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つゆいり話。

遅い梅雨入り宣言のあとも、けっきょく降らずに終わった昨日。

今朝は起きて窓を開けると、なまぐさいオゾンの臭いが流れ込んできた。

こんなんじゃあ、かえって部屋が湿ってしまう。ぴしゃりと窓を閉めて、カーテンだけを開けた。

ガラス越しの植栽の木々が、風に揺れ葉裏を見せてうねる。

無音の部屋にも伝わる、不穏な気配。

そして天をぶちまけるように、雨が降りはじめ、乾いた地面はみるみる色を変える。

気づけばガラスに額をつけて、つぶやいていた。

ざまあみろ いい気味だ

こぼれてきた感情に自分で驚く。

私はいったい何に腹を立てているのだろう?

わけのわからない怒りは、正体も告げぬまま去っていった。

しだいに雨は小粒になり、静かに穏やかに屋根を濡らしつづける。

今日は1日中、雨になりそうだ。

そとはあめ



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/06/30 11:30

そうかい話。

おばーちゃんはここんとこ、毎日お出かけ。

今日はね、◎◎食品 明日は○○ホテルで…

そう、株主総会である。

かぶぬしそうかい

亡くなったおじーちゃんは、わずかだが株式投資をしていた。

東京ほどではないが、関西にも本社を置く会社があり、株主総会が行われる。

存命のころはおじーちゃんが総会に出ていたが、健康を損ねてからは、議決権行使のハガキを出すだけで、出席はしていなかった。

あれは何年前のことだったか。

おじーちゃんが遺した株の、総会招集通知を手に

いっぺん行ってみようかな こういうの…

おばーちゃんが、珍しくそんなことを言うので、

イイじゃん、行きな行きな!

けしかけたのは私である。

金婚式を迎えずにおじーちゃんを亡くし、消極的になっていたおばーちゃん、新しいことを始めるのはきっといいことだ、と思ったのだ。

はじめての株主総会は、老舗の製薬会社。

商家に育ったおばーちゃんは、創業者にもなじみがあったらしく、新製品のお土産などもらって、ゴキゲンで帰ってきた。

以来、今日はどこ、明日はそこと、株主総会に出るのがこの時期の年中行事となった。

上場会社の経営方針や最先端の新技術をうかがい知れる総会は、おばーちゃんの社会見学なのだ。

◎◎食品の3代目はすっごいイケメンよ!

世知辛い昨今、お土産が出ないことも増えてきたが、ゴシップ的な興味も満たされ、交通費は十分にモトを取れているようだ。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/06/29 11:30

ねっけつ話。

通勤時間帯の電車。

やけに混むと思ったら、市内で大きな国際会議が開催されるため、通行規制がかかり、ふだん自動車で通勤している人が、電車に乗ってるらしい。

なるほど、モタモタしたのが紛れ込むわけだ。

混雑で蒸し暑い車内、額に汗がツーと流れても、カバンの中のハンカチに手も伸ばせない。

前の席には、いかにも血圧が高そうな、赤ら顔の中年男性。いるだけで室温が上がりそうな、暑苦しいオヤジだ。

くう~ ただでさえ暑いっちゅうのに…

時に人は、見知らぬ相手にも瞬時にニクシミを抱く。

ところが高血圧オヤジ、不意に立ち上がると、バタバタと次の駅で降りていったではないか。

ヤレヤレ、座れる。ハンカチが出せる。先ほどまでのニクシミを忘れ、ホッとして腰を下ろすと、ヒャッと声が出た。

あっつーい!

オヤジなき後の座席は、ジカ火で炙ったかと思うほど熱かった。

どんなケツしてんだオヤジ!

どうにも気味が悪くて、浅く座り直し、ヒザの上のカバンからハンカチを出して額を押さえていると、私が降りる駅の名が聞こえた。

立ち上がって通路に進み、さっきの席を振り返ると、若いサラリーマンが座ろうとしている。

と、彼は座った姿勢のまま、優に10センチは飛び上がり、薄気味わるそうに周囲を見回した。

違う、違うのよ!その熱は私のじゃない!

訴えたかったけれど、降りる人の流れに、なすすべもなく車外に押し出されてしまった。

g20-551.jpg
(551蓬莱はG20大阪サミットを応援しています)



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/06/28 11:30

びっくり話。

友だちのミドリちゃんに、1年ぶりに会う。

自身が経営者で、両親も成人した子供2人も同居、6人家族で猫まで飼っている多忙な彼女なので、会える機会はなかなかない。

去年も一昨年も、ちょうど今ごろ、同じ店で待ち合わせた。

先に席に着いていると、やがてちっとも急がない足取りで、ミドリちゃんが入ってきたので、コッチコッチ、と手を上げる。

誰よりも忙しいはずなのに、いつもゆったりした雰囲気に包まれた彼女に会うと、嬉しいと同時にセカセカした自分を省みて、恥ずかしくなる。

1年ぶりとも思えないほど話が弾み、ちょっと、と断ってご不浄に行った。

手を洗いながら鏡を見て、あれ、と思う。

デジャヴ?

同じ店、同じ季節、同じワタシ、既視感を覚えて当然とはいえ、あまりにもハッキリしたこの記憶は何だろう。

首をかしげつつ席に戻り、その旨報告すると、わが友はおっとりと

ああ、洋服…お洋服じゃない?

ギョッとして記憶をたどれば、去年ミドリちゃんに会った時と、同じ服を着ていた。

ご丁寧に、アクセサリーまで同じものだ。

お店に入ってきたとき タイムスリップしたかと思って ビックリしたわぁ

ウフフ…なんて笑っている。

やだなあ ビックリしたなら教えてよう!

アナタにビックリさせられるのは 今日に限ったことじゃない 昔からだからね…

アハハと笑って、さて、話題は、懐かしい昔話に戻る。

まいとしおなじふく



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ごきんじょ | コメント(5) | トラックバック(0) | 2019/06/27 11:30

しごとの話。

数年前からときどき、梅仕事なる言葉を聞く。

さては紀州にUターンして就農する、というような話かと思ったら、なんのこたあない。

梅干しや梅酒を漬けることを、そう言うらしい。

丁寧な暮らし系の雑誌を見れば、オーガニックコットンのユルユルの服を着た痩せた女が、古民家の縁側、もっともらしく何かやっている。

思わずヘッと鼻で笑った。

1キロや2キロ、それも買ってきた梅の実で、大層なことである。

実家の梅の木に、毎年スズナリに実が生る。

もともとは、ハシゴに上がってその実をもぐのが私の仕事であったが、

私はもうシンドイから

ギブアップした母に押し付けられ、不本意ながら加工までやることになった。

毎年何キロになるものやら、お天気次第でまちまちなうえ、傷も汚れもあり、大きさも熟れ具合もバラバラな自家製の梅。

バケツに何杯もあるそれを、梅酒、梅干し、梅シロップのどれにするか。仕分けと計量にはじまる梅の始末は、毎年この時期の頭痛のタネである。

遅れに遅れた当地の梅雨入りは、明日になる見込み。

丁寧でなくテキトーに漬けた私の梅干しも、梅酢が上がってきた。

つゆのうめのみ




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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/06/26 11:30

はいった話。

夏だから、新しい帽子が欲しい。

だったら買えとお思いだろうが、それがなかなか容易でないんである。

私は頭がデカいのだ。(→ ぼうしの話。

デパートでも、専門店でも、普通に売っている帽子はどれも、まず頭にはまらない。

それでも帽子を見れば、かならず1度はのせてみる。万が一を期待する、涙ぐましい習慣である。

昨日はバス待ちのため駅ビルをぶらついていた。

目にとまったのは輸入雑貨を扱うお店。

貝殻のアクセサリー、サンダルにタオル、夏らしい雑貨に混じって、おリボンの帽子が並ぶ。

おりぼんのぼうし

こんなカワイイ店の帽子がわが巨頭に合うわけがないと思いつつ、念のため頭にのせてみた。

ふぁさっ すっ…

ええっ?!

押しも引きもしないのに、自然にフィットしたではないか。

これはもう買うしかない!

値札つきの帽子をかぶったままレジに赴き、支払いを済ませ、店を出てしばらく歩いてから、ピタリと足を止め、にわかに踵を返す。

あんなにピッタリの帽子、この先また出会うとは思えない。予備を買っておこう。

われながらナイスアイデアだ。

売り場に並ぶ同じ帽子をもう1つ手に取ったが、習慣とは恐ろしいもので、買うと決めているのにまた、頭にのせてしまった。

あれ?入らない?

色違いの別のをかぶる。

入らない…

まるきり同じに見える帽子の中で、私の頭にすっぽりとはまったのは、最初に手に取ったひとつ、ただそれだけだった。

夢を見たような気分。

買った帽子まで消えてしまいそうで、紙袋を抱え、慌てて店を飛び出したが、乗るつもりのバスはとっくに行ってしまっていた。



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2019/06/25 11:30

いもうと話。

この夏休みに、母の傘寿のお祝いをしようという話が出た。

とはいえ、ムスメムスコはそれぞれに忙しく、姪っ子は高校受験。

母とイモートと私、3人で上等の食事をする程度になりそうだが、イモートは遠方に住んでいるので、打合せは必要だ。

先日来、グルメサイトを見ては、どの店にするか、イモートとやりとりをしている。

やりとりといっても、もっぱらイモートが

ねーねーこの店どう?

と送ってきた詳細を見て、私が感想を言う、という感じで、なかなか決まらない。

それというのも、イモートが選んでくる店は

予約必須!シェフの隠れ家イタリアン

だの

モダンインテリアの中で和食をいただく

だの

フレンチとの融合を楽しむフュージョン中華

だの、どれもこれもシックリ来ないのだ。いいかげん、ダメ出しばかりも嫌になってきた。

この店なんかどう?

というイモートの問いに、

こういうの、おかーさん好きかなあ?

と、質問返しをしてみたら、しばらく間があって

それ、忘れてた!

と言うではないか。

女3人で高級なランチ♡にウキウキしたイモートは、母の傘寿を祝う、という本来の目的を忘れ、自分が行ってみたい店ばかり探していたのだ。

だからといって、けっして母を粗末に思うのではない。

ただ、機会をとらえてちゃっかり自分の希望につなげる、昔からの妹気質なのだ。

50過ぎても性格は変わらないな、と、なんだかおかしくて、かわいく思えた。

そんなイモートは、娘のメイちゃんには、ウッカリママと呼ばれている。

ふれんちとゆうごう
(融合すると、とかく全体量が減りがち)



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/06/24 11:30

ペーター本。

佐藤憲吉、という名前にはピンとこない人でも、ペーター佐藤と言えば聞き覚えがあるんじゃないだろうか。

それもご存知ない人も、このサイン↓なら見たことがあるかもしれない。

ぺーたーさとう

ミスタードーナツの持ち帰り用のボックス。あの愛らしい少年少女のポートレートを描いたのが、ペーター佐藤なのだ。

近年はパステルや色鉛筆によるイラストが多かったが、80年代にエアブラシを用いた、未来的でクールなイラストで注目されていた彼の、画集を除く唯一の著書がこれである。

ろまんちっくらいふをつくる
(「ロマンチック・ライフをつくる―いつも美しいものに敏感でいるために」 佐藤 憲吉著 21世紀ブックス)

はじめてこの本を手にした時、私は中学生。

周囲にいる男といえばオッサンガキか、ハナをたらして野球をしているか、ビールを飲みながら野球を見ているかのどっちか。

ところがこの世の中には同じ男でも

僕のロマンチシズムの条件は、透明感があること

とのたまい、

サテンで作ったティアード・スカートの華やかさ

やら

ロマンチックに装いたい時は、ヴェールのついたカクテル・ハット

などというオニイサンも存在するのだ!と、私は大げさではなく、文字通りシビレた

ロマンチック・ライフと銘打たれたとおり、洋服だけではなく、インテリア、アクセサリー、メイクまで、美意識を持って生活する、美しいものを自分で作る、いろんなアイデアや方法が書かれている。

そのあまりのステキさに、木造平屋に住み、ホコリ臭いセーラー服を着た田舎の中学生は打ちのめされたのであった。

ちなみにこの本で

ニューヨークはワシントンスクエアの近くのユニーク・クロージングというブティック

の存在を知っていたため、ユニクロというものが出てきた時、なんだ、パクリじゃん、とすぐに分かった。

昭和52年11月初版、もちろん絶版



今日はペーター佐藤憲吉没後25年に当たり、2014年4月19日の記事を再掲いたします。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/06/23 11:30

よげんの話。

にわか雨に降られて、ショッピングモールに駆け込んだ。次のバスまでここで時間をつぶそう。

とはいえ買い物も無し、チェーン店のカフェへ。

さんまるくかふぇ

空いた店内、頭上のメニューを見ながら考える。今日はあっさり薄めの、だけど冷たいコーヒーが飲みたい。

えーとアメリカンの… アイスはないのか~

ハイー スミマセン

大きなヒトリゴトに、カウンターの向こうから、お姉さんが返事をしてくれた。

じゃあ カフェオレのアイスをください

はーい ミルク多めにしますね うちのアイス、濃いーんですよね

一瞬何のことか分からなかった。

ああ、そういうことか!お姉さんは私が、濃いコーヒーの苦手な人、と思ったのだ。

ホントは違うけど、心遣いが嬉しくて、支払しながら

ありがとう きっとイイことがあるわよ~

こういうときオバサンはつい、余計なことを言う。

140円のお返しでーす ウフフ…そんなぁ…

カワイイ笑顔に

いやホント ぜったいイイことがありますって!

何の根拠もなく、声を張って予言してしまった。

ロングライフ牛乳が多めのカフェラテは、あんまり好みの味じゃなかったけれど、楽しい気持ちで最後まで飲んだ。

そろそろ、雨も止むころだろう。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/06/22 11:30

ひがさの話。

今日はいちばん昼が長い日、夏至。

ちかごろ男の日傘が話題らしい。

暑くなる一方の日本の夏、いよいよ男性も日傘です!

などと、テレビでも騒いでいた。街頭インタビューではサラリーマンが

日傘ですか~ 涼しいだろうけど なかなかね~

抵抗を示しつつ無防備な頭頂部を日にさらしている。

どうやら男性が日傘をさすのは珍しい、気恥ずかしいことらしいが、私はどうもピンと来ない。

明治生まれの祖父が、日傘をさしていたからだ。

祖父の盛夏の衣装には、白麻の上下があった。

シャツは半袖、開襟で肩章とベルト通しつき、ズボンは膝丈。

木綿の長靴下に革靴を穿いた姿は、さながらリヴィングストン博士のアフリカ探検である。

太鼓腹のリヴィングストンが杖代わりに持つは、木彫の犬の頭が持ち手の、厚い布張りのカサ。

バフッ!

こもった音を立ててきつく巻かれたカサが開くと、炎天下しらしら光る夏の道に、とつぜん現れる大きく真っ黒な影

熱気は遮られ、不思議に涼しい空間がうまれる。

華奢なレースの祖母の日傘より、祖父の日傘はずっと頼もしかった。

だから日傘はけっして女だけのものではなく、男には男の日傘があって当たり前に思える。

今の男性も、堂々と日傘をさして涼しさを享受されればよい。

ただし、冒頭筆が滑った頭頂部云々については、保証の限りではない。

生涯日傘を愛用した祖父は、見事なつるっぱげであった。

かぶるかさ
(しかしこの日傘はいただけない)



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むかしむかし | コメント(14) | トラックバック(0) | 2019/06/21 11:30
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