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こしらず話。

初めての歯科を受診するとナンジャコリャ、という反応をされることがある。

あ、そこはですね…

説明すると一応納得してもらえるが、

ちゃんと抜いたほうがいいんですがねえ…

渋る先生もいらっしゃる。

その歯を治療したのは20年ばかり前。

母子手帳に付いていたタダ券で受けた歯科検診で、初期の虫歯が見つかったのだ。

痛くもなんともないので放っておきたかったが、そうもいかない。

横に生えたオヤシラズが奥歯を押して、歯ブラシの届かない凹みを作っているらしい。

このままにしておけば、確実に虫歯が進む。

抜きましょう!

なぜか嬉しそうな先生に、私は必死で抵抗した。

ダメです!いま授乳中なので!

そう、当時私は、生まれたてのムスコにおっぱいをやっていたのである。

麻酔を打たれたら、授乳ができない。

困った先生が、うーんと唸ったあげくひねり出したのが、オヤシラズのでっぱりを削って平らにするという、ヘンテコな処置であった。

良かったのか悪かったのかわからないが、歯磨きはしやすくなったし、歯が痛むこともない。

今も奥歯の後ろには、平らなオヤシラズ。

そこを舌で探るたびに、若い母親だった昔を、ちょっと思い出したりする。

子供の知らない、親のオヤシラズのお話である。

しるばにあのはいしゃさん



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/11/20 11:30

しらない話。

ひさびさのLINEでムスコの無事を確認したが、ついでに報告があった。

そうそう、今度抜歯するよ

虫歯になったらしい。

そうかー、歯科に行ったか。

歯磨きがキライで虫歯になり、歯科に連れていけば大暴れして、先生にさじを投げられたムスコ。(→しかいの話。

そんなムスコが進んで歯科にかかったとは、遙けくも来つるものかなと感慨なきを得ない。

家を出るだけが自立ではない。

自分の身体の調子を知り、面倒を見て、具合が悪ければ必要な対策をする。

自分の機嫌は自分で取るのが、大人なのだ。

返信も忘れて、つい遠い目になっていると

♪ぺぽん♪

追っかけるように続報が来て見れば

いちおう報告しとく 親知らずだけど

昔の人はうまいこと言ったものだ。

成人した子供の口の中なんて、もうどうなってるか分からない。

ムスメやムスコの全てを知ることはできないし、こっちだって何でも報告してるわけじゃない。

親知らず子知らずが増えていく、1人暮らしも、もうすぐ3年。

おやしらずこしらず
(親不知子不知にはまだ行ったことがない)



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/11/19 11:30

りんごの話。

日曜は料理

平日はできないような、時間のかかるオカズを、まとめて作るのだ。

今日は、同じく1人暮らしの友だちが

長野のリンゴ、1人じゃ多いから分けない?

有り難く手に入れた紅玉で、リンゴ煮を作ろう。

こうぎょく

手に取ると体温で匂い立つような小さなリンゴ。紅玉(ルビー)とは全くよく名付けたものだ。

惜しみ惜しみ薄く剥いた皮と一緒に煮れば、綺麗なピンクのリンゴ煮が出来上がった。

写真を撮ってムスコに送ると

♪ぺぽん♪

さっそく返信がきた。

これ何?芋?

リンゴ煮ですよ オイシイよ

これは写真が悪いわー

スミマセンね!


らちもないやりとりで、ムスコの健在を知る。

忙しくて料理どころではないムスメには、こういう写真は送らない。彼女に関しては、便りのないのが良い便りなのかもしれない。

リンゴだけど、梨のツブテ、なんてね。



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/18 11:30

どりょくの話。

インスタントヤキソバが好物である。

テレビでその工場見学の模様を映していたので、目が離せなくなった。

最新の製造工程を、ドキドキしながら見守る。

…高温の油で揚げ 炒めた食感を再現します

…焦げたソースの風味を加えます


あー、やっぱり!近づける努力してる!

テレビの前で切歯扼腕しても、なすすべもない。

Kaizenは英語になったという。

たゆまぬ改善や改良は、日本企業の美徳である。

しかし、ことインスタントヤキソバに関しては、企業努力を放棄してもらえないだろうか。

お願い!ほっといて!

私はヤキソバが好きでインスタントを食べているのではない。

インスタントヤキソバが食べたいのだ。

インスタントヤキソバをKaizenしないで!

そもそもヤキソバの代替物として作られたであろうインスタントヤキソバであるが、私はまったく別の食べ物だと思っている。

…と、自説を熱弁しかけたが、すでに同様の記事が存在していた。(→ やきそば話。)危ない、アブナイ。

いんすたんとやきそば
(♪ど~ぞ~ このま~ま~♪ は丸山圭子)



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てれびじょん | コメント(16) | トラックバック(0) | 2019/11/17 11:30

すまない話。

ぎんざえきこうないず

混雑した駅の構内。

乗り換えのホームへと急いでいたら、流れを横切るように歩いてきた人と軽くぶつかった。

天井近くの案内表示に気を取られていたらしい。

あっ ごめんなさい!

大丈夫ですよ、と手を振って、右と左に分かれる。

乗って降りて、着いた駅のコンコース。

エレベーターの扉が開いたので、荷物が多くて大変そうな人に先を譲った。

あら、どうもありがとう!

どういたしまして、と会釈を返す。

地上に出て歩き出した時、なんだか気分が良くて、なぜだろうと考えた。

ごめんなさい、ありがとう。

もしかしたら、どっちもスミマセン!で済ませていたかもしれない、それぞれの場面。

ごめんなさい!

ありがとう!


ちゃんと言えることは、とってもステキだ。

次にこんなことがあったら、私もスミマセン、じゃなくて、ありがとうやごめんなさいを言おう。

そう思いながら歩く、街に冬の風。



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2019/11/16 11:30

わびしい話。

パソコンの画面を見ていると

プイッ…

目の端を黒いものが横切った。虫ではない。

飛蚊症である。(→ おやぶん話。

ここ数年、特に悪化することもなく、眼前を横切るフワフワとも、ずいぶんおなじみになった。

パソコン作業を終えれば、食事の時間だ。

残り物の煮豆などを並べた貧しい食卓を前に、それでも心楽しく、箸を取る。

プイッ…

アレ?何かこぼれた…

床には何も落ちていない。ははーん、また飛蚊症だ。

ヤッカイな症状だが、1人暮らしの無聊を慰めてくれると思えば、まんざら憎くもない。

テレビを伴に食事を終え、ソファに移って伸びをすれば、うっすら残る煮豆のニオイが

けっこう美味しくできてたな…

ちょっとした感慨をさそう。

こういう食事はたぶん、わびしげに見えるのだろうが、主観的にはけっこう満ち足りた、いい時間なのである。

おっと、出かける時間だ…

慌てて身体を起こし、カバンを持って玄関へ。靴を履こうとかがんだら

プイッ…

何か落ちた。また飛蚊症…いや、違う。

煮豆

煮豆じゃん!

さっきの食事の時のプイッ…はやっぱり、飛蚊症じゃなかったんだ。

一体全体どこにくっついてたんだろう?そりゃ、ニオイもするわな…

つまみ上げた煮豆を見れば、思わずプププと笑いがこぼれ、やがてゲラゲラ笑いになる。しばらくして笑いやめると

………

静けさが戻った。

わびしい、というのはこういうことである。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/11/15 11:30

あいこと話。

子どもが小さい時、たまにお留守番をさせると、ドアを開けるのに合言葉を使っていた。

ドアを開けるまでのやりとりが、グリム童話の「オオカミと七匹の子ヤギ」みたいで

あー、私おかあさんしてるな~

しみじみ感じたのを思い出すと、今も時々言ってみたくなる。

どんなのがいいだろうか。

知らない第三者には見当もつかなくて、かつ本人同士は忘れにくいもの。それに加えて、できれば頼もしい感じの言葉がいいな。

山?川! …合言葉の意味なし。

帯状?疱疹! …奇をてらい過ぎだし、不健康。(ちょっとカッコいいけど)

タマラプレス?イリナプレス! …強そうだけどスポーツマニアのオオカミにはバレちゃうかな。

ムスコが中学生の頃、いきなり「石原?」と言ってみたことがある。

ヤツはすかさず「軍団!」と言ったね。

なかなかいい合言葉である。オレオレ詐欺がかかって来たら、試してみようと思っている。

たまらぷれすいりなぷれす
(左が姉のタマラさん、右は妹のイリナさん)



本日早朝より他出のため、2013年11月13日の記事を再掲いたします。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/11/14 11:30

ふぇありー話。

着るものに迷う季節。何を着ても暑かったり寒かったり、なかなかピタリと来ない。

真夏のようにペロンと1枚着ればいいというのでもなく、真冬のようにコートですべて隠れるわけでもない、今どきはほんとうにめんどくさい。

朝起きて

あー 今日何着よーかなー…

字面だけ見ると楽しそうだが、ただでさえお洒落でない私は、ただただ憂鬱である。

毎日おなじ制服で済んだ時代が懐かしい。男性の背広も、羨ましい。

ウンザリしてタンスに向かうと、昨日脱いだ服が椅子の背にかけてある。

この頃は下着を着るし、汗もさほどかかない。

おんなじ服、着て行っちゃう?

洋服ダンスの妖精がピヨピヨと頭の周りを飛んだ。

ようふくのようせい

さいわい今日の行き先は昨日とは別だ。

いいじゃんいいじゃん 着てっちゃえ!

妖精はささやく。

かんたんに誘惑に負けた私は、上から下まで昨日の服を着たうえ、出しっぱなしのアクセサリーや時計まで、同じものをつけた。

いやはや、ラクチンラクチン。

昨日と同じバッグを持ち、昨日と同じ靴を履こうとした時。

ハッ!ダメだ!ナニガシさんが来る!

昨日会った人を、今日ご一緒しましょう、と誘ったのだった。

バカバカ、昨日の私のバカ!

もんのすごい勢いで部屋に戻り、着ていたものを全部かなぐり捨てる。

あーもー 何着よーかなー…

起きた時に逆戻りである。

妖精はタンスに帰ったのか、もう現れなかった。



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もろもろ | コメント(9) | トラックバック(0) | 2019/11/13 11:30

くちどめ話。

ひさびさの、何もない平日。

思いきり寝こけて寝坊して、いいかげん寝飽きてようやく起きる。頭をボリボリ掻きながら、寝ぼけ眼でカレンダーを見ていたら

ハッ!

カードの決済日ではないか。

土日バタバタしていて、まだ入金していない。

慌てて着替えて、自転車にまたがると、記録的なスピードで銀行に着いた。

どうやら事なきを得て、ホッとして自動ドアを出たら、飛び込んできた人とぶつかりかけた。

スミマセン!

いえ、アレ?

あら!ぢょん子…さ…ん…

やっぱり オオバさん?

オオバさんはご近所の奥様。

髪は巻き髪、キラキラのアクセサリーを欠かさず、ゴージャスで華麗な装いの女性である。

それが今日はどうしたことだろう。

モシャモシャの髪をゴムで結わき、毛玉の湧きかけたフリースに、ジャージーのパンツ。

私だって他人様をアレコレできる服装ではないが、なにしろふだんがふだんだから、彼女のほうが落差が著しい。

ビックリしている私の前で、オオバさんは気まずそうに、頬に手をあてたり、髪を撫でつけたり、弥縫策にこれ努めていたが、ふと

あ コレ… コレあげる… 

持っていた紙袋に手を突っ込むと、茶色い円盤を取り出し

じゃ…

押し付けるように手渡したと思うと、あっという間に行ってしまった。

あっけに取られて手の中を見たら、それは回転焼、ここらでは御座候などともという、お菓子であった。

いやコレ、どうすんの?路上で、むき出しで…。

自転車置き場に向かいつつ、しかたなくかじれば、ホカホカと温かく、あんこが湯気を上げる。

これはアレだな、口止め料だな

そう思うとおかしくて、甘いあんこが、いつもより甘かった。

ござそうろう
(回転焼、今川焼、大判焼…あなたは何と呼ぶ?)



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ごきんじょ | コメント(22) | トラックバック(0) | 2019/11/12 11:30

ロンドン本。

英国に住むと決まったが、何をしてよいか分からない。ネット検索はまだ一般的でなかった時代である。

図書館でカードを見て、それらしき本を探すことを思いついた。

ガイドブック、旅行記、滞在記…端から借りて、とにかく読んだ、その中にこの本があった。

ろんどんろんどん

明治、大正、昭和を生きたジャーナリスト長谷川如是閑の著書である。

時は明治43年。シベリア鉄道で渡欧した如是閑の、英国見聞記。

パラパラめくると「英皇崩御の翌朝」とある。

滞在中に王様の御大葬に接した、貴重な記事であるが、その王様というのがエドワード7世、今のエリザベス女王のおじいさんである。

これからの生活に役立てるには、なんぼなんでも古すぎるだろう。自分でもおかしかった。

しかし、読んでみるとこれが面白い。

先立つこと10年、文豪漱石の滞英記が、劣等感と不全感に満ちたジメジメモードであるのに対し、如是閑の筆致は乾いて明るい。

未知のものを見て、分析して、結論を出す。

そういうことを習慣的にやっている人の、訓練された観察眼が、建築、風俗、政治の在り方、女の服装に至るまで、まっすぐに注がれる。

加えて文章が簡潔で、上手いのだ。

さまざまなガイドを読んだけれども、英国と英国人の端っこを理解するのに、いちばん参考になったのは、もしかしたらこの本かもしれない。

今日は著者長谷川如是閑の没後50年に当たる。



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ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/11 11:30
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