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ぴかぴか話。

めずらしく名刺交換をした。

ふだん知ってる人とばかり仕事してるから、名刺なんか出したのは久しぶりだ。

交換の相手は新卒の社員さん。

スーツも靴も、ムリに撫でつけてはね返りそうな髪も、若い脂で光るおでこも、どこからどこまでピッカピカの新人である。

先方の名刺と、自分のと。手元を見比べて、アッと思った。

アタシの名刺入、ボロッボロ!

新人さんの持ち物と比べるから、よけいボロッちいのが目立つ。

善は急げ、帰り道に新しいのを買った。

うちに帰って新品と並べると、さっきまで使っていたのが恥ずかしいほど、古びて見える。

もらい物で、とくに気に入っていたわけでもなく、ミョーに厚くて、重たい名刺入だった。もっと早く買い替えればよかった。

さっそく中身を出して入れ替えていたら

しゃりーん!!

金属音を立てて、何かが落ちた。

はっ?なんだコレ?

こばん

…小判?!

まさかに本物ではあるまい。お守りの類だろう。

こんなもんが入っていたんじゃ、そりゃあ厚いし、重いはずだ。

いつからここにあったのか、触ったあともない小判は、メッキでピカピカであった。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/06/20 11:30

ほくせい話。

昨夜からの雨は、けっこうな勢いのまま降り続いている。テレビを点けたら、JR各線が停まる、との運行情報。

梅雨だからと思ってたけど、エライことらしい。

…県の北西部に大雨警報…

画面にテロップが流れた。

そうか、北西部が大雨か。そりゃあ大変だ。

ところで、北西部ってどこなんだろう?

私はどえらい方向音痴で、地理が皆目分からないうえ、車の運転もしないので、学ぶ機会もない。

ゾーリのように南北に広がるこの県の、どのあたりに自分が住んでいるのか、イマイチわからないんである。

なんとなく、南ではない気はする。

しかし、西か東かというと、もうサッパリだ。

家族LINEを見たら、ちょうどイモートがおはようのスタンプを押していたので

おはよー うちって北西部だと思う?

聞いてみた。イモートもまた、方向音痴である。

さあ~?うちは県北西部らしいけど~

そっかー じゃあうちも北西部かなあ

そうなんじゃない?


念のため申し添えるが、イモートの家はうちから500キロ以上離れた、他県である。

どうやら私は相談相手を間違えたようだ。

もはや得るものは無しと考え、ありがとうのスタンプを押して、スマホを閉じる。

さいわい昼を待たずして、警報は解除された。

ならけんぜんず
(正解はこちらです)



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ごきんじょ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/06/19 11:30

うずうず話。

私も最初は気づかなかったのである。

しかし、2度が3度になり、5度で終わらなかった時、コレは、と思った。

近頃あちこちで目にする、コロナ禍なる言葉。

これがどういうわけか、相当の確率でコロナになっている。

コロナうず…たしかに巻き込まれたら厄介そうだが、誤字である。おそらくうろ覚えで変換を誤ったものだろう。

ふと疑問に思ったのだが、間違える人は脳内でも「ころなうず」だと思っているのだろうか。

試みにパソコンで「ころなか」を打ってみた。

すると当然というかなんというか、先にちゃんとコロナ禍が現れる。

何度か変換を繰り返すと、よく似た字として次に出てくるのはコロナである。

そのあと、ようやくコロナも現れたが、順番としてはかなり後ろである。

やはり最初から「ころなうず」と打たなければ、この間違いをするのは難しそうだ。

せっかくだから、じっさい口に出して「コロナうず」と言う人に会ってみたい。そのために、訂正したりせず、この勘違いを大事に育てよう。

ひそかにそんなことを考えていたら、こんなネットの投稿を見つけてしまった。

コロナで、在宅に…

すごい!この人と、会って話してみたい!

コロナなべ…これもまた、放り込まれたら大変そうである。

なるとのうず
(こちらはナルトのうず)



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2020/06/18 11:30

なんばー話。

バスの窓から、私は目を皿のようにして、外を見ていた。

その日の朝、おばーちゃんと電話で話していた時のこと。バスでドコソコへ行く、と報告したら

あ、じゃあ、あの会社… 知ってる?

沿線にある中小企業の名前を挙げた。

よく行き来する路線だし、大きな看板が出ているので場所はわかるが、シロートに用のある業種とも思えない。

それなのに、おばーちゃんは

面白いから見てごらん

そう言うのだ。

理由はわからないが、親の言うことは聞こう。

バスに乗り込み、会社が見える側に席を取る。

やがて車窓は見覚えのある景色になり、問題の看板が見えたので、首を伸ばして眺めた。

郊外のロードサイドによくある、白っぽく四角い社屋の前は、広い駐車場。同じ色、同じ型の社用車がずらりと並んでいる。

あらためてマジマジと見たが、特に心弾む要素も見当たらない、まるでフツーの会社である。

一体全体どこが面白いのか、わからないままにバスは通り過ぎた。

用件を済ませて帰宅してから

何が面白いのか、分からなかった

LINEでメッセージを送ると

あの会社、自動車のナンバーが88なの

は?

縁起担ぎかしら 集めてるのね

ずらりと停めてあった社用車のナンバー、1188とか、5588とか、下2桁が全部88だったのだという。

いやー、そりゃ教わらなきゃ無理だワ。

そう思いつつ、次通るときは絶対見よう、と心に決めている。

あすかなんばー
(メッチャかっこえー飛鳥ナンバー)



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/06/17 11:30

ぶるーの話。

ベランダの片付けをした時、バケツを捨てた。

日に当たってプラスチックが痩せ、みすぼらしくなったので捨てたのだ。

新しく買いに出たが、いいのがない。

いいの、とは青くないの、という意味である。

ぽりばけつ

私はポリバケツの青い色がダイキライ

水撒きのホースの青も、花見のブルーシートの青も、蹴散らかしたいほどキライだ。

よそ様のものなればこそ我慢しているが、お金を払って自分の家に入れるなんて、マッピラゴメンである。

捨てたバケツは、何の変哲もないプラスチック製だが、色は白であった。同じものがほしいのに、見つからない。

そりゃあ、いまどきのことだから、探せばいくらでも素敵なのがあるだろう。

しかし、私はケチなので、ポリバケツごときに、余計なお金と時間を使いたくないのだ。

仕方なく、その日はスゴスゴと買わずに帰った。

そういえば、通販番組でよく見る

ぶるーまじっく

座っても卵が割れない、魔法のクッション。

オバサンがデカいケツをドーンと乗っけてみせる実験映像が魅力的である。

座りたいというより、あの実験を、実地にやってみたくなる。

危うく買いかけて、ブルーマジックの名にし負う、この色で思いとどまった。

どうやら青は、私の購買意欲を削ぐのに、効果があるようである。



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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/06/16 11:30

ナツバラ本。

テレビの旅番組は再放送ばかり。

露天風呂が映って、こんな風に屈託なく温泉に行けるのは、次はいつだろう、などと思った。

サスペンスの犯人役か、でなければ被害者役専門の女優が、湯けむりに包まれている。

…湯けむりの立つ夏原や狩の犬

ふいに俳句が口をついて出た。

俳句?これ、俳句か?

夏原って、夏の野原のことだろうか。

野原に湯煙が立つか。突然沸いた噴煙なのか。

突然出てきた犬は温泉に何の用があるのか。

湯けむりの立つ夏原や狩の犬

なぜかスラスラとよどみなく浮かんでくる。

湯けむりの立つ… 夏原や… 狩の犬…

かみしめるように復唱してみたが、分からない。

いったい何なんだこれ?

ゆけむりの… なつばら…ハッ!

本棚にむかい、目当ての本を抜きだして

よーろっぱたいくつにっき
(「ヨーロッパ退屈日記」 伊丹十三著 新潮文庫)

ペラペラとページを繰ると、やっぱり!

国際派と称された筆者が、エルヴィス プレスリーの「Hound Dog」の冒頭、

♪you ain't nothin but a hound dog…♪

この部分を、ある若者が

♪ユエンナツバラ…

歌ったのを聞き、まるで日本語じゃないか、と日本人の英会話能力を嘆いたくだり。

ユエン、ナツバラに漢字を当てて

湯煙の立つや夏原狩の犬

詠んでみせた、それが原典だった。

狩の犬は、もちろん「Hound Dog」である。

小さな覚え違いはあったが、記憶を確かめることができ、非常に満足である。





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ブックガイド | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/06/15 11:30

やまもも話。

役場の前の歩道の敷石に、ぽろぽろと薄赤いものが落ちている。

ヤマモモの実だ。

うちに引きこもっているうちに、今年もこんな季節になったんだなあ。

やまもも

ムスコが通ったのは、都会の小さな幼稚園

敷地の半分いっぱいいっぱいに園舎が建ち、あとの半分が園庭である。

植え込まれた樹木の中で、ひときわ高いのがヤマモモだ。遊具も少ない狭い園庭で、活発な子たちの木登りに格好の大木だった。

父母会の役員をしていた時だったか、夕方になってから、園に出かけた。

子供たちも帰った後の静かな門を入りかけると、無人のはずの園庭で、ヤマモモの木がゆさゆさと揺れた。

木の上に大きな動物がいる!

思わずハッと息をつめ、足を止める。

クマのようにむっくり、よっこらしょう、と降りてきたのは、なんと園長先生だった。

ハハハ…ビックリさせましたか…

え、園長先生!木登りなんかなさるんですか?

いやいや…子供が登るでしょう?折れそうな枝とか、いろいろね…

なるほど木の下には切り払った細い枝がたくさん落ちている。

よく見れば、子供たちの足がかかる高さには、丁寧に添え木や補強がなされていた。

ふだんニコニコと子供たちを眺めているだけの、白髪の園長先生が、まさか皆が帰ってから、あのヤマモモの木に登ってらしたとは。

怖がりのムスコは、木登りしたことはなかったが、それでも、いい園に入れたな、そう思った。



本日も他出のため、2016年6月28日の記事に加筆して掲載いたします。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/06/14 11:30

あじさい話。

買物に行くのに、自粛の期間中、通らなかった道を歩いてみた。

半日蔭の道だが、この季節は薬玉のようなアジサイの花房でにぎやかだ。

ポップコーン、コンペイトウ、ダンスパーティー

歌合せ、伊豆の華、墨田の花火…


最近は流行りなのか、様々な品種を見るようになったが、昔はアジサイというと、ボールのように丸く咲く、あれ1種類だった。

うちは母が庭いじりが好きだったので、ガクアジサイ、というのがあるのを知っていて、それだけでも、けっこう物知り顔ができた。

がくあじさい
(ガクアジサイ hydrangea macrophylla f. normalis)

子供の頃、ときどき学校に花を持って行った。

庭に咲いている花を母に持たされ、先生にお渡しすると、喜んで教卓の上に活けてくださる。

今の小学校でそんなことをしたら迷惑がられそうだが、昔はわりと普通だった。

その朝も、母はアジサイを切って、デパートの包装紙にくるみながら

アジサイを差し上げるなんて ホントはあんまり良くないんだけど、学校だからいいでしょう…

どうして良くないのか聞き返すと、

お寺の花だし 花言葉もね… キレイだけど縁起が悪いと思う人もいるのよ

夕べの雨に濡れ、ぼったりと重いひと枝を手に、通学路を歩きながら、そんなもんかなと思った。

そのことが頭にあって、今まで人に花をあげるのに、アジサイは選んだことがない。

スーパーに着いたら、入り口の生花売り場にも、アジサイの鉢植えがたくさん並んで

父の日のプレゼントに!

楽しげなポップが立ててある。

年月とともに、常識も変わるのだ。今更だけど、そんなことを思った。



本日早朝より多忙のため、2018年6月10日の記事に加筆して掲載いたします。



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むかしむかし | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/06/13 11:30

うらしま話。

久しぶりの電車は、やっぱり楽しい。

面倒な乗り換えまでも、嬉しく感じるから妙なものだ。

複数の路線が乗り入れる、私鉄のターミナル駅。

子供が小さいころは、ホームにエレベーターが無いので、乗り換えに苦労した。

いつ来ても、ガーガーうるさく工事をしているのに、ちっとも完成せず、エレベーターがつく気配もない、悪い意味でわが県らしい駅である。

何カ月ぶりだろうか。いつものホームに降りて、アレッと思った。

あるはずの階段がないのである。

どうも様子がおかしい。ふだんは使わない階段を上って、コンコースに立って、驚いた。

永久に終わらないかと見えていた工事が、できているではないか。

俄然オノボリさんと化して、周囲をキョロキョロ見回しながら、新しい駅舎を歩いた。

見たことない階段、見たことない改札。

まさに今浦島だ。

えきりにゅーある2

えっ?

えきりにゅーある3

ええっ?

えきりにゅーある

ええーっ?!

…というのは嘘で、これは完成予想図である。

それにしても、自粛期間、私が仕事もせず家にいるうちに、工事の人は営々と働いていたのか。

そう思うと、すこし感動した。(まだ完成してないけど)



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/06/12 11:30

ずぶぬれ話。

何日ぶりだろう?本当に久しぶりに、電車に乗って出かけた。

お昼どき、駅に降りたら、驚くほどの人出。

過去1カ月間に会ったよりも、何倍も多い人間をいちどきに見て、たじろいだ。

そのほとんどが、学生だ。

ははーん、分散登校というやつだな。

朝の授業が終わった人と、午後から学校に出る人が、最寄りの駅で交差するわけだ。

制服の群れの、夏の白さがまぶしくて、目を細めつつ駅の階段を降りる。

構内を出ようとした時、にわかに生臭い風が吹き、雨がたたきつけるように降りだした。

朝は暑いほどの晴天だった。予報を見て半信半疑で、日傘を晴雨兼用に持ち替えてきたのだ。

ありがとう、天気予報!

しかし、この雨の勢いでは、傘があってもかなり濡れそうだ。急用ではないから、小降りになってから、駅を出よう。

通行の邪魔にならない位置によけ、立って待つ。

それにしても、すごい雨。まるでスコールだ。

外の雨を、感嘆をこめて眺める間にも、つぎつぎ学生が飛び込んでくる。

ヒャー ビックリしたぁ!

折り畳みの小さなカサひとつに、肩を寄せた女子2人が、ゲラゲラ笑いあっている。

全速力で駆けてきた男子は、シャツの肩も、重そうなリュックサックもびしょぬれ。クセ毛らしい髪からは、しずくまで垂れている。

サーと水を掃く音がしたと思うと、右から左へ、自転車に乗った女子高生が走り去った。前カゴのカバンの中身が、よそながら心配になる。

君たち!雨宿りという概念を知らんのかね。

こんな激しい雨、長くは続かない。ほんの数分、雨やみを待てば、悠々と帰れるのに。

それをしないのが、若さというものか。

やがて雨は嘘のように上がり、濡れた地面を強い日差しが照らす。

もう若くない私は、日傘を日傘として、ムッとする雨上がりの道を歩きだした。

おてんきあめ



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もろもろ | コメント(14) | トラックバック(0) | 2020/06/11 11:30
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