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つういん話。

今日は通院。季節柄、待合室にはマスクの人。

ここでしか読まない雑誌をペラペラめくりつつ待っていたら、ドアの向こうから

…いやー!うわーん!…

漏れ聞こえるのは子供の泣き声である。

たぶん予防接種、注射だな。

やがて診察室の扉が開くと、小さな女の子が、お母さんに連れられて出てきた。目元が赤らんで、ヒックヒックしゃくりあげている。

病弱だった私は、冬の初めには必ず体調を崩し、熱を出した。お休みできるのは嬉しかったが、

さ、ミヤワキさんに行くよ

母が言いだすと途端に憂鬱になった。

ミヤワキ先生は子供の頃のかかりつけ。(→ はしかの話。)昔のお医者様は、熱が出たくらいのことでも、じつに気楽に注射をなさった。

しんどいから行かない…

バカね しんどいから行くんでしょう!

抵抗もむなしく、ミヤワキ医院の門をくぐる。

聴診器の後、銀色の平らなスプーンで舌を押さえられ、やがて看護婦さんが、アルコール綿の容器や様々な器具をのせたワゴンを押して現れる。

もはやこれまで、俎板の鯉とならないのが子供というものである。

泣いて泣いて、泣いた。

帰り道、どうしても泣きやまない私に、母もよほど困ったのだろう。商店街の小間物屋で、珍しくブローチなど買ってくれたこともあった。

あまりつけた覚えのないクマさんのブローチは、今もオルゴールの中にある。

くまのぶろうち




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むかしむかし | コメント(16) | トラックバック(0) | 2019/11/30 11:30

めがねの話。

さてと、腰を上げよう。

今日は初めての場所に行って、初めての人に会うのだ。

よそゆきに着替えてアクセサリーをつけたら、最後にメガネをかける。

一般的に、メガネの女性は、お出かけの時はコンタクトレンズに換えることが多い。

地味で目立たない女の子が、メガネをとると美人だったなどという、昔の少女マンガもあった。

しかし私は、ふだん裸眼で、家を出る時メガネをかけるという、逆をやっている。

子供の頃は視力検査表の一番下でも物足りないくらい、なんでも見えた。

成人してから近視になったせいか、メガネをかける習慣がつかなかった。よく知ってる人と会い、勝手のわかる場所にいるぶんには、困らない。

しかし、そうでない場合はやはり、メガネが必要だ。

衣服を改めると同時に、細い金縁のメガネをかけると、地味な顔がすこし華やぐ。

メガネは私にとってオシャレなのだ。

こんなことまでヘソ曲がりの自分が、なんだかおかしい。

きんぶちめがね



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/11/29 11:30

だんさの話。

役場に用足しに行った。

時間のかかるわりに1円も儲からず、そのくせ行かないと大損をすることになる役場という場所に、いい思い出はない。

耐震補強もまだなのに、構えばかり大きいエントランスを入ると清掃中。作業員がべちゃべちゃのモップを振り回して床を拭いている。

来客の往来する時間帯に、わざわざ掃除する無神経さも、役場特有である。

窓口では、あんのじょう不愉快を味わわされたが、想定内なので驚かない。

用が済んだらサッサと立ち去るのが一番だ。

フロアを横切り、出口に向かうと、前にいた商店主風の男性が立ち止まり、ついと身をかがめた。



その後ろで、背広姿の若者も、急に歩調を緩める。

???

つられて立ち止まった私の目の前に、赤い三角が立っていた。

からーこーん
(場所柄撮影ははばかられたのでイメージ図でご勘弁ください)

ロードコーンとかカラーコーンとかいうアレ。そこにA4のコピー紙に手書きのハリガミで

段差あり

コーンはフロアの真ん中の平らな床にポコンと置かれている。

見回しても段差らしきものは無いが、そう言われれば足元に注意せざるを得ない。

商店主とサラリーマンに続き、私も首をかしげつつ、そろそろとコーンの横を通りぬけた。

そりゃまあ、広い世の中、段差もあるだろう。

たしかに、ここにあるとは書いてなかったもんな。

人間到ル処段差アリ…か…

教訓を得たような、そうでないような。

歩いているうちに、だんだんおかしくなる。暖房で火照った頬に、寒風が快かった。



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/11/28 11:30

もみもみ話。

今日はおばーちゃんと待ち合わせ。

場所はいつも、座って待てるショッピングモールの中である。約束より早く到着したが、おばーちゃんは既にちんまり椅子に納まっていた。

とりあえずお茶でもと、揃って歩き出した店内は、セールの飾りつけでにぎやかだ。

ぶらっくふらいでー

ぶらっくふらいでーって何?

さあ どうせアメリカの何かでしょ

そんなことを言い合って、ふと見ると横にいたはずのおばーちゃんがいない。

驚いて振り向いたら、さっき通り過ぎた飾りつけのそばに立ち止まり、しげしげと眺めるわが母。

なに?どうした?

あわてて駆け戻ると、ちょうど手を出して、ディスプレイの黒い風船をモミモミしているところだった。

やーだ なに触ってるのよオ!

いや、固いか柔らかいか、何だろと思って…

もー!ちっちゃい子じゃないんだからサ!

風船かなと思ったら やっぱり風船だったわ

騒ぐ私をよそに、風船の手触りを確かめた老母は、たいそう満足げである。

帰りによく見てみたら、たくさんの風船には、上のも下のも、指紋がペタペタついていた。

おばーちゃんの仲間は老若問わず、あんがい多いらしい。



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/11/27 11:30

ばんめし話。

AI献立はマッピラゴメン(→ えーあい話。)だが、献立に悩む気持ちも分からなくはない。

今は1人暮らしで、気まま勝手にやっているが、家族がいた頃はやっぱりめんどくさかった。

献立の悩みとは、食べたいものと作りたいもの、作れるもののミスマッチである。

作りたいものは材料がなくて作れないし、作れるものは食べたくない。かといって食べたいものはめんどくさくって、およそ作る気がしない。

シワが増えるほど悩んでも、子供や亭主にウケるとは限らない。

それが毎日続くのだから、イヤになるのも当然だ。

画面では若い主婦が、小さい子供にまとわりつかれながら、悩みを訴えている。

お昼からもう、ヨルゴハンはどうしようって…

話は変わるがこのヨルゴハンって何だろう。

子供の頃の実家の夕食はバンゴハン。同じものを父はバンメシ、と呼んだ。

お友だちのお家ではユウハンと言っていて、珍しく思ったのを覚えている。

いずれにせよ、ヨルゴハンなんて言う人は、昔はいなかった。

昼のゴハンがヒルゴハンだから、夜のゴハンはヨルゴハンでしょう?

そんなのは言葉を知らない幼児の理屈である。

ともあれ、冬の日は短い。

悩める主婦に待ったはなく、あっちゅうまにバンゴハンだかヨルゴハンだかの時間がやってくる。

とつげきとなりのばんごはん
(ヨネスケ師匠もヨルゴハンでは突撃しにくい)



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/11/26 11:30

えーあい話。

朝のテレビはAI入門

目新しい物にはとりあえず反発するという、従来の方針にのっとり

AI搭載 衣類折り畳みロボット…

ンなもんいらん!

手相占いもAIで…

バカか!

否定的な合いの手を入れつつ、楽しく見る。

続いて紹介されたのはAI献立アプリ

家族の嗜好やアレルギー、スーパーの特売情報から、1週間分の献立と買物リストを作ってくれるという。

アプリに言われるまま買物を済ませた主婦が映り

あとはレシピに従ってお料理するだけ!

楽し気なナレーションが流れるが

何が「だけ」じゃー!

他もくだらなかったが、このAI献立にはもっとも反発を覚えた。

たぶん、AIが示したリストやレシピに、唯々諾々と従うのがイヤなんだと思う。

AIが決めた献立が、いかに栄養的に優れていて、経済的であろうとも、メンドクセエ、作りたくないと思えば、こんなのまるで無駄である。

だいたい私は指図されるのがキライだ。

ああしろこうしろ、指図されるくらいなら、パッとしない料理をブツブツ言いながら、自分で作るほうがいい。

親の言うことも聞かなかったのに、今更なんでAIごときに…

自慢にならないヒトリゴトとともに、テレビを消す。

えーあいこんだて
(いいよー もう私のことはほっといてください)



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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/25 11:30

かわいい話。

風が冷たくなってきた。そろそろ自転車に乗るにも手袋をはめよう。

ハンドルを握ると傷むから、オシャレなのはもったいない。何年も前にムスメが使わなくなった、古い手袋をはめている。

かわいくないてぶくろ

このクマが、何度見てもかわいくない

まず、白目の分量が多いのがよくない。

動物がかわいいのは、黒い瞳の魅力である。このクマだってもうちょっと黒目が大きければ

あんまりかわいくないくま

ほら、これだけで、ちょっとかわいくなった。

しかしまだ、鼻の下が長くてオッサンくさい。もう少し口元がチマチマしていれば

ちょっとかわいくなったくま

おお、ぐっとかわいくなったぞ。

欲を言えば、耳が大きいほうが子供らしくてかわいいんだけど。

かわいいくま

そうそう、これこれ。

しかし、いくら画像を加工しても

かわいくないてぶくろ

現物はかわいくないままなのであった。



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もろもろ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2019/11/24 11:30

てんむす話。

名古屋で仕事があったとき、お土産に名物の天むすを買った。

てんむす
(→ 千寿本店謹製めいふつ天むす

到来物やお土産というのは、中に入っているパンフレットや引き札を、丹念に読みながら食べると、ことのほか味わいを増す。

竹の皮包みの上に、二つ折の小さな紙片が一枚。開いてみると

本日は 元祖の味をお買い上げくださいまして 誠にありがとうございました

とある。そうそう、これこれ。

天むす発祥の由来書は、シロウトくさい文章が味わい深い。

昭和三十年代初め天ぷら店をしていた初代が
忙しかったため せめて夫に栄養のあるものをと
車エビの天ぷらをおむすびの中に入れたところ
「意外とおいしい」と喜び、色々と苦労を重ね
味付け法を生み出し 天むすの誕生となりました


へえ~、なるほど。

なるほど、なんだけど、何となくおかしい。

まず「意外とおいしい」意外とはよけいだろう。

おまけにこの文章、天ぷら屋のおとーさんが、めでたく美味しい天むすを食べられるようになりましたとさ、で終わっている。

それもそのはず、由来書の冒頭には、どうどうと

夫への愛情が生んだ味

とある。忙しい夫のための天むすのおこぼれを、我々はいただいているわけだ。

終始お客様不在なのが、いっそ清々しい。

いい夫婦の日に続き、今日は勤労感謝の日

世の中には、並んで仕事に励んでいるご夫婦が、きっとたくさんいるんだろう。
 


本日早朝より他出のため、2016年11月23日の記事を再掲いたします。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/23 11:30

ぱんふの話。

寒い朝のバス停。

ポケットに手を突っ込み、バスを待つ目の前に、ヒラヒラと風に動くもの。

ご自由にお取りください、の添書きの下に、宗教団体の薄い冊子が数冊、結び付けられている。

厳密にはルール違反なのだろうが、時々目にするのは、近くに信者があるのかもしれない。

誰かが1冊、ちぎり取ったあと。

何年も前、本当に苦しかった頃、私もこの冊子を取ったことがある。

夏だったか、冬だったか、それさえも定かではない。辛い日々は、夏でも寒い思い出になる。

そんな時、バスを待っていたら、表紙の文字に目をひかれた。

励ましでも、祈りでも、何でもよかった。

周囲に人影のないのを確かめ、結ばれた紐から冊子を取って、バスに乗り込んだ。

コソコソと隠すようにページをめくる。

ありふれた不運や苦悩。信仰を持って得た幸福。様々な境遇の、さまざまな人の言葉が並ぶ。

何を感じたのか、今となっては思い出せないが、その後も幾度か、その冊子を取っては車内で読み、こっそり駅で捨てた。

それで救われた、とは思わない。まるでヤジロベエのように、フラフラと頼りない時期だった。

今、このパンフレットに手を伸ばさずに済むことを、幸せに思おう。

定刻を少し遅れて、やってきたバスに乗り込む。

どりーむらんどまえ



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/22 11:30

わわわの話。

パソコンに向かっていたら、首がスースーする。

マフラーか何か巻くか…そうそう、あれがあった

ねっくうぉーまー

ネックウォーマーだ。

布を筒に縫っただけのものだけれど、あると無いとで暖かさがぜんぜん違う。

しばらく快適に作業を進めていたが、今度はキーボードを打っていると袖が下がってきた。

まくってもたくし上げてもすぐ下りてくる。

しかたないなあ…

抽斗を開けて探したら、いつぞや何かでもらったリストバンドが出てきた。

手首を痛めた時、サポーター代わりにはめたら具合が良かったので、取っておいたのだ。

ヨシ、これで袖を上げよう。

思いつきだが、なかなかいい。袖口がキュッとしまって動かしやすいし、暖かい。

快調に作業が進む。余裕が生まれると余計なことを考える。

キーボードをカチャカチャ打ちながら、考えた。

そういえば今朝、足元が冷えるなあと、ジーンズの上にレッグウォーマーを穿いた。

仕事にかかる時には、ヘアバンドで髪をまとめる。

ネックウォーマー、ヘアバンド、両手両足にリストバンド、レッグウォーマー。

いずれも大小の差こそあれ布の輪である。

私という人間には今、つごう6つの布の輪がはまっているわけだ。

何でもないんだけど、何だかおかしい。

あとハラマキなんかしたら 7つだなあ…

アタマが騒がしくなったら、そろそろ休憩だ。

ぷぷ…なんて笑いながら、コーヒーを淹れに立つ。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/21 11:30
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