ちゃんすの話。
玄関の下駄箱の上に、いつからか1枚の白い封筒がある。
ナンダコレと思いつつ、私が触れなければ万事そのまま、というのが1人暮らしの特徴である。
半月余りが経過しただろうか、さすがになんとかせねばと手に取ったところ、中身は年賀ハガキの余りだった。
郵便局で交換しようと持ち出して、バッグに入れず、ここに置いたものらしい。
そうとわかればグズグズすることは無い、サッサと交換して来よう。
にわかにテキパキモードに切り替わり、郵便局に向かえば、窓口は空いていた。
見たことがあるような、ないような局員さんにハガキを手渡し
年賀ハガキの交換お願いします
言いながらサッサとサイフを出して手数料を準備。半月も放置したのとは、まるで別人である。
ところが局員はハガキを出しかけた手を停めて
あのおー…
モッチャリした口調で言いかける。
なに?
テキパキモードの私の返事は、ちょっとばかりつっけんどんだったかもしれない。
これえ… も1回抽選があるんですけどお… いいですかあ 待たなくて…
は!?
言われた瞬間、思い出した。
今年は改元を記念して、2回目の抽選があるのだ。
このハガキは、つい1か月前郵便局に持参したものの、そう教えられて交換せず、帰宅して、玄関の下駄箱の上に載せたのである。
そういえばその時の窓口も、この局員だった気がする。
郵便局に来たのも、交換しなかった理由も、すっかり忘れていたことに意気消沈し、返されたハガキをバッグにしまって、スゴスゴ窓口を去った。
ダブルチャンス賞の抽選は、郵政記念日の今日、4月20日。

(ダブルチャンス賞はシリアルナンバー入り切手シート1万本)

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ナンダコレと思いつつ、私が触れなければ万事そのまま、というのが1人暮らしの特徴である。
半月余りが経過しただろうか、さすがになんとかせねばと手に取ったところ、中身は年賀ハガキの余りだった。
郵便局で交換しようと持ち出して、バッグに入れず、ここに置いたものらしい。
そうとわかればグズグズすることは無い、サッサと交換して来よう。
にわかにテキパキモードに切り替わり、郵便局に向かえば、窓口は空いていた。
見たことがあるような、ないような局員さんにハガキを手渡し
年賀ハガキの交換お願いします
言いながらサッサとサイフを出して手数料を準備。半月も放置したのとは、まるで別人である。
ところが局員はハガキを出しかけた手を停めて
あのおー…
モッチャリした口調で言いかける。
なに?
テキパキモードの私の返事は、ちょっとばかりつっけんどんだったかもしれない。
これえ… も1回抽選があるんですけどお… いいですかあ 待たなくて…
は!?
言われた瞬間、思い出した。
今年は改元を記念して、2回目の抽選があるのだ。
このハガキは、つい1か月前郵便局に持参したものの、そう教えられて交換せず、帰宅して、玄関の下駄箱の上に載せたのである。
そういえばその時の窓口も、この局員だった気がする。
郵便局に来たのも、交換しなかった理由も、すっかり忘れていたことに意気消沈し、返されたハガキをバッグにしまって、スゴスゴ窓口を去った。
ダブルチャンス賞の抽選は、郵政記念日の今日、4月20日。

(ダブルチャンス賞はシリアルナンバー入り切手シート1万本)

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しじゃくの話。
子供の頃は、テレビで落語を見られた。
ガチャガチャとチャンネルを変えれば、どこかしらの局で、座布団を敷いた男が1人、身振り手振りでおかしい話をしていたものだ。
漫才も新喜劇も面白いけれど、私は断然落語派。
はじめは違和感しかない。
賑やかなお囃子に乗って現れるのは、お正月でさえ見ることは無くなった、着物姿の男。
見台と膝隠しを前にちんまり座って、遠い昔の長屋の住人となって話し出す。
昭和の子供にはおよそ縁のない世界が、目の前で広がったと思えば、あっという間に引き込まれ、気づけばアッハッハと笑っている。
引きずり込まれる感覚が、なんとも言えない。
落語は、私にとって一種のパラレルワールドだった。
なかでも抜群に面白かったのが枝雀である。
型破りのアクションや滑稽な表情ばかりがクローズアップされがちだが、それだけではない。
枝雀の噺は清潔で、ピュアであった。
ものすごくよくできたジオラマに、自分も小さく小さくなって飛び込んだような、現実の雑味がない、完全で美しい世界であった。
噺が終わってそこを去る時、名残惜しい、ずっとこの世界にいたい、そう思える。
枝雀の噺は、枝雀という人が作った理想郷なのだ。
枝雀がそこにいる時代を生きたことを、私のいくつかの幸せのひとつに数えたい。
そして、枝雀がもういない時代を生きていかねばならぬことを、不幸だと思う。
桂枝雀が死んで、今日で20年になった。

(かつら しじゃく 1939.8.13- 1999.4.19)

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ガチャガチャとチャンネルを変えれば、どこかしらの局で、座布団を敷いた男が1人、身振り手振りでおかしい話をしていたものだ。
漫才も新喜劇も面白いけれど、私は断然落語派。
はじめは違和感しかない。
賑やかなお囃子に乗って現れるのは、お正月でさえ見ることは無くなった、着物姿の男。
見台と膝隠しを前にちんまり座って、遠い昔の長屋の住人となって話し出す。
昭和の子供にはおよそ縁のない世界が、目の前で広がったと思えば、あっという間に引き込まれ、気づけばアッハッハと笑っている。
引きずり込まれる感覚が、なんとも言えない。
落語は、私にとって一種のパラレルワールドだった。
なかでも抜群に面白かったのが枝雀である。
型破りのアクションや滑稽な表情ばかりがクローズアップされがちだが、それだけではない。
枝雀の噺は清潔で、ピュアであった。
ものすごくよくできたジオラマに、自分も小さく小さくなって飛び込んだような、現実の雑味がない、完全で美しい世界であった。
噺が終わってそこを去る時、名残惜しい、ずっとこの世界にいたい、そう思える。
枝雀の噺は、枝雀という人が作った理想郷なのだ。
枝雀がそこにいる時代を生きたことを、私のいくつかの幸せのひとつに数えたい。
そして、枝雀がもういない時代を生きていかねばならぬことを、不幸だと思う。
桂枝雀が死んで、今日で20年になった。

(かつら しじゃく 1939.8.13- 1999.4.19)

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つまらん話。
週末、所属団体の催しが、東京であった。
私は上京できないが、いちおう会費を払っているので、案内チラシがドサッと届く。
関西で東京のチラシなんぞ配っても迷惑がられるだけだが、かといって捨てるのも気がひける。
思いついて、住所録を開き、東京在住の知人に送ってしまうことにした。
催しは盛況だったらしい。週明けには、芳名録の写しが送られてきた。
ダメもとでチラシを送りつけた友人知人が、けっこう見に行ってくれている。
有難いことに思い、一斉メールでお礼を送信しておいた。
するとその夜、中の1人から返信があった。
学生時代の友人だ。
趣味が合って仲良くなり、一時はもしかしたら付き合う?と思ったりもしたが、そうはならず今日に至る。
まあ、遠い昔の話である。
興味深かった、また機会があれば案内がほしい、との文面にちょっとホノボノしていたら、最後に引っかかった。
なお郵便は家族の目に触れるので、波風を立てないため、ご案内はメールでお願いします。
ナミカゼ???
はは~ん、家族=奥さんが気になるのね。
そうそう、こういう男だったのよ。
付き合ってもいない頃、2人で映画に行ったら、やけにチラチラ周りを気にしていたこと。
場の雰囲気を優先する、事なかれ主義の態度。
そういうことがいろいろあって、波風上等!の若い私は、すっかり興ざめしたのだった。
あいかわらず、つまんねえ男だな!
年をとって、つまんないやつが面白くなることは無い。
むしゃくしゃして、メールアドレスを消去した。
(「つまらん!」という私の顔は大滝秀治でご想像ください)

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私は上京できないが、いちおう会費を払っているので、案内チラシがドサッと届く。
関西で東京のチラシなんぞ配っても迷惑がられるだけだが、かといって捨てるのも気がひける。
思いついて、住所録を開き、東京在住の知人に送ってしまうことにした。
催しは盛況だったらしい。週明けには、芳名録の写しが送られてきた。
ダメもとでチラシを送りつけた友人知人が、けっこう見に行ってくれている。
有難いことに思い、一斉メールでお礼を送信しておいた。
するとその夜、中の1人から返信があった。
学生時代の友人だ。
趣味が合って仲良くなり、一時はもしかしたら付き合う?と思ったりもしたが、そうはならず今日に至る。
まあ、遠い昔の話である。
興味深かった、また機会があれば案内がほしい、との文面にちょっとホノボノしていたら、最後に引っかかった。
なお郵便は家族の目に触れるので、波風を立てないため、ご案内はメールでお願いします。
ナミカゼ???
はは~ん、家族=奥さんが気になるのね。
そうそう、こういう男だったのよ。
付き合ってもいない頃、2人で映画に行ったら、やけにチラチラ周りを気にしていたこと。
場の雰囲気を優先する、事なかれ主義の態度。
そういうことがいろいろあって、波風上等!の若い私は、すっかり興ざめしたのだった。
あいかわらず、つまんねえ男だな!
年をとって、つまんないやつが面白くなることは無い。
むしゃくしゃして、メールアドレスを消去した。
(「つまらん!」という私の顔は大滝秀治でご想像ください)

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おもしろ話。
合唱団に入って1年が経った。
週1回の練習場所は電車で3駅の距離。
特に誘い合わせて帰ることはないが、同じ方向のかたとは、知らず知らず顔なじみになる。
車内でもお話をするが、なにしろたった3駅。
あっという間に着いてしまうので、プライベートにまでわたる話はしない。
今日のところ 難しかったですね
まだ暗譜できなくて
こうすればもっといいんじゃないかしら
合唱団員はマジメなので、このような反省と自戒の言が中心である。
そうした中のお1人に、オオタケさんがいる。
静かな人で、皆が熱心に話している時も、笑顔で黙っていることが多い。
とはいえお話嫌いというのでもなく
…オオタケさんはどう?
聞かれれば、優しい声でお返事をなさる。
この前の練習日、どうした加減か、帰りの電車がオオタケさんと私、2人きりになった。
私はしゃべる時は際限なくしゃべるが、黙っているのもわりに平気だ。その日も
ずいぶんあったかくなりましたね
ホントに…
それくらいで、あとは並んで吊革にぶら下がっていた。
ふとオオタケさんが、車窓に目をやったまま
ぢょん子さんって 面白い人よね
え?
フフフ… 面白い人だなって そう思って…
面白いもなにも、今日はお天気の話しかしていない。めんくらって、何とも返事できぬまま、もう私の降りる駅だ。
また来週、そう言って別れた。
家への道々、オオタケさんの言葉を思い返す。
ぢょん子さんって 面白い人よね
さっきの会話だけからの判断では、ないだろう。
この1年、ニコニコ皆の話を聞きながら、そんな風に思ってくれていたのかな。
なんだか、ちょっと嬉しくなって、2、3歩スキップをした。


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週1回の練習場所は電車で3駅の距離。
特に誘い合わせて帰ることはないが、同じ方向のかたとは、知らず知らず顔なじみになる。
車内でもお話をするが、なにしろたった3駅。
あっという間に着いてしまうので、プライベートにまでわたる話はしない。
今日のところ 難しかったですね
まだ暗譜できなくて
こうすればもっといいんじゃないかしら
合唱団員はマジメなので、このような反省と自戒の言が中心である。
そうした中のお1人に、オオタケさんがいる。
静かな人で、皆が熱心に話している時も、笑顔で黙っていることが多い。
とはいえお話嫌いというのでもなく
…オオタケさんはどう?
聞かれれば、優しい声でお返事をなさる。
この前の練習日、どうした加減か、帰りの電車がオオタケさんと私、2人きりになった。
私はしゃべる時は際限なくしゃべるが、黙っているのもわりに平気だ。その日も
ずいぶんあったかくなりましたね
ホントに…
それくらいで、あとは並んで吊革にぶら下がっていた。
ふとオオタケさんが、車窓に目をやったまま
ぢょん子さんって 面白い人よね
え?
フフフ… 面白い人だなって そう思って…
面白いもなにも、今日はお天気の話しかしていない。めんくらって、何とも返事できぬまま、もう私の降りる駅だ。
また来週、そう言って別れた。
家への道々、オオタケさんの言葉を思い返す。
ぢょん子さんって 面白い人よね
さっきの会話だけからの判断では、ないだろう。
この1年、ニコニコ皆の話を聞きながら、そんな風に思ってくれていたのかな。
なんだか、ちょっと嬉しくなって、2、3歩スキップをした。


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わらびの話。
日曜日の駅前広場に人が溜まっている。
寒い冬は早足に通り過ぎるだけの、吹きっさらしのこの場所に、こうして立ち止まるということは、暖かくなった証拠であり
春だなあ
と、ついヒトリゴトも言うわけである。
それにしても今日は人が多い。
この群衆の特徴は、相互に干渉しあうことなく、1人か、せいぜい2人連れなこと。
そして、スマホを見ていることである。
この手のことに疎い私でも、これは知っている。
ポケモンGOっていうゲームなのだ。
ポケモンを集めるゲームの、何やら重要なスポットが、この駅前に位置しているらしい、と気付いたのはかなり前である。
イベントが催される時、ここに来ると何かイイコトがあるらしい。
はじめの頃は若いヤツが、どこから湧いて出たかというほどウジャウジャ集まり、通行の邪魔をしていた。
ブームも去った今、飽きっぽい若者世代はいなくなり、中高年が静かにスマホをいじっている。
お父さんと娘、といった2人連れもいて、ほほえましい。
微妙な年頃の子供と、ゲームを介してコミュニケーションをとれて、助かっている親御さんもあるのだろう、などと想像する。
広場に1人、2人と立つ人の間を縫って駅に向かいながら、遠い昔の、里山の景色を思い出した。
そう、春のワラビ取りである。

ぽつんぽつんと間隔を取って、スマホを見ながら立つ人は、春の野に点々と頭をもたげるワラビにそっくりなのだ。
田舎の祖母の胡麻和えの味など思い出し、
春ですねえ
もう1度つぶやきながら、改札を通った。

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寒い冬は早足に通り過ぎるだけの、吹きっさらしのこの場所に、こうして立ち止まるということは、暖かくなった証拠であり
春だなあ
と、ついヒトリゴトも言うわけである。
それにしても今日は人が多い。
この群衆の特徴は、相互に干渉しあうことなく、1人か、せいぜい2人連れなこと。
そして、スマホを見ていることである。
この手のことに疎い私でも、これは知っている。
ポケモンGOっていうゲームなのだ。
ポケモンを集めるゲームの、何やら重要なスポットが、この駅前に位置しているらしい、と気付いたのはかなり前である。
イベントが催される時、ここに来ると何かイイコトがあるらしい。
はじめの頃は若いヤツが、どこから湧いて出たかというほどウジャウジャ集まり、通行の邪魔をしていた。
ブームも去った今、飽きっぽい若者世代はいなくなり、中高年が静かにスマホをいじっている。
お父さんと娘、といった2人連れもいて、ほほえましい。
微妙な年頃の子供と、ゲームを介してコミュニケーションをとれて、助かっている親御さんもあるのだろう、などと想像する。
広場に1人、2人と立つ人の間を縫って駅に向かいながら、遠い昔の、里山の景色を思い出した。
そう、春のワラビ取りである。

ぽつんぽつんと間隔を取って、スマホを見ながら立つ人は、春の野に点々と頭をもたげるワラビにそっくりなのだ。
田舎の祖母の胡麻和えの味など思い出し、
春ですねえ
もう1度つぶやきながら、改札を通った。

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ヒトツノ本。
ランドセルがまだ大きく見える子供と母親が、前を歩いている。
新1年生だろう。
…きょうのねえ しゅくだいはねえ…
慣れない学校で気を張ってきたのか、そのぶん甘えん坊になって、お母さんにくっついている様子が、かわいらしい。
子供も低学年のうちは、宿題も手がかかる。
私たちが子供の頃はなかった宿題のひとつに、音読というのがあった。
子供が教科書の指定された部分を声を出して読み、ちゃんと読めたらおんどくかーどというものに、親がサインをするのである。
聞いてりゃいいだけとはいえ、親だって忙しい。
食器洗いの水をジャージャー出していて、半分も聞こえなかったのに
じょうずによめました
などとコメントするのはちょっと気がひけるものだ。
しかし、国語の教科書にはときどき、たいへん悲しいお話が入っている。
それをあどけない子供の声で読まれると、家事を忘れて引き込まれた。
…一つだけのお花、だいじにするんだよ お父さんは 一りんのコスモスを ゆみ子にわたすと 戦争にいきました それから…
ずずっ…
思わず小さく鼻をすすると、子供はめざとく教科書を置いて
あれ?おかーさん 泣いてる?
泣いてない!ほら、最後まで読みなさい!
この親子にも、これからそんなことがあるのだろうな。
もつれあうように仲良く歩くふたりを、早足になって追い越した。

(「一つの花」 今西祐行著 ポプラ社)

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新1年生だろう。
…きょうのねえ しゅくだいはねえ…
慣れない学校で気を張ってきたのか、そのぶん甘えん坊になって、お母さんにくっついている様子が、かわいらしい。
子供も低学年のうちは、宿題も手がかかる。
私たちが子供の頃はなかった宿題のひとつに、音読というのがあった。
子供が教科書の指定された部分を声を出して読み、ちゃんと読めたらおんどくかーどというものに、親がサインをするのである。
聞いてりゃいいだけとはいえ、親だって忙しい。
食器洗いの水をジャージャー出していて、半分も聞こえなかったのに
じょうずによめました
などとコメントするのはちょっと気がひけるものだ。
しかし、国語の教科書にはときどき、たいへん悲しいお話が入っている。
それをあどけない子供の声で読まれると、家事を忘れて引き込まれた。
…一つだけのお花、だいじにするんだよ お父さんは 一りんのコスモスを ゆみ子にわたすと 戦争にいきました それから…
ずずっ…
思わず小さく鼻をすすると、子供はめざとく教科書を置いて
あれ?おかーさん 泣いてる?
泣いてない!ほら、最後まで読みなさい!
この親子にも、これからそんなことがあるのだろうな。
もつれあうように仲良く歩くふたりを、早足になって追い越した。

(「一つの花」 今西祐行著 ポプラ社)

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ふたつの話。
…をひとつください
ねんのため、鼻の前で人差し指を立てて、注文したら、
ハイ!700円になります!
へ?
700円になります!
えーっと… ひとつ350円ですよね?
ハイ!おふたつで 700円になります!
いえ、ひとつでいいんですけど…
どうも話が噛み合わない。
私は確かにひとつと言ったし、わざわざ指をいっぽん立てて、念を押したつもりである。
カウンター嬢にとっては十分すぎる情報量だと思うが、両方とも軽く無視されてしまった。
じつはこういうことは初めてではない。
以前ドーナツ屋で、同じように
…をひとつください
と注文したうえ、指をいっぽん添えたというのに、トレイには同じものを2個のせられた。
これはもうお店側の不手際ではなく、私のほうに何か問題があるとしか思えない。
ひとつ、が口ごもってふたつに聞こえるのか。
しかし私は生まれつき声がデカく、滑舌もいいので、発音の問題とは考えにくい。
では指か。指が悪いのか。
あらためて、わが人差し指をしげしげと見つめるが、とくにおかしな点は見当たらない。
二股に割れているわけでなし、2本に見えるほど太いわけでもない。
あと考えられるのは、指が高速で左右にぶれて、残像が見えたという可能性だ。
試しにやってみるとこれがなかなか難しく、指の付け根が攣りそうになったので、中止した。
ふたつの謎は、謎のままである。


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ねんのため、鼻の前で人差し指を立てて、注文したら、
ハイ!700円になります!
へ?
700円になります!
えーっと… ひとつ350円ですよね?
ハイ!おふたつで 700円になります!
いえ、ひとつでいいんですけど…
どうも話が噛み合わない。
私は確かにひとつと言ったし、わざわざ指をいっぽん立てて、念を押したつもりである。
カウンター嬢にとっては十分すぎる情報量だと思うが、両方とも軽く無視されてしまった。
じつはこういうことは初めてではない。
以前ドーナツ屋で、同じように
…をひとつください
と注文したうえ、指をいっぽん添えたというのに、トレイには同じものを2個のせられた。
これはもうお店側の不手際ではなく、私のほうに何か問題があるとしか思えない。
ひとつ、が口ごもってふたつに聞こえるのか。
しかし私は生まれつき声がデカく、滑舌もいいので、発音の問題とは考えにくい。
では指か。指が悪いのか。
あらためて、わが人差し指をしげしげと見つめるが、とくにおかしな点は見当たらない。
二股に割れているわけでなし、2本に見えるほど太いわけでもない。
あと考えられるのは、指が高速で左右にぶれて、残像が見えたという可能性だ。
試しにやってみるとこれがなかなか難しく、指の付け根が攣りそうになったので、中止した。
ふたつの謎は、謎のままである。


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みっつの話。
ジンクスにはあまり縁がない。
しないと気分が悪いというような習慣もないし、曜日ごとの決め事といえばゴミ捨てくらい。
ただ1つだけ、ミョーなこだわりがあることに、最近気づいた。
2つあるものは3つにしたい
という、ヘンな欲望である。
コップとか本とか、モノの話ではない。
たとえば大豆を畑の肉と呼び、牡蠣を海のミルクと呼ぶことに気づいた時。
こういうやつがもう1つ無いものか、気になりだす。冷蔵庫に
畑の肉 海のミルク
と書きつけたメモをマグネットで止め、考えあぐねること数か月。
アボカドを森のバターということが分かり、いちおうこの食品別名問題は落ち着いた。
ブログのタイトルも例外ではない。
一昨日の記事が「しゅうまい話。」で、その前が「しいたけ話。」。
こう2つ続いたことに気付くと、今日もしで始まる食べ物のタイトルで、書かねばならない気がしてくるのだ。
「しりある話。」「しめさば話。」「しなちく話。」…。
書けば書ける、と思う。
しかし、いつまでも3つの呪いに支配され続けるのもシャクだ。
3つにしたくてしたくて、たまらない気持ちを押さえ、敢えて2つで止めた。
ちょっぴり大人になった気がするが、ちょっぴりどころかとっくのとうに大人なのだった。

(書いたら面白いかもしれない「しめさば話。」)

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しないと気分が悪いというような習慣もないし、曜日ごとの決め事といえばゴミ捨てくらい。
ただ1つだけ、ミョーなこだわりがあることに、最近気づいた。
2つあるものは3つにしたい
という、ヘンな欲望である。
コップとか本とか、モノの話ではない。
たとえば大豆を畑の肉と呼び、牡蠣を海のミルクと呼ぶことに気づいた時。
こういうやつがもう1つ無いものか、気になりだす。冷蔵庫に
畑の肉 海のミルク
と書きつけたメモをマグネットで止め、考えあぐねること数か月。
アボカドを森のバターということが分かり、いちおうこの食品別名問題は落ち着いた。
ブログのタイトルも例外ではない。
一昨日の記事が「しゅうまい話。」で、その前が「しいたけ話。」。
こう2つ続いたことに気付くと、今日もしで始まる食べ物のタイトルで、書かねばならない気がしてくるのだ。
「しりある話。」「しめさば話。」「しなちく話。」…。
書けば書ける、と思う。
しかし、いつまでも3つの呪いに支配され続けるのもシャクだ。
3つにしたくてしたくて、たまらない気持ちを押さえ、敢えて2つで止めた。
ちょっぴり大人になった気がするが、ちょっぴりどころかとっくのとうに大人なのだった。

(書いたら面白いかもしれない「しめさば話。」)

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ちょうぜつ話。
行きたかった展覧会がもうすぐ終わるので、慌てて見に行く。

木彫、陶磁、金工など、近代以降の日本の工芸の粋を集めた展示である。
かつて万国博覧会に出展された日本の工芸品は、ひろく自然の事物に題を取り、それらを繊細に再現する技術で、西欧人を驚かせたという…
と書くともっともらしいが、この展覧会の眼目は
超絶そっくり!
ということであろう。
果物、虫、花、鳥、野菜…、誰しも目にしたことのあるものが、金属や木材、陶土という硬い素材を用い、本物と見紛う精巧さで再現されている。
1つとして、テキトーに作りましたというものはない。
どれどれ本物と違うところはないかしら、などと粗探しする、俗物の視線を跳ね返さんばかりの、とんでもない技術と努力の集成である。
展示の間を縫って歩きながら、奇妙な感覚に襲われた。
この牙彫のキュウリが、もし本物だったとしても、誰にも分らない。
この大蛇が、もし金属じゃなく本物の骨格標本だとしても、誰にも分らない。
もしかして私は、ケースの中に納まった、実物のトマトを、カマキリを、干し柿を、タンポポを、拝見しているのじゃないのだろうか。
手にとれない状況で、こういう作品を観る意味とは何だろうか。
とんでもなくソックリなものほど、作品としてのありがたみを失うという、不思議な現象がそこに起きていた。
記念にと、エハガキを手に取ったが、写真は実物以上にまるでホンモノで
バナナの写真買ってもなあ…
買わずに棚に戻した。

(「パイナップル、バナナ」牙彫 安藤緑山)
あべのハルカス美術館「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展は、14日まで。→驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ

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木彫、陶磁、金工など、近代以降の日本の工芸の粋を集めた展示である。
かつて万国博覧会に出展された日本の工芸品は、ひろく自然の事物に題を取り、それらを繊細に再現する技術で、西欧人を驚かせたという…
と書くともっともらしいが、この展覧会の眼目は
超絶そっくり!
ということであろう。
果物、虫、花、鳥、野菜…、誰しも目にしたことのあるものが、金属や木材、陶土という硬い素材を用い、本物と見紛う精巧さで再現されている。
1つとして、テキトーに作りましたというものはない。
どれどれ本物と違うところはないかしら、などと粗探しする、俗物の視線を跳ね返さんばかりの、とんでもない技術と努力の集成である。
展示の間を縫って歩きながら、奇妙な感覚に襲われた。
この牙彫のキュウリが、もし本物だったとしても、誰にも分らない。
この大蛇が、もし金属じゃなく本物の骨格標本だとしても、誰にも分らない。
もしかして私は、ケースの中に納まった、実物のトマトを、カマキリを、干し柿を、タンポポを、拝見しているのじゃないのだろうか。
手にとれない状況で、こういう作品を観る意味とは何だろうか。
とんでもなくソックリなものほど、作品としてのありがたみを失うという、不思議な現象がそこに起きていた。
記念にと、エハガキを手に取ったが、写真は実物以上にまるでホンモノで
バナナの写真買ってもなあ…
買わずに棚に戻した。

(「パイナップル、バナナ」牙彫 安藤緑山)
あべのハルカス美術館「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展は、14日まで。→驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ

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しゅうまい話。
ムスメの学祭を見物に行く。
プログラムの地図をたよりにムスメのクラスに着くと、とうに始まっているはずが、まだ準備中。
ねじり鉢巻きにエプロン姿の学生が、大慌てでひき肉を練ったり、手際悪く皮で包んだり。
どうやらこのクラスはシュウマイ屋らしい。
ムスメちゃーん!どこ?
ムスメちゃんまだ来ないの?
大声で呼ばれるわが子の名前。
グリンピースをのせる役のムスメが、遅刻しているようだ。
困った様子のクラスメイトに、スミマセン、スミマセンと謝り、代わりに腕まくりをしてエプロンを締めた。
畳1畳分にもなる大きなバットに、整然と並んだシュウマイに、グリンピースをのせる。
細かい作業でなかなか大変だ。
まごまごして豆を転がしたり、うっかり1つ飛ばしたり。
緊張する作業で肩を凝らしていると、一向に現れないムスメに腹が立ってきた。
シュウマイの命ともいえるグリンピース。
こんな重要な役に当たっているのに、遅刻するとは、まったくけしからん。
顔を見たらきつく叱らねば!
…と、決意したところで、目が覚めた。
ダラダラ長くてホントに疲れる夢だった。
ムスメはとっくに社会人になっているし、学祭でシュウマイを売ったこともない。
リアリティのない設定にもかかわらず、違和感がなかったのは、ムスメの遅刻という状況が、あまりにも普通に思えたためだろう。
ムスメには猛省を促したい。

(1日80万個を製造する崎陽軒横浜工場)

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プログラムの地図をたよりにムスメのクラスに着くと、とうに始まっているはずが、まだ準備中。
ねじり鉢巻きにエプロン姿の学生が、大慌てでひき肉を練ったり、手際悪く皮で包んだり。
どうやらこのクラスはシュウマイ屋らしい。
ムスメちゃーん!どこ?
ムスメちゃんまだ来ないの?
大声で呼ばれるわが子の名前。
グリンピースをのせる役のムスメが、遅刻しているようだ。
困った様子のクラスメイトに、スミマセン、スミマセンと謝り、代わりに腕まくりをしてエプロンを締めた。
畳1畳分にもなる大きなバットに、整然と並んだシュウマイに、グリンピースをのせる。
細かい作業でなかなか大変だ。
まごまごして豆を転がしたり、うっかり1つ飛ばしたり。
緊張する作業で肩を凝らしていると、一向に現れないムスメに腹が立ってきた。
シュウマイの命ともいえるグリンピース。
こんな重要な役に当たっているのに、遅刻するとは、まったくけしからん。
顔を見たらきつく叱らねば!
…と、決意したところで、目が覚めた。
ダラダラ長くてホントに疲れる夢だった。
ムスメはとっくに社会人になっているし、学祭でシュウマイを売ったこともない。
リアリティのない設定にもかかわらず、違和感がなかったのは、ムスメの遅刻という状況が、あまりにも普通に思えたためだろう。
ムスメには猛省を促したい。

(1日80万個を製造する崎陽軒横浜工場)

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