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しんぶん話。

昨日の雨で冷えた空気が、ツクツクホウシの声を運んで、8月も終わりだ。

毎年いまごろになると、ちくりと痛む棘。

長いことかけて、見えないところでほころびていた夫婦関係が、決定的にダメになったのが、この時期だった。

あの夏休みは、本当にメチャクチャだった。

悲しみと怒りの渦に巻かれ、半死半生の心。

鏡を覗くと、生気を失い、貼りついたように黒目が動かない、見知らぬ自分の顔が映る。

夏のレジャーを楽しむよその家族の、仲睦まじい様子を目にするたびに苦しかった。

ゴハンを作り、洗濯をし、最低限お母さんの仕事をしてるつもりだったけど、きっとロクにできていなかったと思う。

夏なのに薄暗く寒い部屋の、とげとげしい空気の中で、子供たちはどうしていたのだろう。

ただ浅い息をつくしかできない私は、ムスメの宿題を見てやる余裕も無かった。

それでも容赦なく学校は始まり、最初の参観日。

ほとんど惰性でフラフラ出かけると、教室の後ろになつやすみしんぶんが貼り出してある。

なつやすみしんぶん

今年の夏のトップニュース!

わが家の自慢!


など、見出しと枠だけ楽しげに印刷したプリントに、めいめいが書き込んだ簡単なものだ。

ボンヤリ曇った目で、ムスメの名前を探した。

かなしかったこと

の欄に、見覚えのある、まるまっちい字で

なし

と書かれたその1枚を見つけた瞬間、

無いわけがない 無かったわけないのに

それまで出なかった涙が、堰を切って溢れた。

周囲に静かな当惑が広がって、その日どうやって帰ったのか、覚えていない。

あれから15年、今年も、夏休みが終わる。



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ごかぞく | コメント(14) | トラックバック(0) | 2019/08/31 11:30

きっかけ話。

きらめき

健康維持の観点から、いたってマジメにプールに通っている私であるが、どうしても休まねばならぬこともある。

着替え途中、更衣室を抜けてフロアに出るコーチが通りかかったので、その旨をお伝えした。

あらそう 急なお仕事大変ね

まあ 呼んでもらえるうちが花ですからね~

じゃあその次は倍泳いでもらおうかな…

キャー!やめてくださいよう!

ワハハと笑ったのが先々週のこと。

2週おいて久しぶりのプールはやっぱりキツい。なんとかいつものメニューをこなして、ヘトヘトで更衣室へ。

疲れた日は、水着を脱ぐのに片足を上げるにも、よろけそうになる。衰えを感じて凹む瞬間だ。

おつかれさま~!

みんなに声をかけながら、コーチが後ろを通ると思ったら、ポンと肩を叩かれた。

スッと耳の横に口を寄せると

9月で辞めようと思ってたけど もう少し続けることにしたわ

えっ?!

言ったでしょ「呼んでもらえるうちが花」って…

あ…

ホントそうだなと思って! ありがと!

そう言うとコーチはニコリと笑い、引き締まった身体を翻して出て行った。

え、私?私がコーチの気持ちを変えさせたの?

先々週のその場面を、頭に思い浮かべた。

まあ 呼んでもらえるうちが花ですからね~

よりによって、タオルを巻いて水着をずり下げた半裸の私が、一片の緊張感もなくそのセリフを言っている。

物事のキッカケとは不思議なものだが、あんなことでよかったのか、ちょっと申し訳なかった。



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/08/30 11:30

やきにく話。

…今日は 焼肉の日

やきにく

アナウンサーの声で画面に目をやれば、お肉が網の上でジュウジュウ焼ける、美味しそうな映像。

そういえば、この夏は焼肉を食べていない。

子供らが家にいた頃は、夏休みのイベントの1つとして、必ず焼肉を食べに行った。今年はムスコの帰省が、ムスメの予定と合わなかったのだ。

食べたければ行けばいいのだが、1人じゃ気勢が上がらない。

私が子供のころも、焼肉は家族の行事だった。お値段が張るということもあるだろうけれど、

○○したら焼肉に連れてってやるぞ

とか

今日は豪華に焼肉よ!

とか、父も母も、なんとなく意識して特別感を演出していた。

ところがいざ網を前にすると、2人ともロースの脂のないところを数枚食べるのがせいぜい。

母はタマネギだのカボチャだの、肉じゃないものを食べるし、父はユッケなんかをつまみにビールばかり飲んでいる。

子供心に、ああ、大人はお肉はそれほど食べたくないけど、子供を喜ばせるため、連れてきてくれるんだ、なんだかワルイなあ、と思っていた。

あの頃の親の年齢を越えてみてわかるのは、べつだん子供のためだけではなかったということ。

大人だって焼肉は食べたい

食べたいけど、そんなにたくさん要らないのだ。

かといって、食べたい量だけ1人で食べるのは味気ない。モリモリ食べる若い人を見ながら食べると、少量のお肉の味わいが、いや増すのである。

さらに言えば、焼肉の煙の中で飲むビールは、お肉を食べなくても大変においしい。

イモートや私が次々にお肉に手を伸ばすのを見ながら、ジョッキを傾けていた父。その満ち足りた気持が、今、少しわかる気がする。



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/08/29 11:30

あくいの話。

雨の予報は知っていたが、急ぐ用があって自転車で飛び出した。

空模様を気にしながらの帰り道、ゆるやかな下り坂の途中

キキーッ!

急ブレーキで転倒しそうになった。

私はいいトシしてお人よしで、根拠もなく人の善意を信じているところがある。

そのせいで、いや、だからこそ悪意に遭うと、怒りより先に驚いてしまう。

私を驚かせたものはコレ。

あくいとは

住宅街の歩道に、突如佇立する黄色い柱。

前に通った時はこんなものはなかった。

通るな、と書いてあるわけではない。避ければ通れないわけでもない。

しかし、ここには通行するものに対する、明確な悪意がある。

柱を立てた人がそこらにいるかと思うと、にわかに落ち着かぬ気持になる。

いったん降りた自転車に、再度またがるのもはばかられ、ハンドルを押して通過していると、最初の雨粒が、ポツリと頬に落ちた。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/08/28 11:30

ぜんいの話。

私はひねくれ者なので、世の大多数が好きなことに関心が無い。

わざわざ表立って言うこともないから黙っているが、高校野球などもその1つだ。

通常のテレビ番組がつぶれるのが迷惑だし、なんでNHKと民放、おんなじ中継してんだ、勝っただ負けただ、どうでもいいじゃん、と思っている。

そんな私だが、これはひどいと思った。

おめでとう1

今年の準優勝校の、地元デパートの看板である。

分かりにくいので拡大する。

おめでとう2

準優勝の文字の下に、1文字少ない優勝が、うっすら透けているのがお分かりだろうか。

つまり、見切り発車で作った優勝おめでとうの看板を、紙を貼って訂正しているのである。

まあ、気持ちは分かる。

勝ってほしい、優勝したらいいなあ、そう思うとガマンできなかったのかもしれない。

デパートにとってセールの経済効果はさておき、応援の気持ちは善意であろう。

しかし、悪気がなければいいというのでもない。

落胆がにじみ出るようなこの看板を、でかでかと掲げる無神経。

勝って喜んでくれる人の存在は、スポーツマンにとって心強いものだろうが、その同じ人たちは、負けるとガッカリする人でもあるのだ。

来る2020年、オリンピック関連の報道も増えてきたが、能天気にメダルの期待などと言われると、他人事ながら重苦しく、ウンザリする。



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/08/27 11:30

ろうかの話。

さて、ランチタイム。

…ぢょん子さん いっつもそのオニギリね

そうなの なんかもう新製品とか、めんどくさくて… (→ えらばぬ話。

分かるわぁ オニギリなんか3種類でいいと思っちゃう

そうそう、梅、昆布、鮭でいいわよね

おにぎりきゅー

あ、それ、老化!感情の老化なんだって!

ええーっ?!

今朝テレビで見たのよ!アタシも思い当たって ドキドキして…

いそいでスマホを出し、感情老化チェックテストというのを読み上げてくれた。

☑ 同じ店で買物する   
☑ 会話はいつも同じ相手   
☑ 新たな事を始めない  
☑ 感動しにくい
☑ アイデアが浮かばない…


あああー!思い当たるぅ!

全部そうかも!

騒いでいると

…あのぉー 休憩中 スミマセン…

来客から声がかかったので、その場は中断した。

応対が終わり、おひるに戻る。

ねえねえ 今のあの方…

…痩せたわねえ!

やっぱり?3キロや5キロじゃないわよね!

10キロ以上減ってるよ、あれは!

もしかして… 彼女でもできたかな?

そういえば服装の趣味も…

変わったわよね!

先ほどの来客をタネにひとしきり盛り上がる。

チェックテストの続きの

□ 好奇心が無くなった

これに関して、われわれに老化の心配はなさそうである。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/08/26 11:30

おにぎり話。

今日の行先はいわゆる閑静な住宅街(笑)」で、徒歩圏内に飲食店も商店もない。

乗換駅でおひるを買っていこうと、構内のコンビニに駆け込んだ。

こんびにおにぎり

オニギリの棚の前には先客がいる。

沿線の私立学校の制服を着た女子高生だ。

左手にはスポーツドリンクのペットボトル、今日のおひるごはんを選んでいるらしい。

駅のコンビニは狭く、オニギリの棚の前に2人は立てないから、彼女の買い物が済むのを待つ。

それにしても長い

最初いくつかのオニギリの間で目を泳がせていたが、最終的に候補は2つに絞られたようだ。

ようやっと右手を出して、1つを取ろうとした。

が、ひっこめる。

そして、もう1つを取ろうとした。

が、また手をひっこめる。

眉間にしわを寄せて、さらに長考に入る模様。

このままでは、乗りたい電車が出てしまう。やむなく大きなセキバライをした。

女子高生は、さすがにビクッとして1つを取り、こちらを気にしながらレジに去って行く。

それにしてもいったい、何をあんなに迷っていたのか。彼女が凝視していたところを見れば

手巻 紅しゃけ 140円

直巻 焼きしゃけ 120円


両方しゃけかよ!

どっちでもいいじゃん!

だいたい、スポーツドリンクとオニギリも、どうかと思うぞ!

腹立ちまぎれにテキトーに2個のオニギリを購入し、ギリギリで快速電車に飛び乗った。

お昼に袋を開けてみると、私が買ったのは

直巻 明太子マヨネーズ 120円

手巻 辛子明太子 140円


の、メンタイコ2連発であった。



本日早朝より他出のため、「コンビニオニギリつながり」で、2016年9月19日の記事を再掲いたします。



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ごきんじょ | コメント(2) | トラックバック(0) | 2019/08/25 11:30

えらばぬ話。

月に1、2度、仕事の都合でおひるがコンビニになる。

その時々、パンやらお弁当やら買っていたが、だんだんめんどくさくなってきた。

何が面倒って選ぶのが面倒なのだ。

大きな声では言えないが、私はあまり食べるものに執着がない。美味しいものを食べれば美味しいが、美味しくなくてもわりに平気である。

ウマくてもマズくても、しょせん数分間のことで、それを過ぎればなかったようなもの。

そう思う私はグルメの素養が無いのであろう。

コンビニ程度であれこれ迷うのも、あさましい気がしてきて、買うものを決めた。

こんびにおにぎり

ペットボトルの緑茶と、オニギリ2つ、以上。

オニギリの種類も決めてしまい、降っても照っても、それしか買わない。

店の奥、ペットボトルの冷蔵棚に直行し、次にオニギリの棚へ。いつもの高菜とツナマヨは、もう見ずに取れる。

レジを済ませるまで、ビリヤードの球がクッションに当たり、過たずポケットに入るようなスピード感は、じつに爽快である。

ところが今日、いつもの通り緑茶を取り、返す刀でオニギリを…と、出した手が空を切った。

無い、高菜が無い

なんてこともない状況に、その瞬間、足元が崩れたかと思うほど動揺した。

さいわいすぐに立ち直ったものの、あのショックは何だったんだろう、と、今も考えている。



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/08/24 11:30

きゅーっと話。

朝、時間が無かったので、コンビニのおにぎりを買った。

ご飯と海苔を隔てるフィルムを左右に引き抜きながら、ふと思い出す。

コレって昔、てっぺんから引き抜いてなかったっけか?

おぼろげな記憶をたどれば、キューッとフィルムを抜く手応えが思い出される。

1つずつフィルムに包まれたオニギリが出始めたのは、中学生の頃だった。

オニギリなんかをお金を出して買うなんて!

と、母が強い反感を抱いていたため、当初はおよそ手の届かない品物であった。

はじめて食べたのは、高校でバイトをはじめ、お金も行動も自由度が増して、勝手に飲み食いするようになってからである。

しかし、てっぺんからキューッとするオニギリは、今のに比べて失敗が多かった。

2カ所で引き抜くのに比べて、摩擦が倍である分、ヘンに力が要る。力任せに引くと、パリパリの海苔が割れたり、中のゴハンが崩れたりした。

毎回必ず5、6粒のゴハンがフィルムに付いて飛び出してくるのも、キューッとするオニギリのイライラポイントであった。

いったん形になったアイデアは、寄ってたかって改善するのが日本企業のお家芸である。

フィルムが真ん中で裂けるタイプが考案されると、キューッとするオニギリはあっという間に駆逐された。

あの商品は何と言ったんだったか。

あの、てっぺんからキューッとするオニギリ、キューッとする、キューッと… あっ!

おにぎりきゅー
(→ おにぎりQ シノブフーズ )



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むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2019/08/23 11:30

こうじの話。

時々利用する駅で降りたので、図書館の工事の様子を見に行った。

工事箇所は、ブックポスト

外に面した壁にあり、休館日や時間外でも本を返却できる差入口である。

前回通りかかった時、借りた本を入れて行こうと思ったら、工事中の標識とともに、ものものしくシメがしてあって、近づけなかったのだ。

あ、工事終わってる!

ぶっくぽすと1

でも、ぜんぜん新しくなっていない!

仕様も、貼りつけられた注意書きが剥がれかけた様子も変わらない。同じポストだ。

一体全体どこを工事したのか、不審に思って近寄ってみると、何かヘンだ。

アレ?ちょっと下がってる?

以前の差入口は、たしか私の目通りの高さにあったのだ。子供が使おうとすると、背伸びでやっと届くか届かないかだった。

小さい子がお母さんに抱かれて本を入れているのを、ほほえましく見たこともある。

それが今は、胸元の高さになっている。小学生ならラクラクと本を入れられるだろう。

たしかに改善ではあるが、そのために壁を壊してポストを外し、下げてつけ直したのか。

なんちゅう大層な、だけど地味な工事!

贅沢なような、ビンボくさいようなお役所仕事に、なんだかおかしくなった。

ぶっくぽすと2
(以前はこんな感じだった、と、思う)



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/08/22 11:30
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