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どんべえ話。

非常食のカップ麺の賞味期限が近い。

新しく買ってくるとして、古いのは食べてしまわねばならぬ。

ローリングストックというやつだ。

昔はカップ麺というと心が躍ったものだが、近頃そうでもなくなったのは老化だろうか。

まったく平常心でお湯を沸かしながら、そうだ、玉子を入れよう、と思いついた。

麺の上のお揚げをどかして玉子を割り、熱湯を注ぐ。湯気の上がるカップに、かろうじてフタだけはして、洗濯物を干しに行った。

以前はタイマーなどセットしたものだが、最近はそれすらしない。

3分が5分になったところで、ウマくもマズくもないものが出来るだけ。たいした差はないのだ。

洗濯物干しが終わって、部屋に戻ると、卓上でカップ麺がじっとしている。

さて、食べるか。

フタを剥がして箸を割ったとき、目の端に茶色い板状のものが映った。

あっ、お揚げ!

なんとなくつまみあげると、お湯をかけない揚げは、カリンカリンに乾いて軽い。

おかしくて笑ったら、静かな家に笑い声が響いた。

1人暮らしも、もうすぐ3年になる。

どんぎつねさん
(お湯をかけたらこんな狐さんが出てくるんだといいなあ)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/01/11 11:30

みおくる話。

初売りの混雑も、福袋の行列も苦手な私が、ここのところ毎年、買っていた福袋。

小さな喫茶店で、松がとれても売り切れの心配もない。(→はつうり話。

そういやぁまだだったな、と買いに行く。その程度の熱意でちゃんと買える福袋なのだ。

店の前に出したワゴンに、紙袋が数個。心なしか寂しげなその風情が、逆に頼もしい。

近づくと、見覚えの紙袋と少し違った。

アレ?大きい?

まさか、気のせいだよね。

ここのは中身を見て選んでいいので、心楽しく紙袋の口を覗き込んだ。

レギュラーコーヒーに紙パック入りのジュース、レトルトカレーとパスタソース…

アレ?増えてる?

どうしても違和感をぬぐえず、いったん帰宅、検索したのは自分のブログである。

ふくぶくろのなかみ

2018年の福袋の中身がコレ。

おぼろげな記憶ながら、明らかに増えている

さっきのには、レギュラーコーヒーが3袋、レトルトパックも4、5袋は入っていた。加えて業務用らしい大ビンのドレッシングがあった、と思う。

とてもじゃないが、期限内に食べきれない。

要らないものを買うのは気が進まないので、購入は見送ることにした。お得だから買わないというのは、ちょっと珍しいかもしれない。

これにて私の買う福袋は、ついに0個となった。



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2020/01/10 11:30

いじわる話。

休日の街の目抜き通り。

行き交う人の中、右に左にピョンピョンと、不規則な動きが目についた。

ほどうのぶろっく

3年生くらいの男の子が、ブロックで舗装された歩道の、黒い部分を選んで踏んでいる。

おっとっと、あぶなっかしい足取り。

彼の心の中で、歩道の白い部分は激流であり、黒い部分が水面に出た岩なのだ。

河に落ちたら…ワニがガブッと…

脳内でスリルを演出しながら、進んでいく。

その子が何をやっているのか、すぐ分かったのは、自分も昔よくやったからだ。

買物に興味の無い小学生に、街は退屈きわまりない。かといって、親が帰ると決めた時刻までは、ついて歩かなければ仕方がない。

そんな時は私も、ああして遊びながらついて行ったものである。

往時を懐かしんでいたら、ピタリと足が止まった。

1人のオジサンがまっすぐやってきて、そのルートが子供の行く手をバッチリふさいだのだ。

足元を見ていた子供は、しばらくマゴマゴしていたが、あきらめたように白い部分に足をおろし、オジサンに道を譲る。

まったく鈍感で、無粋なオヤジだなぁ

つい顔を見たら、なんと、うっすら笑みが浮かんでいるではないか。

このオヤジ、分かってやってる!

ピョンピョンをやめて、おとなしく歩きはじめた小さい後姿に、

意地悪オヤジ!

思わずはたいてやりたくなったが、どうにかこらえた。



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2020/01/09 11:30

まいやん話。

好きだと気づいたのは、ムスメの言葉がキッカケだった。

テレビの音楽番組を見るともなく見ていた時

この人好きでしょ おかーさん

いきなり言われたのだ。

え?なに?なんで?

当惑していると、フフン、と笑いながら

こういうカオ好きじゃん 昔から…

ムスメはこともなげに言い放った。

アップテンポで曲は進み、やがてその人が大写しになった。

白く薄い皮膚と細くしなる肢体。

眉をひそめた真剣な表情が、微笑みでたわいなく崩れる。

ああ、たしかに好きかも…

ファン心理に欠ける私とて、木石ならぬ身、見た目の好き嫌いはある。

わざわざチャンネルを合わせはしないが、見れば気分がいい、そんな人はいくたりか居る。

それにしても、こうもやすやすと悟られるとは、どんな顔でテレビを見ていたのだろう。ちょっと恥ずかしい。

乃木坂46の不動のセンター、白石麻衣の卒業が報じられた。

ファンじゃないからショックではないが、好きな顔をテレビで見る機会が減るのは、残念だ。

しらいしまい
(変換すると「シライ姉妹」がまず出るが、その正体は不明)



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2020/01/08 11:30

びじょんの話。

市内の路線ではテレビのついたバスが走っている。

宣伝映像が主の、なんたらビジョンというやつだ。

しーかちゃんねる

お土産に 伝統の味・鹿最中

観光客向け広告の合間に、路線案内やバス停クイズが映る。

東大寺大仏殿へは次でお降りください

いずれにせよ当地の住民にはほとんど無用の情報なのだが、なぜだろう、必ず見てしまう。

動くものについ目が行く、本能だろうか。

大豆越と書いてなんと読む?

意識的に視線を逸らしたり、眠れぬまでも目を閉じたり、見ない努力はするのだが、気づけば画面を凝視している。

古民家でいただく大和野菜の健康グルメ

繰り返し流れる数分の番組を、何周めだ?と思いつつ、また眺めてしまう。

目が疲れて頭痛がしてきたので、目的の停留所の1つ前で降りたら、冷たい風がぴゅー。

大豆越、と書いてまめごし

知識が増えたので、よしとするか。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/01/07 11:30

ぱじゃま話。

うちは実家で年を越すので、自宅にはお節もお屠蘇もないが、わが家なりの正月行事を執り行う。

下着など、肌につく衣類を新品に換えるのだ。

子供がいた時期は、サイズが合わなくなったとか、破けたとか、都度の対応をやむなくされる。

枚数の管理も大変だし、経済的な問題もあり、かならずしも正月にまっさらのパンツ、というわけにはいかなかった。

1人暮らしの今、ようやっと昔のゆかしい習慣を取り戻すことができたのである。

風呂上り、新品のタオルで身体を拭き、新品の下着を身につけると、年が改まった実感が、じわりと迫ってきた。

むろん、パジャマだって新品である。

目をつぶると、まだ洗濯の水をくぐらない生地の香。

そして目を開ければ

ねまき2

あーあ なんちゅう柄…

そう、むろんわが母、おばーちゃんからの貰い物である。(→みのうえ話。

いいような、悪いような、新しい年がはじまる。



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もろもろ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/01/06 11:30

としだま話。

実家滞在も3日、老母と仲良くいられる、タイムリミットが迫ってきた。

大ゲンカになる前に、平和的に帰宅しよう。

じゃーひとまず帰るわ ゴチソーサマ

そう告げて出ようとすると、おばーちゃんが

あ、ソレ持って帰って オトシダマ

玄関に置いたものを指さす。

予感的中。

じつは大晦日、家に入ってきたときから、あるな、と思っていたデカい紙袋だ。

母は大の買物好き。

自分のものでは飽き足らず、誕生日にクリスマスに、あらゆるプレゼントの機会を逃さない。

持ってるから、要らないからと断っても、彼女からの物資支援は堰き止められない。50年を超す付き合いを経て、もはや諦めた。

さあ今度は何だ。サイズのわりに軽い紙袋の中、丁寧に包まれた薄紙を剥がすと

うへー…

嘆息は、さいわい感嘆に聞こえたようだ。

イイでしょ ダウンよ あったかいわよ!

知ってる。

アンタ持ってないでしょ、ダウン!

そうだね、キライだから(→だうんの話。)ね。

ダウンはなんだか似合わないから好きじゃない、って、何度も何度も言ったつもりだが、老母にはこれっぽっちも染み込まなかったらしい。

ほら、着てみて、ホラ!

言われるままに羽織ると、あんのじょう全然似合わないが、心を込めてありがとうを言った。

着てきたコートを紙袋に入れて、玄関を出る。

はじめてのダウンは、やっぱり暖かかった。

ステキな奥様のダウン
(せめてもの救いはこの手の奥様系ダウンでなかったこと)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/01/05 11:30

ぽんぷの話。

実家滞在3日目。

ふだんは気ままな1人暮らしだから、だんだんと窮屈になってくる。

そもそも、母と私とは、不仲でこそないものの、けっして相性は良くない。

イモートと母は、ツーといえばカーというか、いちいち説明しなくても、分かりあえるらしいが、私は母が分からない。

離れて住んでいた頃は盆暮れの帰省も長かった。

1週間、10日と滞在が長引くにつれ、母と私の間にはギスギスした空気が流れ、

アンタにはほとほと呆れたよ!

2度と来ない、こんなうち!

捨てゼリフで帰宅、がお決まりであった。

その後ボチボチ関係を修復し、夏休みには晴れやかに帰省するのだが、けっきょくまたケンカ…を繰り返してきた。

私も母も年をとって、いくらか穏やかにはなったものの、炎上しては火消しに努める関係の、本質的なところは変わらない。

今回のきっかけは断捨離のテレビ番組。

80代のお母さんと、50代の娘さんが、実家の片付けをめぐってもめている。

私はトーゼン娘さん側、おばーちゃんはお母さんの肩を持つ。

親に向かってあんな言いかた… ヒドイわ!

よかれと思ってのことでしょ あれじゃ足元が危ないよ!

画面の中で代理戦争が勃発している。

そろそろ、家に帰る潮時のようだ。

だんしゃりしました



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/01/04 11:30

まっちの話。

ムスコも、ムスメも、イモート一家も帰らない、静かな正月。

おばーちゃんと2人、お節とお雑煮で祝ったら、駅伝中継を見て過ごす。気楽で、あんがい寂しくもないが、いかんせんヒマである。

アンタも昔は あれくらい痩せてたのにねえ…

駅伝の選手と比べないでよ!

らちもないことも言い合いつつダラダラしていると、お茶が出、お菓子が出る。

コレ、ドコソコ屋のナントカ…

さきほどお節で満腹したばかりなのに、なぜ母はマンジュウを出すのか、そしてなぜに私はそれを食べてしまうのか。

まあいっか、正月だし…

ごまかしてお腹を押さえ、ひっくり返っていたら

アンタ また太ったんじゃないの…

老母は容赦ない。

だって食べてばっかだし プールは休みだし…

思わず子供みたいに口をとんがらすと

節制しなきゃダメよ いいトシなんだから!

冷淡に言い放って、お盆を手に台所に去ったので

じゃあマンジュウ出すなよ!

のヒトコトは宙に浮き、心の声となった。

実家はモノが多いが、食物の在庫も過剰だ。

仏間には和菓子の木箱があり、茶の間の缶にはアラレやオカキ。空腹でもないのについつい、1つ2つとつまんでしまう。

危険極まりない。

この家では努めて自制せねばならぬ。

そう心に決め、洗い物でもしようと台所に入れば

ノド乾いた?アイス買ってあるよ コーラも…

母の顔をした悪魔がほほえむ。

おかーさん!アンタいったい 私をどうしたいんですか?

マッチポンプ、という言葉が頭に浮かんだ。

まっちのひ
(とはいえ母のすることは点火のみ)



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2020/01/03 11:30

びんごの話。

さて、お正月

老母と2人、めでたく祝ったものの、しばらくするとムズムズしてくる。

ああ!要らないものがいっぱいある!

そう、実家にはモノが多い。

母は母なりに、アッチのアレをコッチに、コッチのコレをアッチに、片付けているつもりらしい。

だから余計に、娘の差し出口が癇に障るのだ。

捨てれば、とか、要らないんじゃない、とか、うっかり言うと、みるみるご機嫌が悪くなるので、家庭平和のためには、黙っていたほうがいい。

重々わかってはいるのだが…

おかーさん これ何?

もお まーたアンタは 人の持ち物を…

ブツブツ言われながら、見慣れぬ箱を開ければ

あ、これ!

びんごましーん

ビンゴゲームの器械である。

数年前まで、お正月はビンゴゲームが恒例だった。

おばーちゃんは、孫たちが喜びそうな賞品をあれこれ買いととのえ、準備していてくれたものだ。

月日は流れ、小さかった姪っ子は高校受験。イモート一家は今年の帰省を控えた。

ムスメとムスコも、それぞれ年越しイベント参加で、実家には来ない。

ふと、おばーちゃんが言う。

やろうか?ビンゴ…

ええーっ、2人でぇ?

出すよ、賞品 いや賞金か…

あー、ハハハ… でもカードが要るよ?

ア、そっか…

言いあいながら、使わないビンゴマシーンを、また箱にしまった。



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/01/02 11:30
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