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たんとう話。

今日は胃カメラを飲む日。

初めてではない(→ いかめら話。)が、本当に気が重い。

私はノドが敏感なので、楽なはずの経鼻内視鏡でも、先生も驚くほどオエーとなるのである。

イヤイヤ医院の門をくぐり、シブシブ診察券を出すと、いつもの受付嬢は私の名を認め、

ナガシマさーん!

1人の看護師さんを呼んだ。

そうしてくれ、と頼んだ覚えはないのだが、ナガシマさんは私の係らしい。

採血、点滴、胃カメラ、どれも怖くてたまらず、血圧が急上昇したり、貧血を起こしたりする私は、おそらく手のかかる患者なのだろう。

こんな患者が得意な人と、そうでない人がいるのか、気づけば数人いる看護師の1人が、必ず担当してくれるようになっていた。

パタパタ…と軽い足音がして、ナガシマさんが現れた。ビクビクしていることに変わりはないが、彼女の顔を見ると少しホッとする。

何度目かの胃カメラ、いいかげん慣れてもいいはずの説明なのに、まだ緊張している私の背中を、ゆっくりとさすってくれた。

泣きべそ面で見上げると、大丈夫よ、とうなずく彼女の笑顔に、励まされる。

心理的には、幼児とお母さんの関係である。

しかし、ナガシマさんは、50代の私には娘といってもおかしくない、若いお嬢さんなのだ。

恥ずかしいような、嬉しいような気持ち。

高齢になれば、年下の人に守られる、こういう機会が増えるのだろうと思うと、ちょっと複雑だ。

いかめら2
(こんな余裕の応対、絶対無理だと思う。)



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ごきんじょ | コメント(18) | トラックバック(0) | 2019/01/21 11:30

ふれでぃ話。

おばーちゃんに電話をかけたら

とるるる… とるるる…これから映画見るから!ぶつっ 

切られた。

映画を見るんじゃあ仕方ない。

おばーちゃんは、1人で映画に行く人である。見たい映画が近くでやってなければ、近県まで遠征も辞さない。

おじーちゃんが亡くなってからは、帰りを急ぐ必要もなくなり、いっそう腰軽くなった。

一声かけてくれればいいのに、と思うが

アンタまだシニア割引じゃないでしょ 高くつくし、ワルイから…

と、誘ってくれない。

2時間ほどして、折り返し電話がかかってきた。

何見たの?メリーポピンズ?あれは2月からか…

おばーちゃんは、貧乏や乱暴がキライで、華麗なミュージカルや、キレイな映像が好きである。

…あん らぷそでぃー…

へ?

ボヘミアン ラプソディー!

はあ?マジで?!

「ボヘミアン ラプソディ」は、言わずと知れた伝説のロックシンガー、フレディ マーキュリーの生涯を描いた映画。(→ くいーん話。

リアルタイムで聴いた50代60代のほか、クイーンを知らない若い世代にも迫力のライブシーンが受け、大ヒットしている。

しかし、間もなく80のおばーちゃん。クイーンも、フレディも、知らないはずだ。

なんでまた、そんなもん…

感動したあ!久しぶりに泣いちゃった!

ええええ?!

移民の出自をコンプレックスに持ちつつ、カリスマ的歌唱力で70~80年代の音楽界を席巻したフレディ。

名声の中で孤独に苦しみ、45歳でエイズに倒れたミュージシャンのどこが、専業主婦歴50年の老母を共感させたのか。

良かったわよお!オススメよ!

母にそう言われては、見ないわけにいかないから、仕事帰り、最終回の上映に滑り込んだ。

しかし、おばーちゃんが一体全体、どのあたりで泣いちゃったのか、気になって気になって、感動どころではないのだった。

ぼへみあんらぷそでぃ
(私のカラオケの十八番は「大阪ラプソディ」である。)



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ごかぞく | コメント(18) | トラックバック(0) | 2019/01/20 11:30

いちじの話。

今日から大学入試センター試験がはじまる。

世代的につい共通一次と言ってしまうが、調べてみると共通一次試験の実施期間は10年ほどで、センター試験となってからのほうが長い。

私が共通一次を受けたのも、30年以上前のことになってしまった。

18歳の私は、苦手な日本史の勉強が全然進まないまま、試験前日を迎えた。

もはや悪あがきもならず、せめてもと鉛筆をピキンピキンにとがらせていると、母がやってきて

明日は寒いから、ブーツ履いていきなさい 

ええ~、いいよ、普通で…

いくら寒い日とはいえ、当地は気候温暖である。自分ではいつもの通学着で行くつもりだった。

冬の旅行のために買ってもらったキルティングのブーツはオオゲサに思えた。

冷えたらどうするの!頭寒足熱でしょ!

根が素直な私は、言われるとそんな気もして、ブーツを履き、ブーツに合うズボンをはき、それに合うジャンパーを着て、受験会場に出かけた。

到着してみると、他の受験生は、制服にコート、ソックスにローファーがほとんど。

山深い田舎からはるばる出てきたかのような、私の服装は目立った。

センター試験のニュースを見ながら、そんな思い出を話すと、おばーちゃんはなんと

なに言ってるの!足が冷えるからブーツ履いてくって聞かなかったのはアンタよ!

と言うではないか。

頭寒足熱とか、屁理屈言ってさ…

これではまるで逆だ。

わずか30年ほどで、当事者の記憶がこれだけ食い違うのだから、歴史は難しいはずだ。

やっぱり、日本史は苦手である。

わらぐつ
(「センター試験に行ってきま~す」)

本日早朝より外出のため、2016年1月16日の記事を再掲載いたします。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/01/19 11:30

かーてん話。

うちはマンションなので雨戸が無い。

起きたらまずカーテンを開けるのが、朝の習慣である。

寝室、リビング、順々に、部屋がに満たされていく。

冷たい廊下を歩いて、ムスコの部屋に入ると、主なき部屋の冷え冷えした空気に少しひるむ。

ムスコが家にいた頃、この部屋にはほとんど入らなかった。

閉じた扉の中で何をしているのやら、時たま覗き見る混沌からは、推し量るべくもない。

しかしある日、あふれていたガラクタがさばさばと処分され、ムスコは家を出て行った。

今、毎日ここに足を踏み入れ、カーテンを開けているのは、なんだか不思議な感じだ。

たまに帰れば、当たり前のように荷物を置き、ベッドで眠るけれど、クローゼットも抽斗も空っぽのこの部屋は、もはや仮の宿りなのだろう。

昨日となにも変わらない部屋を、それでもひとわたり見回すと、次はムスメの部屋だ。

かすかに私が使わない化粧品の匂いがする。

ムスコよりは頻繁に帰るムスメは、部屋にもしぜん多くのものを残している。

前にぶん投げていったジーンズを、踏まぬようにまたいで窓に近づき、カーテンを開けた。

無秩序に散らかった、若い女らしい彩りが、花のように明るく照らされる。

さあ、だ。

かーてんをあける



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/01/18 11:30

あるあさ話。

朝早くに目が覚めた。

いつもなら、目覚ましの時刻を確かめ、寝返りひとつ打って眠りの世界に逆戻りするところだが、今日は半身を起こして、ハンテンを羽織る。

掃き出し窓をカラカラと開け、ベランダへ。

隣の棟の窓明かりを見れば、まだ暗い中にポチポチと、もう起きているうちがある。

冷えた部屋を暖め、鍋を火にかける人がいる。

あの日も寒い朝だった。

寝床にいる家族のため、灯した火が街を焼いた。

今日の空はただ、静かに明けていく。

見守る目の前で、ぽちっと電気がついて、また1つ、いつもの1日がはじまる。

うー さぶ…

冷えた唇から出た言葉は、白い息となり、天にのぼっていく。

あれから24回目の、1月17日の朝。

117のつどい



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/01/17 11:30

ペンギン本。

ムスメは小さい時、図鑑をじーっと見ている子供であった。

動物や恐竜の絵を、いつまでも眺めて飽きない。

みつゆびなまけもの…

ぱきけふぁろさうるすは そうしょく…


などとつぶやくから、はやくから字は読めているはずだが、童話の類は読みたがらなかった。

ある日、知り合いのオバサマの家を、ムスメを連れてお訪ねする機会があった。

オバサマは子供好きらしく、大歓迎された。

大人が大人の話をするうち、手作りのオヤツにも飽きて、退屈し始めたムスメに気付くと

ムスメちゃん、本は好き?

オバサマは童話がお好きで、読み聞かせのボランティアなどもなさっているのだという。

ムスメはボーッとしたまま、立派な本棚のまえに連れていかれ

どれでも好きなのを読んでね?

ご親切にそう尋ねてくださったオバサマに

ずかんは?

そこに無いものを言う。

動物が好きらしい、と判断したオバサマは1冊を引き抜き、ムスメに手渡した。

ペンギンの描かれた表紙を見て、お話の本と気づいたムスメは、ちょっとガッカリした様子だが、おとなしく読みはじめた。

やがて用件が終わり、帰るよ、と声をかけた時もまだ読んでいたから、面白かったのだろう。

オバサマはにこやかに

面白かった?

うん!おおかもめがかっこよかった!

ムスメもニッコニッコして、答えた。

オバサマは、その答えに面食らったように

アラそうなの… へえ… カモメが…?

と、なんだかハギレが悪い。

お気に入ったならさしあげるわ、と、もらって帰った本を、あとで私も読んでみた。

2羽の子供のペンギンの冒険話。

大カモメは、ペンギンを狙うオソロシイ敵なのである。

襲われるペンギンに感情移入するのが、まあ普通だろう。

しかし、ティラノサウルスが、トリケラトプスをバリバリかじる図を、いつも楽しく見ているムスメである。

カッコいいのは、だんぜん獲物を狙う肉食動物なのだ。

オバサマが当惑なさったのも、無理はない。

ペンギンの本は、長く本棚にあったけれど、今はどこに行ったのか、わからない。

ながいながいぺんぎんのはなし
(「ながいながいペンギンの話」 いぬいとみこ著 理論社刊)



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/01/16 11:30

ことこと話。

火曜日は寝坊していい日。

お布団の中にいると、コトコトと、働く人の気配がする。

ああ、お味噌汁だ…

みそしる

あたたかなお出汁の香りのなか、起き上がると、1人暮らしの台所は寒々と、火の気もない。

寝床で嗅いだのは、お隣のお味噌汁

さいきん寒いので、居間に続きの和室で寝ているのだが、その和室のすぐ横が、お隣の台所なのである。

閉め切ったはずなのに、中古の悲しさ、サッシの建付けが甘くなっているのか、お隣の朝食の匂いが忍び込んでくるのだ。

すっかりお味噌汁の気分で起きても、うちにはその実体は存在しない。

モソモソとコーヒーを淹れ、パンをかじりながら

お味噌汁飲みたいなあ…

などと思うのは、なかなか侘しい。

お隣の奥さんがゴミ袋を触る音で、ゴミの日を思い出したりもするので、いいこともある。

今朝はなぜか、カレーを作る夢を見た。

不思議に思って起きたら、朝からタマネギを炒める匂い。

おかしくて1人、フフフと笑った。



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/01/15 11:30

はたちの話。

せいじんしき

こんなハガキが来たから、お正月に帰省したムスコに、いちおう聞いてはみたのだ。

セージンシキどうする?写真だけでも撮る?

…フン いらねえ…

聞いておいてなんだが、ちょっとホッとした。

若い男の紋付袴なんか、カッコ悪くてキライだからだ。

わが家の伝統(→ しきてん話。)にのっとり、ムスコもまた、成人式だからといって、帰省してくる気はないらしい。

新成人の母でありながら、ただの祝日同様、惰眠をむさぼりつつ、フトンの中で思う。

あの子がハタチかあ

ムスコは、思春期といわれる年頃になっても、暴れるでもなく、クソババアとも言わなかった。

年齢なりに口重に、不機嫌な表情を見せることが増えたくらいだ。

親の抑圧の強いあまり、反抗期のなかった子が、長じて暴発するなどと聞いて、心配になった。

ひとり親として気を張ってきた私は、子供に言いたいことも言わせない親だったかもしれない。

そんな不安に駆られていた、中学校の面談。

担任の先生は眉をひそめ、打ち明け話の調子でおっしゃった。

課題や提出物がとどこおり、成績評価に大きく響くこと。先生に対する態度が悪いこと。

散髪を嫌がるムスコは、前が見えないうっとうしい髪型だったが、その髪の隙間から

にらみつけるんです…

ホトホト参った様子で、渡された成績表もひどいものだったが、私は少しばかり、ホッとした。

なんだ、ここで反抗してくれているのか

学校にしてみれば迷惑な話である。

当然の報いとして、ムスコの学校の成績はずっと振るわなかったが、私はかまわなかった。

学業なんかとは別の何かと、この子は戦っているのかもしれない。

なんとなくそんな気がしたからだ。

そして今日。

主のいない部屋に入ってみると、机にのせておいたハガキは、いつの間にか無くなっていた。

成人式おめでとう、ムスコ。



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ごかぞく | コメント(18) | トラックバック(0) | 2019/01/14 11:30

さいずの話。

スカートをお直しに出そうと思う。

太ったと思われるだろうが、そうではない。

それは昨年末の、合唱団の公演でのこと。

舞台では白ブラウスと黒のロングスカート、と決まっているが、調達はそれぞれに任されている。

コーラスのユニフォーム用、という商品もあるのだが、どれもウエストゴムで、ムダにヒラヒラしていて、アリテーに言ってダサい

こーらすようすかーと

黒ければなんでもいいというので、私はデパートでシンプルなタイトスカートを買った。もちろん試着して、サイズの合うものを買ったのだ。

さて、当日のリハーサル。

見回せば、ヒラヒラスカートはやっぱりダサくって、私は自分の服装センスに自信を持った。

ところが第一声に備えて息を吸ったとたん

ばちん!

何かがはじけた。

驚いたことに、新調のスカートのフックが飛んだのだ。

ご存知かと思うが、歌は腹式呼吸である。

息を入れた瞬間、ウエストのサイズは通常時よりかなり大きくなる、そのことを私は考えなかったのだ。

ダサいウエストゴムのヒラヒラスカートの皆さんは、悠々とイイ声を出している。

ソワソワしたまま、歌どころじゃないリハーサルが終わった。

本番のことは聞かないでいただきたい。

リフォーム店のカウンターにスカートをのせ、

とにかく、出せるだけ出してください!

と頼もう。受付の人には、ずいぶん太ったのね、と思われるかもしれないが、やむをえない。



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/01/13 11:30

みちじゅん話。

仕事が午後からなので、午前中は駅前で用事を済ませたい。やるべきことは

1.銀行で振込

2.図書館に返却

3.住民票をとる


以上の3件である。

各々の場所はほぼ等間隔に位置しているが、距離を考えると1→2→3の順。

しかし、距離だけが考えるべき問題ではない。

2.図書館には、正月休みに読了した5冊を返却するのだが、これがけっこう重く、かさばる。

モゾモゾ大荷物でお金を扱うのは気が進まない。

少々回り道だが2→1→3の順に周ろう。

ところが出発前、火の元を確かめている時、台所の隅の、ふくらんだ手提げに気づいた。

シマッタ!忘れてた!

資源回収に出す、空き缶である。

これがあるんじゃ、話はちがう。資源回収のボックスは3.役場の前なのだ。

空き缶をガラガラ鳴らしながら、振込操作なんかできない。

しかたない、遠回りだが2→3→1だ。

さあ出発だ、電源を切ろうとパソコンに向かうと、メールが来ている。

予約図書取り置きのお知らせ

ながらく順番待ちしていた本が、3冊同時に届いたらしい。

わーい、と喜びかけて、ムムムとなる。

図書館で返すだけでなく、借りることになる。

重たい本を3冊も持って回るのはイヤだ。でも、待ちに待った本は早く借りたい。

どうしようか決めかねて、ぼんやり歩いていたら、いつの間にか1.銀行に着いた。

けっきょく、ずしっと重たく、ガラガラ鳴る荷物を提げて、ATMを使いながら、なんだったんだ、と、思わずつぶやく。

りさいくるまーく



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もろもろ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2019/01/12 11:30
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