。

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かりすま話。
コーノさんとは水泳教室で毎週会う。
初心者コースから上がったばかりの頃、いろいろとアドバイスしてくださった。たとえば
ゴハン食べてくるとキモチ悪くなるし、腹ペコだとヘバッちゃうんですけど…
と相談すると
お家を出る時におまんじゅう1個食べるといいわよ
実践してみると、泳ぐ間は身体が軽く、終わった後ほどよくお腹が減っている。
すばらしいアドバイスだ。
それからというもの、コーノさんは私にとって健康のカリスマなのだ。
今年の春、自転車でプールから帰る途中、駐車場でコーノさんのクルマの前を通った。
運転席のコーノさんは、何か小さなパックの飲料をストローで飲んでいる。
その表情はなぜかひどく真剣で目を引いた。
次の週、そのことを問うと、少し照れた様子で
ああ、アレ、牛乳… 運動したあと 30分以内に牛乳を飲むと筋肉になるんですって

なるほど!
コーノさんのすることなら間違いはあるまいと、私もさっそくそれに倣うことにきめた。
うちはコーノさんちよりプールに近いので、パック入り牛乳を持参するまでもない。
急いで家に帰ると、水着の始末よりさきに、コップ1杯の牛乳をごきゅごきゅ飲む。
春が過ぎて夏になり、秋も終わりかけて、その習慣がすっかり身についてきたこのごろ。
駐車場を通ったら、こちらに気付いた彼女が、運転席から小さく手を振り、発車して行った。
アラ?牛乳は?
翌週、更衣室で会ったので聞いたら
ああ、牛乳… なんとなく… やめちゃった
ええーっ!私、まだやってんスけど。
コーノさんは今、バターコーヒーを飲んでいるらしいが、またマネするか迷っている。

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初心者コースから上がったばかりの頃、いろいろとアドバイスしてくださった。たとえば
ゴハン食べてくるとキモチ悪くなるし、腹ペコだとヘバッちゃうんですけど…
と相談すると
お家を出る時におまんじゅう1個食べるといいわよ
実践してみると、泳ぐ間は身体が軽く、終わった後ほどよくお腹が減っている。
すばらしいアドバイスだ。
それからというもの、コーノさんは私にとって健康のカリスマなのだ。
今年の春、自転車でプールから帰る途中、駐車場でコーノさんのクルマの前を通った。
運転席のコーノさんは、何か小さなパックの飲料をストローで飲んでいる。
その表情はなぜかひどく真剣で目を引いた。
次の週、そのことを問うと、少し照れた様子で
ああ、アレ、牛乳… 運動したあと 30分以内に牛乳を飲むと筋肉になるんですって

なるほど!
コーノさんのすることなら間違いはあるまいと、私もさっそくそれに倣うことにきめた。
うちはコーノさんちよりプールに近いので、パック入り牛乳を持参するまでもない。
急いで家に帰ると、水着の始末よりさきに、コップ1杯の牛乳をごきゅごきゅ飲む。
春が過ぎて夏になり、秋も終わりかけて、その習慣がすっかり身についてきたこのごろ。
駐車場を通ったら、こちらに気付いた彼女が、運転席から小さく手を振り、発車して行った。
アラ?牛乳は?
翌週、更衣室で会ったので聞いたら
ああ、牛乳… なんとなく… やめちゃった
ええーっ!私、まだやってんスけど。
コーノさんは今、バターコーヒーを飲んでいるらしいが、またマネするか迷っている。

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かんじの話。
ふだん利用する私鉄では、運転席のある車両が、真ん中あたりに入っていることがある。
この路線は、途中駅で車両の連結や切り離しをするので、そのせいだろう。
たまたまそういう車両に乗り込むと、運転手のいない運転席をつぶさに見られて、退屈しない。

私はキカイに弱いが、それを割り引いてもなお、この景色には何だかワクワクするものがある。
自動車の運転席に、このワクワクはないように思う。
電車と自動車の運転席の大きな差は、計器の表示である。
自動車では英字と数字だけなのに対して、電車の運転席には日本語がいっぱい。

速度、圧力、予備…漢字が並んで、ブレーキなんて英語も、ここではカタカナだ。
赤いボタンの緊急の文字がドキッとさせる。
なんで自動車の運転席はアルファベットばかりなんだろう。
漢字のほうがずっとカッコいいし、漢字表記にすればいいのに。
そう思うのは、私が運転しないからだろうか。

(すんごいカッコいいと思った「論理装置」)

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この路線は、途中駅で車両の連結や切り離しをするので、そのせいだろう。
たまたまそういう車両に乗り込むと、運転手のいない運転席をつぶさに見られて、退屈しない。

私はキカイに弱いが、それを割り引いてもなお、この景色には何だかワクワクするものがある。
自動車の運転席に、このワクワクはないように思う。
電車と自動車の運転席の大きな差は、計器の表示である。
自動車では英字と数字だけなのに対して、電車の運転席には日本語がいっぱい。

速度、圧力、予備…漢字が並んで、ブレーキなんて英語も、ここではカタカナだ。
赤いボタンの緊急の文字がドキッとさせる。
なんで自動車の運転席はアルファベットばかりなんだろう。
漢字のほうがずっとカッコいいし、漢字表記にすればいいのに。
そう思うのは、私が運転しないからだろうか。

(すんごいカッコいいと思った「論理装置」)

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おりぼん話。
時々うかがうお店。
いつもはおばあさんが如才なく応対してくれるが、たまに店先に誰もいないことがある。
そんな時、すみませーん!と声をかけると、奥から作業中の職人さんが、手をふきふき出てくる。どうやらおばあさんのご主人らしい。
この人が、なぜかとてもかわいいのだ。
福々しい容貌の小柄なおじいさんではあるが、特に愛想がいいわけでもなく、なんでかわいいのか、わからない。
たまにしか見られないレアキャラだからありがたいのだろうか。
首をひねりながら帰るさ、あれこれ考えてみても、仏像のようにありがたいというよりは、やはりかわいい、というほうが適切な気がする。
先日久しぶりに顔を合わせたので、しさいに観察してみたところ、1つ気づいた。
それはおじいさんのかけている作業用のエプロン。
エプロン自体は藍染のそっけないものなのだが、問題はヒモ。
首に回すヒモを、おじいさんは耳の横あたりで、しかも上手なチョウチョ結びに、キュッと結んでいるのだ。
印象としては、首におリボンがちょこんとくっついている感じ。
それが、かわいさの原因だったのである。
気づいた途端、あいかわらず不愛想なおじいさんのハゲ頭をナデナデしたい衝動に駆られたが、我慢した。


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いつもはおばあさんが如才なく応対してくれるが、たまに店先に誰もいないことがある。
そんな時、すみませーん!と声をかけると、奥から作業中の職人さんが、手をふきふき出てくる。どうやらおばあさんのご主人らしい。
この人が、なぜかとてもかわいいのだ。
福々しい容貌の小柄なおじいさんではあるが、特に愛想がいいわけでもなく、なんでかわいいのか、わからない。
たまにしか見られないレアキャラだからありがたいのだろうか。
首をひねりながら帰るさ、あれこれ考えてみても、仏像のようにありがたいというよりは、やはりかわいい、というほうが適切な気がする。
先日久しぶりに顔を合わせたので、しさいに観察してみたところ、1つ気づいた。
それはおじいさんのかけている作業用のエプロン。
エプロン自体は藍染のそっけないものなのだが、問題はヒモ。
首に回すヒモを、おじいさんは耳の横あたりで、しかも上手なチョウチョ結びに、キュッと結んでいるのだ。
印象としては、首におリボンがちょこんとくっついている感じ。
それが、かわいさの原因だったのである。
気づいた途端、あいかわらず不愛想なおじいさんのハゲ頭をナデナデしたい衝動に駆られたが、我慢した。


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まーくの話。
衣更えは、不要な衣類を処分する機会でもある。
決断の早い私にも迷うものはあって、合物のコットンのパーカもその1つ。
春先や秋口の、ちょっと肌寒い時、このパーカをひっかけて、よく外に出る。
洗濯物を干したり、郵便物を取ったり、用事を済ませて部屋に戻る時、ふとわが身を見下ろして
ギャッ!
とっさのことで悲鳴は声にならず、反射的に「それ」を振り落とそうと試みる。
いきなり無言で踊りだしたように見えるだろう。
奇妙なダンスはしかし、3秒ほどで止まり
またダマされた…

腰のあたり、ポケットの際についている、ウミガメらしきこのマーク。
大きさといい、糸の光り具合といい、太陽の下で見ると、カメムシにソックリなのだ。
カメムシ!と飛び上がった後は、動悸が激しく、心臓にもよろしくない。
しかしパーカ自体の着心地はとても良いのである。
この小さなマークを理由に、全体を処分するのもいかがなものか、と、ためらっている。

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決断の早い私にも迷うものはあって、合物のコットンのパーカもその1つ。
春先や秋口の、ちょっと肌寒い時、このパーカをひっかけて、よく外に出る。
洗濯物を干したり、郵便物を取ったり、用事を済ませて部屋に戻る時、ふとわが身を見下ろして
ギャッ!
とっさのことで悲鳴は声にならず、反射的に「それ」を振り落とそうと試みる。
いきなり無言で踊りだしたように見えるだろう。
奇妙なダンスはしかし、3秒ほどで止まり
またダマされた…

腰のあたり、ポケットの際についている、ウミガメらしきこのマーク。
大きさといい、糸の光り具合といい、太陽の下で見ると、カメムシにソックリなのだ。
カメムシ!と飛び上がった後は、動悸が激しく、心臓にもよろしくない。
しかしパーカ自体の着心地はとても良いのである。
この小さなマークを理由に、全体を処分するのもいかがなものか、と、ためらっている。

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あめちゃん話。
大阪のオバチャンの生態として知られた、アメちゃんくばり。
私も50歳になろうというころ、母から
つねにアメを備えるのは タシナミですよ
とばかり、おごそかにお手製の巾着を下げ渡された。(→ たしなみ話。)
しかし、親不孝な私は、アメを持ち歩くこともせず、巾着もどっかに行ってしまった。
だいたいアメなんか食べますか、皆さん。
たまにいただいても、お礼を言ってカバンにしまい、溶けて正体不明の形になったら捨てるだけ。
もったいないけどそんな人も多いんじゃないだろうか。
なにしろ口に入れて溶けるまで、同じ甘い味が続くのがイヤだ。
風邪をひいてノドが痛い時以外、進んでアメをなめたりしないし、自分で買うこともない。
そんな私がアメちゃんデビューを果たしたキッカケは、この春入れていただいた合唱団。
ベテランの先輩に優しく迎えられ、ヨタヨタながら楽しく参加してきた練習、その合間の休憩で、どうぞ、とアメが回ってくるのだ。
はじめのうちは取らずに次に回したり、いただいても食べていなかったが、ちょっと空腹だった時、何の気なしにアメを口に入れたら、これが美味しいのである。
歌って疲れたノドに、ミントやショウガの刺激を含んだ甘みが心地よい。
いったん味をしめると次が待ち遠しく、アレがいい、コレがスッとすると、銘柄も気になる。
ついには自ら買い込むのみならず、他の方に回しだした。
結果として、アメちゃんを配るオバサン、になってしまったわけだが、なにか吹っ切れたような、爽やかな気分でなくもない。

(「よく歌う人に」の惹句が今のお気に入り)

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私も50歳になろうというころ、母から
つねにアメを備えるのは タシナミですよ
とばかり、おごそかにお手製の巾着を下げ渡された。(→ たしなみ話。)
しかし、親不孝な私は、アメを持ち歩くこともせず、巾着もどっかに行ってしまった。
だいたいアメなんか食べますか、皆さん。
たまにいただいても、お礼を言ってカバンにしまい、溶けて正体不明の形になったら捨てるだけ。
もったいないけどそんな人も多いんじゃないだろうか。
なにしろ口に入れて溶けるまで、同じ甘い味が続くのがイヤだ。
風邪をひいてノドが痛い時以外、進んでアメをなめたりしないし、自分で買うこともない。
そんな私がアメちゃんデビューを果たしたキッカケは、この春入れていただいた合唱団。
ベテランの先輩に優しく迎えられ、ヨタヨタながら楽しく参加してきた練習、その合間の休憩で、どうぞ、とアメが回ってくるのだ。
はじめのうちは取らずに次に回したり、いただいても食べていなかったが、ちょっと空腹だった時、何の気なしにアメを口に入れたら、これが美味しいのである。
歌って疲れたノドに、ミントやショウガの刺激を含んだ甘みが心地よい。
いったん味をしめると次が待ち遠しく、アレがいい、コレがスッとすると、銘柄も気になる。
ついには自ら買い込むのみならず、他の方に回しだした。
結果として、アメちゃんを配るオバサン、になってしまったわけだが、なにか吹っ切れたような、爽やかな気分でなくもない。

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あとむの話。
生まれた時からテレビがあった。当然の報いとしてテレビっ子である。
大人になって多少は落ち着いたが、子供の頃は文字通り、テレビにかじりついていた。
テレビがついていれば、他のものは見えないし、音も聞こえない。
あの集中力の半分でも、今あればと思う。
ゴハンよの声も聞こえないほどテレビに熱中していると、ため息交じりの母によく言われた。
まったくアンタは 小っちゃい頃から…
続きは聞かなくても分かっている。
マンガばっかり見て キャーキャー喜んで…
母親って、なぜああも同じことを何度も何度も言うのだろうか。
あーとむちゃ、あーとむちゃって…
「あーとむちゃ」とはむろん、鉄腕アトムである。
テレビアニメ放映の開始と同時に、口も回らない頃からアトムを見ていた私。
言わばテレビとマンガの早期教育である。
ケロヨンの椅子に座らせたのも、テレビを点けたのも、ブツブツ言っている当の母であり、あとになって文句を言うのはおかしい。
テレビやマンガが子供の健全な発育を害するといった論調も、今は昔。
白黒のアトムを見て育ったことは、自慢にしてもいいんじゃないか、と思う。
今日は手塚治虫、生誕90年。

(→手塚治虫オフィシャルサイト)

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大人になって多少は落ち着いたが、子供の頃は文字通り、テレビにかじりついていた。
テレビがついていれば、他のものは見えないし、音も聞こえない。
あの集中力の半分でも、今あればと思う。
ゴハンよの声も聞こえないほどテレビに熱中していると、ため息交じりの母によく言われた。
まったくアンタは 小っちゃい頃から…
続きは聞かなくても分かっている。
マンガばっかり見て キャーキャー喜んで…
母親って、なぜああも同じことを何度も何度も言うのだろうか。
あーとむちゃ、あーとむちゃって…
「あーとむちゃ」とはむろん、鉄腕アトムである。
テレビアニメ放映の開始と同時に、口も回らない頃からアトムを見ていた私。
言わばテレビとマンガの早期教育である。
ケロヨンの椅子に座らせたのも、テレビを点けたのも、ブツブツ言っている当の母であり、あとになって文句を言うのはおかしい。
テレビやマンガが子供の健全な発育を害するといった論調も、今は昔。
白黒のアトムを見て育ったことは、自慢にしてもいいんじゃないか、と思う。
今日は手塚治虫、生誕90年。

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にやりの話。
少女はスマホから顔を上げ、憂鬱な気分で通学の車内を見回した。
制服の少年が、吊革にぶら下がり、参考書に顔を突っ込んでいる。
あーあ アタシもやんなきゃなあ
彼女だって受験生なのである。
入試本番を目の前に、志望校はC判定のまま、ビクとも動かない。
やらなきゃいけないことは山ほどあるけど、ぜんぜんやりたくない。
そして、やりたいことは、今はしちゃいけないことばかりだ。
家では母親、学校では先生に、常に見張られながら、行く手を重苦しい雲にふさがれたみたいに、先の見えない毎日。
こんなの いつまで続くんだろう
知らず知らず、詰襟少年を睨んでいた自分に気付き、慌ててそらした目の先に、女の人がいた。
母親より少し年上の、地味なオバサンだ。
ブスでも美人でもない、パッとしない人。つまんない仕事をしに、会社に行くんだろう。
あんなオバサンになって 何が楽しいのかな
17歳の彼女にとって、それはまったく想像の外だった。
そのとき、窓をながめていたオバサンが、不意にニヤリと笑った。
大人の女の、一種凄みのある笑いに、少女はドキッとする。
なんだか、自分はまだまだ子供だなあ、と思い知らされた気がした。
そして当のオバサンは、少女の思いをよそに

窓に貼られた広告ステッカーを見て、ごま油とタカラヅカの関係について考えていた。

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制服の少年が、吊革にぶら下がり、参考書に顔を突っ込んでいる。
あーあ アタシもやんなきゃなあ
彼女だって受験生なのである。
入試本番を目の前に、志望校はC判定のまま、ビクとも動かない。
やらなきゃいけないことは山ほどあるけど、ぜんぜんやりたくない。
そして、やりたいことは、今はしちゃいけないことばかりだ。
家では母親、学校では先生に、常に見張られながら、行く手を重苦しい雲にふさがれたみたいに、先の見えない毎日。
こんなの いつまで続くんだろう
知らず知らず、詰襟少年を睨んでいた自分に気付き、慌ててそらした目の先に、女の人がいた。
母親より少し年上の、地味なオバサンだ。
ブスでも美人でもない、パッとしない人。つまんない仕事をしに、会社に行くんだろう。
あんなオバサンになって 何が楽しいのかな
17歳の彼女にとって、それはまったく想像の外だった。
そのとき、窓をながめていたオバサンが、不意にニヤリと笑った。
大人の女の、一種凄みのある笑いに、少女はドキッとする。
なんだか、自分はまだまだ子供だなあ、と思い知らされた気がした。
そして当のオバサンは、少女の思いをよそに

窓に貼られた広告ステッカーを見て、ごま油とタカラヅカの関係について考えていた。

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てとての話。
暖かい布団を離れるのが、だんだん億劫になるこのごろ。
目覚めてもすぐに起き上がる気になれず、横になったまま、まず伸びをする。
ヒンヤリした朝の空気の中に伸ばした自分の手を見た。
この手のかたちは亡くなった父譲り。
指先も爪も丸まっちい母の手とは違って、指も、爪も、細く長い。
どこをとってもありふれた容貌の私の、ゆいいつ美しいところが、この手なのだ。
いろんなものが怖かった若い頃、差し出す手の美しさだけが、心の柱だったこともあった。
今は年相応に手も老けてきたけれど、1日の終わりに、クリームをつけながら見る右と左の手は、まだ頼もしくきれいだ、と思う。
晩年の父も、すんなりと長い指の爪を、いい形に整えて切っていた。病にやつれても、白いシーツの上に投げ出した手は、ずっときれいだった。
お父さん、きれいな手をくれて、ありがとう。
かけっこは遅くっても、けっこう丈夫な身体を、ありがとう。
ヘンに几帳面な性格は、時々厄介なこともあるけど、やっぱりありがとう。
今日から11月。
まもなく、指先を冷たくする、冬がやってくる。


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目覚めてもすぐに起き上がる気になれず、横になったまま、まず伸びをする。
ヒンヤリした朝の空気の中に伸ばした自分の手を見た。
この手のかたちは亡くなった父譲り。
指先も爪も丸まっちい母の手とは違って、指も、爪も、細く長い。
どこをとってもありふれた容貌の私の、ゆいいつ美しいところが、この手なのだ。
いろんなものが怖かった若い頃、差し出す手の美しさだけが、心の柱だったこともあった。
今は年相応に手も老けてきたけれど、1日の終わりに、クリームをつけながら見る右と左の手は、まだ頼もしくきれいだ、と思う。
晩年の父も、すんなりと長い指の爪を、いい形に整えて切っていた。病にやつれても、白いシーツの上に投げ出した手は、ずっときれいだった。
お父さん、きれいな手をくれて、ありがとう。
かけっこは遅くっても、けっこう丈夫な身体を、ありがとう。
ヘンに几帳面な性格は、時々厄介なこともあるけど、やっぱりありがとう。
今日から11月。
まもなく、指先を冷たくする、冬がやってくる。


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