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ふんしつ話。

寒い季節は、お布団に入るのが嬉しい。

ふくふく、ぬくぬくと温まっていくのが楽しい。

あと少し起きていたいと思いつつウトウトする、その心地よさ。

本を持って寝床に入っても、いくらも読まないうちにやっぱり眠ってしまう。朝起きたら片手に本を持ち、指を頁にはさんだままのこともある。

ゴトン…

真夜中、外の物音で目を覚ました。耳を澄ましても、それきりシンとしている。気のせいか。

読みかけの本を眺めて眠りに戻ろうと、枕元を探ると

あら、無い?

モゾモゾと寝返りを打ち、反対側に手を伸ばしたが、指先に当たるものは無かった。

ま、いっか、と思ったけれど、どうも気になる。しかたなく、寝床に半身を起こしても

あら~ 無い?

こうなると気になって寝ていられない。

立ち上がり、掛布団と毛布をバサッと振るう。せっかくの暖気が、逃げていく。

しかし寝る前までたしかにあった本は、影も形も見えない。

冷えてしまった布団にくるまり、もしや不埒者が忍び込み、持ち去ったのか、さっきの物音は、そ奴の逃げる音か、不穏な想像に身を委ねる。

それきり眠れなかった、と言えれば格好がつくが、のび太体質の悲しさ、またしても、あっという間に寝てしまった。

短い夢を、いくつも見た気がする。

ドロボウの入る夢、自分がドロボウだった夢…。

布団を上げたら、本はなぜか枕の下にあった。

へいあんちょうのせいかつとぶんがく
(「平安朝の生活と文学」池田亀鑑著 ちくま学芸文庫)



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2020/11/30 11:30

てっちり話。

いよいよ鍋ものが恋しい季節。

このご時世、忘年会は無いし、あったとしても鍋は無理だろう。

好きな人たちと、鍋をつつきあえる日はまた来るのだろうか、などと考えていたら、昔食べた鍋のことを思い出した。

それはもう30年も前、若いOLだったころ。

職場では新人から中堅になり、責任も増すのに、なぜかどんどんやりがいを感じなくなっていた。

仕事の忙しさにかまけて、恋愛もうまくいかない。

ビル風が自分にだけ冷たい気がする、やさぐれた冬のある日、職場に電話が入った。

おい メシでも食わないか 話もあるし…

父からだ。

そういえば、しばらく実家にも帰れていない。いいよ、と答えて、待ち合わせを決めた。

久しぶりの父は、見覚えのあるコートを着て、私の姿を認めると、よう、と手を挙げ、私を待たずにスタスタ歩きだす。

待ってよう!

どうやら行先は決まっているらしい。

洗いざらしの紺の暖簾を上げて入っていったのは、小体なふぐ料理の店だった。

私には何も聞かず、てっちりのコースを注文し

こういうもんを食わしてやるのも 親の役目だからな

父はぼそりと言った。

父の話が何だったか、もう覚えていないが、ピリッと一味の効いたポン酢で食べる、初めてのふぐは美味しかった。

ゼラチン質の皮のところを噛みながら、何の脈絡もなく、寿退職なんて止そう、と思ったことは、なんとなく記憶にある。

親の役目、か。

私は親の役目を果たせているだろうか。

ムスメにも食べさせてやりたいな、と調べてみたが、父と鍋を囲んだミナミのあのフグ料理屋は、いつの間に閉店したのか、見つからなかった。

てっちり



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/11/29 11:30

わきやく話。

寒い日、汁物が食べたくなり、鍋いっぱい粕汁を作った。

地元の酒粕を冷凍しているので、年中作れるが、ダイコン、ニンジン…根菜をいっぱい入れた粕汁は、やはり冬が美味しい。

大ぶりのお椀を口もとに運べば、湯気がしっとりと鼻をぬらす。ゾゾッとひと啜り…

アッ!しまった、また忘れた!

何をってゴボウである。

この名脇役を、私はひんぱんに買い忘れる。そのくせゴボウは大好物なのだ。

筑前煮や豚汁、ゴボウが欠かせない料理は多い。

粕汁でも、地味なゴボウは主役ではないが、独特の土臭さが加わって、ぐんと美味しさが増す。

好きなのになぜ忘れるのか、よく分からない。

好物は何ですか?

聞かれたときに

はい、ゴボウです!

答えたこともない、と思う。

在外の時、どうしても食べたくて、手に入らなかったもののひとつに、ゴボウがあった。

日系スーパーに入荷したとの情報に、電車を乗り継ぎ、ベトナム産のゴボウを1本700円で買えた時の気持ちは、今も忘れられない。

あの苦労に比べれば、今は幸せだ。

さいわい今日は休み、ひとっ走り、粕汁に入れるゴボウを買って来よう。

ばいぷれーやーず
(ゴボウを人に例えるなら、こんな感じかも)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/11/28 11:30

おでんわ話。

めっせーじ1

大先輩にいただいたメッセージに気づかないという不始末(→SMSの話。)をしでかし、あわてて電話をかける。

すみません!ショートメール知らなくて

そうなの?私、古いケイタイだから…

私はいきなりスマホ持ったんで 逆にケイタイが分からないんです

まア!いろいろね~

色々ですね~

優しいかただから、連絡を欠かした無礼もお怒りではなさそうなので、ホッとした。そうなると、いきなり図々しくなるのが私の悪いところだ。

だけど 番号ご存知なら お電話くださればよかったのに~!

うーん…ケイタイって どこにでもかかるじゃない?急用でもないと かけにくくて…家の電話ならともかく…

なんて控えめな人!ガサツな自分が恥ずかしい。

柔らかく口ごもりながらおっしゃる、その口調を聞いていたら、ハッとする。

あ、あのっ!もしかして 会社にお電話いただきました?

あら~ 伝言しなくていいって言ったのに…

やっぱり!

怪電話(→なにもの話。)の主、名乗るほどでもない人の正体が、めでたく判明したわけだ。

今度お会いしたら、家の電話と、メールアドレスも交換しましょう、と約束して、電話を切った。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2020/11/27 11:30

SMSの話。

最新機器に弱い私の、スマホに対する基本的な態度は、触らぬ神に祟りなし、である。

当たって砕けろ式に使いこなす方も多いかと思うが、気の小さい私には無理な相談だ。

通話とメールとLINE、生協の注文、電車の検索。

日々、必要最小限の操作で、理解できる範囲でしか使用しない私のスマホは、おそらくは全機能の1%も発揮できていないであろう。

とつぜん何やら表示が出たりすると、いまだに胸がドキドキするが、見て見ぬふりをしているうちに消えることが多いので、ホッとしている。

そんな風におっかなびっくりの私が、今日は何のはずみか、知らないアイコンに触ってしまった。

ここしばらく、右肩に赤いポチがついて消えないので、気になっていたのだ。

メッセージって何?

動悸を押さえつつ画面をスクロールしたところ、1つだけ覚えのある文字があらわれた。

以前少しだけお付き合いいただいた、業界の先輩のお名前だ。

この方なら、と安心してクリックすると、短いコメントが表示され

自宅を片付けたら、不要な本が出ましたが、これこれはお持ちですか?

高価な専門書をお譲りくださるという、願ってもないお申し出だった。

そして、ショートメールというものの存在を初めて知る、スマホ4年目の冬。

めっせーじ1



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/11/26 11:30

ひりひり話。

秋口に入って気になりだした、抜け毛の増加。(→はらはら話。

ここんとこ抜け毛が多いんだよネ…

実家訪問の折、何の気なしに言ったら

あ、アレ、アレあるよ!テレビでやってる…

当然予想できたことだが、おばーちゃんは、魔法のごとくアレを取り出した。

例によって老母が飽きたアレとは、コレ

かんきろう

すこし使ってあるものの、買えば数千円のアレだ。有難く頂戴した。

帰宅して、さっそく鏡に向かって頭にふりまき、説明に従ってマッサージしてみる。効能のほどは不明ながら、とりあえず1本使い切ってみよう。

洗面所の棚に緑のビンを入れたが、どうも落ち着かない。誰が見ても、養毛剤と分かる養毛剤があることが、なんだか恥ずかしい。

棚に目をやるたびに、抜け毛に思い至るというのも、気が滅入る。

そうだ、ステッカーを貼ろう。

英文を書いた正方形のステッカーを、商品名を隠すように、斜めに貼り、棚に戻して眺めると、何かに似ている。

あ…冷蔵庫の…

はらぺーにょそーす

頭皮のヒリヒリは、気のせいだろう。急にマッサージなんかしたものだから、足元にハラハラと、新たな抜け毛が落ちた。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/11/25 11:30

はがきの話。

ポストを開けたら、カラフルなダイレクトメールの中に、薄墨が1枚混じっていた。

ああ、喪中ハガキ、もうそんな時期か。

玄関を開けながら差出人を見ると、新卒就職の時の同期だった人だ。

在職中は親しくしていたものの、もう10年以上、年賀状だけのやりとりになっている。

喪中につき年頭のご挨拶を失礼…

部屋に入って改めて文面を眺める。

本年九月に父が八十九歳にて永眠致し…

なるほど、納得してハガキを置きかけたが、なんだかまだ、文面が続く。

ここ最近、年賀状の準備が難しく…

はッはーん、流行りの年賀状じまい、ってやつか。

しかし私は覚えている。

この男、結婚するなり、年賀状の宛名を奥様に書かせるようになったことを。

ずーっと、印刷の文面に、会ったこともない女性の文字で書かれた年賀状を寄越していたことを。

ここ2、3年、本人の字になったので、熟年離婚か、はたまた閑職に追いやられたのか、あるいはボケ防止かな、などと思っていたのだ。

勝手ながら来年から、賀状を取りやめさせて…

自分で書くようになったら、たちまち面倒になった、というわけね。

奥様のありがたみが分かったかしら。ありがとうのヒトコトくらい言ったかしら。

まあ、独身者の知ったことじゃないけど。

今後はメールやLINEでつながっていきたいと…

いやー、別にいいです、つながんなくて。

メルアドらしきものがごちゃごちゃと続くハガキを、宛名を内側に4つに折り、ゴミ箱に捨てた。

もちゅうはがき



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2020/11/24 11:30

だいよん話。

ぽかぽか良いお天気の何もない日曜の午後。コーヒーを飲みながらダラダラしていたら、電話が鳴った。

はいモシモシ~?

こんにちは~ ムラカミです~

あーこんにちは~

何の御用?と、不審げな響きがこもったやも知れぬ。ムラカミさんは笑いを含んだ声で

やっぱりね!忘れてると思ったわ!

は?

今日、第4日曜…

へ… あ!第4日曜

だいよんにちよう2

毎月第4日曜は、趣味の集まりの日。

私はこの、第○○曜、という決め方がことのほか苦手で、とくに日曜日が5つある月は危ない。

「最後の日曜日」と思うせいもあるし、第3土曜の翌日というのも、間違える原因だ。

21日第3土曜の次の日が、22日第4日曜。

第3の翌日が第4だなんてオカシイ!と思うのだが、どうやら私は少数派らしい。

このグループに所属して以来15年、何度かの失敗で、第4日曜がわからない人認定を受けている。

電話口のムラカミさんは、毎度のことに大笑いだが

ゴメンナサイ!すぐ行きます!

慌ててカバンをひっつかみ、玄関を飛び出した。



5年前とまるで同じ失敗をしたので、2015年11月23日の記事に加筆掲載いたします。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2020/11/23 11:30

きみのな話。

駅を降りて夕方の曇り空を見上げたら、夕焼けが映えてとてもきれいだ。マスクの中で

わー アニメみたい!

つい声に出して、苦笑する。

きみのなは

こんなアニメの背景そっくりな雲の下、家路につきつつ

それでいいのかなあ…

ふと思った。

現実の空に近づけるため、手描き時代から続けてきたアニメーターの努力は、今の作品の背景に、見事に結実していると思う。

だからこそ、きれいな空→アニメという連想を生むに至ったわけだが、それは果たして彼らの本意だろうか。

アニメみたい!とは、つまり絵のようにキレイ!ということである。

現実を見てそう言われたとき、アニメを作る人はフクザツだろうな、などと、考え考え歩くうち、家に着いた。

手を洗い、テレビを点けて、また驚く。

りあるきみのなは

まるでアニメと同じその画像は、宇宙船の打ち上げ成功のニュースだった。



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/11/22 11:30

どてらの話。

バカに暖かな、いや、暑いくらいの日が続く。

おかしなことばかりの年の終わりは、気候までおかしくなるのだろうか。

毎年冬じゅう着用するドテラも、出したまま羽織りもせず、ハンガーにかかったきりである。

どてら

ドテラ、しかしてその実態は、ニットジャケットとかなんとか。暖かな冬の部屋着という意味で、そう呼んでいる。

まるで自分の抜け殻のように壁にかかった、ドテラをなんとなく眺めた。着てしまえば、こんなにしげしげと眺めることもないだろう。

購入当初こそ、ニットジャケットですわよ、という風だったが、名前とは恐ろしいものだ。

数年間、ドテラドテラと呼び続けた結果、着たままで玄関を出るのは憚られるような、室内限定の衣類に、みごとに変貌した。

くたびれた、といってもいい。

いつごろ買ったんだっけかなあ、と検索したら、なんと4年前の今日だ。(→どてらの話。

そうか、今日はドテラ記念日。

だから何だって言われれば、何でもないんだけど、ちょっとおかしい。



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/11/21 11:30
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